(31 / 293) ラビットガール (31)

あれから数日。
ルフィは深手を負いながらもマグラ達の手当てのお蔭で命に別状はなく、傷跡も残る事はないだろうとも言われた。
だが、それでもルフィは痛みに耐えながらエースとダダンを探しに向かおうとした。
しかし、それはマグラ達に止められ、ルフィは再び布団の中に戻される。


「今ゴミ山の方は火事の後処理で準隊が大勢ディ回ってる!"後処理"っチーのは焼けたゴミの一掃と…生き残りの処理も含まりてるんだ!!今行けば殺さりるぞ!!」

「でも…!!エースに会いたい…!!きっとサボも心配してる…!」


どういう理由でゴミ山が燃やされたかはダダン達には分からない。
だが、これほどの大きな火事が自然に起こせるわけがなく、火の回りが早い事から人の手だろうというのは推測される。
ブルージャムが意味のない事をするはずもないから裏には国が関わっていると考えた。
それに数日前に新聞にデカデカと世界貴族が来るという情報もあり、それが関係しているのだろうとマグラ達は読んだ。
合っているか、合っていないかなど関係なく、今はとにかくルフィとアスカの安全が第一だった。
エースとダダンに会いたいのは何もルフィだけではなく、アスカも同じである。
ルフィに釣られ泣き出すアスカに、大人達は泣き出す二人の子供を慰めるのに必死だった。







ルフィの傷も完全に塞がり、包帯を解きしばらくした頃…ダダンの部下の一人が嬉しそうな表情を見せて家に駆け込んできた。


「おい!!みんな!2人が帰ってきたぞ!!」

「「「え!!?」」」


部下の言葉にその場にいた全員がそれぞれ動かしていた手を止め目を丸くして驚いた。
外へ出れば部下の後にダダンを背負うエースの姿が現れ、全員2人に駆け寄る。


「エース!!!お頭ァ!!」

「良かった!2人とも無事だったんだな!!!」


エースは背負っていたダダンを部下達に預け、自分は服を脱いで治療してもらっていた。
そんなエースにルフィは泣きながら抱きつく。


「エ〜ズゥ〜〜!!!」

「ルフィお前…おれが死んだと思ったのか?」

「だっで…!!」

「何泣いてんだよ!人を勝手に殺すなバカ!!」


エースはルフィが抱き付く事は怒る事ではないと思っている。
それほど自分達を心配してくれたという証拠だから黙って受け止めるのが、男である。
だが、エースも男ならば、ルフィも男である。
男がいつまでもべそべそと泣くものではないとルフィを叱った。
ルフィは叩かれた頭を擦りながらエースの叱咤に泣き止もうと必死に涙を止める。
口をキュッと閉じるルフィに『よし』と頷くエースの視界にアスカが映り、ルフィからアスカへ目線を移し、アスカの名前を呟いた。
アスカはエースを無表情に見つめていたが、エースに名前を呼ばれ、エースとダダンが帰ってきたのが自分の空想ではなく現実だというのに気づいたのかアスカの大きな金色の瞳から涙が溢れルフィと同じくエースに抱きついた。


「アスカ」

「バカー!!一人にしないって言ったのにッ!!!」

「ごめん、ごめんな、アスカ」

「ふえ…」


泣き出す自分を慰めるため頭を撫でるエースにアスカは本当にエースが帰ってきたのだと泣き止もうとしても涙が溢れる。
中々泣き止まないアスカに四苦八苦しているとルフィがアスカを慰めに来てくれた。


「アスカ!泣き止めよ!エースはもうどこもいかねぇから!」

「ほんとう?」

「あぁ!おれが何処もいかせねェ!」


やはり付き合いが長いルフィの方が慰め方が分かっているのか、ルフィの言葉にアスカは涙を流すも笑顔を見せる。
エースに言われ泣き止んだルフィもまだ涙を溜めていたが、アスカの笑顔に釣られるようにルフィもニコッと笑顔を浮かべた。
そんな2人に山賊達もエースもホッと安堵した顔をする。







エースはマグラ達に今までのことを話す。
あまり聞かせたくない話という事で理由を付け、アスカとルフィは外で遊んでいた。


「火事の夜ブルージャムには何とか勝ったんだ。でもその時にはもう道が火に塞がれてて…ダダンが全身にひどい火傷を負っちまった。何とか火の届かねェ"中間の森"の川縁に身を隠して町に薬品を盗みに行ったり…必死にダダンの命を取り留めてた…」

「まーまー……そうか…とにかく2人共命があってよかった。お頭ァ、ゆっくり療養しましょうね…」

「…悪ィなァ…心配かけて……」

「ゴミ山があんな事になるなんて…サボは心配してねェかな…」


エースが素人なりにダダンを手当してくれていたおかげで命に係わるような傷はなく、数日安静にしていれば動けるようになると医師はそう診断した。
手当てを受けているダダンを見ながらエースは高町にいるであろうサボを心配する。
そんなエースにダダンは激痛が走りながらもエースに顔を向ける。


「エース…おめェあの時なぜ逃げなかった…」


"あの時"というのはブルージャムと対峙していた時だろう。
逃げ出せるチャンスだったのに逃げ出す素振りも見せなかったエースにダダンは問いかけた。
その問いにエースは目を伏せた後、外につながるドアへと目を向ける。


「…時々……カッと血が上るんだ…逃げたら何か…大きなものを失いそうで怖くなる…あの時は…おれの後ろにルフィとアスカが居た」

「!!」

「わからねェけど…たぶんそのせいだ…」


ダダンはエースの言葉に昔を思い出す。
エースを引き受けてからガープから聞いた話。
エースの父、ロジャーが決して仲間を見捨てないという話を思い出しながらダダンはエースを見つめる。


(恨んでも……血は争えねぇってやつか…)


きっと、本人は認めはしないだろう。
だが、ダダンはエースの言葉に強い血の繋がりを感じた。

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