船のコーティング、そして仲間をフカボシ達に任せていたゾロ達はそれまでただ待つしかなかった。
その中でルフィをどう見つけるかを話していると突然城全体が揺れ、何かがぶつかってくる音が大きく響く。
「!――なに!?」
「何の音じゃもん!!?まさかデッケンの槍か…!硬殻塔の方じゃもん!しらほしが危ない…!!衛兵はついておるのか!?」
「いえ…全員こちらに捕まっております!!」
地震とは違う大きな揺れと音にナミ達は辺りを見渡す。
ネチュプーンは何か心当たりあるのかハッとさせ右大臣を見下ろした。
しかし右大臣からの言葉に眉間にシワを寄せた後、兵達からゾロ達へと目線を移す。
「おい海賊達!兵に代わって姫の安全を確かめて来い!」
「あァ?何の話だ。」
「姫?」
兵士全員がこの場におり、その上縛られている。
娘を守る者がいない今ネチュプーンは海賊に命じるが、姫のもとへ行かせようとする王に兵士達が慌てて止めに入るのだが…ネチュプーンの『背に腹はかえられん』という言葉に黙るしかなかった。
「硬殻塔は城の北東じゃ!お前達すぐに行け!!」
「なんで人質に命令されなきゃならねェんだ!」
「黙れい!!しらほしはワシの一人娘じゃもん!訳あって常時命を狙われておる!!この機に娘に何かあったらお主ら!海溝の果てまで追いたてるぞ!!」
ズイッと怒りと心配に負かせネプチューンはゾロ達に顔を近づかせ怒鳴るように声を上げた。
自分達より数倍大きいネプチューンに怒鳴られ顔を近づかされればナミとウソップはビクッと肩を揺らし1歩後ろに下がる。
それでもネプチューンは娘を想い再度助けに行けと命じた。
しかし、"人魚姫"で反応した者が役1名…
「つまり"人魚姫"ということですね!!?しからば私が"馳せ参じて仕り候!!そして!!パンツ見せて頂いてもよろしいでしょうか!?」
「待てブルックーー!!」
「オオー!かなわんわー!奴め!不埒な目的で走っていきます!!別の意味で姫様が危ない!!」
麦わらの海賊団、そして人として"人魚姫"に人一倍憧れと不埒な目的を持ったブルックが大喜びに扉へ向かって走り出した。
それをアスカが黙って見送り、ウソップが止めようと声を上げるが…今のブルックは誰にも止められない。
「待たれいガイコツ!!!」
「!!」
だが、暴走し手の施しようがないほど浮かれているブルックに声をかけ足を止めたものがいた。
それは右大臣だった。
右大臣は止まり振り返ったブルックに顔をあげ懇願するように声を上げる。
「縛ったままで結構だ!!私も連れてってくれ!『硬殻塔』は私の管轄!姫の身に何か起きては私は死んでも死にきれぬ!」
「…………」
右大臣は自分達が仕える王女の危機に縛られていられない、と敵に願い出る。
ブルックは振り返ったまま固まり、ジッと右大臣を見つめる。
右大臣もブルックを強い眼差しで見つめ、その意思と想いが強いと見て取れた。
ブルックはゆっくりと右大臣に近寄り、そして…
「お好きですね!」
「アホぬかせェ!!!」
ブルックは右大臣を担ぎ走る。
右大臣も同じ穴の狢だと勘違いしながら…
「不埒な!!」
「はぁ…ばっかじゃないの…」
『サンジさん!お先に失礼いたします!ヨホホ!』と高笑いを浮べながら去っていくブルックに左大臣が煙を上げて怒鳴りながら見送り、アスカは人魚のパンツなどどうでもいいためそのために命をかける勢いのブルック(とサンジ)に呆れたように溜息をつき呟いた。
◇◇◇◇◇◇◇
ブルックと右大臣がここから出て行き硬殻塔へ向かって数分…ブルック達は帰ってきた。
「みなさ〜〜ん!!大ニュースでーーす!!」
「ギャーー!おめェなに連れて来てんだバカーーっ!!」
人間の海賊を連れて…
「なにあの人間…血だらけ…」
ウソップとナミが悲鳴をあげ顔を青くさせている中、隣ではアスカが冷静にブルックの後ろにいる人間の海賊達を分析していた。
ブルックの後ろにいる人間達は何故か既に大怪我を負って血だらけだった。
ブルックを相手にしていたとすれば話は繋がるが、まずいくらエロ骨格なブルックでもその辺の者達よりは強い。
血だらけになるにしても立って追いかけることも出来ず、その前に立つこともできないはずである。
アスカはなぜここまで怪我をして追いかけるのだろうと腕を組み呑気に考えていた。
その間にもゾロがアスカ達の前に出て刀を抜く。
―――勝負は一瞬だった。
◇◇◇◇◇◇◇
「俺が好きで斬りまくったみてェな言い方すんな!!」
ゾロは刀についた血を振りかぶって飛ばし、後ろでブーブー罵倒する魚人達へ声を上げた。
ゾロの周りには血だらけだった海賊が更に血を出しながら転がっており、これらの海賊をゾロ1人が倒しその様子を見た左大臣達が『人殺し〜!』と一斉に罵倒を上げる。
魚人達の罵倒にゾロは人聞きが悪いと悪人面を更に深めながら後ろの魚人達を睨みつける。
…が、先ほどのアスカやナミを見ていた魚人達は悪人面が更に悪人面になったのを見ても言葉を詰まらせることなく続ける。
「いや!戦闘中生き生きしておった!生まれついての人斬りだお前は!」
「じゃあ刀持って襲い掛かってくる海賊に茶でも出すのかテメェは!!!」
「そうだな…茶を出して話し合うという手段が…」
「そんな相手じゃなかっただろ!!」
「ともかく全員倒してしまってはこやつらの目的が分からんというとるんじゃ!」
「お前らにそこまで気遣ってやる義理はねェよ!!」
左大臣とゾロの言い合いは続く。
その側ではウソップ・ナミが自体が悪い方へ転がっていくと黒き悲しい何かを抱えながら膝を抱いて座っており、ナミの隣にはブルックがアスカに何か話しかけていた。
「ルフィさん、人魚姫さんに会ったんですかねー…私も会いたいなー」
「さあ…でもいなかったんでしょ?」
正直人魚姫なんて興味の欠片も無いアスカはブルックの言葉に適当に返す。
ブルックが部屋を見たら空っぽで、その後海賊達に追いかけられたとアスカは聞き、『じゃあどっかいったんじゃない?』と呟く。
アスカの呟きにブルックは『どーなんでしょーねェ〜』とやる気の無い返事を返した。
「そんなことより鎖をとけい!しらほしを返すんじゃもん!貴様ら〜〜!!」
「だから何で俺達が誘拐すんだよ!人魚姫を!!」
「犯人は"麦わらのルフィ"じゃもん!!」
サメの上にシャボンをつけたルフィがいたとブルックと右大臣から聞き、ネプチューンは娘を誘拐したのはルフィだと思い込んでいた。
間違いではないが、肝心の人魚姫がいなかったとブルックが慌ててルフィへの疑いを晴らそうとネプチューンを見上げる。
「じゃがあの子は勝手に城を出るような子ではないんじゃもん!!しらほしはわし程に体がでかいのじゃもん!出て行って誰も気づかんハズはないっ!!!」
「ええ!?人魚姫がでかい!?そんなバカな…!」
人魚姫=人間サイズの美しい女性、というイメージは誰にだってあるだろう。
むしろそれしか浮かばない。
ブルックも同じく絶世の美女だとイメージしていたが、ネプチューンの言葉に太った体の大きな人魚が頭上に浮かび上がる。
自分の勝手に描いた人魚姫にブルックは勝手にショックを受け、アスカは『もじゃもじゃの…人魚姫…?』とネプチューンを見上げながらそう信じられないように呟く。
そんなアスカ達をよそにネプチューンはハッと何か閃いたように顔を上げた。
「そうじゃもん!!もしやメガロの口の中にしらほしを詰めて連れ出したのでは!!?」
「ぷ〜〜っ!!こんな時に笑わせるのはやめてくださいっ!国王!」
「そんなバカな事万が一思い付ついても誰が実行しますか!発想がひどすぎます!!」
ネプリューンはメガロの中に娘がいるんじゃないか、と考えた。
それが正解なのだが、兵達は誰もが絶対ないと噴き、アスカはネプチューンの言葉にそっと目を逸らす。
決して否定は出来ない…それが自分の幼馴染であり、我等の船長だからである。
「とにかく!!ウチの船長は誘拐なんてしないわよ!!疑うなら他当たってよ!!」
「いや!他に考えられぬ!しらほしが無事戻らねば貴様らの船も仲間も返さんからそう思うんじゃもん!」
「そんな〜っ!!」
娘を誘拐したのはルフィだと信じて疑わないネプチューンにナミとウソップは困ったように声を零す。
アスカも頑なにルフィのせいだというネプリューンに溜息しか出てこなかった。
だからだろうか…海賊の1人が竜宮城の入り口のレバーを降ろしていることに彼らは気付いていない。
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