「ええ!?ゾロが一番乗り…!?」
ナミはガヤガヤと騒がしい店内に負けず劣らない声を上げ驚愕した表情をアスカに見せた。
「うん、ゾロが一番最初に来たよ。」
驚いた表情を浮かべるナミにアスカは何でもないように淡々と頷き、目の前に置かれたジュースをストローで飲む。
ナミの買い物に付き合っていたためアスカは喉の渇きを潤すようにコップの半分を飲んだ。
喉が潤い生き返ったような感覚に目を細めながらアスカはストローから口を放しまだ驚きが隠せないナミへと目を向ける。
ナミは唖然としながらアスカから前へと顔を戻す。
「あのゾロがねェ…よく1人で来られたものだわ…むしろよく海を渡れたわね…」
「それがさ…」
アスカは一年半も早くこの諸島についていた。
しかしバラバラとなった仲間達が集結としての意味ではルフィと一緒にいたアスカではなく、ゾロが一番となる。
感心したような声を零すナミにアスカは何か言おうと口を開きかけたその時――…
「あァ!?おれの聞き間違いか!!?懸賞金5千500万ベリー!?」
「―――ッぎゃあ…ッ!!」
男の声と銃声が店内に響き渡る。
「よく張り紙を読んでこい!最低額7千万ベリーの賞金首!それ以下の船長の交渉は受付ねェ!てめェらよくそんな額でここへ辿り着けたな!帰れクズ!!おれはあの革命家ドラゴンの息子だぞ…!!」
男は巨体に頭には麦わら帽子、頬には傷跡があり、諸島で噂の的となっている麦わらの一味の船長であるモンキー・D・ルフィだった。
ルフィは手に握っている銃をもう一度倒れて撃たれた足を押さえる目の前の男に向け一発放つ。
ざわめいでいた店内はあれほど煩かったのに関わらず静まり返っていた。
「なにあいつ…」
「……ナミ、出よう。」
「え?…え、ええ…そうね、あんな男達がいるんだもの…ゆっくり飲めないわね…」
ナミは男の格好を見て怪訝そうに眉間にしわを寄せる。
ナミは男が自分達の船長ではないことは見た瞬間に分かった。
それは見た目もそうだが、この諸島に来た時に見た張り紙を思い出したからである。
どうやらルフィの偽者は仲間を集めているようで、その中にはロロノア・ゾロ、黒足のサンジなど仲間達の偽者もいる。
その中には当然冷酷ウサギのアスカもいた。
手配書の顔と全然似ていないのに誰も気付かないのは本人に会ったことないのと、2年経って突然現れたからだろう。
2年経てば変る者は変る。
だからルフィ本人を知っている者達以外は騙され、実績があるからと非情な行いにも逆らえなかった。
ただ1人は除いて…
「オイ!フランキー!今どれくらい集まった?」
「数にしてざっと100人…3つの海賊団が丸ごとウチに入った……賞金首は10人。」
「その内の2人はあの話題のルーキー!海兵殺しで有名な"濡れ髪のカリブー"と"返り血のコリブー"!2億1000万と1億9000万の兄弟船長だ!ドハハ!!あいつらは使えるぜ…!―――アンナ!!こっちこい!!」
音を立てずに出て行こうと言うアスカにナミは首を傾げながら会計を済ませアスカの後に続き出て行こうとした。
店と扉との丁度中間となったその時、ルフィの偽者はアスカに振り返る。
アスカに気付いていた偽者は出て行こうとしたアスカを部下を使い引きとめ、アスカは慣れたように自分の前を塞ぐ偽者とその部下にあからさまに嫌そうに顔を歪ませた。
ナミは偽者がアスカの名前を知っている事に首をかしげていた。
偽者はナミなど視界に入っていないのか真っ直ぐ不機嫌そうな顔を見せるアスカへと歩み寄る。
「聞いてたんだろ?アンナ!おれの部下はもう100人だ!その内の10人が賞金首でその中には2億と1億の賞金首がいる!!」
「だからなに」
「だからさっさとおれの女になれって言ってんだ!!おれの女になりゃ一生楽して暮らせるぜ?なんたっておれは海賊王に一番近い男なんだからな!!」
「…………」
『海賊王に一番近い男』…この言葉を聞いたアスカはピクリと片眉を上げ静かに偽者を睨み上げる。
偽者はアスカが自分の方を見たことに上機嫌となりアスカの腕へ手を伸ばそうとした。
しかし…
「ちょっと!!あんたなんなの!!」
「あァ!?」
アスカが偽者に腕を掴まれそうになったその瞬間、アスカと偽者の間に伸ばしていた手を跳ね返したナミが割り込んできた。
ナミはアスカを守る様に背に隠しキッと偽者を睨む。
だが偽者はアスカの睨みも気付かなかったほど鈍く天狗になっていた。
やはり偽者はナミの睨みなど気付かず邪魔してくる女に怪訝そうにナミを見下ろす。
「なんだァ!?お前は!」
「あんたこの子に何の用なの!?この子に馴れ馴れしくしないでくれない!?」
「お、おい…あんた!止めときなって!!あの男は"麦わらのルフィ"だぞ!?」
ナミが間に入った瞬間静まり返っていた店内が一気にざわめきだした。
店長が何も知らない様子のナミに駆け寄り慌てて止めに入るがそんな店長の忠告などナミは跳ね除ける。
「だからなに?私の可愛い妹に手を出されそうになって黙ってろって言うの!?」
「ああ!あの男に敵う奴なんていねェんだよ!!あんたがこの娘とどういう関係か知らんがこの子には関わらない方がいい!」
「はァ!?何よそれ!!」
「この子は…」
「ちょっとあなた!!」
「…!」
口を出されて止められ、ナミは苛立ちを見せていた。
早く馴れ馴れしい男の側から離れたいとナミは心の底から思った。
それはアスカも同じようで、しかしアスカの方が自分よりもそう思っているようで、ナミはアスカの為、自分の為にと早くこの店から出たいと思う。
その上妹として可愛がっている人間には関わらない方がいいと言われれば誰だって不快に思うだろう。
ナミは更に店主をキッと睨みつけようとしたその時、わなわなと身体を震わせ怒りを積もらせていた偽者の傍らから小柄な少女が現れナミと偽者の前へと入る。
「あなたさっきから聞いてればいい気になって…!この人が麦わらのルフィだって知ってて言ってるのかしら!!因みに私は"冷酷ウサギのアスカ"よ!二番手でもある私をナメてると痛い目みるわよ!!」
小柄な少女とはアスカの偽者だった。
ナミは目の前に現れたアスカと似ても似つかない偽者をマジマジと見つめる。
アスカの偽者は確かに髪は紫色でアスカと同じだった。
しかし色だけが同じの他に共通点はない。
髪は短く肩につくかつかないか程度の髪の長さで、声も全然違う。
そして何より容姿やスタイルが真逆なのだ。
言ってしまえば不細工でデブである。
ナミは目に入れても痛くないアスカの偽者を見たあと後ろで黙って見ていたアスカを振り返り見つめ、また偽者を見る。
そして偽者を見た後大きな溜息をついた。
自分を見た後溜息をつくナミに偽者は癇に障ったのか青筋を立ててナミを睨みつける。
「ちょっと何!?人の顔を見て溜息なんて失礼じゃない…!!謝りなさいよ!!」
「………はぁ…」
「また…!!ルフィ船長!!この女やっちゃって…」
「"必殺緑星"!!」
「「…!!」」
自分とアスカを見比べため息をつくナミに偽者は肩を揺らし怒りを表す。
そして何度も溜息をついたナミに偽者はルフィの偽者に振り返りいつものように容赦なく撃ってくれと頼もうとしたその時、どこから現れたか分からないが変な植物がアスカの偽者に襲い掛かった。
「ギャー!!何これーーっ!!」
「うわっ!何だこりゃァ!!植物!?」
ツルを伸ばしに伸ばし近くにいたルフィの偽者やフランキーやウソップの偽者の身体に巻きつき持ち上げる。
突然の見たことがない植物に周りは唖然としていた。
ナミもまるで意思のある植物からアスカを背で守る様に何歩か下がる。
「相変わらずアスカの事になると怖い者知らずだな、ナミ!」
「え…?」
ギャーギャー、と偽者達の叫び声を聞きながらナミとアスカは植物を見上げていた。
しかしそんなナミ達の耳に懐かしい男の声が届き、2人は声のすした方へ顔を向ける。
ナミはその人物を視界に納め目を丸くさせた。
「きゃーっ!!ウソップ!?久しぶりー!!何よ〜!ちょっと逞しくなっちゃって!!」
「ウぶ!そ、そういうお前こそまた一段と実っちまって…!」
「ウソップ、あれウソップがやったの?」
「お、お前は変らず冷静だな…アスカ……おうとも!何も2年間海を眺めてぼんやりしてたわけじゃねェんだ!悪りィがおれは…ナミ!おめーとチョッパーとの弱小トリオは卒業だ!何が起きてももう動じねェ!そんな戦士におれはなったのさ!!!」
2人の前に現れ、植物で助けたのはウソップだった。
ウソップは2年前より逞しくなっており、ナミはウソップとの再会に嬉しそうに駆け寄り抱きつく。
あまりの感激にウソップは胸に顔を埋めるように抱きしめられアスカの時同様息苦しさに慌ててナミから離れる。
そんなウソップにアスカは冷静に植物を指を差し、ウソップは2年も経ったのに冷静さは変らないアスカに苦笑いを浮かべた。
「おい小僧!!まさかコレはお前の仕業じゃねェだろうな!!」
「なにーーー!!?そげキング!?何で!!?」
「動じてるじゃん。」
冷静さは2年前よりも更に磨きが掛かっているアスカに頷き、ウソップは弱小トリオは卒業したと断言した。
それには筋肉をつけたウソップと植物を操る様を見てアスカも一瞬納得しかけた。
しかしツルを撒きつけながら現れた偽者のそげキングを見て驚きが隠せず2年前と変らず声を上げ、そんなウソップにアスカは冷静に突っ込みを入れた。
「ウソップ!ムシムシ!!お店を替えましょう!ちょっとお願いもあるし!!」
「待て!!貴様らァ!!おれ達を誰だと思ってやがる!!!アンナ!こんなやつについて行くたァどういうことだ!!」
「え!?ルフィ!!?」
「そんなのあんたに関係ないじゃん。」
そげキングの次にはルフィの偽者が顔を出しウソップはぎょっとさせる。
ルフィの偽者はアスカへ手を伸ばそうとするもツルが邪魔をしているためアスカに触れることが出来ない。
そんなルフィに冷たい目線を向けながらアスカは鼻を鳴らし背を向けてナミの後に続く。
去っていく3人にルフィの偽者は示しがつかないと声を荒げるが、その頭上にはいくつもの黒いシャボン玉が浮いていた。
それに最初に気付いたのはナミの偽者で、しかし気付いても時すでに遅くシャボン玉は次第に黒い雲となり店内の天井を覆っていく。
「何だコリャ…雲!?」
ルフィの偽者もその雲に気付き見上げたその瞬間――――…
「ギャアアアア…ッ!!!」
室内なのに関わらず落雷によってその店だけが黒こげとなった。
「ハァハァ…!あの2人を探し出して撃ち殺しアンナを連れて来い!!もう勘弁ならん!!我が儘もこれまでだ…!!!」
黒こげとなり倒壊した瓦礫から偽者達は姿を現す。
その姿は黒く汚れ、偽者のルフィは堪忍袋の緒が切れたように声を上げて叫んだ。
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