(197 / 293) ラビットガール (197)

ガープはボガードのフォローも空しく、センゴクに本当のことを言ってしまい怒られ渋々孫と孫の幼馴染を追う事になった。


「ガープ中将!僕ら爽やかに別れた手前凄く恥ずかしいんですが…!」

「文句ならセンゴクに言え!!あいつに怒られて引き返すはめになったんじゃからな!……偉そうに!!」


あんなにもいい別れ方をしたのに出戻りな感じが恥ずかしく感じる。
それを言えばガープも渋々追いかけなければならないというのもありむっとさせながら責任をセンゴクに押し付けた。


「電伝虫で『孫だから』ってアンタ言うからでしょうが」

「やかましいわ!黙っとれ!"青二才"が!!!」


青二才こと、青雉の言葉に噛みつくガープ。
そんなガープに青雉は『へいへい』と返しながらアイマスクで目を覆いビーチチェアで眠る体勢に入った。
目を隠しているため本当に寝ているのか狸寝入りなのか分からない青雉に一人の海兵が恐る恐る声をかける。


「大将こそここにおられてよろしいんで…?」

「チャリで帰んの面倒くせェからな…ま、手は出さんから」

「敵を目の前に…それもマズイと思います…」

「おお、そうじゃ!クザン!!」

「はい?」


リラックスしている状態の青雉に海兵は弱弱しく突っ込む。
青雉はエニエス・ロビーの後ロビンと壁越しに会話し、そのまま自転車で帰るのが面倒だと言ってガープが率いる軍艦に乗り込んだのだ。
それはいつもの事のため驚きはないが…相変わらずダラダラとした仕事の仕方にこちらも力が抜けていく気がしてならない。
それでも大将なのだから人間分からないモノである。
そんな青雉にガープが何かを思い出したように声をかけ振り返り、名前を呼ばれた青雉はアイマスクを上にずらし、目でガープを見つめる。


「ミコトはどうしたんじゃ?一緒じゃったろ。」


ガープの言葉に青雉は言い難そうに目をそらす。


「あー……その…なんて言うか…どっか行ったっていうか…なんというか…」

「何じゃそれは…どこ行ったんじゃ!」

「知りませんよ、おれだって止めたけどさっさと姿消してどっか行っちまったんですから…まァ、また赤髪でしょうね」

「うぬぬ…!赤髪めェ!!!ルフィとアスカだけじゃ飽き足らず!ミコトまでも手をかけよってーーーーっ!!!」


ウガーー!と怒り心頭のガープに部下達は慌てて宥めるも、孫バカのガープは中々怒りが収まらなかった。


(まァ、中将が心配するのも無理ないか…)


暴れるガープを見つつ、アイマスクを下ろし寛ぐ。
そしてミコトを思う。
ミコトが可愛いと思っているのは何もガープとセンゴクだけではないのだ。
青雉もまた幼いころから見てきたミコトが可愛くて仕方ないのだ。
実力は認めているが、それとこれとは別の話。
傷一つでも負えばどうしても過保護になってしまう。
それに、なんだか様子が変だったのも気になった。
いつもの微笑みを浮かべていつもの様子だった…しかし、それはどこか表面だけ取り繕っていたようにも見える。
ふとしたときチラリと見れば何か考え事していたり思いつめた表情を浮かべているのが見れるため、何かあったのは確かなのだ。
しかしミコトはどうしたのかと問うても恐らくは何もしゃべらない。


(ちょっとは相談してくれてもいいんだけどねェ…ミコトちゃん人に頼るの苦手だからな…)


ミコトは実力はあるが、内面に欠陥があった。
ミコトは昔から人を頼るのを嫌っていた。
嫌っていたというよりはどうやって頼ればいいのか分からないのだろう。
まだ新人の時、人を頼れず一つの島を一瞬にして冬島にしてしまった過去を思い出し、青雉は溜息をついた。
――ルフィ達の船はすぐそこに見える。







天気は晴天。
風も悪くもない。
ルフィ達は出航準備を終え、ガープが来る前に出ようとしていた。


「出航ーーー!!」

「アニキー!お達者でーーー!!」

「フランキー一家は不滅ですぜーーー!!!」


ウォーターセブンの町の人やフランキー一家、そしてガレーラの船大工やアイスバーグ達に見送られ、船は出航する。


「ちょっと!ルフィ!!」

「…本当にいいのか、麦わら…もう1人待たなくて」

「待ってたさ!サンジからあの話を聞いておれは…」


ルフィはマストに寄りかかりイスに座るが、その顔にはドッと汗をかき、我慢しているのが丸分かりである。


「あのガレーラの部屋が留守にならねェ様にあそこでずーーっと待ってたけど来なかった!!これが答えだ!!あいつだってよ…!楽しくやると思うよ!海賊はやめねぇだろうからそのうち海で会えるといいなー!!」

「……………」

「あだっ!」


無理してるルフィに隣に座っていたアスカは溜息をつきルフィの頭を軽く叩く。
すると船の横すれすれに砲弾が飛んで来て船は大きく揺れた。


「しまった!!見つかったぞ!!海軍だ!!」

「……!じいちゃん!!?」

≪おいルフィ、アスカ〜〜〜〜!聞こえとるかー!!こちらじいちゃん、こちらじいちゃん≫


帰ったはずのガープの船が迫ってきていた。
ルフィもアスカも早くに見つかり目を丸くする。


「おい!じいちゃん!!何だよ!!おれ達の事ここでは捕まえねェっつったじゃねェか!!」

≪いやあ、しかしまあ色々あってな…すまんがやっぱり海のモズクとなれ!!≫

「え〜〜〜〜っ!!!」

≪お詫びと言っちゃあ何じゃがわし1人でお前らの相手しよう!!≫


そう言って拡声器をしまい、船の上で何かをしていた。


「何する気だ!?」

「もしかして…!!」


様子を見ていたルフィ達にガープは素手で砲弾を投げ、廃船島に当たり煙を上げる。


「す…素手で大砲撃った!!?」

「大砲よりよっぱど強く飛んで来たぞ!!!野球のボールじゃあるめェし!!!」

「おじいちゃーーーん!!!!」

「おお!!アスカ〜!!」

「おじいちゃんひどい!!!おじいちゃんは私が嫌いなんだ!!!!」

「アスカちゃん!?」


驚いているとアスカが大声で拗ねたような声を出す。
突然のアスカの言葉にナミ達が驚いていると、ガープがものすごく落ち込んでいた。


「ちが…違うんじゃよ〜〜〜!!!おじいちゃんはアスカの事大好きなんじゃがそれもこれもおじいちゃんとアスカの仲に嫉妬したセンゴクが悪いんじゃ〜〜〜〜っ!!!」

「嫉妬ってアンタ…」


孫のルフィより目に入れても痛くないほど可愛がっているアスカに拗ねたような言葉を投げかけられセンゴクのせいにするガープに青雉は呆れてしまう。


「じゃあ追うのやめてー!!!」

「それは無理じゃー!!アスカすまーーーん!!」


謝りながら砲弾を何個も投げてくるガープ。
船に当たりそうになるのをルフィ、ゾロ、サンジ、アスカが跳ね返したりして船を守っていた。
するとウソップが現れ何か言っていたが、謝罪以外は聞かないとルフィ達はチョッパーがどんなに言っても聞こえないと言い切るばかりだった。


ごめーーーーん!!!!!

「!!?」


ウソップは去ろうとする仲間達に涙を流し、謝罪する。


「意地はってごべーーーん!!!おれが悪がったァーー!!!」

「………!!」

「ウソップ!!」


ウソップは跪き心からの謝罪を声を出来る限り上げて叫ぶように言った。
アスカは下僕ウサギ(通常サイズのウサギ)達に任せ、ウソップへ顔を向ける。


「今更みっともねェんだけども!!!おれ!一味やめるって言ったけど!!!アレ…!!取り消すわけにはいかねェかなァーーー!!!?」


ウソップの言葉にルフィは呆然と立ち尽くす。


「ダメかなー!!…頼むからよお前らと一緒にいさせてくれェ!!!もう一度…!!おれを仲間に入れてくれェ!!!!!!!」


水溜りが出来るほど涙を流し、鼻水が出てグチャグチャな顔をあげ、精一杯気持ちを伝えるウソップ。
そんなウソップにルフィは手を伸ばし、ウソップに向けた。


「ルフィ…」

「バカ野郎ーーーー!!!早く掴ばれーーーーーっ!!!!」


ルフィもウソップに負けないぐらい顔をグチャグチャにして涙と鼻水を流す。
ウソップは力強くルフィの手を握り、船へ飛んで帰ってきた。


「むあ…!!!」

「バカはてめェだ!!」

「アハハ!!カッコ悪いわね!!あんた達っ!」

「ホント…バカね、あんた達」


涙を大量に流すルフィとウソップにゾロ、ナミ、アスカが笑う。
ゾロも何だかんだで仲間思いなのだ。


「やっと…全員揃った!!!さっさとこんな砲撃抜けて!!冒険に行くぞ!!野郎共〜〜〜〜〜!!!」

「「「おーーーーっ!!!!」」」


全員そろい、後は脱出だけ。
フランキーが帆をたたむよう指示をする。


「急げ!!帆をたため!!」

「おい!いいのかよ!フランキー!!」

「バカ野郎!!この船を信じろ!!」

「そうだ!信じろバカヤロー!!」

「コノヤロー!バカヤロー!」

「コンニャロめー!!」

「手伝え!お前ら!!!」

「ウソップあんたほんの数秒前まで…まぁ…いいけど…」


ウソップが戻ってきて嬉しいのか、ルフィとチョッパーは肩を組んで暢気に踊っていた。
そんな中、フランキーが名前を決めようと言い出した。


「何!?船の名前!?こんなときに!?」

「そうさ名もねェ船じゃ出航に勢いがねェだろ?」

「よーし!!強そうな名前おれ考えた!!『クマ!白クマ!ライオン号』!!」

「そんな変な名前の船あるかァ!!!」

「じゃ『トラ!狼!ライオン号』」

「その動物のら列をやめろ!!何の呪いだ!!」

「イカ!タコ!チパンジー!!」

「ライオンいねェじゃねェか!!」


ウソップは戻ってこれた嬉しさもあり、突っ込みは激しかった。


「船の名前、おれからも候補があるぜ?……『サウザントサニー号』!!」

「おおっ!!?おれが今考えた『ダンゴ・ゴリラ・ライオン号』よりいい!!」

「しりとりかっ!!」

「おれの頭をよぎった『ライオネル親方』より…いいな」

「私の『暗黒丸』より…」

「おれの『ムッシュひまわり』より…」

「私の『生首伯爵』より断然いい…」

「気は確かかおめーら!!」


ネーミングセンスがないこの一味に、特に恐ろしい名前をつけようとした女性陣2人にウソップは突っ込む。
船の名前はアイスバーグの考えたものに決まり、残るは脱出だけである。


「今の内この美しい"水の都"を見納めとけ!あっと言う間に島のかげも見えなくなるぞ!」

「そうか…じゃぁ…」


フランキーの言葉にルフィは後ろに回る。


「じいちゃーーーーん!!それから…!コビーと…………久しぶりに会えてよかった!!」

「呼べよ!!おれの名を!!!」

「何じゃいルフィ!!まだ弾は残っとるぞ!!!」


別れの言葉を言うルフィにガープは一発砲弾を投げる。
その弾を殴り飛ばしたルフィにガープは片眉を上げる。


「ムダだ!!」

「ん!?」

「こっからおれ達本気で逃げるからな!!またどっかで会おう!!」

「おんのれ!!わしの子供の子供のクセに生意気な!!ルフィー!!」

「おじいちゃーーん!!」

「!!」


ルフィの言葉に頭に来たガープだったが今度はアスカに呼ばれ、暴れるのを止める。


「おじいちゃーーーん!!大嫌いって聞いたの嘘だから!!!私!おじいちゃんの事大好きだよーー!!!」

「……!!アスカー!!じいちゃんもアスカの事大好きじゃぞーー!!!だから戻ってこーーーーい!!!」

「それはイヤ!!!」


手を振る可愛い孫娘にガープは怒りの顔からデレデレとだらしない表情を浮かべるが、最後のアスカの言葉にショックを受けていた。


「アイスのおっさーん!!船の名前もらったぞ!!いい名前ありがとう!!!みんな色々ありがとうーーー!!!おれ達行くからよーーーっ!!!」


ウォーターセブンに居るアイスバーグ達に手を振って声を上げてお礼を言うが、向こうには届いていなかったが、アイスバーグたちは笑顔だった。


「さァ行くぞ!!!巨大空砲と宝珠アダムの強度によって実現した脅威の緊急加速装置!!」


フランキーが準備している間、復活したガープが船の何十倍もある鉄球を手に取る。


「わしをナメとったらケガするぞーーーー!!!」

「「「おわーーーーー!!特大鉄球!!死ぬーーーー!!」」」


その鉄球を降り投げ、サニー号へ向かって落下してく。
しかしフランキーは"風来バースト"によって飛び、鉄球を避ける。


「うおおーーーっ!!」

「この…感覚は…!!憶えがある!!」

「コーラ樽3つも消費しちまうが1km飛べる!!お前らの乗ってきたゴーイング・メリー号にできてこの船にできねェことは何一つない!!すべてにおいて上回る!!だがあの船の勇敢な魂は!このサウザンドサニー号が継いで行く!!!破損したらおれが完璧に直してやる!!!船や兵器の事はなんでもおれに頼れ!!今日からコイツが!!お前らの船だ!!!」

「おおォーーーー!!!」


フランキーの言葉にみんな声を揃える。
そして、サニー号はあっという間に海軍からもウォーターセブンからも姿を消した。


「…こりゃまいった…逃げられたわい…」

「……ええ、確かに…確認しました」

「ぶわっはっはっはっはっ…!さすがはわしの孫じゃ!!!」


青雉はサニー号が飛んでいった空を見上げ、淡々と述べる。
ガープは青雉の確認を聞き大笑いで笑い、その後ろではヘルメッポに押さえられているコビーが大喜びしていた。

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