「じゃ、ごちそーさまでした」
パフェの残りをアスカがローに食べさせ、完食する。
ローは甘いものはそれほど好きではないが、アスカが食べさせてくれるというのもあり機嫌よく向けられるものを文句なく口に運び、見事食べきったのだ。
お詫びのパフェも食べ、情報も提供した…ということでアスカはカフェを出て別れようとする。
手を挙げて奢ってくれたお礼を言った後、アスカはローから離れようとした。
しかし、その手をまたしてもローに取られ捕まった。
「…お詫び、終わったんなら放してよ」
「まあそう急かすな…お前ら今ついたばかりなんだろ?じゃあまだゆっくりできるはずだ…その間付き合ってもらおう」
「はあ!?ちょっと…何勝手に決めてんの…!?」
「コーティングには時間が掛かるもんだからな」
「えっ…そうなんだ……ってそうじゃなくて!!!だとしても!あんたと一緒にいる理由がないじゃん!!」
「だから言ったろ?今のアスカが知りたいって」
「さっき話したのが全部!それ以上の情報は持ってません!」
「さっきは海賊団としての話だろ?まだアスカ自身の事を聞いてない」
「〜〜無理強いしないって約束した!!」
「無理強いじゃない、頼んでるだけだ」
「〜〜〜ッああ!もう!!!」
取られた手を引っ張ってもローの手は緩まる気配はない。
無理強いしないという約束を破棄するようなローの行動にアスカはムカッと来たが、返ってきた言葉に返す言葉もなくなった。
『なんで船長ってこんなんばっかなの!!』、と幼馴染を思い出しながらアスカは叫ぶように思った。
結局アスカはまたしてもローには勝てず、しかも餌付けの効果か、初めて会った時とは違い嫌な気分ではなかった。
「で…何が知りたいの」
「全てだ…」
「全て?なにそれ…」
がくりと肩を落とすアスカにローは愉快そうにクツクツと笑った。
クツクツと笑うローにアスカはジト目で見つめながら知りたいという質問を聞く。
この際だから全部答えてこの男から離れようとアスカは思っていたのだが…全てというローの言葉に目を丸くする。
「アスカの全てが知りたいんだ…記憶がある全てが…おれの知らないアスカを全部。」
「…………」
自分の言葉にアスカは目をまん丸にしてこちらを見つめていた。
あの長い間夢にまで見た金色の瞳がまっすぐ自分を見つめ、姿を映している。
それだけでたまらなくなる。
ずっと探していた少女…だからこそ自分がいない間、どんなものを見て、どんな事を感じ、どんな人と過ごしてきたか…ただそれを知りたかった。
「……あんた…」
たかが数年前の知り合いにローは『全てを知りたい』と言った。
アスカからしたら知り合いではなく赤の他人だから余計に信じられなかった。
でも…どうしても疑って見ることもできないのも確かだった。
―――懐かしいのだ。
彼の傍が、とても…懐かしく感じてしまう。
しっくりくる、とも言うだろうか。
まるでルフィの隣に立ったかのように彼の傍にいるのも当たり前だと思えてしまう。
だからアスカはあまり彼のそばにはいたくはなかった。
アスカが何か言いかけたその時…
―――プルルルル プルルルルル
電伝虫が鳴った。
タイミングが悪いのか良いのか…その電伝虫は過保護なサンジがアスカに渡したもので、アスカはポケットから子電伝虫を取り出して出る。
「はい…」
≪アスカちゅわ〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!おれだよ!アスカちゃんのサンジだよーー!!今どこにいるの〜〜〜!!?≫
「サンジ?…今って………ねェ、今どこにいるの?」
「21番GRだ」
「だって。」
≪そうか…だったら………って誰ーーーーーー!!!?おれのアスカちゃんの声の他に男の声がアアアアァァァィイヤアアアア!!!!!≫
≪うっせェよ!!!!その辺の男に聞いただけだろ!!!≫
≪んだとゴルァ!!!!フランキーてめェ!アスカちゃんに変な男が寄ってアレよコレよと×××されたり×××されたりしたりしたらどう責任とるんだ!?あ゙ァ!!?アスカちゃんにもしものことがあったらおれだけじゃなくナミさんやロビンちゃんもかな…≫
「
うるさい」
チン★
「あ…切った…」
「容赦ねェな…」
「…………」
ローからしたらタイミング悪いその電伝虫の相手はサンジだった。
男からの連絡にローは不機嫌さを見せていたが、アスカがサンジの言葉を文字通り切って見せると、笑うのを抑えるように顔を背け口に手を当て肩を震わせていた。
そんなローに気付かず、アスカの手の平にいる子電伝虫かまたかってきた。
「はいはい」
≪アスカちゅわーーーーーーん!!!!大丈夫か!?突然切れたけどその謎の男に酷いことされ…ぐはッ!!≫
「?」
≪アスカか!?おれだ!ウソップだ!!サンジに任せると全然話が進まないから殴って気絶させた!!≫
「あぁ、ウソップ…なに?」
サンジをフランキーが殴ったのか、ウソップの声の他にフランキーの声が電伝虫は拾っており、それを確認しながら問えばウソップからはどこか焦ったような声が届く。
≪そ、それがケイミーが攫われたんだ!!!!≫
「ケイミーが…そう……ルフィ達は?」
≪もう探し回ってると思う!!!≫
ケイミーと聞いてアスカは今、ケイミー達の存在を思い出す。
ウソップはアスカが冷静に返したことに気付かないままチョッパーから聞いた話をそのままアスカに伝える。
≪チョッパーが言うには多分人拐いチームの仕業らしい!何故か人魚・魚人は悪党じゃなくても売買を黙認されるって!探すにも諸島にはいくつもヒューマンショップがあってどこにいつ売られるかもわからねェらしいんだ!!誰に拐われたかもわからねェ!諸島は広すぎるけど…≫
「そう……ウソップ、サンジに代わって。」
≪え…あ、ああ!…おい!サンジ!!アスカが代われっていっt―――≫
≪おれ・復活!!!んアスカちゃーーーん!!呼んだかーーーい!?≫
「うん、とりあえず落ち着いて。……サンジ、アレ呼んだ?」
≪アレ…?アレって?≫
「ほら、キモイ下僕……」
≪キモイ下僕??≫
「えっと…トビウオ…なんだっけ……」
≪トビウオライダーズか?≫
「そう!それ!!流石ウソップ!!」
≪いや〜…あがッ!≫
≪今アスカちゃんと喋ってんのはおれだ!≫
ゴン、と音と共にウソップの声が途絶え、ウソップがサンジに殴られたことが分かる。
アスカに褒められたのが悔しかったようである。
「サンジ」
≪ん?あ、ああ…すまない…≫
「そのトビウオ達に連絡して探したらどう?こういうのは同じ職業の人の方が場所が分かるし、土地勘があるだろうから……」
≪だがトビウオの数じゃ1人足りないぜ?…あっ!アスカちゃんとおれが一緒に乗れば…!!≫
「いや、私はシュラハテンが居るしウサギ達もいるからトビウオは要らない。…それだったら全員乗れて十分広い範囲を探せると思うけど…どう?」
≪ん流石アスカちゅわ〜〜〜ん!!!ナスアイディ〜ア〜!!!≫
「うん、わかったから……あとここで注意するのは天竜人に遭遇しても絶対に手を出さずやり過ごすって事…いい?」
≪それはハチにも言われたが…アスカちゃんなんで天竜人のこと知ってるんだ?≫
「………その辺の人に聞いたの…それよりルフィとゾロには絶対そう伝えて。出来ればルフィ達にはストッパーをつけて。絶対に、確実に、気絶してでも止めれる人よ?」
≪あ、あぁ…ルフィはともかくゾロは捕まえたらそうするよ≫
天竜人の事をハチから教えてもらった時はアスカはいなかった。
なのにその天竜人を知っているアスカにサンジは首をかしげたが、アスカには誤魔化されてしまう。
アスカを迎えに行きたい気持ちを抑え、サンジはケイミーを探し出さなければならないのもあり、すぐ通信を切った。
プープーと切れた通信に、アスカは子電伝虫をポケットに仕舞いこみロー達と今度こそ別れるために振り返る。
「じゃあ、そういう事だから…奢ってくれてありがとう」
乱暴されプラマイゼロだが、一応奢ってくれたお礼は言っておく。
じゃ、と言いローに背を向けたアスカの手を、またローが『ちょっと待て』と取って引き留めた。
今度は急用もあるため、しつこいローにアスカはギッと睨みつけた。
「なに!!今あんたの相手してる暇は―――」
ギロリと睨むアスカの目の前にローは一枚の紙を取り出す。
目の前に出された紙にアスカは目を瞬かせた。
「なにこれ…」
「攫われた先は多分ここのヒューマンショップだろ」
「え…」
目の前に出された紙を手に取り見て見ればそこには――――アスカを売った店の名前が書かれていた。
その店の名前を見た瞬間にアスカの心臓がドクリと強く脈打つ。
「このリスト……」
「ここはシャボンディ諸島で一番のヒューマンショップだ」
「…………」
その紙に書いてあるのはデカデカと『人類売買』と書かれ、下には人間をはじめとする小人族や手長族などの相場が書かれていた。
アスカは人間が人間を売り買いするという不快感より、過去…あの派手な男の隣で首輪を繋がれた自分、そして同じ人間なのに物として見ていた金持ちや天竜人の目線を思い出し、ローに渡された紙を震える手で握る力が強くなる。
「人魚の方を見ろ」
「……女7000万ベリー……あの時より高くなってる…」
「あの時…?」
「なんでもない…」
ローが指さす欄を見れば、『人魚族(女)7000万ベリー』と書かれていた。
人間はたったの『50万ベリー』と書かれており、能力者は『時価』と表示されていた。
アスカが奴隷で売られるとき、人魚の値段は7000万ベリーではなくもう少し安かった気がした。
それは年々人魚族や魚人族が魚人等から出ることが少なくなったからだろう。
ポツリと呟くアスカの呟きはローにも届いており、しかし意味が分からず首を傾げるがアスカは誤魔化した。
「教えてくれてありがとう…」
引き留めたのは腹立ったが、教えてくれたのは素直にうれしいと思った。
嫌な記憶を追い払いながらアスカはローにお礼を言い、サンジ達に連絡してそのヒューマンショップへ向かおうとした。
しかしローの手は離れることはなく、逆に強くなるばかり。
「…ちょっとなに…」
「場所、分かるか?」
「……………」
「……………」
「元々おれはそこへ行こうとしてたんだが…付いて来い」
「え…ちょっと!」
そこで売られても場所までは分からない。
ローの言葉にアスカは口を閉じてしまい、無言を肯定としローはアスカの手を取ったまま歩き出した。
アスカは連れて行ってくれるというローに目を丸くした。
239 / 293
← | top | back | →
しおりを挟む