ガープとミコトが帰り、アスカ達は同じ日常を送る。
アスカの首輪はミコトの能力で外してもらい、アスカはようやく以前の生活に戻れるようになった。
その中で独立したと森の中で4人の家を建てたり、物を盗み、特訓を重ね、ガープに投げられては向かっていき、投げられては向かっていく。
そんな日常が続き、いつかは4人で、またはバラバラに海に出るのだと思っていた。
それは4人だけではなく、ダダンやマキノ…原作知識があると言っても途中までのミコトさえ思っていた事だろう。
しかし、そんな日常は容易く壊れてしまう。
ある日――
「サボを返せよ!ブルージャム!!」
「サボー!」
サボが父と言っていた男が4人の前に現れ、サボを奪っていった。
サボの父はブルージャム達を雇ったらしく、ブルージャムはしつこく奪い返そうとするエースを部下に押さえつけて止めさせる。
返せと彼から言わせれば謂れのない言葉に三人を鼻で笑う。
「"返せ"とは意味のわからない事を…サボはウチの子だ!!子供が生んで貰った親の言いなりに生きるのは当然の義務!!よくも貴様らサボをそそのかし家出させたな!ゴミクズ共め…ウチの財産でも狙ってるのか!?」
「何だと!!?」
サボの父が言うには自分はサボを取り返し、3人が自分の息子を誑かし奪った悪者だと頭ごなしに批難する。
その父親の言葉にエースは頭にきたのか父親を睨みつけ抵抗しようとするが、ブルージャムの部下に頭を殴られてしまう。
その際、エースの血が飛び、サボの父の顔にかかった。
「エース!」
「コラ海賊!!子供を殴るにも気をつけたまえ!ゴミ山の子供の血がついてしまった…汚らわしい、消毒せねば。」
「………ッ」
ゴミ山、と見下し嘲笑っている人間の血が頬につき、父親はあからさまに嫌な顔をして拭き取る。
子供を目の前で殴られても平然とし、更には汚らしい物を見るような目でエース達仲間を見下ろす父にサボは悔しそうに奥歯を噛み締めた。
「ッやめてくれよ!…おれはそそのかされてなんかいねェ!自分の意志で家を出たんだ!!」
「お前は黙っていろ!!……後は頼んだぞ、海賊達」
「勿論だ、ダンナ。もう代金は貰ってるんでね。この2人が2度と坊ちゃんに近づけねェ様に始末しときます」
「!!、―――ちょっと待て!ブルージャム!…お父さんもういいよ分かった!」
「何がわかったんだ、サボ」
サボは"始末"という言葉に息を呑み慌てて父に"分かった"と声を上げる。
息子の言葉に父は横目で見つめ、サボはその父の問いに答えようとする。
しかし、エースはサボの言おうとした事に気づいたのか、顔を上げてサボを止めようとした。
だが…
「やめろよ!サボ!!」
「何でも言う通りにするよ…!!言う通りに生きるから!!この3人を傷つけるのだけは…やめてくれ!!お願いします…大切な…兄弟なんだ!!」
「サボ…!!」
「サボ…」
エースが止めようとしたが、それよりもサボの方が早かった。
サボの言葉を聞き、エース、ルフィ、アスカは唖然とするが、サボの父親は喜び、ブルージャムにサボを降ろさせる。
サボはそのまま3人に背を向けて去ろうとしてしまう。
「…おい……!?行くなよ!振り切れ!!おれ達なら大丈夫だ!!一緒に自由になるんだろ!!?これで終わる気か!!?サボーーーーーーッ!!!」
「…………ッ」
エースの言葉も空しくサボは三人に振り返ることなく、そのまま三人の前から姿を消した。
結局、サボは貴族のいる高町へ戻る事になり、アスカ達はブルージャムの船が停泊しているアジトへと連れてこられた。
「貴族に生まれるなんて事は頑張ったって出来る事じゃねェ。幸運の星の下に生まれるって事だ…!できるモンなら変わって貰いてェよ…おれァ貴族に生まれたかった」
「…………」
「…………」
「…………」
ブルージャムの言葉は正直アスカに入ってこなかった。
アスカはサボが居なくなったことがショックで、しかしエースとルフィがサボを連れ戻しに暴れるのを我慢しているのだからとギュッとエースの服を握って泣くのを我慢していた。
そんな三人の心情など気にも留めないブルージャムは耳にした事がある噂の4人組を見てしみじみと零した。
「評判の悪ガキ4人組の一人は貴族だったわけか…"高町"からわざわざ"ゴミ山"をバカにする為にやって来るとは…おめェらも内心見下されてたんだろうな」
「バカ言え!!サボはそんな奴じゃねェ!!」
「そうだ!!おれ達は兄弟なんだぞ!」
ブルージャムの言葉にルフィとエースは怒り、声を上げる。
確かに、サボは高町の出身で、多くの高町はここゴミ山を馬鹿にし見下している者が大半だろう。
サボのような考えがこの国では異端で、アスカ達が作って来たサボとの思い出は偽りではないのだ。
だから、サボを否定するようなブルージャムがどうしでも許せなかった。
しかしブルージャムから見たらエースやルフィの言葉なんて戯言でしか映らないのかクツクツと笑う。
「…フフフ、ああそうか、そりゃ悪かった…しかし…おめェらもう奴に近づいたりしねェよな…そうする気なら今ここでお前らを殺しとかにゃならねェ。兄弟を想うなら…放っとくのが奴の為さ…」
「でもサボは"高町"を嫌ってた!!」
「あいつの事は忘れてやりな…それが優しさってモンだ…大人になりゃわかる。お前らとはポルシェーミの一件での因縁があるが…アレはもういい―――むしろ、強ェ奴は好きだ。歳は関係ねェ。今、人出が欲しいんだがおめェら、おれの仕事を手伝わねェか?…―これがこの“ゴミ山”グレイターミナルの地図だ。このX印に荷物を置いていく―それだけだ」
「―――た?」
「あ?」
「アスカ?」
本来ならポルシェーミの一件でこの三人を殺さなくてはならないのだが、この世界ではどんなに卑怯な真似をしても勝った者が強者になる。
そのためブルージャムは三人を咎めはしなかった。
逆にエース達に手伝わせようとし地図を見せていたが…アスカが何かを呟きその場の全員が俯くアスカを見つめる。
顔を上げたアスカは涙を溜めた目でブルージャムを見上げる。
「…ポルシェーミ、何か言ってた?」
「いいや、何も?言う前に俺が殺したからな…」
「そう」
この国では人の命は無機物な物より価値が低い。
人が殺し殺され死んでいくのをずっと見てきたエース達にとってポルシェーミが死んだという事実はどうでもよかった。
アスカはブルーシャムの言葉を聞き、ほっとしたように息をつき、ギュッとエースの服を掴んでいた指の力を入れる。
「アスカ…」
エースはずっと自分の服を掴んでいたアスカの手を掴み、安心するように繋いだ手の力を入れる。
その後、エースとルフィとアスカは指定された場所へと荷物を運ぶ事になった。
エースとルフィは2つ、アスカは1つ持ち、海賊達と一緒に向かう。
「サボがいねェとイヤだおれ…」
「我慢しろ!おれだってそうさ…!―――だけど本当のサボの幸せが何なのかおれはわからねェ。様子をみよう、あいつは強い!!本当に嫌ならまた必ず戻って来るさ!」
ルフィはサボが居なくなりしょんぼりとさせ、そんなルフィにエースは励ます。
エースの言葉をアスカは何も言わなかったが、その言葉はしっかりとアスカの心に落ちる。
一通り仕事を終え、エース達はサボと作った秘密基地に戻る。
アスカはあれから一言も喋ることなく黙々と布団を敷き、1人眠ってしまった。
ルフィもアスカに続き布団に入り、エースも今日は何もする気にも起こらず布団に入る。
ロウソクも消したそこは街ではないため真っ暗となり、しばらくすると目も慣れ、不意に5つのおちょこがエースの視界に映った。
「サボ、どうしてるかな…」
「……うっせェ、寝ろ。サボの事は一旦忘れる約束だろ。これがあいつの幸せかもしれねェんだ…」
「…わかった……」
おちょこはエース、ルフィ、アスカ、ミコト、そして…サボの5個入っている。
拾った網に入れて壁に掛けているそのおちょこを見ているとルフィがポツリと零し、ルフィの言葉にエースは一旦忘れろと返す。
ルフィは背を向けて眠るエースの言葉に諦めたのか目を瞑り、エースはアスカとルフィの寝息にモゾリと布団から起き上がって2人の寝顔を見る。
(…サボが戻ってくるまで…おれがこいつらを守るんだ…)
エースは以前、サボが言っていた高町への言葉を思い出す。
あれが本当なら、サボは今とても辛い思いをしているのだろう。
助け出そうにもブルージャムとの約束はまだ明日もある。
下手な事はできないと判断した。
サボのあの言葉がサボの本心だと信じ、必ず戻ってくるという確信があった。
だからエースはそれまで弟と妹を守ろうと決心した。
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