手術は何時間も行われた。
ジンベエが先に終えたがルフィは重傷のため今だ手術は終わらない。
「アスカ…アスカも怪我の治療しなきゃ…」
手術室の前に麦わら帽子を抱きしめて座っているアスカにベポが心配そうにアスカの顔を覗きこむ。
「私はいい…それよりルフィを……」
「麦わらは大丈夫だよ。キャプテンが治療してるし…そりゃすごい怪我だったけどキャプテンを信じてさ、アスカも怪我治そうよ!麦わらが目が覚めた時怒られちゃうのおれ達だし…」
「ベポ…」
「ね?他のヤツに触られたくないって言うならおれがしてあげるしさ!」
ベポは笑顔でアスカに手を差し出し、アスカは顔をあげベポを見上げる。
ゆっくりとベポの手を取ろうとしたその時、
「た、大変だー!!軍艦だ!!」
海賊達の言葉に2人は顔を見合わせ外へ急ぐ。
外は一隻の軍艦が潜水艦の横についていた。
警戒する中、軍艦から降り立ったのはかの女帝、ハンコック。
七武海の登場にベポ達は慌てだす。
「大丈夫、この人は味方だよ…ルフィの協力者……」
アスカの言葉にその場は収まったが、ハンコックは表情を険しくさせてベポ達を見る。
「ルフィの容態はどうなのじゃ……!」
「よくおれ達がここに浮上して来るってわかったな…海軍がまだ追跡して来たのかと思ってキモ冷やしたよ…」
「海底をサロメに尾行させたのじゃ…勝手に話題を逸らすな!ケモノの分際で!!」
「すいません…」
「「打たれ弱っ!!」」
ルフィ以外には厳しいハンコックにベポは肩を降ろす。
ペンギンとシャチが打たれ弱いベポにいつもの突っ込みをしているとアスカの後ろの扉が開き、ローが手についている血をふき取りながら出てきた。
「キャプテン!」
「やれる事は全部やった…オペの範疇では現状命をつないでる…だが、あり得ない程のダメ−ジを蓄積してる…まだ生きられる保証はない」
「……………」
「……………」
ローの言葉にハンコックとアスカは顔を沈ませる。
「それは当然だっチャブル!!ヒィ〜〜ハ〜〜〜〜〜〜!!!」
「そうさ!麦わらは頑張った!!」
「あいつのお陰で脱獄できた!!!」
「何だあいつら!!」
「イワちゃん!」
「インペルダウンの囚人達…ルフィの味方の様じゃ…軍艦に忍び込んでおった。」
「そしておれ達は長年の夢『カマバッカ王国』へこれから行くんだ!」
「ニューカマーランドからニューカマーの総本山へ!!」
ニョキッ、とでかい顔が現れベポ達はビクリと体を振るわせた。
イワンコフ達が脱出成功したことにアスカはホッと安堵する。
イワンコフは軍艦から潜水艦へ飛び降りる。
「麦わらボーイはインペルダウンですでに立つ事すらできない体になってたのよ!!よくもまァあれだけ暴れ回ったもんだっチャブル!!」
「そうだーー!あいつは頑張った!」
「おれ達ァ知ってるぜェ!!」
「それもこれも全ては兄、エースを救出したい一心!!その兄が自分を守る為!目の前で死ぬなんて…神も仏もありゃしない……!精神の一つや二つ崩壊して当然よ!!」
「……………」
イワンコフの言葉にニューカマー達はルフィを応援し、アスカは俯いて手にしてる麦わらに力を入れる。
そんなアスカにローは肩に手を置き、慰めるように親指で肩を撫でる。
「何という悲劇じゃ…できるものならわらわが身代りになってあげたい…可哀相なルフィ……」
((い……いいなー…海賊女帝にあんな風に想って貰えて…))
「ところでヴァナタ、麦わらボーイ達とは友達なの?」
アスカを見つめていたローはイワンコフに顔を上げる。
「いや…麦わら屋は助ける義理もねェ……親切が不安なら何か理屈をつけようか?」
「いいえいいわ、直感が体を動かす時ってあるものよ」
ローの答えにイワンコフは目を細めると扉がまた開く。
「おい待てって!!」
「ジンベエ……!」
出てきたのは包帯だらけのジンベエだった。
ジンベエは息も耐え耐えにローの仲間が止めるのも聞かずロー達の前に出てくる。
「ハァ…ハァ…"北の海"トラファルガー・ローじゃな…ありがとう、命を救われた…!」
「寝てろ、死ぬぞ」
「心が落ちつかん…ムリじゃ……わしにとっては今回失ったものはあまりにデカすぎる……!それゆえルフィ君の心中はもはや計り知れん………あの場で気絶した事はせめてもの防衛本能じゃろう………命を取り留めても…彼が目覚めた時が…最も心配じゃ…」
「ジンベエ…」
目を伏せるジンベエにアスカはローから離れジンベエに歩み寄り、ジンベエを支える。
ふらふらな自分を支えてくれるアスカにジンベエは笑みを向ける。
「アスカ君…お前さんも辛いじゃろ……すまなかった…エースさんを守れず…ルフィ君は重体……わしは駄目じゃな…」
「ジンベエが謝ることない…エースは……幸せだったと思う…白ひげのおじさんやジンベエ達に愛されて…ルフィを庇うなんてエースらしい」
涙を溜めて笑みを浮かべるアスカにジンベエは胸が痛み、何も言えずアスカの頭を撫で、アスカの小さな体を抱きしめる。
ローはアスカの背中をジッと見つめていた。
「ケモノ!電伝虫はあるか?」
「あるよ…あ…!あります!すいません…」
「いいなー、お前…女帝のしもべみたいで」
ハンコックはベポに声をかけ、ベポは言い直す。
ベポにとったら正直恐ろしい…しかし人間の男からしたら絶世の美女に声をかけてもらえるだけで羨ましいのだ。
「九蛇の海賊船を呼べばこの潜水艦ごとカームベルトを渡れる…ルフィの生存が政府にバレては必ず追っ手がかかる…わらわ達が"女ヶ島"で匿おう…わらわがまだ"七武海"であるなら安全に療養できる」
「じゃあ…麦わらボーイとバニーガールを援護するというヴァターシの使命はここまで!ヒーハ〜!後の事は任せッティブルけどいいかしらジンベエ!」
ハンコックの言葉にもう自分達の護衛も必要ないと判断したイワンコフはジンベエに後を任せる。
ジンベエはイワンコフに頷いて見せた。
「ああ…わしもまだ自由に泳げん…せめてこのままルフィ君の回復まで見届けよう…何ができるかはわからんがな…」
「イワちゃんもみんなも元気でね」
「バニーガールも気をおつけ!ヴァナータもそうとうな傷と疲労が溜まってるんだから!」
イワンコフの気遣いにアスカは頷く。
その後、イワンコフ達が先に去って行き、アスカは手を振り姿が完全に消えるまで見送っていた。
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