くまは自分が放った大気で無残な光景になっているのを無表情で見つめていた。
誰も立ち上がることが出来なくなったのを確認し、ルフィの上にある瓦礫を弾いてどかす。
ルフィの服を掴んだその瞬間2つの衝撃に思わず後ずさる。
「ウ……!」
くまは口から少しだが血を吐きよろめく。
くまの後ろにはかがんでいたゾロとアスカが立っていた。
2人は気を失うことなくルフィに手をかけようとするくまに攻撃をしかけたのだ。
くまの体は2人の衝撃に肩があらわになり機械のような肩はショートしたようにバチバチと電流が弾く。
「てめェ…一体……!」
「……!」
「………………」
「フランキーみてェなサイボーグか……?いや… 硬度は鉄以上……!」
驚く二人に何も言わずくまは口をあけ、ビームのようなものをゾロ達に向けた。
ゾロはアスカに引っ張られ避けることが出来たが、自分達のいた場所の鉄がドロッと解けていたのにギョッと驚く。
驚いているアスカを見つめ、くまは溜息交じりに小さく呟く。
「"冷酷ウサギのアスカ"か…困った…黒蝶に手を出すなと言われているのだが…」
「え…?」
くまの呟きをアスカは拾うがゾロに遮られ、くまもそれ以上言う気はないらしく話を逸らす。
「ハァ…ハァ…鉄が溶けた………!!」
「サイボーグ……確かにそうだが…"サイボーグ"フランキーとはずいぶん違う」
「!」
「おれは"パシフィスタ"と呼ばれるまだ未完成の政府の"人間兵器"…」
「パシフィスタ…?」
「人間兵器…」
「開発者は政府の天才科学者Dr.ベガパンク…世界最大の頭脳を持つ男…!!奴の科学力はすでに…これから人類が500年をかけて到達する域にいるといわれている」
「そんな体をして…しかも"能力者"か…さらに希望をそがれた気分だ…!さすがにもう……おれの体も言う事をきかねェ…ハァ……どうしても……!!ルフィの首を取っていくのか……!?」
「それが最大の譲歩だ」
「………わかった…」
「ゾロ?」
ゾロはくまの言葉を聞きくまの目の前で座り込む。
そのゾロの行動にアスカは首を傾げる。
「首は…やるよ…………ただし 身代わりの……このおれの命一つで!勘弁して貰いてェ…!!」
「ゾロ!!?何言って…」
「たいして名のある首とは言えねェが……!やがて世界一の剣豪になる男の首と思えば取って不足はねェ筈だ!!」
「そんな野心がありながら……この男に代わってお前は死ねると言うのか」
「そうするほか…今、一味を救う手立てがねェ…!船長一人守れねェでてめェの野心もねェだろう!ルフィは海賊王になる男だ!!」
「ちょっと待ってよ!!だったら私が!!私はこの一味の副船長よ!?だから私が…」
「お前が死んで誰がルフィを支える!!!!」
「!!」
死ぬ覚悟を決めたゾロに必死に代わろうとするアスカだったがゾロの言葉に体を強張らす。
ゾロは息が上がっている中、アスカを見つめる。
「お前が1番ルフィを支え、理解している!お前が身代わりになったらルフィは夢を追わなくなるぞ!!!」
「だ…だったらそれはゾロだって…!!」
言い合いをしていると後ろから血だらけのサンジが立ち上がり、近づいてきた。
「待て待てクソヤロー……おめェが死んでどうすんだよ…!ハァ…!てめェの野望はどうした…!!!」
「サンジ…」
「オウでけェの……!!」
「オイ!!」
サンジはゾロが止めるのも聞かずゾロとアスカの前に立つ。
「アスカちゃんとこんなマリモ剣士よりおれの命とっとけ…!!今はまだ海軍はおれを軽く見てるが後々この一味で最も厄介な存在となるのは…この"黒足のサンジ"だ…さァ取れ…こちとらいつでも身代わりの覚悟はある……!!ここで"死に花"咲かせてやらァ…!!」
サンジは腕を組み、振り返らずゾロに声をかける。
「みんなには……よろしく言っといてくれよ…悪ィがコックならまた探してくれ……ッ!!?」
サンジは横腹をゾロの刀で殴られ意識が薄れていく。
「ゾロ…!?」
「……!!…てめェ……!!」
サンジはゾロの肩を掴むが気を失ってしまいアスカに受け止められながら倒れる。
「後生の頼みだ…」
「……ゾロ…」
サンジを抱き上げアスカは刀3本を床に置くゾロに何も言えず見上げる。
「…………これで"麦わら"に手を出せば恥をかくのはおれだな…」
「恩にきる」
「……………」
「おれがやる事を信じろ…約束は守る…そのかわりお前には地獄を見せる……!!!」
くまはルフィを持ち上げ、胸を叩き背中から肉球のモノを出す。
「今……こいつの体から弾き飛ばした物は"痛み"だ…そして"疲労"……モリア達との戦いで蓄積された全てのダメージがこれだ…身代わりになるというなら文字通りお前がこの苦痛を受けろ…ただでさえ死にそうなお前がこれに耐え切る事は不可能…死に至る…試してみろ」
そう言ってルフィの体から出した痛み、疲労を固めたものの一部をゾロへ投げ寄せる。
「ッ!!ぐわああああああ!!!!!」
「!!!」
投げつけられたものが胸へと入ったのと同時にゾロは悲鳴をあげ倒れてしまった。
アスカは聞いた事のないゾロの悲鳴に抱き上げていたサンジの手に力を入れる。
「ゲフッ……ゼェ…ゼェ…ガハ…」
「どうだ」
「場所だけ…変えさせてくれ…」
あんな小さくても相当なダメージなのかゾロは仰向けに倒れ血を吐く。
それでもルフィの身代わりになるというゾロにアスカはサンジをゆっくり寝かせ立ち上がる。
「私も行く!」
「ハァ…ハァ…だめだ…!」
「私はあんたの死に立ち会う資格があるはずよ!」
「…………」
「ゾロが死んで何も知らないって悔しいじゃない!!!ルフィ達に何も言えないのも悔しいじゃない!!!立ち合せなさい!!」
「バカヤロ…剣士が決闘以外で死んだなんてカッコ悪いだろ…」
「バカはゾロでしょ!行くったら行くからね!!」
頑固とゾロについていこうとするアスカに負けてゾロは『好きにしろ』と呟く。
着いた先は森の奥で、アスカはルフィの痛みと疲れの前に立つゾロの背後で立っていた。
ゾロが手を入れた瞬間言葉に表せない痛みに声を上げるがアスカは目を逸らすことなくゾロをジッと見つめていた。
―――ザザーン、と波の音を聞きながらくまはスリラーバークの入り口の口の上に乗り、しみじみと呟いた。
「いい仲間を持ってる…さすがは…あんたの息子だな………ドラゴン」
くま襲来から数十分後。
ルフィ達もローラ達も目を覚まし起き上がる。
「おーい…生きてるかーーーー!?みんなァ!!」
「ウゥ…!」
「あの攻撃で私ら全員死んだと思って…帰ったのね、あのクマ男!ザマーみろ!」
ローラ達はくまが勘違いして帰ったと思ったのか喜んでいたが、フランキー達はあんなに大怪我を追ったルフィが立ち上がり飛び跳ねるほど回復していた事に驚いていた。
「オイオイ!ウソだろ!?おめェどうなってんだ!?」
「ええ〜〜〜!!?」
「体が軽いんだよ!何でだ!?」
「ウソつけ!そんなわけねェだろ!!」
「ダメージが一周して逆にハイになったのかしら…」
「何もかも無事なわけねェ……あの野郎とアスカちゃんはどこだ!?まさか……!!」
途中までの記憶があるサンジは2人の姿が見えないことに最悪な結末を思い浮かび、慌てて2人を探す。
森へと入り奥へ進むと探していた2人が立っていた。
「いた…!!おどかしやがって……アスカちゃんも無事だったか…!オイ!!あの七武海どこに……」
「……………」
サンジが声をかけてもゾロもアスカもサンジに振り返ることなくただ立っていただけだった。
そんな2人にサンジはアスカの無事を確認し、目が合うとホッと息をつくがゾロの前へ駆け寄ると目を丸くする。
「何だ…この血の量は……!!オイ…!おめェ…生きてんのか!?アイツはどこだ!?」
「………………」
「ここで何があった……!!!?」
「なにも!な゙かった…!!!」
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