(193 / 293) ラビットガール (193)

その日の夜…サンジの言葉にみんな目を丸くした。


「え!?ウソップは戻って来る!?」

「ああ、海岸で1人予行練習してたよ」

「ホントかーーーっ!?」


今日、買い出しに出かけていたサンジは昼頃、町の海岸で見た事をみんなに伝えた。
ウソップは海岸で戻ってくるセリフの練習をしていたようで、それを聞きウソップが戻ってきてくれるつもりなのを知って迎えに行こうとしたルフィ、ナミ、チョッパーをゾロが止めた。


「待てお前ら!誰1人こっちから迎えに行く事はおれが許さん!!」

「えー!?何で!?」

「間違ってもお前が下手に出るんじゃねェルフィ!おれァあいつが頭を下げて来るまで認めねェぞ!!」

「ゾローー!!!」

「ちょっと!なんであんたがそんな…」

「黙れ!!」


ゾロの冷たい言葉に怒りを覚えるチョッパーとナミに、ゾロは声を上げて黙らせる。
怒鳴られた二人はビクリとさせ口を閉じた。


「ルフィとウソップの初めの口論にどんな想いがあろうがどっちが正しかろうが……!!男が"決闘"を決意した以上、その勝敗は戦いに委ねられた!…そしてあいつは負けて勝手に出てったんだ!」

「……………」


ゾロの言葉は正しい。
しかし、やはりナミやチョッパーはゾロのように割り切れるほど大人になりきれていない。
それでも正しいが故に口もはさめず黙りこくってしまう。
そんなナミ達にゾロはコンコンとルフィの頭を軽く叩く。


「いいか、お前ら。こんなバカでも肩書きは"船長"だ…いざって時にコイツを立てられねェ様な奴は一味にゃいねェ方がいい…!!船長が"威厳"を失った一味は必ず崩壊する!!普段おちゃらけてんのは勝手だが仮にもこのおれの上に立つ男がダラしねェマネしやがったら今度はおれがこの一味を抜けてやるぞ!!」

「!!」

「え〜〜〜〜!!?それじゃ話がまとまらないじゃないっ!!」

「あのアホが帰って来る気になってんのは結構な事じゃねェか…―――だが今回の一件になんのケジメもつけずうやむやにしようってんならそれはおれが絶対に許さん!!!その時はウソップをこの島に置いていく!!」


恐らく、ゾロも辛いとは思う。
ゾロも何だかんだ言ってウソップと仲が良かったし、仲間想いなところもある。
だから平然を装っていても多少の辛さはあるのだろう。
それはアスカの身勝手な想いからかもしれないが。


「待ってよゾロ!確かにあいつも悪いとこあったけど…それは帰ってきてから言いたいだけ言えば…」

「一味を抜けるってのはそんなに簡単な事なのか!!!?」


ナミの言葉をさえぎりゾロは刀を床に突き刺す。
それにナミはビクリと体を揺らせた。


「…いいえ…でも…!!」

「ナミさん…残念ながら今回ばかりはコイツの言う事は正しい……!」


それでもナミは引くことなく反論しようとしていたが、今度はサンジまでもがゾロの考えに賛同してしまう。
俯くナミにゾロは構わず続ける。


「こんな事を気まぐれでやる様な男をおれ達がこの先信頼できるハズがねェ……!!」

「……でも…」


一味の中で、ルフィ以外ではチョッパー、ナミがウソップと仲が良かった。
だからゾロの言葉が正しいと分かっていてもどうしても受け入れがたいのだろう。
二人も敵に回ってしまい、ナミはチラリとアスカへ目を移す。
アスカならゾロを説得できると思ったのだろう。
副船長の言葉ならばと思ったナミだったが…


「私もゾロに賛成。」

「そんな…」

「簡単な話だ…ウソップの第一声が深い謝罪であればよし…それ以外ならもう奴に帰る場所はない……おれ達がやってんのはガキの海賊ごっこじゃねェんだぞ!!!」


アスカさえもゾロの味方に付いてしまった。
唯一の希望が失われナミはガクリと肩を落とす。
ゾロの言葉に思う事があるルフィだったが、ゾロの言葉に頷く。


「……そうだな!一度は完全に別れたんだ。船の完成と出航までまだ何日もある!黙ってあいつを待とう!」


船長であるルフィにそう言われてしまっては流石のナミも何も言えず、その場はウソップを待つことになった。







その日はみんな会話が少なかった。
当たり前と言えば当たり前だが…アスカは少し居心地悪いな、とは思う。


「アスカ−、次、入りなさい」

「うん」


順番にお風呂に入り、ナミの次はアスカの番だった。
順番は決まっていないのだが、普段一緒に生活していると自然と順番が出来てしまう。
ナミが出たのを見てアスカはパジャマやタオルを持ってお風呂場へ向かおうとする。
しかし…アスカは床に座り込みチョッパーと話しているルフィの前に立ち止まった。


「ん?どうした?アスカ?」


自分の前に立ち止まったアスカにルフィは首を傾げ見上げる。
アスカはそんなルフィをよそに顔を近づけスンスンと鼻を鳴らす。
匂いを嗅がれているルフィは嫌な予感をよぎらせ…というよりかは過去にも経験ありすぎなためこの後何をされるのか分かっておりアスカから逃げるように腰を浮かせた。
しかし…


「ルフィ、あんたまたお風呂入ってないんでしょ」

「は…入った!入ったぞ!!」

「海水やプールはカウントされません」

「ゔ……い、いいじゃねェか!風呂入んなくても死にゃしねェだろ!!」

「でも匂うでしょ?いいから入るよ」


正確に言えばまだ匂っていない。
アスカが感じた匂いはわずかで、動物系の能力者だからである。
それでも数日は入っていないであろう幼馴染にアスカはいつものように一緒にお風呂に入れようとしていた。
それを察したルフィが逃げようとするが、逃げようとするルフィをアスカはガシリと腕を掴んで捕まえる。
ルフィはやはりアスカに逆らえないのか腕を掴んだまま引っ張るアスカに抵抗らしい抵抗せず、そのままアスカとルフィは共にお風呂場へ消える。
往生際が悪くギャーギャー叫ぶルフィの声だけがお風呂場から響く。
ウソップの時とは違う微妙な空気が流れたその時、お風呂場の扉が開き、その中からアスカが出てきた。


「クローディア!リリネット!!ルフィをちゃんと拘束しておきなさい!!」

「「ゴフ!!」」


開けられた中には長身ウサギが二羽掛かりで拘束されているルフィが見えた。
さっきから『放せ!クロ!リリ!!』と言っているが二羽は全くいう事聞かず、主が戻ってくるのを待つ。


「放せって!!まだ入らねェでもいいんだってば!!おい!クロ!!リリ!!聞いてんのか!!」


ぎゃーぎゃー騒ぐルフィをよそにアスカはルフィの着替えを手に戻り、お風呂場の扉を閉め、カギをかける。
するとびょこんと長身ウサギが扉の前に床から生えるように現れ、ドスンと扉を背もたれに座る。
恐らくルフィの逃亡防止策だろう。
まだ扉の奥から『ギャ〜〜!!やめろォ〜〜!!脱がすな〜〜!!』と喚いているので、今、ルフィは幼馴染の女の子に無情にも服を脱がされ裸をさらしているのだろう。
暫くして喚く声も消えたので、諦めたと思われる。


「…き、きっと…あれはスキンシップね…」

「そっ…!そうか!!そうだな!!あれはスキンシップだ!!幼馴染の!!幼馴染だからこそのスキンシップ!!ナミさんあったまい〜」


保護者組としては認めたくはないのだろう…―――アスカとルフィが裸と裸のお付き合いだということに。
アスカが風邪をひいたときに慣れたとはいえ…やはり彼らの距離感が近すぎなのは常日頃から引っかかっていたのだ。
それをなんとか気のせいだと誤魔化してきたらしい。
本人達から『付き合っている』と聞かないまでは認めない…というか、『付き合ってます』と報告あっても恐らく二人は認めず阻止するだろう。
ロビンはあたふたとする保護者を見つめながら『必死ね』と心の中で呟く。


―――一方、アスカとルフィ。


バシャッ、と水が跳ねる大きな音が風呂場に響く。
ルフィは上から襲い掛かってくるお湯に目をぎゅっとつぶった。


「まずは頭から」


アスカはルフィの頭を湯船から掬ったお湯で濡らし、十分に濡れたのを見て備え付けのシャンプーを手のひらに取る。
わしゃわしゃと濡れたルフィの髪の毛を泡立てる。
ルフィは慣れたように大人しくアスカのやりたいようにさせ昔の癖か目を瞑る。


「ルフィ、見て」

「ん〜?」

「ねこ」

「遊ぶなよ〜早くしてくれよ〜」

「ん〜……あっ!できた!うさぎ!!」

ヲイ


ナミとサンジが現実逃避をしている時、アスカはルフィの髪で遊んでいた。

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