(291 / 293) ラビットガール (291)

女ヶ島の岩場の湾岸で停泊していたアスカ達はカームベルトの海王類の叫びに海へと目線を移す。
そこには海王類が水しぶきを上げながら暴れているのが見える。


「見ろ!大型の海王類だ!!」

「何やってんだ?ケンカか!?」


ペンギンが望遠鏡で見るが、一匹の海王類は見えてももう一匹の姿はどこにもいない。


「死んだ!何かにやられたぞ…!!」

「あのデケェのが…!?」

「相手の生物は見えなかった…恐ろしい海だ…!」


恐怖に体を震わせているとしたの海岸に誰かが海から上がってくる。


「え!?人!!?」

「おい!お前誰だ!!」

「あ…」


ロー達の仲間が警戒する中、アスカは小さく声を上げる。


「いやぁ参った…おお、キミ達か…シャボンディ諸島で会ったな」

「え〜〜〜〜〜!!!?"冥王"レイリー!!!」

「レイリー!」

「「レ、レイリー!?呼び捨てー!?」」


アスカはレイリーを見て嬉しそうに駆け寄り、レイリーもアスカの姿を見て顔を綻ばす。


「アスカ!無事だったか…よかった……大きな怪我はないか?起きても平気なのか?」

「大きな怪我は火傷以外はないし、火傷も1ヶ月で治るって…それにちゃんと休んだから大丈夫」


頭を撫でられて気持ち良さそうに目を細めるアスカにレイリーはデレー、とだらしなく頬が緩みまくりだった。


「でもなんで海に?」

「いやいや…最初は船で向かっていたんだが船がシケで沈められてしまってねェ…泳ぐハメになってしまった…思う程体が動かんものだな、年をとった」

「シケ!?"カームベルト"にシケはねェぞ!?…って事はそんな遠い海で遭難してずーっと泳いで来たのか!?じゃあさっき海王類とケンカしてたのも…あんたか……!!」


レイリーはペンギンの言葉に笑って頷いた。


「でも…なんで?」

「ルフィ君とアスカがこの島にいると推測して来たんだ」

「推測で女ヶ島に来たの?石にされちゃうかもしれないのに?」


心配するアスカにレイリーは嬉しそうに笑い、服を乾かしながら答える。


「石になるほど私は弱くないよ、アスカ」

「ふーん……」


納得したようなしてないようなアスカの返事にレイリーは苦笑いを浮かべる。
ほんわかなムードの2人を見つめていたローは立ち上がり、ベポ達に振り返る。


「出航の準備しろ」

「えー!もう!?」

「もっとゆっくりして行きましょうよ!ほら!冷酷ウサギともっと愛を育んだらどうですか?」

「愛…?」


憧れの女ヶ島にもっと居たいペンギン達はブーブー、と文句言っていたがその『愛』という言葉にレイリーはキラン、と鋭く目を光らせローを見る。
その目はまるで娘の彼氏に向けるような鋭さだった。(どんな説明やねん)


「もう行くの?」

「ああ…冥王も来たし…それに麦わらを待つ義理もないしな」

「そう…」


レイリーが笑みを浮かべているが目が笑ってない状態に気付かずアスカはローに近寄って寂しそうな表情を浮かべる。
そんなアスカにローはモヤモヤとしたものが一気に吹っ飛び愛しそうに見つめ、アスカの髪を撫でる。


「海は広いが1つに繋がっている…だからまた会えるさ」

「まぁ、そうだけど……怪我…治療してくれてありがとう…」

「お礼なら貰ってるからな…気にするな」


ローは撫でていたアスカの髪を一房手にし、唇を寄せる。


「船長、いつでも出せますよ!」

「……またな…アスカ」

「……うん…またね、ロー」


ブーたれながらちゃんと出港準備し終えたペンギンの声にローは名残惜しそうに見つめ、アスカと別れる。
その際レイリーへチラリと目をやると笑っているのに目が笑っておらず、そんな冥王にローは引きつった笑みを浮かべつつ、船に乗り込む。
最後の最後まで2人は見つめあい、別れ、アスカは潜水艦が姿を消えても水面を見つめていた。


「アスカ」

「ん?」


名前を呼ばれ振り返ると笑っているが目が笑っていないレイリーの表情に首を傾げる。


「あの男とはどういう関係かな?」

「ど、どういうって……敵…?」


何も悪い事してないのになぜか後ろめたくなり目を泳がす。
そう、例えるなら彼氏と付き合ってるのが親にバレたように(だからどんな(ry
そんな何かありましたよ、と言わんばかりのアスカにレイリーは笑顔のまま地面に正座し、自分の前を指差す。


「そこに座りなさい」

「……ハイ…」


冥王には勝てないのかアスカは素直に座る。







「え〜〜〜!?レイリーのおっさん!!」


ロー達が去りレイリーから説教されていたその時ルフィがジンベエに背負われてジャングルから姿を現れた。


「まあ海賊だから清く正しく生きろとは言わんが……ん?…おお!ルフィ君!早速会えてよかった」

「何でこんなとこにいるんだ??おれ今からビブルカードでシャボンディ諸島に行くつもりだったんだ…みんなは!?」

「いやぁ…まだ集まってはおらんだろう…私のビブルカードはシャッキーに渡して来た…でなければ私が自由に動けんからな…」

「"冥王"レイリー………本物か…!驚いた…」


ジンベエはロジャー海賊団の副船長であるレイリーを見て目を丸くしていた。


「ここに海賊がおりゃあせんかったか?」

「トラファルガー・ローなら今 船を出したぞ…あと2週間は安静を続けろと……」

「!」

「救われた様だな」


正座しながらレイリーは目を細め、笑う。
アスカは正直足が痺れだし行きたくてもルフィに駆け寄る事ができない。


「ル…ルフィ……ジン、ベエ…っ」

「アスカ君!?どうしたんじゃ!」

「アスカ!?」


少し動いただけで激痛が走りアスカは何かを耐えるかのように体を振るわせる。
そんなアスカに気付いた二人はすぐ駆け寄り心配そうに顔を覗かせる。


「い、いたい…ッ」

「どこが痛いんじゃ!?あの海賊はちゃんと治療を…」

「足…しびれた…!!」

「「足?」」

「ハッハッハ!まだまだ若いな、アスカ!」


アスカの訴えに首をかしげる2人だったがレイリーの言葉に余計首を傾げる。


「ん!?レイリーか!??そなたレイリーではニョいか!!?」

「おお…グロリオーサか!懐かしいな!」


痺れて動けないアスカを囲んでいるとハンコック達が現れ、レイリーに駆け寄った。


「レイさん!!」

「レイリー!!」

「おお!お前達も!!」

「ルフィ!!」

「ちょっと姉様!恩人を前に何て態度!!」


妹達もレイリーに駆け寄ったがハンコックだけはルフィ一直線で頬を染めて満面の笑みを浮かべる。


「お前らレイリーのおっさん知ってんのかー!!」

「ルフィ…目を覚ましたのじゃなっ!わらわ心配で夜も眠れず……!は…腹がすいておるじゃろう?食事を持ってきた!さァ遠慮せず…!!」

「目も合わせられずに…よう結婚などと仰せなさったニョう…」


来る前に"抱きつかれる=結婚"という方程式を披露したハンコックだったがルフィが好きすぎて目も合わせられないハンコックにニョン婆は呆れてしまう。
ハンコックが持ってきた食事にジンベエは腹を鳴らし、ハンコックはそれを聞きジンベエを睨みつけてビクつかせる。


「ジンベエ…!!」

「!」

「お前の為の食事ではない…!!ほん〜〜の少しじゃぞ…!!!」


綺麗な人ほど怒らすと恐い法則で睨みつけるハンコックはそれはそれは恐ろしかったとジンベエは後に語った。


「ルフィ君…食うておけ!食う事は…生きる事じゃ!!」


ジンベエに言われてあまり食欲がなかったルフィだったが肉にがぶりつく。


「アスカ!お前も食えよ!!食うことは生きる事だってよ!」

「え、あ…ちょ……!」

「!?」


レイリーに隣に座らされたアスカはまだ足の痺れが取れずにいた。
そんなアスカにルフィは食べ物をいくつもアスカに投げつける。
それにハンコックが目を丸くするが、その量は半端なく両手が使えないほど投げつけられてしまったアスカは困っていた。


「こんなに食べれないし両手塞がっちゃったんだけど…」

「どれ…私が食べさせてやろう」


ニョン婆に手紙を渡したレイリーは困り顔で食べ物を見ていたアスカに笑顔で口元に食べ物を持っていく。
所謂『はい、あーん』、だがレイリーの行動にアスカは困惑気味だったが楽しそうなレイリーに断れず口を開けてしまう。


「お、お、おおおおお主!!!」

「?」


モグモグと食べるアスカにレイリーが機嫌よくしているとハンコックがジンベエを睨みつけた時より恐ろしい表情を浮かべ、アスカを睨みつける。
名前を呼ばれハンコックに目をやると見下しすぎて見上げているハンコックがいた。


「…?」

「お主わらわのルフィとどういう関係じゃ!!!!」

「"わらわのルフィ"??」


変な人だな〜、と思っているとハンコックは顔を起こし普通に睨んできた。


「そうじゃ!!ルフィが…わらわのルフィが食べ物を送るなど…!!わらわとてしてもらった事ないというのに…!!!!ルフィはわらわのモノ!お主には髪一本もやらぬ!!!」

「えっと……」

「それにその帽子!!!」

「え…?」

「それはルフィの帽子ぞ!!!!ルフィの帽子に触れるなどうらやま……けしからん!!!!」


ちょっと本音を出してしまった蛇姫の言葉にアスカは帽子の事を思い出し、ハンコックを無視してルフィへ話し掛ける。


「ああ、あそうだ…ルフィー!」

「ふぁんふぁ?」

「あんたの帽子返すから持ってって」

「ふぁふぉふぇふぃーふぉ!」

「そう、わかった。」


ルフィの何言ってるか分からない言葉に頷いてアスカは再びレイリーに食べさせてもらう。
そんなアスカにハンコックは体を震わせ涙目だった。


「お、お主…わらわを差し置いてルフィと話すだと…!?しかも何言ってるか分からないルフィの言葉を理解するとは……!!!わ、わらわとて…!わらわとてェ!!!!」


キー!、と嫉妬むき出しにするハンコックはルフィにアスカとの関係を聞こうとするも一生懸命食べ物を口の中に入れるルフィにキュン、と来て見惚れる。
怒りはどこに行ったんだ、と突っ込むものは誰も居ない。


「ふむ…シャッキーの手紙…確かに受け取った……あのコも変わらん様じゃニョう」

「ああ…キミがシャボンディに住んでいた頃のままだ…元気にやっている。娘達も13前とは見違える程美しく逞しくなったものだな」

「レイリー、シャッキー、ニョン婆…天竜人から逃げる私達を3人が保護してくれたお陰よ」

「しかし、ルフィが知り合いじゃったとはいえ海軍から彼を匿っておる身としてはそう簡単に居場所を推測されては困るニョじゃがのう」

「え!?何と懐かしいっ!!そなたもしやレイリーではないか!」

「遅い!どれ程夢中じゃ!!!」


ルフィを見て癒されていたハンコックはレイリーに気付く。
すでにアスカはハンコックの視界から消されてしまった。


「フフ…いやぁ海軍にこことは推察できまい…始めに彼をこの『方角』へ飛ばしたと飛ばした張本人が教えてくれたのでな…そのラインに女ヶ島が浮かび上がった」

「?」

「頂上戦争に関する全ての情報を洗い出して逆算するとハンコックの通ったルートにルフィ君が当てはまる…しかし話はそこまで…政府嫌い・男嫌いのハンコックが男と共に政府の船に乗るなど考えられん。」


そんなレイリーの反対意見を言ったのがシャッキーだった。
レイリーはその時の事を思い出しながら自分が持っていくものを食べるアスカに目を細め、頭を撫でる。


「女の勘とは恐ろしいものだ」

「さすがシャッキー」

「図星も図星…この通りじゃ…」


ニョン婆の目線の先にはハートを飛ばすハンコックの姿。
噂を知っている者なら完全に別人だ、と言うほど乙女になっていた。


「そんなあられもない推察で海軍は動かない…ここは安全だ…さて、本題に入ろうか………ルフィ君…」


餌付けも終わり、レイリーはルフィへ顔を向ける。


「キミはこれからシャボンディに向かうつもりだと言ったな」

「うん、仲間達に会いてェんだ!」

「本当にそれでいいのか?」

「!?」

「あの島でキミ達の身に何が起きた」

「「……!!」」


レイリーの言葉にルフィとアスカはくまと黄猿の戦いを思い出しゾクリと背筋が凍りつく。


「繰り返す為に…また集まる気か?」

「…………」

「私から一つ提案があるのるかそるかは勿論キミが決めろ」


レイリーの提案に2人はお互いを見合った。

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