その日の夜。
今夜はマキノが夕ご飯を作ってくれた。
マキノから離れないアスカも台所へと向かおうとしたのだが…アスカの家庭能力ゼロを知っているエースやダダン達は必死にアスカを引き留め、これまでにないエース達とダダン達の息の合った協力によってアスカはエース達と遊んで夕飯まで待つことにした。
アスカが台所ではなくエース達と外で遊びに行ったのを見てダダン達はホッと心から安堵をした。
「お口に合うといいけど」
帰ってくる頃にはすでにテーブルが置かれ、その上に豪華な食事が並んでいた。
豪華と言っても高級食材を使った物ではなく、普段肉を焼くだけの食事をしているアスカ達からしたら豪華そのものである。
山賊達も普段食べない調理方法の食事に大いに喜んでいた。
「マキノ、村長!私もね、料理できるようになったんだよ!」
「そうなの?すごいじゃない、アスカ!」
「ほう!アスカも料理が出来るようになったのか…今度わしらにも作ってもらうとするかの!」
「だ、駄目だぞ!村長!!アスカの料理食べたら死ぬぞ!」
「し、死ぬ…?」
「死なないもん!」
「死ぬよ!!大体アスカの料理って焦げたもんばっかじゃねェーか!それ料理って言わねーぞ!食べたらなんか未知な味するしよー!」
「うるさいな!焦げても火が通れば料理でしょ!?っていうか私の料理食べてまずいっていうのルフィだけなんだからね!エースとサボやダダン達は全部食べてくれたよ!」
「馬鹿だなー!それ気を使ってんだよ!な!エース!サボ!!」
「「――ぐ…ッ!?お、おれに振るなよ!ルフィ!」」
アスカは相変わらずマキノと村長の間に座ってご飯を食べ、口の中に入れていた物を呑み込んだ後、マキノに料理が出来るようになったことを報告する。
村にいた時の家事は全てルフィの姉であるミコトがしており、アスカやルフィは子供の仕事である外で遊んでいた。
ミコトが村を出て海兵になると聞いた時は、村長もマキノも二人ともこちらが預かって世話をしようと思っていたのだが、ガープが知り合いの山賊に預け2人とエースを海兵に鍛えると言い出したのだ。
正直、ルフィはまだしも、女の子のアスカも海兵にするというのは少々承知しがたいと村長は思っていた。
村長から見て、ルフィもアスカも可愛い孫のような存在である。
勿論、ミコトもだが、アスカはミコトのような力はない。
能力者であるのは知っているが、ウサギなど可愛いとしか言いようがない能力が戦闘に役に立つとは思えないし、何よりアスカはまだ子供である。
これからアスカは成長して、海兵となったルフィと結婚して子を産んで幸せな人生を送る…村長が描いているアスカの未来図はこうだった。
村長も村長で村人たちと同じくアスカはルフィとくっつくと思っているらしい。
勿論、マキノも、仲のいいアスカとルフィが一緒になってくれればいいな程度だが思っている。
そんな可愛いアスカを海兵にさせるなど反対したのだが、あのガープの性格上諦めないし人の話を聞かないのを知っているため諦めてはいる。
そんなアスカが女の子らしい料理を覚えた事に村長はなんだか孫の成長を見たように感激していた。
…がルフィ情報によるとアスカの料理はまずいらしい。
どうやらアスカの料理は全て焦げており、食べれば今まで食べたことのないよくわからない味がするらしいとの事。
それを二人に警告すれば、アスカはむすっとさせルフィ以外は食べてくれたと反論する。
だが、それはただアスカが傷つかないようにという配慮しただけで、本当はエースもサボもアスカの料理はまずいと思っていた。
ダダンはハッキリと言いそうになったが、アスカの涙目に負けたらしい。
が、やっぱりマズイ物は変わらないのか、絶対にアスカに台所には立たせないようにしている。
エースもサボも話を振られ2人(主にアスカ)の目線に耐えきれずそっと目を逸らす。
ルフィもアスカもどちらも彼らからしたら可愛い末っ子達なためどちらも傷つけたくはないのだろう。
サボは『マキノさんの料理はうまいなー』と無理矢理話を逸らす。
「や、やっぱ航海に美味い飯は欠かせねェよな!海に出たらまず一番腕のいい料理人を仲間にするぞ!」
「おれが最初に海賊になるからそいつは無理だな」
「ずるいぞ!おれが一番に海賊になるんだ!」
「だから私もなるんだけど!海賊…!!」
「「「だから!アスカはおれの船に乗せるって言ってんじゃん!」」」
「…………」
話を逸らすのは成功したのか、若干不機嫌さを残しながらもアスカはまた自分をのけ者にして将来の事を言い合う三人に手を上げた。
だが、やっぱり三人に言い返され、アスカは口を閉じため息をつく。
しかし、そんな三人のやり取りを食べながらなんとなく聞いていた山賊達は口に入れていた物を全て吹き出し、何故か突然食べた物を吹き出す山賊に三人はキョトンとさせ首を傾げる。
アスカはマキノと村長の間にいたため、山賊のように吹き出しはしなかったが、"ソレ"を見てまだ口に入れたばかりの物を呑み込んでしまった。
そんなみんなの反応に怪訝とさせていると…背後から咳払いがし、その咳払いの声に聞き覚えありすぎるエースとルフィはあっという間に顔を真っ青に染め上げる。
怖々と後ろを振り返ればそこには…
「まーだそんな事をいっておるのか!」
ルフィの祖父であるガープがいた。
ガープの姿にルフィもエースも山賊達と同じ反応をし、吹き出した。
「お前らがなるのは海兵じゃと言うのがわからんのか!!」
ガープはまだ『海賊になる』と言うエースとルフィに十八番の拳骨を落とす。
「ダダン!!」
「はい!ガープさん!」
たんこぶを作って倒れるエースとルフィを見下ろしながらガープはダダンを呼んだ。
恐怖のガープに呼ばれ『ひい』と小さい悲鳴を心の中で叫びながら素早くガープの元へと向かうと…何故かダダンの頭にもガープの拳骨が落とされた。
「な…何で…あたしまで…」
「ガキ共の教育がなっとらんようじゃな!」
この拳骨は教育不足によるものらしいのだが、ダダンはジンジンと痛む頭で『いや、このガキどもを制圧できるのはあんただけだから…』と思ったとか思ってないとか…
そんなダダンやエース、ルフィをよそに、アスカは久々のガープに嬉しそうに笑顔を浮かべ、ガープの元へと駆け寄った。
「おじいちゃんっ!!!」
「おお!アスカ〜!元気にしておったか〜!!―――ってなんじゃこの首輪はァァ〜〜〜〜!!!」
可愛い可愛い孫娘の姿に先ほどまで鬼の形相だったガープは一瞬にしてデレッと鼻の下を伸ばし、しゃがみ手を広げてアスカを待つ。
アスカは思いっきり祖父の胸に飛び込み久々のガープにギュッと抱き付いた。
抱き付くアスカが可愛くてガープもアスカが苦しない程度にギュッと力を入れて抱きしめ愛でる。
だが、いつもならウサギになってこの胸に飛び込んでくるアスカがウサギにならない事に疑問に思い、どうしたのかとアスカを見れば、可愛いアスカの細い首にアスカに似合わない首輪があるのを見て、ガープはぎょっとさせる。
アスカは『ど、ど…どうしたんじゃ!?』と問うガープに事情を話す。
勿論、誤魔化せるところは誤魔化して。
アスカの言葉にガープは『なーーにーーー!?』と怒りの声を上げた。
「わしの可愛いアスカを売るじゃと〜〜!!?ふぬー!ゆるさーーん!!アスカ!そのポルシェーミとかいう輩の居所を教えるんじゃ!!わしのアスカに首輪をつけただけでなく売ろうとしたとは…!!捕まえて首を飛ばすだけじゃ気がすまんぞ!!」
「ね、おじいちゃん!そんな事よりこの首輪、取って!私これ嫌いっ!」
「おーおー…そうじゃろうそうじゃろう…可哀想になァ…しかしこの首輪は海楼石で出来ておるからのう…鍵を作るにも数日かかるんじゃよ…」
「えー!」
「す、すまんのう!アスカ!!じゃが海軍に戻って作らせるから辛抱してくれんか?」
祖父であればこの海楼石の首輪は取れると思っていた。
しかし実際は能力者でもないためガープは無理な話しであり、勝手に期待していたアスカはガープの言葉にムスッとさせる。
孫のように可愛がり目に入れても痛くないアスカの機嫌が損なわれ、ガープは慌てふためく。
ガープの言葉にアスカは頬を膨らませプイッとガープから顔を背け、ガープはガーン!とショックを隠せなかった。
「…あれがエース達のおじいさん…なんか…話に聞いてたのと違うっていうか……ただの孫馬鹿じゃねェか…」
唯一ガープの鉄拳を受けていないサボはエース達から聞いていたガープ像とのギャップに驚いていた。
どちらかと言えばエースとルフィのガープ像よりも、アスカのガープ像の方が正しい気がする。
他人事のように思っていると、不意にアスカの機嫌を何とか直したガープと目があった。
ガープと目が合った瞬間『あ、やべェ』と何故か思う。
「お前も海に出るとか抜かしておったな!」
アスカの機嫌も直り、ガープは先ほどの会話を思い出しサボも海賊になると言っていたことを思い出す。
サボは海賊という単語は言ってはいないが、二人の言葉から察してサボも海賊になるのだと分かったらしい。
恐るべし、野生の勘。
矛先がエースとルフィから自分へと変えたガープにサボは『げっ!』と顔を引き攣らせ、そんなサボの前にルフィが庇うように出た。
「坊主じゃねェ!サボだ!俺達は一緒に兄弟の杯を交わして海賊になるって誓ったんだ!」
ルフィはルフィなりにサボを庇った。
…が、墓穴を掘ってしまう。
ルフィからしたら兄弟の盃を交わしたサボを『坊主』呼ばわりされるのが嫌だったらしく、訂正と追加をしたルフィにエースがジンジンと痛む頭をそのままに『また余計なことを…』と小さくぽつりと呟くように突っ込んだ。
「ほ〜…そりゃァ、つまり…ワシに扱いて欲しい馬鹿者が三人に増えたということじゃな?」
「「「え゛?!……えーーー?!」」」
「逃がさんぞォ!」
ガープはエースとルフィの他にも鍛える子供が1人増えたと結論づけた。
ガープは元々2人を海兵にさせるためにダダンに預けたため、1人子供が増えたとしてもその子供も海兵にさせればいいという思考なのだろう。
ガープの結論に三人は慌ててガープから逃げるため外へと向かって走り、そんな三人にガープは腕の中にいるアスカを降ろしてやり、三人を追いかけに外へと向かった。
アスカは外から聞こえる三人の悲鳴と、祖父の楽しそうな声を聞きながら美味しいマキノの料理に舌鼓を打つ。
翌朝、アスカは三人の悲鳴とガープの声によって目を覚ましたという。
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