(187 / 293) ラビットガール (187)

事件から2日後。
麦わら一味はあれからウォーターセブンに帰り、二日間ずっと熟睡し、アスカ達はようやく目を覚ます。
造船島、1番ドックには新聞記者や町の人達がルフィ達に謝りたいと押しかけるも追い返されてしまう。


「んががが!!入るよ!おめェーら!!」

「入るよー!」

「にゃー!」

「ゲロゲロォ!!」


その中でも、ココロ達がルフィに会いに来てくれた。
大きな体で無理矢理入ろうとするヨコヅナを外で待たせ、ココロは中に入る。
円状のテーブルに項垂れるナミとその傍に置かれているテーブルにつき優雅にサンジに入れてもらった紅茶を飲んでいるアスカ、そして料理を運んでいるサンジとそれをアスカと同じテーブルで我武者羅に食すルフィだけだった。


「全員やっと目覚めた様らね。2日間寝通しでよっぽど疲れたんらね…当然らが……おや、海賊王も元気なもんらね!」

「あぁ…アレ違うの。」

「違うって何らい?」


紅茶を飲んでいたアスカがココロの言葉に顔を上げて否定するように手を振る。
そのアスカの言う意味が分からずココロは首を傾げ、そんなココロにサンジが答えてくれた。


「戦いの後ぶっ倒れてメシを食い損ねるのがいやなんで、寝たまま食う技を身につけたらしい…」

「寝てんのかい!ありゃ!!器用な男らね…」


サンジの言葉にココロがルフィを見れば、ルフィは鼻ちょうちんを出しながら眠り、そのままサンジが運ぶ料理を口に運んでいるのが見えギョッとする。
そうしている間もサンジの運ぶ料理を眠りながら食べるルフィを見て心は呆れてしまった。
気を取り直し、ココロはログポースはあと二三日で溜まると教えてくれたのだが…アスカ達とは離れた机で項垂れているナミはそれどころではなかった。
あの騒動で宿に置いてきたベルメールのみかんの木や服、家具など全て『アクア・ラグナ』に持っていかれたため元気がなかったらしい。
それを聞いてココロは外にいるらしい宿の人間らしき人物を連れてきた。
宿の人はおずおずと出てきて何を言うかと思えば…ナミの失ったと思っていたベルメールのみかんの木や家具や服…宿に預けてきた荷物全て持ってきてくれたのだ。
しかも一億ベリーもちゃんと持ってきてくれていた。
宿の人曰く、事件の犯人の持ち物だから押収していたという。
謝られたナミだが、むしろ感謝しており、アスカは嬉しそうにみかんの木に抱き着くナミを見て笑みを浮かべる。


「今帰ったぞーー!!」


ナミが木に抱きついて喜ぶ姿をアスカも微笑みながら見ていたら、ロビンとチョッパーが帰ってきた。
チョッパーはサンジに向かって敬礼する。


「フランキー一家のケガ看て来た!あとロビンから目を離さなかったぞ!!」

「よし!ごくろう!チョッパー!!!」

「ふふっ、もうどこにも行かないったら」


敬礼をして報告するチョッパーとそれを同じく敬礼して聞くサンジにロビンは笑う。
アスカもそれを見ているとロビンと目と目が合い、お互い笑みを浮かべた。
ナミも嬉しさのあまりチョッパーとロビンに全て戻ってきたと報告し、その報告にチョッパーも嬉しそうにしたその時…フランキーがキウイとモズを連れ、やはり変なポーズで入ってくる。


「アウッ!!スーパーか!?おめェら!!」


フランキーも怪我をしていたはずだが、やはり変態はタフなのかピンピンしていた。
フランキーが来ると一気に騒がしくなり、アスカは何故か座り込んだフランキーを見ながら一口紅茶を飲む。


「――ある戦争をくり返す島に……」

「なんだ突然!つまらねェ話なら聞かねェぞ!!」

「うるせー!黙って聞け!!」


座り込んだと思ったら話し出すフランキーにサンジはすフランキーを止めようとするもフランキーが余りにも聞かせたがっていたので口をつぐんだ。


「たとえ島に住む人間が砲弾のふり注ぐ戦争を始めようが島中の人間が死に町が死に廃墟と化そうが…ものともせず立ち続ける巨大な"樹"。何が起きても倒れねぇェ…人はまたその樹に寄りそい町を…国を作る…世界にたった数本…その最強の樹の名は宝樹"アダム"……」

「木が…何だ?」

「その樹の一部がごくまれに裏のルートで売りに出される事がある…おれァそいつが欲しいんだが2億もするって代物…手が出せずにいた…――と、そこへ現れたのが大金をかかえた海賊達……お前らだ」

「てんめェ!!!おれ達の金でそんなもん買いやがったんじゃねェだろうな!!!?」

「まだ聞け!!話を!!!―――おれは昔…もう二度と船は造らねぇと決めた事がある…だがやはり目標とする人に追いつきたくて気がつきゃ船の図面を引いてた……」


フランキーは実はアイスバーグとは兄弟弟子の仲らしく、色々あってフランキーはもう船を造らないと決め、解体屋になったという。
全てを告白し、フランキーは突然頭を下げる。


「おれの夢は!!その『宝樹』でもう一度だけ!!どんな海でも乗り越えていく"夢の船"を造り上げる事なんだ!!!『宝樹』は手に入れた!!図面ももうある!これからその船を造る!!だから完成したらお前らおれの造ったその船に乗ってってくれねェか!!」


頭を突然下げたフランキーにも驚いたが、その続けられた言葉もまた驚いてしまう。
フランキーの言葉に眠っているルフィと、どこかにいるであろうゾロ以外の一味が目を丸くする。


「え?え?」

「じゃ…お前…その船おれ達にくれるのか!?」

「そうだ!おれの気に入った奴らに乗って貰えるんならこんな幸せな事はねェ!元金はおめェらから貰った様なもんだしな!」


顔をあげ、フランキーは笑う。
船の問題はルフィが起きてからと考えていたナミ達は驚きながらも心を躍らせた。
『宝樹』というすごい木を使って作ってくれるというフランキーの言葉にみんな嬉しそうな笑みを浮かべる。
みんな大喜びしている中でもルフィだけは寝ながら食っていた。


「この海で唯一世界一周を果たしたゴールド・ロジャーの『オーロジャクソン号』もその樹を使って造られた…すげぇ船にしてみせる!!」

「しょうがらいね…トムさんもお前も結局同じ職人なんらね…んがががが!」


ココロの言葉にフランキーは目を瞑りゆっくりと頷く。


「そうだな…今なら……胸はって死んでったトムさんの気持ちがわかる」


フランキーは船も手に入れ次の島にも行けると大喜びしているナミ達を見てしみじみ思った。
アスカも船を入手できた事にホッと胸を撫で下ろし、少し冷めてしまった紅茶を口に含む。
紅茶が冷めても嬉しさからか、それともサンジの入れ方が上手いのか…味は損なわれていなかった。
コクリとまた紅茶を飲んでいると…突然、建物の壁が破壊され襲撃されてしまう。


「何だ!?」

「誰だァ!?」

「お前らか…麦わらの一味とは…モンキー・D・ルフィに会わせたい男達がおるんじゃが……」


敵、と言えばCP9を思い浮かべたが、今どうなっているか分からないが彼らは倒したはずだと思いながらも警戒し、砂埃に映る影を睨む。
砂埃の中から現れたのは犬の帽子をかぶり―――将校しか着る事が許されていない『正義』の文字を刻むコートを羽織っている男が現れた。

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