(259 / 293) ラビットガール (259)

ルフィを極寒地獄へ追った後、ハンニャバルの元へ向かったマゼランは己の目を疑った。


「…………!…これは一体どういう事だ!!ハンニャバル!貴様がいながら……!!兵士全滅とは…!目を覚ませハンニャバル!ここで何があった!!」


マゼランの目の前には獄卒が全て倒され、ハンニャバルも血だらけで倒れていた。
すぐ気を失っているハンニャバルの首に手をやり目覚めさせる。


「ぐえっ!!ぐえーーっ!!あ!しょ…署長!!手を離して〜〜!!!」


力を入れられてしまう、首が絞まってしまったハンニャバルは手でマゼランの顔を叩き離してもらう。


「ぶへ…!も!申し訳ありません………!!油断しました………!!」

「ご…拷問はやだガネ〜〜〜!!」

「畜生あのウサギとオカマ野郎!おれ達を見捨てやがって〜〜〜〜!!!」


傍には置いていかれたバギーとMr.3が叫んでいた。


「犯人は…オカマの拳法使いとウサギ使いで………何というかフイをつかれたというか…」

「言い訳はいい……階段で上階へ逃げられたんだな…?」

「その囚人はクロコダイルの『バロックワークス社』で"Mr.2"を名乗っていた男でして…!あ!オカマでして!!」

「どっちでもいい」

「レベル3の囚人です…捕まるのは時間の問題かと……」


それを聞き、マゼランはレベル2の暴動を聞く。


「レベル2の暴動はどうなった」

「ほぼ鎮圧されている様で……」

「このレベル4に集めた兵をそのままレベル3へ押しあげろ…サディちゃんに指揮を執らせ、獄卒獣も解き放て!!後は任せる」

「ハイ…この捕らえた二人は…」

「好きにしろ…!さっさと掃除を済ませて早くいつものインペルダウンへ戻せ…!おれはこれより"閉ざされた場所"へ赴く」

「ゲリですね」


マゼランはそう言うとバギー達を見ず去っていく。


「おい!貴様らも早く起き上がって最後の逃亡者を探しに行け!!」

「い…痛てて…」

「は…ハイ!!すぐに!」

「あ、この二人をどうしましょうか?」

「あァ…こいつらには聞きたい事がある。尋問部屋を開けろ!お前は私について来い。」

「了解しました」


指差された獄卒は立ち上がり二人の囚人達の紐を引っ張って立たせる。
そして拷問室へハンニャバルと共に向かい、バギーとMr.2を中へ投げ込んだ。


「ぐえっ!」

「うご!」

「それでは副署長」

「ああ」


扉が閉められ、鍵をかけた瞬間、バギー達が起き上がり座り込んだ。


「ハァハァ…助かったぜ…」

「ご…ご…拷問から逃れられたガネ!よ…よし これからどうする!?」

「決まってるじゃない!急がなきゃ…一刻も早く…麦ちゃんを救出するのようっ!!!」


ハンニャバルはボン・クレーに変わり、隣に立っていた獄卒は被っていたモノを取りアスカが現れる。
2人はルフィを救出するためハンニャバルを倒し、ハンニャバルをコピーしたボン・クレーとアスカが獄卒とハンニャバルの身ぐるみをすべて奪ったのだった。


「きゅ…救出するってお前ら!!あいつはマゼランの毒にやられてレベル5にブチ込まれたって兵士が言ってただろ!!麦わらの命自体希望もねェし!!おれ達まで犬死にだ!!!」

「犬死にだろうがカマ死にだろうがカマわねェ!!!あちしはマゼランと麦ちゃんに背を向けた時すでに命をそこに置いてきたのよう…!!あの場で共倒れになり捕まるよりも!!あちしが逃げて…麦ちゃんも命さえ留めてくれたなら死んでもあんたを救いに戻って来ると!!誓いを立ててあちしは走った…!」

「誓いを立てたのはいいがてめェせっかく逃げて助かったのに!何でまたあいつの為に死に場所に戻る様なマネしなきゃならねェんだ!!」

「ダチだからようっ!!!理由なんざ他にゃいらねェ!!!!」


アスカはそう決めて言ったボン・クレーに腕を組んで力強く頷いていた。
その後1人で医務室へ向かうハンニャバル(仮)だったが、マゼランの毒に解毒剤がない事を知り拷問室へ戻り落ち込んでいた。


「ぐぬぬ……」

「見ろ…!麦わらはもう救えねェんだよ!!」

「マゼランと戦って生き長らえるなんてそんな奇跡は起きんガネ!」

「奇跡…」

「「ん?」」

「?」


Mr.3の『奇跡』という言葉にボン・コレーは反応する。


「そうよう!インペルダウンにはあの人がいた……!!"奇跡の人"オカマ王イワさん…!!医者が匙を投げた人間を!死にかけた国を!あらゆるものを救ってみせたという『救済伝説』を残してきたオカマ界"最強のスター"!イワさん!!今こそあの人を捜すしかないっ!!!」

「「「誰?」」」


『イワさん』という人物を全く知らない3人は仲良く声を揃えてそう呟いた。







「レベル5へ?」

「ああその通りだ…この罪人達は極寒の刑に処すのだ!」

「分かったら早く開けてくれ」


ハンニャバル(仮)と獄卒(仮)はバギーとMr.3を連れ、レベル5へ向かっていた。


「しっかり歩け!!」

「この囚人はその…釈放済みだったか?」


リストを見ていたハンニャバル(仮)はイワンコフの名前が消されているのを見て、前に歩く看守達に聞く。


「あァ イワンコフ……奴なら数年前に例のアレですよ…お忘れですか?副署長」

「ああ…!ああそうかアレか!アレだ!アレってわかるか!?お前言ってみろ!!」


中身はボン・クレーなため、ハンニャバル(仮)は分かってる素振りをしつつ、聞きだそうとする。


「え………囚人の前ですが…」

「いいから言え!!」


急かされ、看守は静かに呟いた。


「インペルダウンで時々起こる失踪事件です…脱獄とは明らかに違う、動けもしない様な囚人が…何の足跡も残さず忽然と姿を消す"鬼の袖引き"…あまりに不自然に人が消えてしまうこの事件をみな恐れて…"魔界の門"へ引きずり込まれたのだと喩えて"鬼の袖引き"と呼んでいます」

「人間が… 消える……!!?」


看守の言葉に4人は背筋が凍る。
すると扉も開けてないのに凍える風が4人の肌をきるように吹いてくる。


「着きました。"極寒"と"軍隊ウルフ"にお気をつけて!…ではいつもの様にお預かりしますので……」

「え?何??」

「ええ…武器とコートを!いや…我々にはとてもマネできません!!『囚人達に副署長の格を見せつけてやるのだ』と極寒地獄をいつも裸でしかも丸腰で行く様は…職員一同尊敬しております!!」

「…………!!」


なぬー!、と看守達にコートを奪われたボン・クレーにバギーとMr.3は笑いをもらす。
しかし…


「あと囚人にコートを着せるのも失笑でありますので」

「「!!!」」


2人もコートを脱がされてしまった。



「ではお気をつけて!!極寒の為電伝虫全般通じませんのでご注意を!!!!」



4人はアスカ以外がコートを脱がされた状態で極寒地獄へ放り出されてしまった。



「オ…ウオオオオオ!ウオオ 寒ィ〜〜〜〜ッ!!いや!もう痛ェ!!冷気痛ェ!!」

「グルルル…!!」

「「「ん?」」」

「ガルルルル……!!!」


獣の唸り声に顔を上げると目の前には数匹の狼が…
アスカは手袋をしている手でその数を数えている。


「1…2…3…4……あ、4匹いる…」

「おい、アレまさか軍隊ウルフじゃねェか?あいつら…何で猛獣フロアにいねェか知ってっか?」

「さァ…何で?」

「あ!私知ってるガネ!レベル2に放したらバシリスクやスフィンクス達を食っちゃうからだガネ!!何せ凶暴なのだガネ!!」

「じゃあ心してかかりましょう!!麦ちゃんを救出するわよーう!!!」

「おー!」


ハンニャバル(仮)の言葉に1人暖かい格好のアスカが元気よく手を上げる。


「グルルルル…!!!」

「えーーーー!!?逃げんの!?さっそくーーーーー!!!!」


向かってくる軍隊ウルフにバギー達は手錠を外し素早い走りで逃げていってしまった。


「食われるのはゴメンだバカ野郎!!」

「一人でやってろだガネ!!!」


もう2人の姿は米粒以上に小さかった。


「はやっ!」

「しょうがない!!2人で戦おう!ボンちゃん!!」

「んもーーー!!ジョーダンじゃないわよーーーーう!!!!」


アスカは元々2人を戦闘員として数えていなかったのですぐ向かってくる軍隊ウルフへ構える。
ボン・クレーも元に戻りながら愚痴り、構えた。
いつの間にか名前呼びになり、親密度が上がった2人は猛獣と命を駆けてルフィを救出するため戦う。







マゼランとの勝負を負けたルフィはマゼランから受けた毒にもがいていた。


「ウワァアアアア〜〜〜っ!!ゼェ!ゲフ!!ハァ…ハァ…ア……!!!」

「えれェのが入ってきたな…おれ達ァコイツの死亡見届け係か?」


囚人達は苦しむルフィを無感情に見下ろす。
するとルフィは歪む視界で前を見て前にある格子に頭をぶつ蹴る。


「無駄な事はやめろ…!そんなに毒をくらって死なんわけがあるまい…目も…やられてるな…耳は聴こえるか?」

「大人しく死を受け入れろ…」

「いやだ!死なん!!おれは… 死なねェ!!エースを助けるまでは…!!!アスカだっておれを待ってるはずなんだ……!!!」


ルフィは血を吐きながらもそう切に叫ぶ。


「誰だか助けてェのか…お前が助からねェのに…友達でも檻に入ってんのか…?バカバカしい…監獄内においては自分の命だけ守れ…!!」

「助けは来ねェ…全員が孤独だ…!」

「火の海においてはとなりの野郎を踏みつけて生き残り、怪物に遭ってはとなりの野郎をエサにして己の身を守る!人を気遣ったら命を失う!誰かを助けてェなんてクソみてェな事口にするな!!ヘドが出るぜ…!!!」


囚人達は笑い、ルフィは巨体を持つ囚人をにらみつける。
すると囚人の1人が2つの人影に気付く。


「見ろ…誰か来るぞ」

「看守じゃねェ…!職員じゃねェな…」

「裸…に子供!?」

「麦ちゃん!!………助けに来だっ!!!ゆ…!友情の!!名のも゙どに゙っ!!!」


現れたのは半裸で傷だらけのボン・クレーと同じく傷だらけで両手両足をさらけだしているアスカが立っていた
囚人達は2人の姿に目を丸くする。


「何だコイツら…血まみれで…」

「あン時あぢし逃げてごべんねい!!!」

「ルフィ!!!私ぜっだい!ひとりでエースのとこいがないがら!!!!一緒だがらね!!!」

「お前らは…何だ」

「ダヂ!!!麦ちゃん……!!アンタを死なせやしない!!!」


ボン・クレーは鍵を開けてルフィをソリに乗せる。
そしてボン・クレーが引っ張り、後ろをアスカが押していく。


「鍵…置いてったぞ……」

「脱獄か…考えた事なかったぜ」







2人はイワンコフというオカマ王を探しにレベル5を歩き回るが誰に聞いてもイワンコフの居場所は分からなかった。
すると歩き続けて数十分。
イワンコフを知っているという囚人が現れた。


「あっち見てみろ…林があるだろ?あそこに今使われてねェ看守室があんだ…あの辺から妙な男が出て来るの見たんだ」

「ホント……!?」

「行ってみな…!」


囚人の話を信じた二人は林へ歩き出す。


「あの林お前…狼の巣だろ」

「ん?そうだったか…?フフフ」


その会話も2人には聞こえず2人は軍隊ウルフの巣へと足を踏み入れた。
2人は会話もないまま歩き続け、アスカは目の前でいつ息が切れるか分からないルフィを見て涙が溢れ出そうになる。



「グルルル…」

「!」


軍隊ウルフが3人を囲い、ゆっくりと間を縮める。
2人はルフィを挟む形で構え、襲い掛かる軍隊ウルフ達を追い払おうとする。
しかし軍隊ウルフの方が圧倒的に数が多く、素早く、この寒さになれているため2人は体中を噛み付かれ血を流す。


「ギャワゥ〜〜!!!ギャウ!ギャウ!!」

「ハー…ハー…」

「麦ちゃん……!!」

「ルフィ…」


流れる血を止める余裕もなく、ボン・コレーの頭に噛みついた軍隊ウルフにいつの間にか目を覚ましたルフィが噛み付き、離れさせる。
のそっと立ち上がったルフィに二人は唖然と見つめる。


「お前らアスカとボンちゃんに……何してんだ…!!!」

「!!!」

「離れろォォ!!!!」


睨みつけるルフィに軍隊ウルフ達は怯えて体を振るわせる。
そしてルフィが声を上げたその瞬間、軍隊ウルフは全て気を失い泡を吹いてその場に倒れた。
その後ルフィも血を吐き、倒れてしまう。


「ム…麦ちゃん…何…今の…」


ボン・クレーもその場に倒れ、2人の前はいつの間にやら白とオレンジ色の変な男が立っていた。
その男は2人に手を伸ばそうとするが…


「ま…て……!」

「!」

「2人から…離れろ……!!」

「…………」


男を敵だと思ったアスカは無い力を振り絞り男を睨みつけながら近づく。
そんなアスカに男は無言だったが、ゆっくりと口を開く。


「安心しろ…味方だ」

「………証拠は…」

「ない…だが味方なのは確かだ」

「………………お願い…ルフィを…ボンちゃんを助けて……」


味方だと信じたアスカも力尽きその場に倒れてしまった。
男は3人を担ぎ、その場に消える。

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