(241 / 293) ラビットガール (241)

≪さァさァ盛り上がって参りました!続いても"買いの一品"!エントリーNO.15は絶世の美女奴隷!ご覧下さい!!この奇跡のプロポ−ション!20歳の"踊り子"バシアです!!≫


奴隷達はどんどん売られオークションは終わりに近づいていた。
よく考えれば目玉になるであろう人魚は最後に持っていくと誰もが思うが今のアスカはその考えに至るほど余裕はなかった。
相変わらず体は震え、ローの手を握っていないと正気で居られないほどのトラウマが頭に浮かんできていた。
それでも前を向くのはケイミーと知り合い、仲良くなったからであり自分と同じ辛い経験をさせたくないからというのもある。
だからか、聞き覚えのある声が背後からするもアスカは気づかなかった。







「頭…ありゃ確か"麦わらの一味"の……」


船員に言われ目をやると少数だが様々な意味で海賊のほとんどが注目している麦わら海賊団が数人立っていた。


「麦わらの船長はいねェな…どれ程のバカ野郎かお目にかかりたかったが……」


そう呟くがルフィは今、空を飛びこちらに向かっている為今は居ない。
そうして女性が売れるともう1人の天竜人が店に入ってくる。


「まだやってはいるもののもう終わりの方だえ〜」

「―――ッ!!!」


その天竜人の声を聞いた瞬間アスカは今まで以上に体を小刻みに震わせ上げていた顔もすぐ下げてしまった。
吐き気を催したのか口元を両手で塞いで息も止める勢いで呼吸は浅くなっていく。


「アスカ…?」

「…………ッ」


アスカの様子が更に可笑しくなったのを見てローはアスカの顔を覗きこむとアスカは目をギュッと瞑り口を手で覆い、異常なほど冷や汗をかいていた。
天竜人が現れてからその症状は恐怖からくるものだと判断していたローは小さく『出るか?』と聞くもアスカは首を振る。


「安心しろ、ケイミーという人魚はおれが…」

「んーー???」

「!」

「ッ!!」


競り落としておくから、という言葉を遮り天竜人、チャルロスがアスカを覗き込むようにしゃがむ。
ローは咄嗟にアスカの顔を自分の胸に寄せさせ、ローの胸元に顔を埋めるアスカは息を止めた。


「…なにか……」

「んん〜…この下々民…"アレ"に似てるえ…ちょっと顔を見せるえ〜!」

「…!?」

「…………」


体を見て分かるほど震えさせるアスカにローは無言のまま胸に顔を押し付ける。
それでも天竜人であるチャルロスには関係ないのかアスカの肩に手をやり無理矢理顔を見ようとした。
そんなチャルロスにローはグッとアスカの肩に回している力を入れ、チャルロスが力任せでアスカの顔を見せないようにした。
それはチャルロスに…天竜人に逆らうのも同然の行動。
アスカはローの胸元に顔を埋めながらローの行動に目を丸くする。


「なんえ、お前…」

「すみません…妻は顔に大火傷の跡があり……あなた様に見せられる顔ではないのです…」

「―――チャルロス!早く席に着かんか!」

「父上様〜!そこにいたんだえ〜〜!」


グッグッ、と力を入れても全くビクともしないアスカにチャルロスはギロリとローを見た。
ローはそれらしい言い訳をしてチャルロスから逃れようとするのだが…チャルロスは父、ロズワードの声にアスカの事を忘れたのか震えてローの胸に顔を埋めるアスカを放って席へと向かう。
ローもアスカも、去っていったチャルロスにホッと安堵の息をつく。
そのやり取りは当然会場全ての人間が見ており、ローの行動にざわめきが生まれていた。
勿論、その中にはナミ達もおり、ローの傍にアスカがいるのに気づく。


「……ねェ…あれ…アスカじゃない?」

「え!?あ!ホントだ!…でもなんで抱き合ってるんだろ…」

「なァにィ〜〜!!?」

「ちょっと黙ってて!天竜人が居るのに目立つことしないでよ!」

「ふみまふぇん…」


ローの胸に顔を埋めるアスカを見てナミ達はアスカの存在に気付いたのだがアスカは恐怖に震わせる体と心を落ち着かせるのに精一杯なため気付いていなかった。
アスカはナミ達に場所を知らせるのを忘れており、そのためアスカがここにいる事に気付くのが遅くなったのだ。
ローはアスカの髪を撫でてやる。
そのお陰かアスカの体の震えも僅かだが和らぎ、止まっていた息も少しずつ吐き出せるようになった。
怯え、いつもの冷静さを失ったアスカをよそにオークションは進む。


≪この男、名をラキューバ!繊細な計略家として知られた海賊なのです!懸賞金1千7000万ベリー!!鍛え抜かれた肉体が自慢!"人馬"にするもよし!"力仕事"に"サンドバッグ"…用途は様々!!さて………≫

「きゃーーーーーっ!!!」

「うわっ!どうしたんだあいつ…!!」


次に新しい"品物"を取り出し紹介する。
しかし、名前・用途を説明し終え、値段交渉へと移ろうとしたその時―――オークション会場に女性の悲鳴が響く。
悲鳴を聞きアスカは大きく体を震わせ顔を上げる。
そこには厳つい男の口から大量の血が溢れ出ていた。


「ひっ…!」


アスカはその血と倒れる男を見て小さく悲鳴を上げ、ローの胸に顔を戻す。
気丈な姿を保っていたアスカだったがチャルロスが来てから急変し異常なほど怯え呼吸が荒くなっていき、どんなにローが声をかけても返す事はなかった。


「今…どうしたの!?」


ナミ達は口から血を吐き倒れてまもなく幕が閉じたことに唖然としていた。


「舌を噛んだ…」

「!」

「人に飼われて悲惨な人生を歩むより今ここで死ぬ事を選んだんだ…場合によっちゃ利口かもな」


サンジの言葉にナミは言葉を失う。


「人魚はまだかよ……!」

「恐いだろうな…ケイミー…」

「もう少しの辛抱よ!私達が買っちゃうんだから!!スリラーバークのお宝があってよかった…!」


フランキーとチョッパーの言葉に気を締め、ナミは番号札を握り締める。
しばらくすると舞台は血など見当たらず綺麗になっていて舞台脇には大きな物が布を被らせられていた。


≪―――というわけでNo.16海賊ラキューバは緊張屋で鼻血を吹いて倒れてしまった為ご紹介はまた後日という事にっ!!≫


何とか場凌ぎのディスコの話で客が帰ることはなく、逆に客を笑わせ大盛り上がりだったが、ナミ達は笑えなかった。


≪しかし皆様っ!これからご紹介させて頂きます商品はこんなトラブルが一瞬で吹き飛ばしてしまう程の〜〜〜ォ!超〜〜ォ目玉商品っ!!!ご覧下さい!このシルエット!!探し求めておられる方も多いハズ!!多くは語りません!その目で見て頂きましょう!!≫

「おお!まさか!!」

≪魚人島からやって来た!!"人魚"のォケイミ−〜〜〜〜!!!!≫

「「「うおおおお〜〜〜〜〜〜!!!!」」」

「本物だ!若い人魚〜〜!!」


布をどかし出てきたのは大きな金魚鉢のようなモノに入れられて鎖に繋がられているケイミーの姿だった。


「!」

「ケイミー!!ケイミーが出てきたぞ〜〜〜〜!!」

「ペイビ〜〜〜〜イ!!!」

「よ〜し!奪い返すわよっ!!ウチは限度2億あるんだからね!!!!」



アスカはケイミーという名前に反応し震えていた体が少し収まり顔を上げる。
後ろではナミ達がケイミーを買い戻そうと躍起になっていた。
――――しかし…


「5億で買うえ〜〜!!5億ベリーィ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

「は…」


チャルロスの言った大きすぎるその価格に周りは唖然とし、静まり返った。

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