※過呼吸の表現があります。
処置法を間違えているので、不快に思う方は即刻閉じてください。
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ルフィ達はレイリーと別れ、作業が終わる3日後に集まる事となる。
ビブルカードを貰いレイリー達と別れる。
「まさかこんな所で海賊王のクルーに会えるとは驚いた…」
「ん?」
行く当てもなく歩いているとフランキーがしみじみと呟く。
「なんつーんだ…もの凄ェ威圧感だな…ジジイのクセによ…」
「まァ…"ロジャーの仲間"っつったら一番に名の挙がる男だからなァ」
「そ?普通にどこにでもいるおじさんだったじゃん」
「そりゃお前にしたら、だろ?おれ達からしたら雲の上の存在っつーか……」
「そういえばお前妙に気に入られてたもんな…」
「そうだな、シャンクスの娘は孫同然だとか言ってたし…シャッキーっていうおばさんだって服がないアスカの服を楽しそうに選んでたし…すげェじいちゃんとばあちゃんを持ったな」
「凄いのかな??」
「あれだな、マヒしてんだなお前」
「ああ、感覚がマヒしてんぞ。あの四皇が父親で幼馴染の姉が四大将の1人で、その父親が革命軍の親玉で、祖父が中将で……なんと贅沢なマヒだな、おい」
「ああ、贅沢だ」
「……………」
「「アダダダダ!!」」
贅沢、贅沢、とうるさいウソップとフランキーにアスカは癪に障ったのかムスーッとして2人の頭をウサギに噛ませる。
2人は激痛に悶えるも仲間達は総無視。
逆にアスカがいつも通りでホッとしていた。
すると目の前に誰かが立ちふさがる。
「ま、待て…!!」
ほのぼのしていると目の前に人影が現れ、その影を見ればアスカは目を見張り息が詰まった。
体が震え立っているのもやっとである。
その目の前の人影に怯えているアスカに気付き傍にいたサンジやナミ達がアスカを背の影に隠しアスカを庇う。
「だれだ?あれ」
「…人間屋の人間だ…ステージに立って奴隷たちを売りさばいていた奴だ」
「…へェ…」
その人影とは…人間屋のステージで人や巨人、人魚などを売っていたディスコだった。
ルフィは初対面なため首をかしげていたがサンジの言葉にルフィの表情が変わる。
それに気づかないディスコは震える手で銃をルフィ達に向ける。
「そ、そいつを渡してもらおうか!!麦わら海賊団!!」
「そいつ…?」
「そこの奴隷だ!!」
「―――あ゙ァ?」
ハッハッ、と浅い息を繰り返すアスカにチョッパーが駆け寄り、人型になって丸まるアスカの背を擦る。
『アスカ、ゆっくり息を吐くんだ…!』というチョッパーの声が遠くから聞こえるような気がしたが、アスカはチョッパーの暖かな声や背中を擦ってくれる手、そしてナミも傍にいるのか声をかけてくれるその声にアスカは従ってゆっくり浅い息を吐き出す。
ディスコはあの億越えのルーキーが3人もいる海賊団…それも世界政府に喧嘩を売り天竜人をも恐れない海賊団を前に怯えていたが、立っていられないのか肘をつきチョッパーに支えられ、ナミやロビン、ウソップやブルックやフランキー、サンジやゾロ…そしてルフィ達に守られているアスカを指さした。
仲間を『奴隷』呼ばわりするディスコにゾロが思わず低く声を零し刀を弾き前にいるルフィの傍に出る。
サンジも同じくゾロと反対のルフィの傍に出て、ディスコは海賊達の恐ろし気な表情にディスコは『ヒイッ!』と情けない声を上げたが、バックにはもっと恐ろしい人物が控えていると思うとその恐怖も耐えれた。
「そ…そいつはチャ、チャルロス聖の奴隷だ!!返してもらおうか!!」
「おい…てめェふざけてんのか?アスカちゃんが奴隷?んなわけねェだろうが!アスカちゃんはアスカちゃんだ!!奴隷でもなんでもねェ!!」
「そうだ!!アスカはおれ達の仲間だ!!人を人とも思わねェてめェらなんかに渡すか!!」
「ふ…!ふ、ふざけてんのはお前らの方だろ!!そいつがチャルロス聖の奴隷だっていう証拠はお前らも見ただろ!!そいつはどれ―――」
「――――おい」
「…ッ!!?」
ナミがチョッパーに支えられているアスカを心配そうに見つめれば、アスカの顔色が悪いのに気づく。
冷や汗が流れ過呼吸になりはじめており、チョッパーはディスコを睨んでいた顔をアスカへと向けアスカに息を吐き出すよう必死に、しかし落ち着いて声をかける。
ひ、ひ、と息を吸うしかできなくなったアスカの苦しそうな声を聞き…ルフィは怒鳴りつけるディスコの言葉を遮った。
静かな低い声にディスコはビクリと肩を揺らし、ルフィへ顔を向ける。
あの…天竜人を殴り飛ばした時のように恐ろしい表情を浮かべ殺さんばかりに睨みつけるルフィにディスコは生まれて初めて『死』を覚悟した。
ルフィは顔を青ざめ体全体を震わせるディスコをよそに、ポキ、と手を鳴らす。
「もうお前喋るな」
「お、おい!!待て!!ちょっと待ってくれ!!こ、これには深いわけがあるんだ!!"アレ"を欲しているのはおれでもチャルロス聖じゃない!!"アレ"を欲しているのはドフ――――」
一歩、また一歩とルフィは確実に足を地につけディスコに近づく。
それが死への秒読みに感じ、ディスコは洗いざらい吐こうとした。
理由としてチャルロス聖の奴隷だから返せとしようとしたが、よくよく考えれば天竜人を殴り飛ばした奴らである。
チャルロス聖の奴隷だろうが他の天竜人の奴隷だろうが関係ない事は明白で、焦りすぎたのかディスコはそこまで頭が回らなかった。
ルフィを止めるため本当の訳を話そうとしたディスコの顔面を…ルフィは殴り飛ばした。
戦闘員でもなんでもないディスコは思いっきり吹き飛び、気絶する。
「だから…喋るなって言ってんだろ」
痙攣しながら気絶するディスコにルフィはそう零した。
ゾロは『またヤリ損かよ』と不満そうに零しながら刀を鞘に納め、サンジも加えていたたばこを思いっきり吸い込んで煙を吐き出す。
「アスカ…っ!!」
「…!」
フラインキーやウソップ達もルフィが思いっきりディスコを殴り飛ばしてくれたおかげでスッキリとさせ、ニッと笑って見せていたが、後ろからナミの切羽詰まった声にルフィ達はハッとさせ後ろを振り返る。
そこにはチョッパーが背中をさすりながらアスカに声をかけているのが見え、アスカはあれから過呼吸が収まらず息を吸い込みすぎて気を失いかけていた。
人間屋の時も軽く過呼吸になっていたのだが、ケイミーを助けたいという思いで自分を自分で制御していたのだろう。
しかし、今はケイミーは助け出されその強い思いがすでにない。
アスカは息を吐き出したいのに吸う事しかできなかった。
「アスカ!!」
「ル…ッ―――、」
ルフィは息が吐けない幼馴染に真っ先に駆け寄った。
駆け寄ってみればアスカの顔色が青色どころか真っ白に変わり始めていた。
ここまで酷くなるのはルフィも初めてで、ルフィはパニックを起こしかける。
「アスカ!!アスカ…!!おれを見ろ!!」
俯くアスカの頬を手で覆って無理矢理顔を上げさせ、ルフィはアスカに声をかける。
アスカは苦しさから目をギュッと瞑っていた瞳をルフィの声で開けた。
苦しさから涙が溜まり定まらない視界でアスカはルフィを見ようとする。
しかし息は吐きだされるどころか吸うばかり。
落ち着かせようとルフィやチョッパーが声をかけてももう気絶しかけているアスカの耳には届いていない。
「ふ、袋…!!誰か袋持ってないか!?」
「袋!?」
「過呼吸は声をかけて落ち着かせた方がいいんだけど…今は手段を選んでる場合じゃないんだよ!!袋で二酸化炭素を吸わせないと…!!」
本当は袋の対処法は危険である。
下手をすれば窒息死するためできればアスカ自身落ち着くのを待っててやるのが一番いい方法ではあるのだが…今は手段を選んでいられなかった。
医師として間違っているやり方だと思っているが医療器具がないこの場所での対処法は限られている。
手を尽くせるならば、と思い袋を持っていないかと仲間達に聞いた。
しかしそう簡単に袋を持っているわけではなく、サンジがジャッキーの店まで走ってもらってくると言って背を向けかけたその時――――アスカの顔を覗き込んでいたルフィがゆっくりとアスカに近づき……己の唇でアスカの唇を塞いだ。
「は…ッんぅ―――っ」
ルフィは袋で口を塞ぐ、というチョッパーの言葉にパニックになっていたその頭で考え、そして考えた結果がキスだった。
二酸化炭素という言葉はよくわからないルフィだがとにかく口を塞げばいいと安直に考えた。
アスカは意識を朦朧としておりルフィにキスをされているのに気づいておらず、息を吐こうと必死で苦しさから逃れようとルフィの服を掴み縋りつく。
「な、なにしてるんだよルフィ!!」
「そ、そうよ!!こんな時に何してるのよ!!」
「ちゃんと空気が入る隙間も作らなきゃいけないだろ!!」
「「「そういう問題!?」」」
我に返ったのはチョッパーだった。
チョッパーの怒鳴り声でナミも我に返り、こんな時にキスをするルフィを叱る。
だが、チョッパーは口と口をぴったりとくっつけるルフィのやり方に異議を申し立て、キスしているから怒っているわけではないのかと全員のツッコミが入った。
ルフィはパニックになっている頭でもチョッパーの言葉は理解したのか、少し口を放し、そしてまたくっつける。
キスというには色気のないやり方だが、アスカは次第に息を吸い始め二酸化炭素を取り入れはじめる。
「んっ……ん、ん…」
ぎこちないキスから次第に摘まむようなキスへと変わっていき、アスカの顔色も戻ってきた。
やり方も分かってきたのか角度を変えて啄ばむようなキスに変わる。
「る、ふぃ…」
「!、アスカ…!!よかった…!!落ち着いたのか!?」
顔色も真っ白から良くなっていき、瞑っていた瞳が開けられ、アスカは濡れた金色の瞳にルフィを映す。
はっ、とまだ息が荒くなってはいたが、ちゃんと吐き出せるようになり、過呼吸が治ったアスカにルフィは顔を放し嬉しそうに破顔させる。
アスカは酸素が少ないからか、ルフィにキスされた事には気づいておらず、嬉しそうに笑うルフィをぼうっと見つめていた。
すると…
「んぅ…ッ!?」
ルフィはもう一度アスカにキスをした。
それも深く。
キスは一度だけだったが、アスカはルフィが自分にキスをした事に目をまん丸にさせて驚き、周りにいたナミ達はそれ以上に驚いていた。
サンジなんて可愛いアスカにルフィが過呼吸を治そうとしたキスの時からすでに意識なく地面に倒れ込んでいた。
ゾロは溜息をつき、ウソップは顔を赤らめ年相応の反応をし、ロビンは『あらあら』と年上の女性としての反応を見せ、チョッパーはアスカの過呼吸が治まった事を純粋に喜んでおり、ブルックは『おやおや!ヨホホホ!』とロビンとは少し違い孫の可愛い一面を見たように微笑ましく見守り、フランキーは呆れていた。
そして…
「ルーーフィーーーー!!!なァに私のアスカをキズ物にしてんのよあんたァァァァ!!!」
「ギャーーーーッ!!」
ナミは鬼と化し、ゴムであるルフィの頭に大きなタンコブを作り上げた。
「…!?…!?」
キスをされた本人と言えば…口を手で押さえ目をまん丸にさせルフィを驚いた表情で見つめていた。
どんな男からキスされようがセクハラされようがセックスしようが平気なアスカだが、流石に身近な人にキスされると驚いてしまうらしい。
「イッテェ!!何すんだよ!ナミ!!」
「何すんだよ!はこっちのセリフよ!!あんたなにアスカにキスしてくれるわけ!?」
「嬉しかったからしただけじゃねェか!!それのどこがいけねェんだ!!」
「どこもなにも!!キス自体が駄目なのよ!!あんたは男!アスカは女!!しかもあんたのキスした場所は唇!!全てが駄目!!全部駄目!!むしろあんたの存在が駄目!!」
「全否定かよ!!!んだよ!!ほんと、何がいけねェんだよ!!アスカとおれの仲だから別にいいだろ!!」
「あんたとアスカの仲ァ!?それって幼馴染だからァ!?だからなによ!!だから理由になるわけ!?ならないわよ!」
「なる!!」
「ならない!!」
「なーるー!!!」
「なーらーなーいー!!」
あんなにも静まり返っていたのに、今ではギャアギャアと一気に騒がしくなっていた。
アスカはもうルフィにキスされたことの驚きも落ち着き、立ち上がって二人が落ち着くのを待っていた。
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