(163 / 293) ラビットガール (163)

それから船はルフィとロビンの安静の為4日間停泊し船は今、次の島へ目指し進み始めてから3日目の航海だった。
アスカは暇だからと日差しに誘われるままにビーチチェアでうとうととしていた。


「う〜〜ん!いい天気!!」

「んヌワ〜〜ミさァ〜〜〜ん!!!アスカちゅわ〜〜〜ん!!!」

「?」

「ふぁ…」


ナミはアスカの隣でビーチチェアに座り日光浴し、アスカはサンジの声でうつらうつらとしていた意識を浮上させる。
閉じていた目を開ければあくびが出て涙が溜まる。
グッと背筋を伸ばせば丁度サンジが駆けつけてきていた。


「じゃがいものパイユ、作ってみたのですマドモアゼル…よろしければ……」

「ん、おいしい!」

「うまい。」

「幸せー!!」

「うるせぇな!!てめぇ眠れねぇだろう!!」


ナミとアスカが自分の料理を食べて喜ぶ姿を見てサンジは海に向かって大声で叫んだ。
そのせいで眠っていたゾロが目を覚まし、起こしたサンジに怒鳴りつける。


「はいはいすみませんでしたサボテン君」

「何だと…!?」


いつもの事だとアスカもナミも無視し二人で『美味しいわね』『うん』と感想を言い合って楽しんでいた。


「ぃ…ッ!」


足を伸ばしたまま組もうとしたとき…アスカの足首にズキリとした痛みが走りアスカは思わず小さく息を呑む。
それを聞いてナミが『大丈夫?』と心配そうに顔を覗き込んだが、アスカは頷いて大丈夫だと伝える。
アスカの足は完治した。
が、それを知った復活したルフィが大喜びをしてアスカを振り回して足を捻らせたのだ。
歩けないほど酷くはないが、せっかくヒビが完治したのにまた足を捻ってしまい、アスカはナミとサンジにボコボコにされ顔の原型が分からなくなった幼馴染を見ながら『なんか最近ツイてないなァ…なにか嫌な事でもあるのかなァ』と他人事のように思っていた。
チョッパー曰く数日安静にしていればいいとのことで、一応安静にはしているのだが…『早く治らないかな〜』と思っていると突然ルフィが船内から出てきた。


「凍ったおれの真似!!」

「ぶ〜〜〜〜っ!ひゃっひゃっひゃっ!!!」


サンジ特性のパイユを食べていると、ルフィが船内に続く扉を開けたかと思えば突然ルフィの体が凍り付いた。
その物音にアスカが足を庇いながら下へと手すりから覗き込めば凍り付きカチンコチンとなった幼馴染とそれに大笑いをしている狙撃手と船医を見つけ、呆れたように半目で見る。
それはアスカだけではなくナミも同じだった。


「もー…凍って死にかけといて…よくやるわよそんな事!」

「うははは!!似てたか!?あれ!!おいお前ら何食ってんだよ!」

「パイユ、じゃがいもよ」

「いもか!おれも腹へったぞ。おいサンジー!」


ナミもアスカと同じことを思っていたのか、隣を見れば呆れたようにルフィを見つめる。
アスカもそれに頷きながら、ウソップとチョッパーに『あれだけ大騒ぎしてたくせに…』とルフィ共々呆れ返っていた。
アスカ達の手に持っている食べ物を見つけ、ルフィは凍結状態から回復しアスカ達が覗き込んでいる二階の手すりに階段を使わずよじ登る。
『一口くれ!』と目を輝かすルフィにアスカは食べさせようとフォークにさしてルフィの大きな口に入れてやる。
一口パクリと食べたルフィは目を更に輝かせ『うんめー!』と喜び、また口を開く。
また『もう一口!!』と強請られ、アスカはまたフォークにさしてルフィの口に入れてやろうとしたとき…ルフィはサンジに『それはアスカちゃんのために作ったもんだ!!てめェのじゃねえよ!!』と蹴りを入れられ二階から落ちてしまった。
ブーブー言うルフィにサンジはため息をつきながら『てめェらの分も作ってやるから待っとけ!!』と言って再びキッチンへと足を運ぼうとする。
すると、起きたのか、ロビンが部屋から出てきた。


「ロビン!」

「おはよ」

「ロビン!!気分はどうだ?寒気はあるか?」

「お蔭様で…だいぶいいわ…ありがとう船医さん」


安静にと言われルフィ、ゾロ、アスカと違い、船医のいう事を聞いてくれる"いい患者"であるロビンはずっと寝たきりではないが安静にはしてくれていた。
ここで言う"いい患者"とはお金を多くくれるのではなく……ルフィ、ゾロ、アスカのように医者のいう事を聞かないような患者じゃない患者という事である。
長い説明だが要するに『いう事を聞いてちゃんと安静にしてくれる患者』の事である。
微笑みお礼を言うロビンに、チョッパーはいつも通りの照れ隠しをしていたが顔はやっぱり緩んでいた。


「でも無理しないでロビン。まだゆっくり休んでていいのよ?だいたい同じ目にあったコイツがこんなにピンピンしているから気兼ねしちゃうでしょうけど…」


ナミもロビンが起きたことは嬉しいが、ロビンは能力者とはいえ一人の女性…同じ経験をしたバケモノという名のルフィがピンピンしているから気を使っていると思ったのか、無理しないでほしいと伝える。
しかしロビンは無理をしていないと答え、その言葉とロビンのその微笑みにナミもアスカも嘘ではないとホッとする。


「ロビンちゃん!何か…体のあったまるもん作ろうか!!食欲はあるか?」

「……じゃあ、コーヒーを頂ける?」

「喜んでーーーー!!」

「あ、私にはお茶頂戴。冷たいのがいい」

「私は紅茶」

「勿論さーー!!!」

「遠慮ねェーな、お前ら…」


サンジはロビンに何か食べたいものや飲みたいものはないかと聞くと、ロビンはコーヒーを頼んだ。
美女に頼まれたサンジはついでにアスカとナミにも追加オーダーされ、美女三人のオーダーにハートを飛ばしながらキッチンへ張り切って駆け込む。
ついでと言わんばかりに遠慮のないナミとアスカがサンジを扱き使うのを見てゾロは小さく呟いた。


「ん?何だありゃ…」


サンジは待っているロビン、ナミ、アスカのために急いで…しかし手を抜かずコーヒー、紅茶、お茶を用意した。
ついでに男どもにパイユを用意してやり、それらを食べたり飲んだりとそれぞれ好きなように過ごす。
アスカは目も覚めてしまいお昼寝もする気がなくなったためキッチンに引っ込んだナミのように日光浴をしていた。
暫く海を進んでいると、不意にゾロが何かに気付き、その声でアスカも起き上がってゾロを振り返る。
パイユを食べながらゾロがどこかを見ていたのでアスカもその方向を見ると…ありえないものを目にすることになる。


「かえる……海に…カエル?」


そこには大きなカエルが何故かクロールで海を渡っていた。
カエルと言えば海ではなく池などに生息するものという認識があり、その不可解なものにアスカは眉を潜める。


「カエルだ!巨大カエルだ…!!クロールで海を渡っているぞ!!あんなに急いでどこ行くんだ!?」

「おいルフィ、バカも休み休みに言え…カエルがクロールなんか……しとるーーー!!」

「追うぞ野郎共!!」

「オール出せ!!漕ぐぞ!!」

「船体2時の方角へ〜〜!!急げ〜!!!!」


勝手に進路を変える男どもに、部屋でのんびりしていたナミは慌てて部屋から出る。


「こら!あんた達何勝手に進路変えてんのよ!!」

「それがおい!聞いてくれよナミ!!でっけェ体中ケガしたカエルを見つけたんだ!おれ達は是非それを丸焼きで食いてェんだよ!!」

「「食うのかよっ!!」」


ルフィの言葉に食べるとは思ってなかったチョッパとゾロがツッコミ、ナミは望遠鏡でカエルを見ていたら、その先にある灯台を見つけた。


「どうしてあんなとこに灯台なんて…誰かいるのかしら…」

「どうした!島が見えたか!?」

「ううん、灯台があるの!別に記録指針が指す場所じゃないわ!」

「カエルは!?カエルの方向指示してくれ!!」

「いやよ!!」

「カエルも灯台を目指してるわよ」

「カエルはまず白ワインでぬめりを消し小麦粉をまぶしてカラッとフリート」

「そういえばカエルって鶏肉に似てて味がないって聞くけど…」

「ちょっとロビン!サンジ君!アスカ!!」

「よっしゃー!全速前進!!」

「「「おーーーーー!!!」」」

「その団結力は何なのよ!!!」


ロビンはどうかはしらないが、サンジとアスカも食べる気満々の為、止められずナミは慌てる。
ゲテモノは食べたくないらしく必死だった。
アスカは小さい頃山で育ったというのもあって平気だが、ルフィほど食べたいとも思っていない。
ナミの拒否権を無視しここぞとばかりに団結力を固めるルフィ達によって船は灯台へと進む。
するとカンカンカン、と鐘の鳴る音が鳴り響く。


「え!?待ってよみんな!ストップ!!変な音がする!!!」


しかしナミの停止も空しく、ルフィ達はカエルを追いかけるが船は何かに乗り上げてしまった。
バックする暇もなく、横から煙を出しながら早いスピードで向かってくるモノにぶつかりそうになる。
幸いぶつかる前に避けることが出来たがカエルが無謀にも立ち向かって轢かれてしまった。


「うわ…」


唖然とする中、アスカは飛んでいくカエルを大きな口を開けて見上げる
皆一同呆気にとられていると、その灯台の建物の中から誰かが出てきた。


「あ!」

「?」

「大変だ!!ばあちゃん!ばあちゃん!!海賊だよ!!」

「何!?本当か!?チムニー!よーし!ちょっと待ってりゃ!!」


灯台から出てきたのは一人の女の子とウサギなのかネコなのか分からない生き物。
女の子はアスカ達の乗っている船から海賊旗を見た途端に祖母らしい人を呼び出し、女の子に続いて出てきていた祖母は慌てたようすで電伝虫を取り出した。


「あ、バレた」

「面倒だな建物から誰か出てきた…!応援呼ぶ気だぞ…」

「あー…!!もひもひ!?え〜と!………!!何らっけ!?忘れまひた!ウィ〜〜〜ッ!!」

「「酔っ払いかよ!!!」」


祖母は電伝虫にかけて海賊が来たことを知らせようとしたが…どうやら酔っぱらっているようで内容を忘れてしまい、なんとそのまま笑いながら切ってしまった。
警戒していたのが馬鹿馬鹿しくなってアスカは肩の力を抜く。







それから何故か祖母と孫と生き物はルフィ達と打ち明けていた。
灯台に降りたのはルフィ、ウソップ、ナミだった。



「ほー、パイユ?ふんふん……酒の肴にいいねー」

「うわー!おーいーし〜〜〜!!!」


サンジのパイユをおいしそうに頬張り、また祖母はお酒を仰ぐ。
傍にいても匂うそのお酒の香りを嗅いでいるとどうやら相当のアル中らしく、さきほどの連絡も日常茶飯事のようにも思えてきた。


「あたしはチムニー!猫のゴンベとココロばーちゃんよ!!」

「おめェら列車強盗じゃね〜だろうな!んががが!!」


酒と美味しい肴にご機嫌な祖母…ココロの問いにルフィは腕を組んで堂々と名乗る。


「おれは海賊王になる男だ!!!」

「ホント!?」

「あぁ!」

「んががが!面白いねアンタ!」


ルフィの言葉を真に受けたのか、または冗談か何かだと思っているのかは分からないが、どうやらココロはルフィを気に入ったようで笑い声をあげていた。
ルフィの言葉に笑い出すココロと驚くチムニーにナミはさきほどの蒸気船のようなモノのことを聞く。


「見たことないでしょ!あんなの世界中探してもここにしかないよ!あれは"海列車"『パッフィング・トム』っていうの」

「『煙吹きトム』?」

「蒸気機関で外車を回して海の線路を進むの!」

「線路?」

「そうよ、水面の少し上を通ってて列車は毎日同じところをぐるぐる走って島から島へお客を運ぶの!船とか郵便物とか運ぶのよ。」


線路と言われ首をかしげる。
あまり海と線路と結びつかないと思いながらチムニーが指さしてくれた場所を見ると、水面に微かに線路らしいものが映っているのが見えた。
どうやら線路は海水の中に浮かばせているようである。


「本当だ、確かにあるぞ線路。」

「そうよ!"仕切り"もあるのに船で入っちゃ危ないじゃない!あなた達!!」


チムニーは腰に手を当て、大人がするようにルフィ達に注意していた。


「危ねェっつってもよ、カエルはそれ分かんねェだろ。吹き飛ばすのはひどいぞ、お前…」


『おれの獲物なのに』、と本音を呟くとチムニーは眉を下げ、困ったような表情を浮かべる。


「ああ…そいつは"ヨコヅナ"。このシフト駅の悩みのタネなのよ…力くらべが大好きでいつも海列車に勝とうとすんの…あれくらじゃ死なないからまた現れるよ!」

「あぁ、だからあいつ逃げなかったのか…根性あるじゃねェか!!!」

「困ってんのよ!こっちは!!何度か俳障器も破壊されてるぐらいで!あいつが出てくる度にお客さんに大迷惑かけてるんだもん!!」

「そうだったのか…よーし!おれあいつ食わねェ!!!頑張り屋は食わねェ!!!」

「はじめからそうしてよ!カエルなんて!」


食べたくないという意見を全く聞いていないルフィに、ナミはカエルを食べずに済んだというのもあり溜め息だけで終わらせる。
そしてココロが言うには記録が指している先は"ウォーターセブン"らしく、そこは世界一の船大工の溜まり場らしい。


「ウソップ!!」

「ああ!!」

「よ──し!決めた!!そこ行って必ず"船大工"を仲間にするぞ!!」



世界一の船大工、と聞きウソップとルフィは目を輝かす。

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