エニエス・ロビーに着いたアスカは拘束されることもなかったが、相変わらず海楼石がついていたし、ルッチに肩に手を回され逃げだせなかった。
騒がしいフランキーが後ろでゴチャゴチャとうるさいのを気にすることもなく、ルッチ達は司法の塔へ向かった。
「お久しぶりで、長官」
「…………」
ルッチと共に長官スパンダムが居ると言う部屋へ入る。
「よく帰った!!ルッチ!カク!ブルーノ!カリファ!!」
「
セクハラです」
「名前呼んだだけで!?…って誰だ、その子供は」
「
死ねばいいのに」
「誰か聞いただけで!?」
ムスッとスパンダムに八つ当たりするアスカ。
不機嫌の原因はルッチだが、ルッチに八つ当たりしても効果ない上逆にイライラくるので彼の上司に八つ当たりすると列車に居る時に誓ったという。
「8年前の『ウォーターセブン』でおきた政府役人への暴行事件による罪人"カティ・フラム"、20年前の"西の海"『オハラ』でおきた海軍戦艦襲撃事件による罪人"ニコ・ロビン"…滞りなく連行完了しました。現在扉の向こうに。」
淡々と述べるルッチに1人の男が不敵な笑みを浮かべ振り返る。
「懐かしいなルッチ〜〜…ふてぶてしさは一段と増した様だ」
「貴様のバカ顔もな、ジャブラ。」
「よさんか2人とも帰って早々何じゃ…!」
「よよいっ!!そうさァやめなァ2人とも〜〜〜〜!!!5年ぶりのォ〜〜〜再会じゃあ〜〜〜〜あねェ〜〜かァ〜〜〜〜っ!!」
ルッチとジャブラが睨みあい、カクとマクドリが呆れているとフクロウが口のチャックを開き突然仲間に突進しはじめた。
「!?」
そのことに驚いているとカクの次に何故かアスカにも向かってきたので慌ててルッチを引き寄せ盾にした。
「!」
「っぶな……」
「……………」
ルッチは振り払うことなくフクロウを蹴り飛ばしてくれたが、そのアスカの行動に周りは唖然とする。
「"六式"遊戯!『手合わせ』…武器を持った一人の衛兵の強さを"10道力"としてお前たちは……まずカリファ630道力!ブルーノ820道力!カク2200道力!ルッチ……むむっ…!!4000道力!!!」
「4000だと!?オイ!真面目に測ったのか!?そんな道力聞いたことねェよ!!!」
「ホント―――だ――!みんな強くなったーチャパパ」
ジャブラは2180道力。
ルッチだけではなくカクにまで負け、ジャブラはカクを指差す。
「おう!いい気になってんじゃねェぞ!カク!!『手合わせ』はあくまで体技のレベルを測るわざだ!!」
「…………」
「おれは実践でも"悪魔の実"の能力が加わるんだ!!おめェにゃ負けんということを忘れんな!!!」
「好きに思え。わしはそんなものに興味はないわい」
「そうさ、野良犬の話に耳をかすな。」
迷惑そうに眉をひそめるカクを無視し絡むジャブラにルッチは鼻で笑う。
そんなルッチの態度に頭にきたのかジャブラはルッチを睨みつけた。
「何が野良犬だ!ルッチ〜〜〜…この化け猫がァ!!!」
「……………」
2人はどうやら犬猿の仲らしく、ルッチは豹に、ジャブラは狼になっていがみ合う。
「ちょっとおやめなさい!2人とも!!」
「やけにつっかかるのう、ジャブラの奴……ってどうした?」
「……………」
豹の姿を見たアスカはカクの後ろに隠れる。
そのアスカに気付いたルッチは元に戻りカクを睨む。
「なんでわしを睨むんじゃ!」
「っていうかこのガキ、なんなんだ?」
「ルッチが連れて来たのよ」
「はァ!?なんで連れてきたんだ!?」
「子供を産ませる為だ」
ルッチの言葉にその部屋は静まり返る。
「…ええええええええ!!!!?」
「なにいいいいいいい!!!???」
「――――――――――ッ!!??」
間を置いてカク達は叫ぶ。
アスカも信じられない言葉にカクの服を握り締め言葉にならない叫びを叫ぶ。
「おま…!…お前…化け猫!!!お前いくつだ!!!」
「28」
「あなたは?」
「17…」
「どう見ても犯罪だろうが!!!ロリコンか!お前ロリコンだったのか!!!!」
カリファの質問に素直に答えるアスカ。
ルッチはジャブラの言い草に眉間のシワを深める。
不機嫌丸出しだがジャブラが正論なので誰もフォローはしない。
しかしルッチは不敵な笑いを浮かべアスカに目をやる。
「豹と兎の子供がどんな子供か…見たくなってな」
再びその場は静まり返る。
今度はゆっくりカクにしがみ付いてルッチを睨むアスカに目線が集中する。
(……確かに…あの怯えっぷりは兎にみえなくはないが……兎はあんな気が強くねェだろ…逆に猫じゃねェの?)
「因みにコイツは悪魔の実の能力者で兎になる」
ジャブラの心の声を聞いたようなルッチの付け足しにジャブラ達は納得する。
その後くだらないジャブラとルッチの言い合いが長引き、部屋を出たのは一時間近かった。
「とてもこの世の果実には思えん…」
場所を移動し広間でスパンダムに渡された悪魔の実を前にカクとカリファは座っていた。
アスカは先ほどスパンダムにロビンを殴り貶された事もありムスーッと今まで以上の無表情な表情を浮かべ、ルッチの向かいに座らされていた。
相変わらず海楼石は外されないのだが自由は奪われていなかった。
「何か『引力』の様な不思議な力を感じるのう。図鑑にも載っておらん」
「それが普通らしいわ」
「得た能力で実の名前を知る事はできそうじゃが…どんな能力を得るかは"賭け"じゃな」
「賭けで変な能力がついたら最低の人生ね…その上カナヅチになるなんて…」
カクとカリファの言葉に酒を煽りながら機嫌よく笑う。
「どんな能力も使い方次第だ十中八九弱くはならん。カナヅチにも不自由はないしな。その"悪魔の実"たった一つ捜し求めて死んでいく船乗りはごまんといるんだぞ?食ってみろよ、面白い」
「カク!カリファ!!やめとけって!!いい事ねェぞ!!クソみたいな味するぞ!クソだぞ!」
何故か避難して遠くで慌てて止めようとするジャブラにカクとカリファは無視して悪魔の実を食べてしまった。
「うむ…面白そうじゃ」
「当たりなら大歓迎」
「うお――――!!食いやがったァ!畜生ォ――――!!!」
一口食べただけだったが、カクとカリファは顔色を悪くする。
どうやらまずいらしいが、同じ能力者であるアスカは食べた時の事はあまり覚えていないし思い出したくないため『そうなのか』という感想しかない。
「お…おい!何かやってみろ!!どんな能力がついたんだ!?」
「ハァ…ハァ…何も変わった気はしないけど……」
「直に変化の大きさに気付くさ…新しい"能力者"の誕生だな」
ルッチは立ち上がり笑う。
「楽しみだな…今のうちてめェの能力ぐらい把握しておけよ…長官殿の指令次第ですぐに実践で試せるかも知れん。ブルーノの奴は待ちきれず先に祭りに参加しているようだが……」
「おい!どこに行くんだ!?」
ルッチは座ってカリファ達を見ていたアスカに近づき横抱きに抱き上げる。
広間を出て行こうとするルッチにジャブラが声をかけ、ルッチは愉快そうな顔で振り返った。
「子作りだ。」
「なッ…!!!」
ルッチの言葉にアスカは唖然とし暴れているのをやめてルッチを凝視してしまう。
仲間が呆れている中ルッチはさっさと自室へ戻っていった。
「まさかあの化け猫がロリコンだったとはなー…」
「今まで女性に言い寄られても乗らなかったのはそのせいだったのかしら…」
「というかあの少女は海賊じゃろ…誰も止めんのか?」
「そりゃ無理チャパパ〜」
「よよい!!ルッチに物言える奴ァ誰もォあ!いねェ〜〜〜よォ〜!」
止める人間もおらずアスカはルッチに連れて行かれる。
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