(164 / 293) ラビットガール (164)

「不公平よね、絶対不公平よ。」


あれからウォーターセブンにつき、ナミ・ウソップ・ルフィは黄金を換金し、船の修理を頼みに、そしてロビンとチョッパーは買い物に出かけ、船に残ったのはサンジとゾロとアスカだけだった。
出かける気満々だったアスカは頬を膨らませてプリプリ怒っていた。


「うっせェな…自業自得だろ?お前が足治ったとか調子こいてるからそうなんだよ」

「なにそれ!確かに調子に乗ってたけど!!だけどあれ私のせいじゃないじゃん!!全部ルフィのせいじゃん!!ゾロはケガして動いても文句だけで扱き使うのに私だけお留守番とか差別よ!差別!!っていうか私の足そこまでひどくないじゃん!!!」

「まぁまぁ、アスカちゃん。ナミさんもアスカちゃんのことを考えて留守番を頼んだんだ!ナミさんを責めないでくれよ!そう!責めるならこのおれに!!おれに怒ってくれ!!アスカちゃんが吐き出して気が済むのなら!!おれはどんな罵倒でも平気さ!むしろどんとこい!!」


キーキー叫ぶアスカにゾロは耳に指を突っ込んで『へーへーそーですねー』と適当な返しをする。
こういう時の女には関わりたくないというのが丸見えでアスカはそんなゾロの態度に腹立たしいものを感じたのだが…まあ言ってしまえば八つ当たるである。
サンジの言葉に怒るのも馬鹿馬鹿しいと思ったのか、腕を広げスタンばっているサンジを無視しスカートをめくり上げる。
今、アスカは短パンではなく、スカートを穿いていた。
勿論ナミの命令で、である。


「まったく…やってらんないわよ、こんな動き難い服着せられるし。」

「ちょ…アスカちゃん!!女の子がそんなにスカートを上げるもんじゃないよ!!?」

「……ハァ…もういいや…寝よ…」

「おい、寝るのはいいが何で俺の膝で寝る」

「安眠マット・ZORO〜快適な眠りをあなたに…〜」

「キャッチコピーまで増やしやがった…!」


アスカは性格的にスカートというものは好かない。
しかし、小さい頃ガープがよく好んでスカートを着させていたし、ミコトも服選びにスカートも混ぜてはいたから抵抗はない。
アスカの中でのスカートの位置は、好きでも無ければ嫌いでもないという所だろう。
だがアスカは静かにしているのも平気だし嫌いではないが、幼馴染と共に行動していた事が多いからか、走り回った方が楽なのだ。
だからスカートよりもズボンの方が楽だし、何より……アスカはノーパン派である。
んな情報いらねえよと思うだろうが、ここは重要である。
ふとももが見えるくらい上げられたスカートにサンジは顔を赤くして慌てる。
まるで純粋無垢なお嬢様がスカートを上げているような反応をするサンジにアスカはため息をつき何故かゾロの上で眠ろうとする。
胡坐をかいた膝の上に遠慮なく座り、まるで自分を背もたれ代わりにするアスカにゾロは苦情を零す。
『さっきのお返し』というアスカから空島のサンジのように命名されゾロはまったく退く気配もないアスカに諦めたのかため息をつくだけに終わらせ、自分の眠りやすそうに少し体勢を整えるだけに終わった。


「アスカちゃん…!!ね、眠いなら…!お、おれの…!おれのお膝においで!!安眠を約束するから!!ね!ね!!」

「いや。」


ゾロの膝の上に乗り目を瞑るアスカを見てサンジはその場に座りゾロ同様胡坐をかいて膝を叩いてアスカを誘う。
だがアスカにはキッパリと断られてしまい、ガーン、という文字が降ってきた。
アスカはサンジが嫌いというわけではなく、どちらかと言えば好きである。
脳筋のゾロとは違いサンジはフェミニストらしく身だしなみを気を付けているから傍にいるといい匂いがする。
その匂いは料理人なためキツめの香水を使っているというわけでもないし、仲間に動物や動物系の能力者がいるからかサンジはさりげない身だしなみ程度の香水しか使っていない。
その匂いがアスカは好きだった。
それにサンジの優しい雰囲気も傍にいて落ちつけて安心はするのだが……アスカの悪魔の実で得た野生の本能が言っていた…―――今、あいつのところに行けば食われる…と。
だからアスカはそっぽを向いて断ったのだ。
そのあとサンジはロビンもいないナミもいないアスカには相手にされていない…とトボトボ足りなくなった調味料や食材などを買いに街へと向かった。







サンジも街へ出かけ、ゾロは重い荷物を乗せているとはいえ基本のび太寝だからか、すぐに寝息を立て始める。
アスカもゾロの体温でうとうとしはじめたのか、ゾロに続いて眠りについた。
しかしゾロは殺気を感じ刀を抜くとガキン、と音が響き振り下ろされた剣を日本刀で受け止める。


「寝込みを襲ったつもりだったが…」

「誰だてめェら…名乗れ…」


アスカが寝ている為大きい動きが出来ず押されつつ目の前の不敵な笑いを浮かべる男達を睨みつける。


「名乗れって?えェ…?"海賊狩りのゾロ"…!おれ達ァ賞金稼ぎ泣く子も黙る!!"フランキー一家だ"!!てめェの首の6千万ありがたく頂くぜ!?」


ゾロはふと膝から温かみが消えているのに気付き、下を見ると眠っていたはずのアスカが居ない。
それに疑問を思いつつもゾロは立ち上がる。
男達の言葉から元々アスカが居ないらしく、仕方なく刀を構える。


「――そして船内で待ち伏せて一味全員一網打尽だ!!ウハハハ!!ボロ儲けだ!ラッキーー!!!」


男達は一気に襲いかかるが、ゾロにいとも簡単に止められてしまう。


「ラッキー?」

「え゙?」

「アンラッキーだろ」


主犯の男を吹き飛ばしたゾロに後ろに居た男達が退けるが、声を上げて襲い掛かる。
しかし、攻撃はゾロに届くことなく、全員投げ飛ばされ海に落ちていく。


「っぶねェーな!!アスカ!!!」

「いいじゃん、避けたんだから」

「そういう問題じゃねェだろ!!!」


男達を吹き飛ばしたアスカはフン、と鼻を鳴らしてそっぽを向く。
男達が来る前に目を覚ましたアスカは喉の渇きを打つ推しているときに物音や男達の声を聞き、ゾロに気を取られている間に背後に回りこんだのだろう。
いつもの癖で短パンのつもりで動いていたアスカは眉を潜めてスカートを見ていた。


「本当、動き難い。」

「普段のあの格好見てりゃそうだろうな。」

「ナミは私の年齢を勘違いしていると思う。」


アスカはスカートを買った覚えはなく、恐らくローグタウンで買い物したときにナミがアスカのスカートを購入していたのだろう。
年齢の差はあまりなくても栄養が行き届いていないせいで成長が遅いアスカとナミのウエストのサイズは全く異なる。
アスカがナミのを穿くと落ちるとまではいかないが色々丸見えになってしまうのだ。
ナミが油断していると剣士同様動き回るから足を安静にしていなさいという意味を込めて着させられたそのスカートはとても可愛らしい絵柄だが到底17歳が着る絵柄ではなかった。
その絵柄のスカートを着ているアスカを見てゾロは鼻で笑う。


「ハッ!お似合いだろ」

「……………」


アスカは恨めしそうに目を細めてゾロに振り返り睨むがゾロは痛くも痒くもないと再び眠りに着いた。
そんなゾロにアスカは溜息をついてキッチンに戻ってお茶を飲み直そうとした。
その時…


「失礼」

「!」


キッチンのドアノブに手を伸ばしかけた時、突然誰かが降って降りてきた。
先ほどの男達の事もあったためアスカはまた賞金首か、と思い振り替えると…その男は鼻が長かった。


(なんだ、ウソップか……)


鼻が長い=ウソップ、という認識からアスカはウソップが帰ってきたのかと思ってキッチンの扉を開ける。
気配からしてゾロも同じことを思ったのか寝直したようである。
ウソップ(?)は周りを見渡し船を見て回っていた。


「………マストも差し替えじゃな…」

「ちょっと待って!あんた誰!!?」

「ちょっと待て!てめェ誰だ!!!」


『驚いて損した〜』と思っていたアスカだったが…先ほどの男とウソップを並べてやっとその違いに気付く。
そのウソップ(?)だと思っていた男は別人であるのだ。
アスカもゾロも同じタイミングで気づき、二人の言葉が重なる。


「おお、すまん…驚かせてしまったようじゃな」

「あんた誰?ウソップの親戚?」

「ワシはガレーラカンパニーの船大工じゃ。船を見に来ただけじゃから気にせんでええわい」

「へえ」


ウソップでなければまた賞金稼ぎかと思い二人は警戒する。
しかし男曰く、大工らしく、ナミ達に頼まれて見に来たらしい。
それでどうして空から降ってくるのだろうかとアスカは思ったが、あえてそこには触れずとりあえず男の好きに船を見て回らすことにした。
気になったためアスカはキッチンには入らず男が見終わるまで待っていた。
するとしばらくして男はアスカとゾロのいる場所へと戻ってきて、その男が伝え辛そうな顔をしているのにアスカはなんとなく男の言いたいことを察してしまい顔を曇らせる。


「どうだったんだ?直るのか?」

「……まァ…隠してもしょうがないことじゃからな…はっきり言うぞ?」

「あぁ」

「…………」


隠していようが査定した結果はあの三人に知らせなければならず、最終的にアスカとゾロの耳にも入る。
それを考え男は隠し通すことをせず教えてくれた。
しかし…男の言葉に―――ゾロとアスカは言葉さえ失ってしまった。

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