静まり返っていたのはナミ達が驚いていたからだった。
赤髪のシャンクスと言えば海賊や海兵なら誰でも知っている大海賊の一人である。
その海賊の娘がアスカだったという情報に驚かずして何に驚くのだろうか。
ウソップと出会ったとき、ウソップの出身の村、シロップ村でそんな話をしていたが、当時はまさかアスカの父親がシャンクスで尚且つ四皇だったとは思っていなかったようだ。
それはアスカも同じではあるが…当の本人であるアスカよりもその仲間たちが驚いていた。
「シ、シャンクスって…あのシャンクス!!?」
「うん。あのシャンクス」
「あんたのお父さん四皇だったの!!?」
「そうみたい…私も知らなかったんだけど」
「知らなかったって……父親のことでしょう?」
あのシャンクス、と言われてもどのシャンクスなのかは分からないがとりあえずシャンクスはシャンクスで自分の父親なので頷いてみた。
そこは幼馴染と似ており、正直アスカも人の事は言えないのだが…全く気付いていない。
首をかしげるアスカにナミもまた同じ方向へくびを傾げた。
「うーん…なんていうか……パパ、自分の冒険の話はしてくれるけどそういうの一切自慢しない人だから…それに多分当時は四皇じゃなかったんじゃないかなァ…パパと別れて結構経つから」
「結構って…会ってないの?」
「うん…私が6歳の時に海に出たっきり会ってないよ」
そうナミ達に説明しつつ、アスカは心の中で『と、なると11年会っていないことになるのか』と思う。
ナミ達も同じことを思っているのか、父親と11年も別れて暮らしているというのはやはり寂しいのではないかとナミもサンジも過保護故に思い心配そうにアスカを見つめていた。
だがアスカはそこまで気にしていなかった。
最初こそ寂しくて普段よりもルフィにくっついて行動していたが…案外慣れるものだと知る。
恐らくそれはルフィやミコトがいたから…そしてエースやサボ、ダダン達山賊もいたから乗り越えられた寂しさだろう。
それに正直平気だと言っていても、やはり父親がいない寂しさは17歳になった今でもある。
たまに無性に父親に会いたいなと思う事だってあるのだ。
そう思ってしまったら最後、寂しい気持ちになたのかしょんぼりとさせるアスカにガープは頭を撫でた。
その手にアスカは驚いたようにガープを見たが、血筋だから当たり前だがルフィと似ているガープの笑みにアスカは釣られたように笑う。
ナミ達は四皇が父親だと知り、アスカの肝が据わりっぶり納得していた。
ルフィの生命力、そしてアスカの肝の据わりっぶりに納得していると、突然外が騒がしくなる。
「ん?何事じゃい!!」
「賞金首の"海賊狩りのゾロ"ですね」
振り返れば部下たちが何やら誰かと応戦中で、己の副官であるボガードが報告しに歩み寄ってきた。
孫の仲間の一人がこちらに向かってきていると聞き面白そうだと笑う。
「ほう…ルフィの仲間じゃな。威勢がいいのう……どれ、お前ら…止めてみい…!!!」
「「はいっ!!」」
孫の海賊団だから一応賞金首になっているクルーには目を通している。
あの海賊狩りが孫の海賊団にいることに驚いた記憶もまだ新しく、ガープはボガードの後ろに控えていた海兵二人にゾロを止めるようにと命令をし、その二人は返事をした後ゾロに向かっていく。
「おじいちゃん!」
「大丈夫じゃよ!2人は―――」
「え…」
ガープの言葉を聞きアスカは止めようとした。
しかし続けられたガープの言葉に目を丸くする。
そうこうしているうちにガープの部下たちはあっという間に抜かされてしまい、その二人がゾロを止めたのだ。
この場にいなかったゾロは海軍が攻めてきたと思っているのか、ククリ刀を使う男に刀を抜く。
祖父の部下だと知らないゾロにルフィが止めようと駆け付けた時…もう一人に止められたのだ。
二人はそれぞれ襲ってくる海兵を相手にするのだが…しかし結果としては祖父の部下二人が負けてしまい、孫とその仲間に全く敵わない部下二人にガープは笑い声をあげる。
「ぶわっはっはっは!!全く敵わんな!!」
「そうみたい。」
当たり前だけど、と呟きながらアスカは外に出る。
ルフィに押し倒されている男が肩で息をしつつルフィに声をかける。
「やっぱ強いや…流石だ!!参りました…―――ルフィさん、ゾロさん、アスカさん!お久しぶりです!ぼくがわかりますか?」
「?誰だ?」
「ぼくです!!!コビーです!!!覚えていませんか!?」
起き上がる男の顔を見ると以前短い間だったが一緒に航海していたコビーの面影がどことなく残っていた。
アスカは祖父から聞いていたため聞かれて『変わったけど面影があるな』と思い、ルフィはコビーと名乗られても全く分からず首を傾げる。
「コビぃ〜〜??コビーは友達だけど…もっとチビのコビーしか知らねェぞ、おれは…」
「そのコビーです!!泣き虫でダメだったコビーです!!」
「え〜〜!?ホントか〜〜〜!!!?おい!アスカ!アスカ〜〜っ!!コビーだってよ!!!アスカ!!!」
「何度も呼ばなくても分かってるって…久しぶりだね、コビー。」
「はい!アスカさんも相変わらず冷静沈着でいらっしゃいますね!!!」
あのフーシャ村から出て初めて出会ったコビーとの再会にルフィは驚いた。
コビーを見たまま振り返らずアスカに手招きをしてアスカの名前を連呼するルフィにアスカは呆れたような声を零した。
それでも歩み寄ってくるアスカにルフィは振り返り、コビーを指さし『コビーだってよ!!』と同じ事を言う。
その言葉に『はいはい』と同じ返事をし、アスカはコビーを見た。
遠目で見るのと近くで見るのとはやはり印象が違っているが、やはりなんとなく面影があった。
あれから鍛えられてきたのか体つきも全然違い、背も伸びたらしく最初はアスカより低かったのに今じゃアスカを超えていた。
「まだまだ将校にはなれてないけど…!!近くにあなた達がいると聞いていても立ってもいられなくて!!今の僕らがあるのはあなた達のお陰ですから!」
「フン、まァ百歩譲ってな。」
3人に敬礼するコビーに続く声でアスカは初めてコビーの隣にいる男へ目をやる。
そのふてぶてしい態度にアスカは相変わらずな態度だ、と肩をすくめた。
そんなアスカを余所にコビーは話を進める。
「色々あって今僕達本部でガープ中将に鍛えてもらっているんです!」
「そうなのか!!しかしお前成長期にも程があるぞ!おどろいたー!お前ぜい肉たるたるだったもんなー!!」
「ねェ、お姉さまとは会った?」
「お姉さま……あぁ!ミコトさんですか?ミコトさんにはよく目をかけてもらっています!アスカさんの言う通りとても素晴らしい方ですね!!」
「でしょー!!あ、でも…お姉さまは誰にも優しいからそこんとこは勘違いしないでよ!?」
「は、はい…アハハ……」
その贅肉ダルダルがガープのもとで鍛えられ筋肉へと変わった姿がこれである。
本当、人は変われるものなんだなァ、とコビーと隣にいる男を見てしみじみ思った。
ふと海軍、という単語から幼馴染の姉であるミコトを思い出す。
ミコトは海軍の大将の地位にいる。
その為本来ならまだ将校にもなれていないコビー達が会える存在ではないのだが、コビー達の上司がガープでありその孫がミコトだということもあって、他の海兵よりも会える確実が高い。
そのためかガープ中将の部下になりたがる海兵が多いのだ。
海軍の中で、高嶺の花であるミコトと会い、そしてあわよくば仲良くなり将来的に結ばれたいという下心満載の輩が多いのだ。
そこでミコトの部下になればいいと思うものもいるだろう。
しかし、残念ながらミコトの部下は基本女性の海兵のみが選ばれるため男連中はそれは諦めているのだ。
そんなラッキーな運の持ち主のコビーは相変わらずのミコト信者ぶりにコビーは乾いた笑いを浮かべていた。
「事件の後なのにすみません」
「いいよ!久しぶりだ!宴にしよう!!」
「ちょっと待てお前らーー!!おれに気付いてねェーんだろ!!!」
再会したのだからお互い話すこともあるだろう、という事でルフィとゾロとアスカはコビーを建物の中に案内しようとする。
しかし、コビーだけを案内する三人に待ったをかけた男がいた。
その男にルフィ達は振り返りアスカ以外が首を傾げる。
「誰だ?」
「おれだーーーっ!!お・れ・だーーーっ!!」
「知らねェよ。誰だ?」
「答えは…ヘルメッポだ!!モーガン大佐の息子!ヘルメッポだァー!!」
「「?」」
ゾロと一戦交えた男…それはヘルメッポだった。
ヘルメッポはコビーと別れた島で父親のモーガンの地位を利用して好き勝手していた人物で、アスカが最後に見た時はまさにバカ息子だったのに何がどうなってそうなったのか…コビーと同じ海兵となって一緒に鍛えてもらっていたようである。
名前を聞いてもサングラスを取っても首をかしげる二人を見てアスカは『まあ…そうだろうけど…ゾロ…あんたは覚えておきなさいよね…』と思った。
「お前を磔にして死刑寸前まで追いやった男だよ!ロロノア・ゾロ!!ひぇっひぇっひぇ!!」
「「?」」
「おいおいいい加減にしろよ!!」
「ほら、七光りのバカ息子。」
「「あ…お前か」」
「ぅおーーい!!!」
全然分かっていない2人にアスカが付け足すと、やっと理解したがヘルメッポは何故か自分の顔ではなくアスカの言葉に理解した2人に声を上げた。
「こいつらやっぱりおれァ許せねェ!!コビー!!」
「仕方ないよヘルメッポさん。過去も受け入れなきゃ」
涙を流すヘルメッポにコビーは結構厳しい言葉を送った。
意外と仲がいいようで、アスカは意外だなと二人を見る。
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