―――怖かった。
アスカはそう思った。
仲間を失うことが、そして…何よりルフィを失うことが怖かった。
アスカ達がギャアギャア騒ぎながらもひたすら凍った二人にお湯をかけていたおかげで二人の心臓は動き出す。
医師であるチョッパーが泣きながら二人の心臓が動いたことを告げるとみんな一同に安堵する。
その日は船長も動けない状態だからとナミが船を動かさずこの島に停泊して一泊すると決め、その日の見張りはアスカが名乗り出た。
「…………」
見張り台で果てしない暗闇を見つめていた。
気候のいい島とはいえ、夜は昼間より冷える。
流石に息が白くなるほど寒くはないが、ひんやりとする風にアスカは持ってきていた毛布を体に巻き付け、サンジが淹れてくれていたココアをコップに入れる。
両手でコップを持って湯気を払うように息を吹きかけ、口にココアを含む。
アツアツではないが、舌が少し熱いと感じる程度の温度で、冷えた体には染みる温かさである。
空を見上げれば星が輝いて見えた。
しかし空を見上げていたアスカの視界が歪む。
「……っ」
目を瞑ればぽつりと頬に冷たい何かが流れ零れた。
ぽつ、ぽつとアスカの金色の瞳から雫が落ち、アスカは目をぎゅっとつぶる。
それでも雫はポロポロ落ちていく。
目を瞑って瞼の裏に浮かぶのは幼馴染であるルフィの姿。
ゾロとサンジが連れてきたときのルフィはロビンと同じく凍り付いた姿だった。
予想はしていたが実際目にしてみると結構くるものがあった。
「ルフィのばか」
だけど本人を責めるわけにもいかなかった。
あの時はあれが最善だったと思うし、こうして結果として誰一人欠けることもなかったからアスカはそれで許してやろうと上からだがそう思うことにした。
最近『思うようにした』とかが多い気がする。
姉の事、ルフィの事…アスカは考えるのをやめたとか、そう思っておこうとか、色々無視して自分の都合のいい解釈で片付けた。
それがいいのか悪いのかは分からないが…チョッパーがルフィを診てくれた。
心臓が動いて、今は眠っている。
その証拠に呑気にもいびきをかいていた。
―――それ以上何を望むんだろう。
ルフィが生きている…それだけで今はもう何も望んでいない。
アスカは閉じていた目を開き空を見上げた。
やはり空はアスカの心なんて関係なく晴れ晴れとして綺麗な夜空が広がっており、バタバタとした一日を終えようとしている。
アスカはそんな夜空に散りばめられている星々を掴もうと手を伸ばす。
グッと星を握り、その手を開いて見るも当然星どころか何も見えない。
瞬きをすると止まり溜まっていた涙がぽつりと落ちアスカの手を濡らす。
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