(180 / 293) ラビットガール (180)

ガラガラ、と小さい瓦礫が落ちてきている中、狼がキリンを見て爆笑していた。


「"ウシウシの実"モデル"麒麟"!ぎゃ〜〜っはははは!!!お前も不憫な奴だ!!一生キリン人間とは!!!」

「キリンの何がおかしいんじゃ!わしは気に入っとると言うとろうが!!」

「……あのハトの野郎は"豹"だったな…他に2人も動物に化ける能力者がいたとは…『CP9』とはそういう集団なのか…!?」

「じゃぁあの女の人も動物系なのかな?」

「ん?ってアスカ!!?」


キリンを見て狼が大笑いし、ゾロはルッチも豹だったのを思い出しここは動物園かと突っ込んだ。
大笑いする狼をキリンが怒っている光景に気を取られていたのかアスカの呟きでゾロはアスカがいる事に気付く。
黒いカッターシャツ(しかも彼シャツ状態)のアスカが横にいる事に気付いたゾロはまだ捕まってどこかにいるものかと思っていたアスカが案外近くにいて驚き思わず一歩引いてしまう。
そのゾロの反応にアスカはキリンを見上げていた目を半目にし、むすっとさせる。


「…なに、その反応……悪かったわね、ロビンじゃなくて…」

「なんでそこでロビンが出てくんだ…というかお前捕まってたんじゃないのか?」

「捕まってたけど逃げた。」


アスカが逃げれたと聞きホッとする。
しかし同時に嫌そうに眉をひそめた。


「お前があの豹に連れてかれてからルフィと保護者が鬱陶しいんだよ…早く倒して無事を知らせて来い。」

「えー…なんかヤダ……」

「ヤダだろうが何だろうが八つ当たりはおれに来るんだ。」

「いいじゃん、別に」

「よかねーよ!!!!お前まさか…まだ副船長のこと根に持ってんじゃねェだろうな!!!言っておくがな!ありゃおれだけのせいじゃねェからな!!!」

「…………」

「ってヲイ!!」


まだ空島での副船長(仮)の事を根に持っているらしいアスカはゾロの言葉にツン、とそっぽを向いた。
無視されたゾロはそっぽを向くアスカにため息をつきキリンと狼を見上げ刀を抜いた。


「まぁ後であいつらに渡しゃいいか…」

「ゾロの鬼!」

「……おいキリン…いつまでそこで言い合ってんだ。おれには時間がねェと言ったハズだぞ!!そのままでいいんならそのまま斬らせてもらうぞ」

「愚かな…!!キリンの持つ底知れぬは威力を甘く見るな!"変型"!"人獣型"!!!」

「!!!」


カクはキリンから人獣型に変型したのだが…


「見せてやる…生まれ変わったわしのパワー」

「かっこ悪っ!!!」

「かわいい!!!」

「貴様…!今…!!……ってえ?」

「ぎゃ〜〜っはっはっはっはっひ〜〜い!!!………は?」


カクは人獣型に変形した…が、ただキリンが立っただけにしか見えず、ゾロは思わず本音を零す。
当然ながらゾロの発言にカクは怒り、ジャブラは大笑いするが、ゾロに続けられたアスカの言葉にカク・ジャブラ・ゾロの目線はアスカに集中する。
アスカは乙女が如く頬を染めて素晴らしい笑顔でカクを見上げており、アスカの目の輝きに暗殺業を営んでいるカクはその純粋さに真っすぐ見ることができなかったという。


「お、おい…アスカ…お前……本気か?あいつ可愛いか!?」

「え?何で?可愛いじゃん!かっこいいじゃん!どこぞの猫科より可愛くてかっこいいじゃん!!」

「…どこぞの猫科ってあいつだよな…」

「多分な……随分と嫌われておるようじゃの…」

「正気かお前!!あんなののどこが可愛いんだ!どこがかっこいんだ!!!?目を覚ませ!!とりあえずあいつら(ナミとサンジ)が来る前に目を覚ませ!!」

「随分な言われようじゃの…怒る気にもならんわ……」

「私強姦されるなら豹じゃなくてキリンがいい!!!」

「ご…!?獣姦はやめろ!!!それは人としてダメだぞお前!!!!」

「…こんな形の告白初めてじゃ」

「おれもだ」


猫科、と言えば二人が思い浮かべるのは歴代最強と言われているあの豹の姿。
元々ジャブラはあの豹が気に入らなかったため嫁(仮)に毛嫌いされようが笑えるネタだからいいのだが、流石に今は笑えなかった。
アスカが力説しゾロが必死に説得していると、ガチャン、と不吉な音が二人の耳に届く。
なんとなくその音へと目をやれば…ゾロの両手に手錠が何故かはめられていた。


「…!?なんだこの手錠は…」

「うわ…手錠……しかも両手ってうわぁー…」

「何だその目は!!!言っておくがな!おれにその趣味はねェ!!!」

「ぎゃーーー!しまった!すまないゾロ君!!」


手錠に対して嫌な思い出がまだ新しいアスカは汚いものを見るような絶対零度の目線をゾロに向ける。
ジャラジャラと手錠を鳴らして否定しているといつの間にか後ろに避難していたそげキングが声を上げる。


「そいつは多分例の"海楼石"の手錠なんだ!!!敵は2人とも能力者だから手錠をハメてやると弱まると思って…!!」

「それを何でおれにハメてんだバカ野郎!!!」

「だ、だってよ!!…キリンの顔が可笑しくって…つい手元が狂って…」


そげキングの言葉にカクは頭に来て体を震わせる。
大笑いした狼といいウソップといい、アスカとしては『何がそんなに面白んだろうか』と首をかしげてしまう。
アスカの目には草食動物はなんでも可愛く見えるらしい。


「おのれ…どいつもこいつも…!!!」


笑われ続け、ついには堪忍袋の緒が切れたらしいカクは長い首を振り回し勢いをつけ"嵐脚"を放つ。


「伏せろ!!アスカ!ウソップ」

「うおお!!」

「!!」


ゾロに押し倒される形でカクの攻撃を避けることが出来たが、勢いが強すぎて突風が巻き上げ吹き飛ばされてしまう。
ゾロとアスカは受身を取り、体勢を崩すことはないがやはりそげキングは転んでいた。


「……成る程…"長さ"か…遠心力にあの巨体からのパワーも手伝って斬れ味がより深く鋭くなってやがる」

「…な、なんだァ!?おい…何も壊れてねェじゃねェか…」

「ん。」

「?」


起き上がったそげキングが周りを見渡しても何も壊れて折らず首をかしげていると、アスカが上を指さし、そげキングは上を見上げる。


「あれ?あんなところから空が見える………うおお!!まさか!!!この司法の塔が斬れてズレてんのか!!?オイオイオイオイ!危ねェよっ!!」

「まぁ、確かに斬れ味いいよね。」

「ああ。…だがそんなもん何の脅しにもなりゃしねェ……」


ゾロは立ち上がり交戦しようと思った。
が、またガチャ、という音が聞こえ、手元を見れば…今度はそげキングとアスカの手に手錠がかけられ3人仲良く繋がってしまっていた。


「…え゙」

「何やってんだてめェはァア!!!」

「おれのせいじゃないでしょーがァ!!!!」


アスカは手錠再来に目が点となる。
ルッチに捕まっていた時は急遽だったからか度数の低いものを使用していたようで、アスカは力が抜けて体が一気に重くなるのを感じた。


「おめェーがおれに突進してきたからこうなったんだろ!!」

「そりゃさっきの攻撃でお前がボーっと突っ立ってやがるから…!!」

「そんな言い合いはいいからこの手錠外してっ…私…もう……だめ…っ」

「「アスカ!!?」」


立て続けに海楼石の手錠をかけられアスカは座り込む。
ぐったりとさせるアスカにウソップたちは慌てふためいた。


「おい!アスカ!!どうした!?そんなに強いのか!?この海楼石の手錠は…!!」

「その手錠は能力を奪うだけでそう度は強くねェよ。だがあの化け猫のことだから随分好き勝手体を弄られてたんじゃねェか?そのせいで少しの海楼石でも体力がなくなってんじゃねェーの?」

「体を弄られてただと…?」


ジャブラの聞き捨てならない言葉にゾロはジャブラを鋭い目で見やる。
カクは黙ったままだったがジャブラは口端を上げた。


「あいつがこのガキをどうしてお前達から連れ去ったか知ってるか?」

「…さぁな……まぁ、お前の言い方だと大体は予想はつくが…」

「子供を産ませるためだとよ!」

「は!?」

「あ?」


ゾロもまだ10代とはいえ男なため、ジャブラの言葉で何となく予想はしていた。
しかし、予想以上の答えにゾロもウソップも驚愕する。
アスカはまだ辛いのか俯いてぐったりとしていた。


「こ、こ、こ、子供だァ!!!?アスカはまだ17だぞ!!!」

「そりゃおれらもびっくりしたが豹と兎の子供が見てみたいと言ってたぞ、あの化け猫。」

「……………」


ウソップの言葉にジャブラは肩をすくめ、ゾロは理由のくだらなさに眉を潜める。


「ウソップ…」

「あぁ、分かってる!!こいつら…というかあのハトの野郎許せねェ!!絶対アスカをあいつらに渡さねェぞ!!!」

「それもだが…ナミとコックとルフィには言うなよ」

「あぁ!……って何でだよ!」

「考えてみろ。あの3人がそれを知ったらどうなる?」

「……………………じ、地獄絵図しか浮かんでこねェ…!!!」

「だろ?…だから言うな。墓の中まで隠しておこう。おれはもうあいつらのアスカ関連での八つ当たりはごめんだ。」


ここに来るときですらアスカがいないだけでルフィの機嫌は降下していき、過保護どももうるさかった。
その為か、よっぽどひどい目にあったのかゾロは顔を青くさせウソップと繋がってる方の手で顔を覆う。
そんなゾロを見てウソップはゾロより顔を青くし必死に頷く。


「っていうか…鍵……」

「おお、そうだったな…おいお前達!手錠の番号を言え!!」

「番号!?」


普通の女の子ならそこで屈辱的な感じに悔しがったり、仲間に知られたくなかったと涙を浮かべるだろうが…生憎そんな清き乙女など奴隷になってから捨てた。
奴隷時代の時から体を散々弄られてきたし今までだって能力故に裸をさらけ出してきたのだ。
今さらそれに恥じる心など一切持ち合わせていない。
全く鍵の事を忘れ去られている男連中に苦しげに思い出させる。
アスカの呟きにジャブラが思い出し、ゾロ達に番号を見るように言う。


「おれは2番だ!」

「おれらは…あー………4だ」

「…………」


ぐったりとするアスカの代わりにゾロが番号を見る。
2人の番号を聞き、ジャブラとカクはお互い持っている鍵を見るが…


「ハズレだ」

「わしもじゃ…残念。」

「なんだよ!期待持たせやがって!!」

「じゃぁ他の3人の『CP9』の鍵だってことか!!チクショーー!!」

「…………」

「仕方ねェ…先に殺したもん勝ちだ!!!」


どうやらハズレだったようである。
ジャブラとカクは手錠で繋がれている3人を2人で襲い掛かる。
ゾロは咄嗟に動けないアスカを担ぎウソップと共に逃げて狼とキリンに追い掛け回されてしまう。



「えっ!ゾロ!!そげキング!!!それにアスカも!!無事だったんだ!!!」



その時、チョッパーが追いかけられている2人に驚き、連れ去られたアスカがゾロに担がれているのを見て喜んでいた。


「「あ!!チョッパーーーーー!!!」」

「何だ!?楽しそう!!おーーい!!」


海楼石のおかげで動くのも億劫なアスカは目だけでチョッパーを捉える。
チョッパーはなんだか3人が楽しそうに見え、両手を振る。


「アホォ!!手錠に注目しやがれ!!」

「『2番』と『4番』の手錠を探してくれーーーーっ!!!」

「……………」

「わかったっ!!」


チョッパーに全部説明して鍵を探しに行ってもらう。
その間になんとか戦う方法を思いつこうと思うがジャブラ達はしつこく追いかけてきてそれどこではない。


「2番と4番の鍵はまだか!!!」

「ゾロ君!もうダメだ!!疲れた!!おんぶしたまえ!!」

「知るかァ!!!」


攻撃されながら必死に逃げると後ろの2人が揉め始める。
その事で考える余裕ができ、ゾロがある提案を述べた。


「ジャンケンするぞ!そげキング!アスカ!この手錠をはずす方法があるっ!!」

「え!」

どっちかの手首を切り落とす

「なに真顔でコエーこと言ってんだよ!!」

「まだ話の先を聞け!」

「なんか…嫌な予感が…するんだけど……」

「そうやって手錠を抜け出た方は落ちた手首を持って急いでチョッパーの所へ行き手を元通り縫い繋いでもらう!」

「ぬいぐるみかっ!!アホ言ってんじゃねェよ!!!」


ゾロの無茶苦茶な提案にウソップが声をあげ、アスカが呆れたように溜息をつき『駄目だこいつ…』と片手で顔を覆う。


「…………もう1つアイディアがあるん…」

「もう聞きたくねェーーーっ!!!!」


しかし嫌がるウソップを無視しゾロは話だす。


「断る!絶対断る!!」

「よし、やるか!」

「人の話を聞けーーーーーーっ!!!」

「……………」


無抵抗をいい事にゾロはアスカとウソップを巻き添えする。


「!!あれは…!」


喧嘩していたカクとジャブラがゾロ達に気付き目を丸くする。


「いいかそげキング!姿勢を崩すな!!お前は"刀"だ!アスカは絶対手を離すなよ!」

「………無茶言わないで…」

「弁護士を呼んでくれ!!私はいつか必ず君を訴えてやる!!!チョッパ〜〜〜!!!急いでくれ〜〜〜〜っ!!!」


カクとジャブラの目の前には腰の布を掴まれ、ゾロの刀を握ってる"刀"となったそげキングと、アスカがゾロの腕に手と足でしがみ付いてそげキングのマントで固定されていた。
かっこ悪いが力が入らないアスカにはこうするしか思いつかなかったらしい。

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