(210 / 293) ラビットガール (210)

「フォス!フォスフォスフォス!!」


ルフィがモリアを倒すと公言したのを知らず…というか敵が七武海だというのを知らず逃げていたナミ達はある部屋を覗き込んでいた。
その部屋にはホグバックとシンドリーが居た。


(何?この部屋…)

(研究所だ〜〜〜……!!)

「フォ〜〜ス!フォスフォスフォーース!!もうすぐ完成だ!!この見事なマリオネット!!見ろよ!シンドリーちゃん!!まさに…芸術!天才の所業!!」

もう一息の所で失敗すればいい

「何言ってんの!?シンドリーちゃん!!まったく、おめェの暴言には毎度生き肝を抜かれるぜ!!」


はぁー、と安堵の溜息をつくホグバックにシンドリーは死体が横に寝かされている台の隣のテーブルに夜食だとスープスパゲティを出す。
そのスープスパゲティはみるみるスープが無くなり床にこぼれる。


(シンドリーちゃんもいる……本当に事故死したあの娘なのかしら…信じられない)

(でも写真で見ても似てたし…本人じゃない?)

(…あの台に乗ってんの何だ……?)

(たぶん人の死体だ……あの血色じゃ…生きてはいないよ)


小声で話しながら台に乗っている死体を見つめる。


「墓にいたゾンビと同じ様に…番号がついてる…」

「それをもうすぐ完成だと言ってた…これで決定的ね……アレこそ今まさに生み出されようとしてるゾンビよ…!!この島にいるゾンビ達はみんなホグバックが蘇えらせたんだわ…もうそれ以外考えられない」

「…だけど医学で救えるのは死ぬ前の人間だけだ…死者の体をどれだけ強靭に造りなおしても命まで戻って来るわけがないぞ」

「考えてもわかるもんかよ。ここで覗いてればその生命蘇生の秘密が知れる筈だ」


死体の行方を見つめ息を殺していると背後からカラン、コロン、と下駄の音が廊下に響く。


「ヨホホホホホ!ごきげんよう!中の様子が見たければ中に入ればよろしいのに!!」

「………!?ヨホホって…!」

「ブ…ブルック!?」

「……!」

「…やば…!!」


ブルックのように喋るゾンビに振り返るが、すぐ剣を抜かれギリギリなところで避けて研究室に入ってしまう。


「ぬう!貴様ら…!!なぜここへ…!!?」

「何!?今のブルックじゃないの!!?」

「だけどガイコツじゃなかったよ!!肉も皮もついてた……あ…」

「ギャ〜〜〜〜!!見つかった〜〜〜!!!」


ブルックとは姿が全然違うそのゾンビに気をいっていたせいでホグバックが背後に迫っていたのに気付かなかった。


「何を見た…貴様ら研究所は絶対に覗くなと言った筈…!」

「な…何も見てねェ!!造りかけのゾンビも見てねェ!!」

「……まァよかろう…今更何の秘密を知ろうとも…もう手遅れ…あと数分で"夜討ち"が始まる…油断させ…島に迷い込んだ客人達を一気に狩り込む"夜討ち"が始まる……!!」


ボーン、ボーン、と0時を知らせる音が研究室に鳴り響く。
ナミは目の前のホグバックを睨みつける。


「何がゾンビの研究よホグバック!!調査どころかあんたがこの島で死者達を蘇えらせてるんでしょ!?」

「お…おい…ナミ…そんなはっきり…」

「フォスフォスフォス…!お前達が今更何を怪しもうと自由だぜ…何を根拠にそんな事を……」


誤魔化そうとするホグバックにナミはシンドリーを指差す。


「その女の…死亡記事を見つけたわ!ビクトリア・シンドリー…10年も前にあんたは…死んでる!!」

「!!貴様ら…!!あの部屋へ入ったのか!!?」

「!」

「…………」


ホグバックはナミ達がシンドリーの写真の部屋に入った事に怒り出す。
そしてシンドリー、そしてブルックに似ているゾンビに声をかける。


「シンドリーちゃん…!サムライ・リューマ!!今すぐコイツらを影の世界へ叩き落としてやれ!!もう二度と光の差さない影の世界へ!もう"夜討ち"は始まっている!!!」


ホグバックの命令でシンドリーは皿を片手で持ち上げ、後ろにはリューマと呼ばれたゾンビが下駄を鳴らしながら歩み寄る。


「ヨホホホホ!オヤオヤよく見ればそちら実に麗しきお嬢さん方んビューーーティフォー!!パンツ見せて貰ってもよろしいですか?」

「見せるか!!…はっ!このやりとり…完璧なまでにアイツ!!何で!?」


ナミの疑問に答えたのはホグバックだった。


「フォスフォス…!お前達がこれまでに見たゾンビ共とは"格"が違うぞ!!そいつは特別な肉体を持つ将軍(ジェネラル)ゾンビ!!"新世界"『ワノ国』から来た男!大昔…ウソか本当か空飛ぶ竜を斬り落としたと語り継がれる伝説の侍だ!!」

「ヤベェ!ヤベェ!!」

「逃げ場などないぞ」


前にはリューマ、後ろにはシンドリーとホグバック。
ホグバックの言う通り逃げ場など無く、焦る。
しかしリューマは刀を抜いたまま4人の間を通り過ぎてしまった。


「え…」


そのリューマの行動に戸惑っているとリューマは4人を振り向かずシンドリーに声をかける。


「シンドリーさん、そちらの通路を開けて頂いてもよろしいですか?あと私もお夜食を頂きたい」

「な…何?斬られるかと思った…」

「び…びっくりした!何を始める気だ!?」

「……これ…ちょっとまずいんじゃ…」

「何でもいい!おい!今の内に逃げるぞ!!扉が今ガラ空きだ!急げ!!」


アスカは嫌な予感がして逃げ出そうとする3人を止めようとするが、その瞬間4人の体に衝撃が走る。


「見事!フォスフォスフォス!!"達人"に斬られた者は鼻唄まじりに三丁歩き…そこで初めて斬られた事に気づくという…!」


ホグバックの言葉を聞きながらアスカは意識を失う。







ホグバックの屋敷に墓場のゾンビが集まり、踊っていた。
アブサロムが扉を開ける部屋の中には数多くの棺桶と甲冑が並んでいた。


「さァ…獲物共はみんなおいら達の敷地内へ踏み込んだ!!今夜も好きなだけ暴れて来るがいい!目を覚ませ!将軍ゾンビ共っ!!蘇れ…!古の戦士達!!」


アブサロムの言葉に棺桶の中からゾンビが起き上がる。


「海賊"麦わらの一味"わずか9名!!見事討ちとってご主人様に捧げろ!!」


ゾンビ達はゾロゾロと麦わら一味を討ち取る為、部屋を出て戦いに向かう。
そんな中、他のゾンビ達よりゆっくりと歩くゾンビにアブサロムは気付く。


「ウッ〜プ」

「ん?…オイ、ぐずぐずするな。キャプテン・ジョン!天下にあまねし生前の悪名が泣くぞ!!」

「アイアイ…行くよォ…フヘへ」


キャプテン・ジョンが酒を飲みながら先に行ったゾンビを追うように姿を消す。


「…ったくしょうがねェ奴だ」

「ア・ブ・様・Vv」


キャプテン・ジョンを見送るアブサロムは背後からの女性の声にゾクリと身震いする。


「結婚してーーっ!!!」

「ギャ〜〜!!ローラ!てめェ!さっさと戦いに出ろ!!おいらは指揮官だぞ!」

「じゃ結婚して!」

「何でだ!ふざけるな!!おいらは人間だ!人間の女を嫁に貰うんだ! よく考えろローラ!お前はイボイノシシのメスでしかもゾンビだぞ!!死んでるし腐ってる!!」


背後から現れたウェディングドレスを着ているイノシシのゾンビ、ローラがアブサロムに結婚しろと迫っていた。


「あ」

「え」


するとローラが指を差し、それにアブサロムはつられてそちらを見てしまう。
するとローラは気をそらしている間にアブサロムの指を手にとり、人差し指に朱肉を塗り、勢いよく用意していた婚姻届けに押し付けようとする。
しかし気付いたアブサロムは押される前に手を振り払う。


「お!!…お!!おっそろしいマネしやがる!!何勝手に婚姻届に押印させようとしてんだ!!」

「ああ…!そのワイルドな口元がたまんない!!指よこせやアブサロム!好き!ウフッ!」

「ウオ!!死んだ動物に!!一生取り憑かれる気はねェっ!」


ローラはアブサロムに襲い掛かり、唇を何度も向ける。
それを慣れたように…だが死に物狂いで避ける。


「待て!ローラよく聞けてめェ!!おいらはな…!!もうすでにおいらの花嫁となる女を決めてあるんだ!!手配書を見た時からの一目惚れで…何より美しく可憐な人間の生身の女!!」

「フフン!!またどうせダメになるわ!」

「バカめ!見ろ!!この島に入った海賊の一人…美しくおいらの花嫁にふさわしい!!貴様の呪縛もここまでだ…!」

「そうはいかないわ!その女消してやるわい!!!」


アブサロムは懐に入れていたアスカの手配書をローラに見せる。
ローラは諦めるどころか鼻で笑い、アスカを殺しに走っていった。


「やめろ!!待ちやがれ!ローラァア!!!!」


必死でローラを追いかけるもローラの方が早いのか追いつけずにいた。

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