(288 / 293) ラビットガール (288)

微エロほどではないですかそれっぽい表現があるので注意
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イワンコフ達を見送るアスカの背を見つめていたローだったが、イワンコフ達の船が消えたのを見て寂しそうにしているアスカに近づく。


「アスカ」

「なに?」

「来い」

「え…」


完全にイワンコフ達が消えた後でもその先の海を見つめていたアスカだったがローに手を取られ引っ張られ目を丸くした。


「お、おいおい!お前さん!乱暴は…」

「安心しろ、治療だ」

「治療って…アスカ君、まだしてもらってなかったのか?」

「…うん……」

「そりゃ大変じゃ!早く治療しないとバイキンが入るぞ!」

(バイキンって…)


気まずそうに目を逸らすアスカにジンベエは慌てたように船の中に入れる。
その時のジンベエの言葉にアスカは『絶対ジンベエも私の年齢を間違えてる!』と思ったという。
だって仕方ないじゃないか、発育悪いんだから。


「そこに座れ」

「…………」


何故か船長室へ移動し、アスカはずっと繋いでいた手を離してもらい椅子へ指差される。
中はサニー号にある女部屋に比べると少し広い。
その部屋は男の部屋らしくあまり物が置かれていないのだが、分厚い本が多い印象があった。
異名に『外科医』とついているので医療関係に強いのかよくチョッパーが使っているような医療関係の物もそろっていた。
ルフィ達男部屋とは違う人の部屋を興味深く見渡すアスカだったがある物を見つけた。


「これ…私の手配書……」


壁に二枚の手配書が貼られていた。
一枚は最近出始めた写真つきの手配書。
もう一枚は写真が載る前の手配書だった。
金額が違うだけで同じ人物の手配書である。


「ん?…ああ、それか……」

「何で私の貼ってんの?……もしかして最初から私の首狙い?」


自分の手配書が貼られている壁に歩み寄り2つの紙を見つめながらローに話し掛ける。
名前を知っているのもこの手配書からと考えれば知り合い面をして近づくも容易い。
助けてもらったからすでに最初のような警戒はないが、訝しんでしまう。
じっと睨むように自分の並んでいる手配書を見ていたため、アスカはローが背後に来ていることには気付かなかった。
気づいた時にはトン、とローが壁に手をやりアスカの逃げ場を塞いでいた。
アスカはその両腕にハッとさせ慌てて振り返る。
振り返って顔を上げた先には当然だがローがおり、ローは困ったような…弱弱しい笑みを浮かべていた。


「何度言えば分かってくれるのか…お前とおれは元々知り合いだと説明しただろう?」

「…でも…覚えてない…」

「そりゃそうだ…記憶喪失になったんだしな……けど…お前が忘れている間も…おれはずっとお前を…アスカを想って生きてきた…」

「………」


シャボンディ諸島でもアスカには空白の記憶の中で知り合ったと伝えていた。
それを信じていない様子のアスカにローは困ったように笑う。
アスカは信じていないわけではないのだが…どう対応していいのか困惑しているのだろう。
初めてなのだ…ルフィやエース、ミコトのような親愛ではなく……こんな風に強く想い求めてくれる人と出会うのは。
いつもは自分勝手に求められてきたからこそ、今、ローにどう答えればいいのか分からない。
断ろうにも…なぜか断る言葉が出てきてくれなかった。
けど、受け入れようともそれすら中々難しい。
ずっと想って再会する日を夢見ていたとハッキリ隠さず言われてもアスカは本当は照れてしまうのだが、今はそんな反応はできなかった。
ローは今、告白じみた事を言うべきではないのは分かっているが…積りに積もった想いを止めることはできないのもまた事実。
アスカの心情を察し何も返さない事には触れず、俯くアスカの旋毛にそっと唇を寄せる。
そんなローにアスカはビクリと肩を揺らした。


「流石に怪我人に手は出さないさ」

「………うん…」


アスカは手を引かれ治療するからとローに椅子まで連れていかれる。
しかし、アスカは背中の紋章を思い出しその手を振り払った。


「アスカ?」

「……1人ででき…」

「…るわけないだろ?ほら、座れ」

「……………」


人に治療してもらうのを嫌うアスカはチョッパー以外に治療してもらうのに嫌がり自然と眉をひそめる。
それを見たローはそっとアスカの両手を握り、アスカの顔を…アスカの瞳を真っすぐ見つめる。


「烙印の事は知ってる…だから怯えるな」

「…ッ」


ローの静かな呟きにアスカは体も表情も固まる。
オークションではローも一緒に居たので当然、彼も烙印の事を知っていた。
烙印を知っている…その事を聞きアスカは青ざめさせ体を震わせる。
それに気付いたローは手を離し、抱きしめる。


「!」

「何もしない…おれはお前が天竜人の奴隷だからって差別もしない…ここにアスカを傷つける奴はいない」

「……っ」


ローの言葉と抱きしめているその温もりにアスカは何故か安心でき、体の震えも止まる。
そしてオークション会場でローも天竜人に逆らおうとしたことを思い出した。
ふ、と息を吐き力も抜くアスカにローはポンポンとアスカの背を撫でて宥める。
そんな彼の手や体に全てを委ねていたアスカだったが、ローの肩を押した。


「アスカ?」


先ほどまで体を委ねてくれたアスカが突然拒否するように肩を押し、ローは不思議そうな顔でアスカを見る。
アスカはまだ俯いており顔は見られないが、泣くのを我慢しているように震わせるアスカの声にローは息を呑む。


「……め、て……―――やめて…優しく、しないで…」

「………」

「今…私…優しくされれば…甘えそうになるから……だから…やめて…」

「甘えればいいだろ…何を我慢することがあるんだ」


エースを亡くしたばかりなのにアスカはルフィのように気を失うこともなく泣き叫ぶこともない。
恐らくアスカの心はぽっかり空いているからだろう。
大切な人を亡くしたショックのあまり…アスカは静かに泣くことすらできない。
ローの言葉にアスカは首を振った。


「だめ、なの…私…こんな時どうすればいいか…分からなくて…だから…」

「……おれも…大切な人を亡くしたことがある…それも二人だ」

「…!」


甘えることは簡単な事だが、アスカにとっては難しい事だった。
ルフィやエースやミコト、ガープやダダンには甘えられるのに…他人には甘えることができないのだ。
ルフィ達もアスカにとったら赤の他人なのに…何が違うのかは分からないけれど、アスカは背中の紋章のせいで長い間人に甘えるのが苦手になった。
そんな自分が嫌になって耐えるように目をギュッと瞑ればローの言葉に瞑っていた目を丸くさせローを見上げる。
こちらを見下ろすローの表情は悲しげだった。


「1人は命の恩人で、もう1人は俺の師でもある人だった……二人とも、おれの恩人だったんだ…あの時はおれもアスカみたいに誰も信じられなかった……だからアスカの気持ちはわかる…だからこそ、甘えてもいいと思う」

「………」


目を瞑ればその二人の顔がまだ瞼の裏に浮かぶ。
ローはアスカと同じく大切な人を二人亡くしていた。
1人は自分の目の前で亡くなり、もう1人は看取ることはできなかった。
それはまるで自分のようだとアスカは思った。
アスカもエースを目の前で亡くし、サボの死には立ち会えなかった。
甘えてもいい、と言われアスカはローを見上げた。


「…な、んで…そこまで……」

「…好きなんだよ、お前が…アスカが…ずっとずっと…小さい頃から、ずっと…アスカに片思いしていたから…」


―――だから、放っておけないんだ…、と続きながらローは涙1つ浮かばないアスカの目をなぞるように触れる。
それはまるで出ていない涙を拭うようだった。
いや、ローには見えた気がした。
アスカは涙が出ていないだけで心はボロボロで泣いている。
目を触れられ反射的に目を瞑ると、慰めるようにローは瞼に口づけを落とした。
目元だけではなく、頬や額などにもキスをするローにアスカは黙って受け入れ、縋るようにそっとローの服を握る。
その手にローはキスを止めてそっとアスカの唇を指で撫でた。


「…"ここ"は両想いになってから貰う」

「…………」


アスカは自分の唇をなぞるローを濡れた金色の目で見上げていたが、不意に唇に触れる手を取りローの手の平にキスを送る。
甘えることが下手なアスカの精いっぱいの甘え方だった。
ちゅ、ちゅ、と可愛らしい音をさせて自分の手にキスするアスカにローは誘われるように顎に指をかけ、顔を上げさせ傷に舌を這わす。
ローは舌を這わせながらアスカを抱き上げ、ベッドに移動しアスカを押し倒す。


「…っ…、…」


顔の傷を舐め終えた後は首、体へと服を脱がせながらローの舌がアスカの体を、傷を舐めた。
アスカはその痛みと快楽にベッドシーツを握る。

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