(9 / 274) ラビットガール2 (9)

2年前はハチが案内してくれると言ったからウソップは安全に行けると思っていた。
それが何故かハチは案内できない状態になったと聞き、結局危険な海の中へと自力で進むこととなった。
ハチを責めるつもりはないウソップだが、潜ってすでに危機に陥りそうな瞬間が約2名のせいで二度も起きハラハラしっぱなしでいつか心臓が止まりそうだと涙を呑んだ。


「畜生!魚人島にはハチの奴が案内してくれるって言ってたからもっと安全に行けるつもりでいたよぉ!!」

「お、そうだ!俺弁当いっぱい貰ったたんだ!サンジもああだしみんなメシにしようぜ!!」

「わー!俺お腹ペコペコだよー!!」

「ヨホホ!私もホネペコー!」


ハンコックから大量に貰ったリュックの中に弁当も入っている。
1人で食べきれる量ではないが、常に腹ペコのルフィには丁度いいだろう。
それを見越してハンコックはリュックに大量の食べ物と、日常品や何かあったらいけないと色々リュックに詰め込んでいた。
そしてハンコックは自分を『よき妻になれる』とルフィにアピールしたがキッパリと断られてしまった。
もしその場にミコトがいたら女帝VS黒蝶となり、2年前の戦争以上の戦いとなるだろう。


「ナミ…船はもう少し安定してるのか?」

「うん、今はまだ大きな海流に乗ってるだけだから。」


弁当を広げるルフィ達を見つめていたフランキーはふとナミへ振り返り、ナミの言葉に『そうか…』と声を零しルフィ達へと目線を戻す。


「全員におれから話しておかなきゃならねェ事がある。」

「「「ロボの秘密かよー!!」」」

「いや…残念だが……、…ザンネンダガチガウロボ」

「「「うおー!スゲー!ロボ語!!」」」

「なぜ言い直す…」


改めて何か話そうとするフランキーにロボットに近い存在の自分の事を話すのかとルフィ・ウソップ・チョッパーは目を輝かすがフランキーは違うと首を振る。
――が、その際何かに気付いたようにフランキーはロボ語で言い直し、そんなフランキーにアスカが突っ込みを入れた。
既に弁当を広げ終わったためルフィ達はとりあえず食事をしながらフランキーの話しを聞く事となり、アスカはナミの隣へと座る。


「本当は海底への案内を買って出てくれたハチだが……あいつはシャボンディで大ケガを負い゙魚人島゙で今療養中って話だ…!理由はデュバルと全く同じ…!!島に残されたこのサウザンド・サニー号を守る為の負傷だ……1年程前、サニー号の存在は海軍にバレ激しい戦いになり2人はそこでリタイアした…」

「え…じゃあそこから今日まで船が無事だったのは!?」

「戦士がもう1人いたからだ……2年前おれ達を散り散りにすっ飛ばした張本人………゙王下七武海゙の大男…バーソロミュー・くまだ!」

「「「―――!!」」」


フランキーの話とはサニー号の2年間のことだった。
海軍も馬鹿ではなく、大将黄猿と戦った麦わらの一味の船がシャボンディ諸島にあると考えしらみつぶしに探していた。
上手く隠していたのだが海軍に船の場所がバレてしまい、デュバル達が守ってくれていたようである。
しかしあと1年の間誰が守ってくれたのか…ウソップの問いにフランキーはくまが助けたとはっきりと答える。
敵であるバーソロミュー・くまが助けたというフランキーの言葉に全員が目を丸くさせた。


「数日前…俺がサニー号に辿り着いた時ァ…目を疑った…!」


フランキーは諸島に戻ってきた時、真っ先に船へと向かった。
そのフランキーの目の前には信じられない光景が広がっていたという。


――待っていた…

おめェそこで何を!!

……任務…完了だ…―――


フランキーの目の前には剣が刺さりボロボロとなってもなおその場に座り込んでサニー号を守っていたくまの姿がいた。
フランキーは敵であるはずのくまが座り込んでいるのに咄嗟に銃を向けるも、そんなフランキーをよそにくまはフランキーを認証しゆっくりと鉄音を立てながら立ち上がりそのまま去っていったという。
それを見送ったフランキーがサニー号へと目線を戻すと、サニー号には傷1つ見当たらなかった。


「後でレイリーに話を聞きゃあ、実はあの時戦いの最中レイリーに耳打ちをしてた…」

「あ…それ私もレイリーに聞いた…くまが『おれは革命軍の幹部…縁あってこの一味をここから逃したい』って言ってたみたい…」


1年半前、アスカがシャボンディ諸島へ戻りサニー号とくまの事は当然聞いていた。
くまが守っていると聞いても仲間をバラバラにした張本人がサニー号を守る理由が分からず信じられずアスカは見に行ったのだが、その話は本当だった。
見に行けばサニー号を狙う海軍、そしてゴロ付きをくまが排除しているところだった。
アスカはくまが何の理由でサニー号を守っていたかは分からないが裏があって守っていると見えず丁度ついた頃に決着もついていたためそのまま引き返したという。
フランキーはアスカの言葉にゆっくりと頷き続けた。


「おめェらも薄々気付いてたと思うが…おれ達は命を救われてたんだ!!そしておれ達が島から消えた後…レイリーを訪ねたくまさんは『おれにはもう時間がない』と言ったらしい…どんな弱みを握られたか知らねェが…奴は"実験体"として海軍によって少しずつサイボーグ化され…『頂上戦争』の前には完全なる人格を奪われる契約を交わしていた」

「――でもよ!バラバラに飛ばしてもその後おれ達がどうするかは分かるはずない!それでも船で待ってたのか!?人格も失ったのに!?」

「改造の執刀医Dr.ベガパンクとの間に1つだけ任務をプログラムするという約束をしてたらしい…『"麦わらの一味"の誰かが再び船に戻って来る日まで海賊船を死守せよ』―――だからこの2年間奴は本来の記憶もなく…"人間兵器"として過去の自分の命令を全うしおれ達を待っていた。」


アスカはくまと会う前に引き返したので会う事なく、くまは2年の間サニー号を守り続けていた。
あのまま引き返し、くまを信用してよかったのか…それともボロボロになってまで守ってくれたくまに過酷な任務をすぐに終わらせた方がよかったのか…アスカには分からず、フランキーの言葉を黙って聞いていた。


「やり方がメチャクチャ過ぎる…なぜおれ達にそこまで…」

「"革命軍"、"縁"と来たら…おれにはルフィの親父が革命軍のボスだって事しか思いつかねェな…」

「おれ父ちゃんの事よく知らねェもん…姉ちゃんなら知ってるみてェだけど………でも"クマみてぇな奴"やっぱいい奴だったのかー…」

「あの時すでに人格がなかったもんね…敵だってばかり思ってた…」


戦争の時、目の前には確かにバーソロミュー・くま本人がいた。
しかしその時すでに人格が奪われ生きる兵器となっていたくまをただアスカとルフィは敵として判断していたのだ。
そんなくまがサニー号を守ってくれていた事に2人は驚いてしまう。


「実際おれ達にとって意味のあるこの2年間を…生み出してくれたのはあの男だって事は間違いねェ……今となっちゃ本人にその胸の内を尋ねる事もできねェが…心に留めとけ!この一味にとってバーソロミュー・くまは結果的に"大恩人"だって事をな…――そしてまたいつか出遭う日が来てもくまはもう心無き人間兵器だ……!!」

「ありがてェが疑問が残る…いつかくまの真意が分かればイイな…」


『話は以上だ!』とフランキーはくまの話を終わらせ食事にありつく。
すると今まで気絶していたサンジが復活し、首筋を手で叩きながら食卓へと歩み寄ってくる。


「あ!サンジ起きてたのか」

「弁当食えよ『女ヶ島』の弁当!」

「女ヶ島!?くまって奴が果たして恩人か…!?俺がこの2年どこにいたと思う!?てめェは一体何の修行をしてたんだルフィ〜!!」

「まーまーサンジさん歌いませんか?」

「励ますんじゃねェ!惨めになるわ!!」


気を失いつつも器用に話を聞いていたらしいサンジにもう一度説明する必要もないとフランキー達はそのまま食事を楽しんでいた。
ルフィの『女ヶ島』という言葉に異様に反応を見せるサンジは自分の誰よりも地獄を味わったこの苦しみをルフィに八つ当たりして心を晴れ晴れとしようとしたが、ブルックに励まされ悔しげに声を荒げる。


「ああ、そうだ…バーソロミュー・くまで思い出したんですが…アスカさん、ルフィさん。」


1人で怒っているサンジを宥めていたブルックだったがふと何かを思い出したようにアスカとルフィの名を呼ぶ。
2人はブルックに呼ばれ同時にブルックの方へ顔を向け同時に首を傾げた。
2人の目線を受けながらブルックは優雅に小指を立て、そして音を立てながら紅茶を嗜む。


「おめでとうございます。」

「?、なにがだ?」

「再会が?」

「あ、いえ…確か海軍の大将黒蝶ってルフィさんのお姉さまで、アスカさんの憧れのお姉さまでしたよね?」

「うん…そうだけど……」


突然主語もなく祝いの言葉を告げられてもどう反応したらいいのか分からず、2人は当然首を更にかしげ不思議そうな目線をブルックに向ける。
そんな目線などよそに頷くアスカの言葉に『そうですか…』と呟いた後ズズ、と紅茶をまた口に含んで呑んだ。
そして――


「お姉さまのご結婚、おめでとうございます。」


ブルックはぽつりと呟いた。

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