「じゃまた!ホント気軽に呼んでくれよ!若旦那達が無事魚人島へ出航できる時までおれ達が手足となるからよ!!」
「おう!ありがとなお前ら!」
「もうウインクやめてしまえ」
何とか逃げ切ったルフィ達はデュバス達のお陰で全員シャッキーの店に着くことが出来た。
去る間際、デュバルが途中で寄ったケイミーを攫ったピーターマンから奪ったケイミーのリュックをケイミーに渡す。
「お!それと人魚さんコレね。ピーターマンのバカ野郎が持ってやがったぜ!」
「あ!私のリュック!!あ…ありがとう!」
「さァ行くぞ!"人生バラ色ライダーズ"」
「イエス!ハンバラ!!」
「掛け声いろいろ変わるな」
「しっくりくんの探してんだろ」
ケイミーにリュックを渡した後デュバス達は楽しそうに、そして華麗に去っていった。
「では 急いで中へ」
「ハチとアスカを安静にしなきゃ!!」
レイリーに言われチョッパーも急いで階段を上がり、店に入る。
「おいシャッキー!今帰ったぞ!」
「あらレイさん、お帰り…早かったわね?モンキーちゃん達よく見つけたわね」
「ハチとこの子が大ケガをしてなァすぐにベッドを」
「大変!何があったの!?はっちゃんにウサギちゃん!」
シャッキーはハチとアスカを見て急いでベッドを用意する。
ハチは話しながら、ということでベッドを持ってきてくれたがアスカはシャッキーの部屋で眠らせてもらっていた。
「ん…」
アスカはふと目を覚ます。
「あ!アスカ!!起きたのか!?」
アスカが目を覚ました時、扉が開けられ、中からはチョッパーが入ってきた。
チョッパーはアスカが目を開けているのを見て嬉しそうに駆け寄る。
「……………」
「頭痛むか!?他に痛むところはないか!?」
「…………………」
「アスカ?」
しかしアスカからは何も反応がなかった。
目を覚ましているのにその目はチョッパーではなく天井を見ていた。
アスカの様子からただ目を開けている状態にしか見えず…チョッパーは声をかけることができなかった。
「アスカ…」
なにも言わないアスカにチョッパーは戸惑うがアスカの体が震えているのに気付き、そっと部屋を出る。
「ルフィ!」
「ん?ふぁんだ?」
チョッパーはアスカの様子にすぐ1階へ降り、冷蔵庫のものを食べているルフィに声をかける。
「アスカの事だけど…」
「起きたの!?」
アスカの名前にいち早く反応したのはナミだった。
ナミは座っていたソファから立ち上がり嬉しそうにし、他のメンバー達も安堵する。
たがチョッパーは浮かない表情を浮かべているため、ナミは首を傾げる。
「どうした?チョッパー……まさか何かあったのか!?」
「あ!いや!違うんだ!大丈夫!!アスカはちゃんと目を覚ましたよ!!」
「そう…なら何かしら?」
ロビンの問いもチョッパーは言葉を濁す。
そんなチョッパーにルフィは『よし!』、と膝を叩き立ち上がる。
「ルフィ?」
「チョッパー、知らせてくれてありがとうな!」
「え…う、うん……」
ニコッといつもの笑顔を浮かべ、ルフィは2階へあがって行った。
それをチョッパーは複雑そうに見送り、俯く。
「ねェ、何があったの?アスカは大丈夫なの?」
「うん…パッと見は大丈夫そうだったんだけど…」
「パッと見…?診察はしてないのか…」
「……アスカの問題は体の傷じゃないんだ…」
「心の傷か…」
「………うん…」
サンジの言葉にチョッパーは小さく頷く。
するとナミがゆっくりと口を開いた。
「私…アスカのあんな声初めて聞いたわ…普段は冷静なアスカが取り乱して叫んだ姿なんて今まで見たことなかった…それに人があんなにも人形のように無感情になれるだなんて…」
「それほど天竜人はあいつの心を傷つけていたって事だろ……」
「…………」
ゾロの言葉にナミは黙ってしまう。
みんなも口を閉ざし、その場は氷の音が響くだけで静まり返っていた。
あの時、いなかったロビン、ウソップ、ブルックは後から事情を聴いているためみんなと同じく浮かない顔を見せる。
ナミ、ゾロ、サンジ、チョッパー、フランキーはあの焼印が頭に焼きついて離れず、そしてその時のアスカの初めて聞く悲鳴に似た叫びが耳に残っていた。
重々しい空気の中シャッキーは静かにタバコの煙を吐き出し、レイリーは黙ってお酒を煽る。
重々しい空気をかもし出す仲間をよそにルフィはアスカがいる部屋へと入る。
ベッドにはアスカがチョッパーが出てってた時と同じく仰向けで横たわっていた。
ルフィはゆっくりアスカの横に移動するとアスカはただ目を開けている、という感じで瞳に何も映してなかった。
そんなアスカを見るのは幼い頃以来でルフィは自然と眉をひそめ、微かに震えている手を握る。
触れても少しも反応しないアスカにルフィは手の力を微かだが強める。
「アスカ」
「………………」
「アスカ…下にな?あのロジャー海賊団の副船長が居るんだ」
「………………」
「レイリーっていうおっさんなんだけどシャンクスの事知ってるんだってよ!」
「………………」
「知ってるか?シャンクスってロジャー海賊団の船に乗ってたんだ!!」
「………………」
ルフィは話しかけるもシャンクスの名前にも反応しなくなったアスカに段々声も小さくなっていく。
そしてその場は完全に音がなくなり静まり返ってしまった。
「………なァ、アスカ…あいつらに話してやらないか?」
そのままお互い動かずしばらく経った頃、ルフィが口を静かに開いた。
ルフィが言ったのはナミ達にアスカの秘密を話そうということだった。
俯いていたルフィにはその言葉にアスカが反応して顔を向けている事には気付かず続ける。
「アイツのせいで知られちまったけど…アスカにとって死ぬより辛いって言うのは分かるんだけどよ……もうこれ以上隠すのは無理だとおれは思う…」
「……………」
「このままじゃ絶対アスカはダメになっちまう…そんなのおれ嫌だ……」
「…………」
ルフィは眉をひそめ目を瞑り繋げている手の力を強める。
そんなルフィをアスカは何も言わず見つめていた。
「アスカがいたからおれはここまで来れたし、どんな敵にだって立ち向かえる事が出来たんだ…姉ちゃんやエースだってそうだ…サボも、きっとそう思う………」
「………話しても…」
「!」
アスカが初めて口を開き、ルフィはハッと顔を上げる。
アスカはまだ無表情だったが瞳はルフィを映していた。
「話しても何も変わらない…また天竜人に怯えて苦しいだけ……今度は仲間に負担をかけることに怯える日々が始まるだけ…」
「ちげェって!!…絶対違う!!姉ちゃんが言ってたじゃねェか!心の奥に閉じ込めるより人に話した方がいいって!!!あいつらは絶対受け入れる!!村の人たちだってそうだったじゃねェか!!!」
「…………っ」
ルフィの言葉にアスカはくしゃりと顔を歪めて涙を流した。
顔を横に向いている為に涙は横に流れていくが初めて感情を出した事にルフィはホッと胸を撫で下ろす。
「ッ知ってる…でも……恐いの…っ」
「アスカ…」
「恐いの…ルフィ…ッ、みんなに、奴隷のことを知られる事より話すことが…言葉に出してしまったら私はどうなるか分からないっ……もう、ルフィと…みんなと冒険が出来なくなるかもしれない…――――私はまだ奴隷だから…っ」
「!!―――アスカは奴隷じゃねェって子供ん時にエースもサボもおれも言ったじゃねェか!!!」
アスカはルフィの言葉に弱弱しく首を振り、顔を戻して再び天井を見つめる。
思い出すのはチャルロスの言葉。
「あいつ…私を探してた……間違えて売ったって言ったからまだ諦めてない…絶対みんなの荷物になる…だから…」
「おれは船を降りるのは許さねェからな!」
「…!」
天井を見つめていたアスカだが顔をルフィへと戻し目を丸くさせる。
ルフィはどこか怒ったような顔でアスカを見ていた。
「お前荷物になるからって天竜人のとこ行こうとしてただろ!!そんなことぜってェ許さねェ!!!そんなことになったらエースと姉ちゃんに怒られるぞ!!」
「でも…」
「でもも何もねェよ!!おれがダメって言ったらダメだ!!」
「ルフィが許さなくたって天竜人は……」
「おれ達は海賊だ!奪われたら奪い返せばいい!だからアスカはおれ達を信じて船に乗ればいいんだ!アスカが奪われたってゾロもナミもウソップもサンジもチョッパーもロビンもフランキーもブルックもお前を奪い返しに行く!絶対もう辛い思いなんてさせない!!!」
「ルフィは……?」
「?」
ルフィは首をかしげアスカを見つめるとアスカはジッとルフィを見つめていた
「ルフィは……助けに来てくれないの?」
「…!……行く!どんな奴が相手だっておれは真っ先に助けに行くぞ!!!」
ルフィは何度も頷く。
そんなルフィにアスカは初めて笑みを浮かべ、ルフィの手を握り返した。
ルフィもそれに応えアスカの手を握り返す。
「約束」
「ああ!約束だ!!」
アスカは起き上がり、ギュッとルフィに抱きつき、ルフィもアスカの背中に腕を回して力強く抱きしめ返す。
ルフィの体温を感じながらアスカは瞳を閉じる。
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