(23 / 293) ラビットガール (23)

あれから、アスカは首輪を付けたままの生活を余儀なくされていた。
ただ、今まで部屋に閉じこもっていたアスカがあの一件以来外に出るようになり、今日も三人の勝負を木の板に書く役割をしていた。


「ゴムゴムの〜〜〜銃!!!ぶっ!」

「だからおめェは…何がしてェんだよ!!!」

「どへ!!」


50回目の勝負に、ルフィは腕を伸ばす。
だが伸びた腕は地面にバウンドしてルフィの顔面に当たり、エースには当たらなかった。
その隙にエースはルフィの顔面に飛び蹴りを食らわせ、一本を取る。


「一本だエースの勝ち!!アスカ、頼む!」

「うん」


アスカはサボに頼まれ木の板に0と50を書く。
ルフィは2人に一度も勝てたことはないが、エースとサボはお互い引き分けに終わっている。
エースは伸びはするが攻撃力すらないルフィの能力に『お前その能力意味あんのか?』と呆れたようにため息をついた。


「くっそー!うまくいかねェ!おれの考えるとおりになればお前らなんかケチョン×2ケチョン×2だからな!もっかいだ!!」

「ダメだよ、ルフィ。1人1日100戦までって決めたじゃん。」

「そうだぞ。また明日な。」


100戦までという決まりなのにまた勝負を挑もうとするルフィにアスカは『もう』、と腰に手をやり宥める。
そんなアスカとサボにルフィはぷくりと頬を膨らませて拗ねるが、アスカは『風船みたい』と言って人差し指で片方の膨らんだ頬を突っつき空気を抜く。


「ルフィは今日もおれとエースに50杯ずつ…おれとエースは24対26!くっそ〜!!」

「お前らおれが10歳になったらブッ倒してやるからな!!」

「そんときゃおれ達13だ。夕飯の調達に行くぞ」


勝負が終われば夕食の調達。
それはもはやお決まりになりつつあり、今日はワニを獲ろうかとエースが提案し、4人は川へと向かった。







夕食は大きなワニを一匹仕留め、その日はワニ肉をみんなで平らげた。
ダダン家の食事はいつも戦争である。
早い者勝ちという簡単だが弱肉強食なルールに従いみんな我先にと手を伸ばし、肉を食べようとする。
アスカはまだ首輪が外れないためまだ捕獲には参加できない。


「ほんとうに大丈夫?」


アスカはワニの皮を乗せている台車に身を潜めながら心配そうに三人を見上げる。
目的は街に入り食事にありつけたりするため。
勿論、お金はなく無銭飲食である。
子供だけでは入れないし、自分達の悪名は街にも届いているため、エース・ルフィ・サボがお互い肩車をし大人になりすましていた。
ただアスカまで加わると背が高すぎて逆に怪しまれるため、アスカはワニ皮を伸せている台車に乗っている。


「大丈夫だって!」

「アスカは動いたら駄目だぞ?」

「うん…」


不安そうなアスカの視線に、2人は笑ってアスカの不安を和らげようとした。
その笑顔に、アスカは少しだけだが不安や心配が和らぎ布に戻っていく。
暫くすると門の傍につき、門番が1人1人中身を確認し、エース達の布に覆われている台車を見て問う。
荷物検査は基本しない。
しっぽが見えるためエース達の言葉を信じた門番はエース達に気づかないまま街へと入れてしまう。


「オイ!!お前ゴミ山から来たろ」

「その荷物なんだ?見せてみろ!」


街に入ると多少の匂いはあるものの、ゴミ山よりはるかに綺麗で整備されていた。
しかしここは『端町』。
ゴミ山よりはマシだが中流階級が住まう『中心街』や上流階級の貴族や王族が住まう『高町』に比べるとゴミ山と同等である。
チンピラも数多くおり、荷物を運んでいたエース達の前に数人のチンピラが現れ、絡んできた。
まだチンピラはこのフードを被った大人が悪名高い子供達だとは気づいていない。
チンピラに絡まれ、とりあえず門から離れたというのもあり、エース達は追い返そうとフードを取る。


「うるせェ!チンピラ!!」

「あ…こいつら!!」


そこでフードを被った男があの悪名高い子供三人だという事に気づき、チンピラも応戦するが、自然を相手に鍛えている子供達には敵わず、伸されてしまう。
争う声が消えたのを確認したアスカはカバッと布から出る。


「やりすぎーっ!ていうかガタガタして腰痛いー!」


アスカは今、能力が使えず人並しかない。
だからチンピラに絡まれたら抵抗できないため、こうして隠れるしかなかった。
だが、それは仕方ないと思いながらもクッションなんてないため痛む体にプンスカとお怒る。
『もー!』と怒るアスカに三人は宥めるのに苦労した。
やはり何だかんだ言って、三人はアスカに甘い。
特にあれ以来エースが三人の中で一番甘くなり、エースは『美味しいものを食わせてやるから!!』、という必死にアスカを宥めようとするが、『私はルフィじゃな〜〜い!!!』と怒られてしまった。







ある端町にある飲食店の4階の窓が突然割られ、その中から4人の子供が飛び出してきた。
その飲食店の前を歩いていた人達は降ってくるガラスと子供達に驚きの声を上げ、唖然としていた。


「またあの4人組か!常習犯だ!なぜ入れた!!」


騒動に駆けつけた警察は、小さくなる背を見て常習犯の子供達だとすぐに分かった。
端町では全てではないがアスカ達の名前は知れ渡っており、警察も素性の悪い子供達にも店にも呆れかえってしまう。
そんな逃げていく4人を見て一人の男が驚いた顔をして振り返る。


「サボ!?サボじゃないか!待ちなさい!!お前生きていたのか!家へ帰るんだ!!」

「………!!!」

「おいサボ!お前のこと呼んでるぞ!!」

「誰だ!?あれ…!!」

「サボの知り合い?」

「…人違いだろ!行くぞ!!!」


その男は逃げるサボを見て驚いた後、サボを引き留めようと声をかけた。
男の声にサボも振り返れば、サボは男以上に驚いた表情を浮かべた後、すぐに顔を歪め前を向いた。
三人も男の言葉にサボの知り合いかと問えばサボからは『人違いだ』と返って来た。
人違いにしてはサボと同じ名前を連呼していたが、サボが立ち止まらなかったため3人は町を出る。

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