(290 / 293) ラビットガール (290)

あれから九蛇海賊団の海賊船に案内されロー達は女々島、『アマゾン・リリー』につく。
ルフィの療養を目的としたローの一団は緊急特例により、女ヶ島湾岸への停泊を許可されていた。


「エ〜〜ス〜〜〜〜!!」

「危ねェよ!!鎮まれ麦わらァ〜〜!」

「どこ行くんだ!暴れるなァ!火拳ならもう…」

「うわあああああああああ!!エースはどこだァ〜〜〜!エース〜〜〜!!!」


目覚めたルフィは真っ先にエースの名を呼ぶ。
エースの死を認めたくないのか、暴れて手が付けられなくなる。
アスカは疲れもありまだローの潜水艦で眠っていた。


「手に負えねェ!!麦わらァ〜〜!止まれ〜!!」


ローの仲間が必死に止めようとするのを見ながらジンベエは暴れてジャングルの中へ入るルフィを見つめる。


「アレを放っといたらどうなるんじゃ…」

「まぁ単純な話…傷口がまた開いたら今度は死ぬかもな」

「………………」


ローの言葉を聞いてジンベエは黙ったあと、ゆっくり立ち上がり、ルフィを追う。
それをローは黙って見送った。







―――ルフィを追って入っていったジンベエもどれだけ待っても返ってこず、陣を張った奥からは侵入は禁じられているため、ローのクルー達はそこから立ち往生せざるを得なかった。


「どこ入った…あいつと…ジンベエ」

「さァ知らねェ…陣の向こうを出るなと女帝達に言われてんのにな………」


ルフィを追ってジンベエもジャングルへ入っていき、女ヶ島にある岩場の湾岸に静けさが戻るが、ところどころ遠くからルフィの叫び声が聞こえていた。


「いやー…しかし、ここが噂に聞く女ヶ島…男が踏み込んだら石になって帰れねェって聞いてるけど命を賭ける価値あるかもな…」

「本当に女だらけの九蛇海賊団…いい〜匂いだったな〜夢の女人国のぞいてみてェなァ!」

「死ぬぞお前バカだな〜」

「メスのクマいねェかな?」

「「女人国だよ!!!」」

「すいません…」


部下達のコント調の会話を聞きながらローはアスカがいる自分の船を見下ろしていた。
アスカはあれからずっとローの部屋から一歩も外には出ておらず、ルフィの容体は聞くが見に行こうとはしなかった。
その心情を理解できるローもジンベエも無理にアスカを外に出すことはせず見守っていた。
すると扉が開かれ、麦わら帽子を首にかけローの服を着ているアスカが出てきた。


「アスカ」

「ルフィ達は…?」

「陣の向こうだ」


久々外に出たアスカは太陽の光に眩しそうに目を細める。
船から湾岸に上がりローに近づくと、ジンベエとルフィがいないことに気づく。
ローの答えにアスカは『そう』、と呟いただけで追おうとはしなかった。


「追わないのか?」

「……………」


ローの問いに何も答えないアスカはローが座る岩の隣の岩に座る。
着替えの服を持っていないアスカはローの上の服だけを着ている状態で生足をさらけ出すその姿は艶かしい。
しかし我らの船長の愛する少女なので変な目で見たら怒られるどころか叱られた挙句に数日生首で過ごさなければならない。
そのため皆、目を逸らしていた。
そんな船員達の苦労も知らずアスカはジャングルへ目をやる。


「私は力にはなれないし…私が行ったらルフィは余計苦しいから…ジンベエに任せることにするよ」

「…そうか……」


幾分か表情に余裕が出来ているアスカを見てローはホッと息をつく。
するとアスカはシュラハテンの口からビブルカードを取り出した。


「それは?」

「私達の集合場所…シャボンディ諸島で私達の船をコーティングしてくれてる人のビブルカード…これが私達を繋ぎとめている唯一の物…」

「………」

「ルフィも早く立ち直ってくれればいいんだけど……」

「そうだな…」


仲間を思い浮かべているのか少し表情を和らげるアスカを見てローはその仲間に少し嫉妬しながら目を細める。







ジャングルでルフィは思い出すエースの死を消そうと暴れていた。
叫びながら次々と木を倒していくルフィの手は傷つき、血を垂らしていた。
エースの死を、赤犬を思い出す度にルフィは暴れまわる。
時には頭をぶつけ、頭から血も流れる。


―おれがこのまま死んだらよ悪ィけど…弟達の事気にかけてやってくれよ―

「………………」


自分を傷つけるルフィを見つめ、ジンベエはインペルダウンに居た時にエースから言われた事を思い出す。
ルフィはジンベエに気付き、睨みつける。


「戦争は終わった………エースさんは…」

「言うな!!」

「!」

「なんも言うな…!……ほっぺたなら………ちぎれる程つねった…!夢なら醒めるハズだ…!!…夢じゃねェんだろ………?」

「………………」

「エースは……!!死んだんだろ!!!?」


ルフィは言葉にして涙が溢れ、そんなルフィにジンベエは目を伏せるが、頷いた。


「…ああ……死んでしもうた……」


ジンベエの言葉にルフィはエースを失ってから初めて声を上げて涙する。
その声はアスカにも聞こえており、ルフィの叫びとは違う声に手を力強く握った。


「くそォオ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


泣いていたルフィはまた暴れだし、膝を突き地面に頭を叩きつけていた。


「おれは弱い!!……何一つ守れねェ!!!!」

「ルフィ君」

「向こうへ行け…!!!」

「…………」


傍にいるジンベエに半分八つ当たりに睨みつける。


「一人にしてくれ!」

「そういうわけにもいかん…これ以上自分を傷つけるお前さんを見ちゃおれん」

「おれの体だ!勝手だろ!!!」

「ならばエースさんの体も本人のもの…彼が死ぬのも彼の勝手じゃ」


ジンベエの言葉にルフィは起き上がり、さらに目を鋭くさせる。


「お前黙れ!!!次何か言ったらブッ飛ばすぞ!!!」

「それで気が済むならやってみい…こっちも手負いじゃが今のお前になど負けやせん……!!」


ルフィは素早い動きでジンベエに向かっていき腕を伸ばすもジンベエに避けられ逆に腕をとられてしまい背負いなげをくらう。


「ぐ…!……ゲホ…!!」

「…………」


ルフィもジンベエと同じく怪我人なため立ち上がることができず、横に座ったジンベエの腕を噛む。


「いっ!痛で…!!ででで……でで!痛いわァア!!!このガキァア!!!!」


ジンベエは噛み付くルフィを岩に叩きつけ、腕を離し首に手をかける。


「もう何も見えんのかお前には!……どんな壁も越えられると思うておった"自信"!疑う事もなかった己の"強さ"!!それらを無情に打ち砕く手も足も出ぬ敵の数々…!!!この海での道標じゃった"兄"無くした物は多かろう!世界という巨大な壁を前に次々と目の前を覆われておる!!それでは一向に前は見えん!後悔と自責の闇に飲み込まれておる!!今は辛かろうがルフィ…!それらを押し殺せ!!!」

「…………!」

「失った物ばかり数えるな!無いものは無い!!確認せい!!お前にまだ残っておるものは何じゃ!!」

「!!」


その言葉にルフィは目を丸くし、大人しくなり、ジンベエはルフィの首から手を離す。
ルフィはその場に力なく座り込み、自分の両手を見つめ、何かを数えていると涙を流し始めた。


「仲間がいる゙よ!!」

「……………そうか……」

「アスカ!!ゾロォ!!ナミ!!ウソップ!!サンジィ!!チョッパー!!ロビン!!フランキー!!ブルック!!おれには…仲間がいる!!おれ達集合場所があるんだよ……行かなきゃ…!」

「………………」


ポロポロと止まらない涙を流すルフィにジンベエはその場に座る。


「すぐ会いてェ!!あいつらに゙会いてェよォオ!!!!!」


ルフィの叫びが木霊した。

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