「ええ〜〜!!?ジンベエこの島にいないの!?」
アスカは港町へ向かい血眼になって同じ血液型の人間に血を分けてもらった。
そのお陰でサンジの容態も良くなり今は静かに眠っている。
そんな中、アスカはルフィにジンベエが島にいないと聞き声を上げながら立ち上がってルフィを見下ろす。
「どうして!!」
「そ、そんな事おれに聞くなよ…」
「2年前の戦争で七武海をやめて島にいられなくなったらしいんだ。」
自分を非難するように睨むアスカにルフィはたじたじとなりぐったりとさせてソファに座っていた身体を横に向けて幼馴染からの批難の目を出来るだけ避けようとしていた。
それでもアスカからの目線は弱まらず、ルフィが怯える様子に見てられなくなったウソップが助け舟を出した。
しかしウソップの言葉にアスカのルフィへの非難の目は治まるどころか『なによそれ!!』とムッとさせ更にルフィを睨む。
「やめたのジンベエが悪いんじゃないじゃん!!ジンベエは白ひげのおじさんへの仁義を突き通しただけなのに酷い仕打ちじゃない!?」
「いや、だからおれに言われても…」
「ちょっとケイミー!!あんたんとこの王様どうなってるの!?どうしてジンベエを追い出すの!?」
「え…ええ!?」
仁義を通しても結果、島を守ってきた肩書きを失った事になった。
それはアスカでも十分分かっている。
ジンベエは七武海という立場にいることでこの魚人島を守ってきたということは知っていた。
同じ差別を受け続けたものとして察したのだろう。
アスカは天竜人の奴隷時代の時に今のように魚人と人魚が何人もいて自分達と同じか、それ以下の扱いをされていたのをチャルロスの隣で数え切れないほど見て来たから知っていた。
しかしまさか人間に血を分けてはいけないとまでは知らず、モヤモヤが残りながらも必死にサンジと同じ血液の人間を探していた。
ルフィは身体を横にしても、ウソップの助け舟を出しても幼馴染からの痛すぎる非難の目は回避しきれず、怒りの表情を隠す事なく自分に向けるアスカに必死に目を合わせないように逸らす。
しかしそんなルフィをよそにアスカの標的はルフィからケイミーへと変った。
ケイミーは行き成り自分に八つ当たりと言う名のアスカの非難の目を受けビクッと肩を揺らす。
「おいおい!アスカ!!ケイミーを責めても何にもならねェだろ!」
「
は?」
「
ごめんなさい。」
「「はやっ!!」」
『流石ルフィちんの船の二番手で"冷酷ウサギ"と異名がついてるアスカちん…!すごく…こわい…』、とケイミーは鬼以上のアスカに本気で泣き出しそうだった。
そんなケイミーの様子に気付いたウソップが慌ててアスカを宥めるがアスカのひと睨みに即座に土下座をし謝り、その速さにチョッパーとルフィは声を揃えて突っ込む。
…が、ルフィはウソップの気持ちは痛いほど分かっていた。
「…う…」
「!!、サンジ…!!」
『まあ、ウソップの言葉も一理あるわね…』と少し落ち着いたらしいアスカは溜息に似た息をつき腰に手をやる。
おれ睨まれ損じゃん…!、とウソップはアスカに背を向け悔し涙を流したのだが真っ向に文句を言うほどウソップは愚かではなかったのと同時にまだ死にたくなかった。
すると気を失っていたサンジがゆっくりと目を覚まし、それに気付いたチョッパーが嬉しそうにサンジの顔を覗き見る。
「よかった〜!」
「……ここは…どこだ…」
「ここは港町の知り合いの家!サンジちん身体の血がほとんど抜けちゃったんだよ!」
「そうか…血が!?…どうしちまったんだ、おれは…」
サンジはケイミーの言葉に起き上がろうとした。
アスカもこう見えて心配していたのか目を覚まし起き上がったサンジを見て胸を撫で下ろし、身体を横にしているルフィの隣に座る。
「思い出せねェ…!おれは一体どこで何してたんだっけ…」
「あ〜〜ッ!!思い出すんじゃねェぞ!!」
「また血ィ噴かれたら手に負えねェ…!!」
同じ血液の人間を探しにアスカやルフィ達が町中を探し回っていた事を聞いたサンジはお礼を言いながらこれまでの事を思い出そうとしていた。
しかし、ケイミーに助けられたところまでは覚えているがその後の記憶が全く無かった。
サンジは『なんか凄い幸せだった気が…』と呟き、思い出そうとしているサンジから意識を移そうとウソップは慌ててカーテンを掴む。
「サンジ!!酒場でやっと見つけた地の提供者だ!!お礼を言っておけ!!」
「いいのよ!人間同士…困った時はお互い様よ…」
「え…!!まさかか弱いレディからおれは血を…!?」
サンジはカーテンから覗く手と甲高い声に女性だと思ったのか、ハッと考え込んで俯いていた顔を上げる。
ウソップがカーテンを引っ張れば、そこにいたのは――…
「いいのよバカん!」
「よければもっとあげるわ!バカん!」
「―――ッぁぁああああああ!」
双子のオカマ海賊、スプラッシュとスプラッタだった。
体格のいい筋肉質のオカマから血を分けてもらったサンジはオカマにトラウマがあるため悲鳴を上げる。
雄たけびに近い悲鳴を上げるサンジをよそにサンジの介護をするチョッパーを残し、この部屋の主へ改めて御礼を告げようとケイミーの案内で部屋を出た。
部屋を出るもサンジの悲鳴はまだ聞こえていた。
◇◇◇◇◇◇◇
「ブロンドボーヤはもう大丈夫なのかい?」
ケイミーは目の前の大きな人魚の問いに頷いて見せる。
「マダム・シャーリー、お部屋貸してくれてありがとう!あとマダムは美女だからあのお部屋に入らないで!それとここがマーメイドカフェの裏口だって事もサンジ君には内緒!それがバレるとまた大変なことになるって主治医のチョッパーちんが!!」
「おかしな処方だね…フフフ」
マダム・シャーリーと呼ばれた人魚はケイミーの言葉に愉快そうに笑う。
「おーい『でか人魚』これ何だ?」
処方の仕方に笑っていたシャーリーだったが、相変わらず空気を読まないルフィの問いに顔を上げる。
そこには愛用の水晶玉があり、その大きさは人間であるルフィ達とケイミーから見たら普通の水晶玉より少し大きい。
物珍しそうに見つめるルフィ達にシャーリーは『それにはお触れでないよ、麦わらボーヤ達』と慌てるでもなく静かに咎める。
「それは占いに使う水晶玉だよ!マダムの未来予知はこのサンゴが丘じゃ有名なんだよ〜!」
「もう辞めたのよ占いは…未来なんて知らない方がイイ…」
「じゃあ人魚ってうんこ出るのか?」
「じゃあて…占い関係ねェよ!!」
「品のないコ…!!」
「あ、謝ってルフィちん!!」
「ごめんっ…!!」
もう水晶には興味がなくなったのか、ルフィは人魚全員に聞く気な如くケイミーにも聞いた質問をシャーリーに投げかける。
ゴゴゴ…と怒りの表情を浮かべてルフィに低い声を向けるシャーリーに慌ててケイミーが謝るよう伝え、ルフィでもその迫力に負けたのか素直に謝る。
そんなルフィに『馬鹿…』とアスカは呆れたように横目で見つめため息をつく。
ルフィが謝り気が済んだのかシャーリーは息をつきながらソファにもたれながらホッと胸を撫で下ろしているケイミーを見下ろした。
「ケイミー、あんた今日はお店休んでイイよ…お友達を島案内でもしておあげ。」
「え?イイの!?」
「イイも悪いも…近頃は人間の海賊の客足がパッタリで商売上がったりじゃないか…入り江の娘らも直来るし人手は充分だよ…」
ケイミーからここに来るまでに聞いた話しをアスカはシャーリーの言葉を聞きながら思い出す。
海で何が起こっているのかまでは分からないが、先ほど同時にハモンドの事を聞き原因がハモンドとその裏にいる『ホーディ・ジョーンズ』なのかも知れないと無意識に眉間にシワをよせる。
「『ヒトデは充分』!? あ!イケない!早くパッパグに蛤を届けに行かなきゃ!お腹空いてるだろうな!!」
「何だいムッシュ・パッパグなら懐かしい友達に会ったってウチの店で騒いでるよ今」
「え?」
『人手』と聞き、ケイミーは『ヒトデ』であるパッパグの事をようやく思い出す。
そんなケイミーにシャーリーはパッパグが店にいると伝え、ケイミーは小首をかしげた。
そして、サンジを看病するために残ったチョッパーを覗く3人はケイミーと共にマーメイドカフェへと向かった。
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