(25 / 274) ラビットガール2 (25)

見る見る小さくなっていくサンゴとデッケンを見送るしかできずネプチューンは涙を流す。


「おおおおお〜〜!!!バンダー・デッケンがしらほしを追って行ってしまったァ!!頼むんじゃもんお前達!!欲しいモノなら何でもやる!デッケンを追わせてくれェ!!金銀財宝でも兵士達の命でも何でもやるもん!」

「「コラコラ国王!!」」


ある島で知り合った巨人族のように涙を大量に流すネプチューンにゾロは疎ましそうに見上げる。
声の音量も相まってアスカは両耳を塞ぎ関わらないようにあさっての方向を向く。
自国の王の言葉に捕まっている兵士が一斉に突っ込みを入れるものの娘の危機にネプチューンは構う暇はなかった。
そんなネプチューンの姿を見つめ、ホーディは呆れたように溜息をつく。


「無様な姿だ…ネプチューン!……まさか因縁の麦わらの一味が竜宮城制圧に力を貸してくれるとはな」

(因縁…?)


自分達の国のトップの情けない姿を見て呆れているホーディの『因縁』という言葉にナミは怪訝そうにホーディを見つめる。


「――!!」


ホーディを見つめていたナミだったが、腕を組んでいるホーディの腕にアーロンのマークが彫られているのに気付きハッと目を見張る。
ドクン、ドクン、と鼓動が大きくなり、先程より冷や汗がドッと溢れる。
仲間のお陰であまり思い出すことなかった過去の辛く悲しい記憶がフラッシュバックのように次々と溢れていく。
ナミは家族や村の人達を虐げたアーロンの記憶にグッと拳を握り正気を保つ。


「ぬう…ジンベエより『魚人街』に不穏な動きがあると聞いてはいたが…元々ネプチューン軍に属したお前が主犯とは…!恥を知れホーディ!!」


新世界突入の寸前でアーロンのマークを見る事になるとは思ってもなかったナミをよそに右大臣の言葉にホーディは高笑いを上げる。


「ジャハハ!!恥!?――それはネプチューン軍として俺が高い誇りを持っていたらの話…かつて兵士として仕えたのは実戦での戦闘技術を身につける為…それだけだ。」

「!!――貴様…ッ!!」

「おかげで強くなれた…!ガキの頃から目にしてきたのは理不尽に人間に虐げられる魚人族…!!憧れたのはそいつらの鼻っ柱をへし折る゙アーロン一味゙の野心!!!俺達はその意志を再興する"新魚人海賊団"だ!!!」

「…ッ!!」


アーロンの意志を継ぐ…その言葉にナミは勿論、アスカやゾロ、ウソップは目を丸くする。
ゾロ達はナミの村の事は今でも十分に覚えている。
アスカは直接関わってはいないが話しを聞けば聞くほど許されることでもないし、自分もそれ以上の苦痛を味わったことがあるからナミの辛い気持ちを十分に理解はできる。
アスカは『アーロン』という名前についチラリとナミを横目で見つめた。


「………」


アスカの目には以外にもナミは冷静に見えた。
しかしアスカは知っている…分かっている。
気丈に振舞っているという事を。
心の中では、頭の中では辛く嫌な記憶がどんどん溢れていることを。
しかしナミが気丈に振舞っている以上、アスカからは何も出来ずただ視線を逸らしホーディを睨むしかなかった。


「彼が計画通り"東の海"から世界の支配に乗り出す頃に俺はアーロンの右腕となれるよう力を蓄えていた……だがそればある人間達゙によって阻止されちまったがなァ!!!」


アーロンを慕っている様子のホーディの言葉にゾロとアスカは黙り込む。
ウソップもアーロンの意志を汲む魚人がいたことに驚きが隠せず、唯一この中でナミの過去を知らないブルックは知らないのに驚きいつもの調子でおちゃらけていると無言でウソップに蹴られてしまった。


「どいてろ……」


説明を終えると湧きにあった巨大で熱い門の壁へ歩み寄る。
部下達を一声で退かせ、そっとその壁へと手を伸ばし…


「"粗鮫"!!!」


ホーディは腕の握力だけで城の門を壊し、そのヒビの入り方の速さと握力にウソップ達や兵士達は驚愕する。


「ちょっと…やば…」


握力だけで壁を壊すホーディを見つめながらアスカは嫌な予感が過ぎり、1歩下がる。
アスカが1歩下がったの同時にゾロは腰に刺さっていた刀をいつでも抜けるように親指で弾く。
壁にヒビが大きく入ったことで水圧に耐え切れなくなった壁が破壊され大量の海水が城内に入り込む。


「しまった!!城内に海水が!!!」

「あああ!!大変ですよコレ!!!」


ゾロも目を丸くさせるが、それよりも能力者であるアスカとブルックはこの中の誰よりも焦っているだろう。
特にアスカは海楼石と同じく人一倍海水に弱く、流れ込んでくる海水に恐れ更に後退る。
驚きが隠せない人間達や兵士達にホーディは不敵な笑みを浮かべ、濡れた腕をゆっくりと上げる。


「お、おい!!伏せろ!アレが来るぞ!!」


ホーディが腕を上げたのを見て部下の魚人達は焦り、その場から急いで離れる。
それを不思議に思ったその瞬間、ホーディは上げていた腕を勢いつけて振り下げる。
するとその勢いで水滴が矢となりネプチューン達へと放たれた。


「水滴が矢に!!!」


大量に入って来た海水がすで膝まで上がってきており、アスカはウサギで自分やナミ達や兵士達を庇おうするも海水によって力を奪われ立っているのがやっとの状態のためウサギを出すことすら出来なかった。
そんな避ける余裕もないアスカに気付いたゾロがアスカの腕を引っ張りしゃがませたお陰でアスカは水滴の矢に当たることはなく、ゾロやウソップ達も避けることは出来た。
しかし、ゾロ達とは違い縛られたままの兵士達は無残にも水滴の矢が辺り、動けない為に恰好の的となっている。


「貴様…!!我が軍の精鋭達を闇雲に傷つけおって!!!やめんか!愚か者め!!!」

「こ、国王様!!おやめください!!!」


次々と海を赤くそめ倒れる兵士達を見たネプリューンは怒り、キッとホーディを睨みつけ自分の巨体を兵士達の前へ屈ませ庇う。
ネプチューンが庇うのを見て兵士達は目を丸くさせ慌てて止めるよう願う。
しかし兵士がただ傷つくところを見ていられないネプチューンは決して退くことはなかった。
そんなネプチューンの姿を見てホーディは高々と嘲笑の声を上げる。


「バカな奴だネプチューン!!部下の盾になる王がどこにいる!!やはりお前は王の器じゃねェんだよ!!!」


笑いながらもホーディはネプチューンや兵士達に向けて水滴の矢を次々と放つ。


「ひでェ!!無抵抗の奴らに!!コイツ!実力もアーロンなんかの比じゃねェぞ!」

「…一刀流……゙厄港鳥゙!!!」


ウソップがホーディの非情さと強さに驚愕し声を上げる。
そんなウソップの声を聞きながらもゾロは刀を握っている手の力を強め、水を切るように刀を振った。
斬撃が水の刃となりホーディへと向けられるのだが…ホーディはゾロの攻撃を避けることも焦る事もなく側にいた部下を盾にするように掴み上げる。


「あのヤロー!!仲間を盾に!最悪だ!!」

「…おいお前ら!兵士達の縄をほどけ!!」

「え!?」


仲間を盾にし薄ら笑いを浮べるホーディを睨みつけながらゾロはウソップに縄を解くよう指示を出す。
そんなゾロの言葉にウソップは困惑した表情を浮かべ、アスカはウソップ同様仲間を盾にする非道さに、そして海水に浸かり辛いのも相まって眉間にしわを深く寄せていた。


「ちょっと聞いてください!!ナミさんがどこかへ行ってしまったことと…っ私の力が抜けて、いくこ、と……ぁぁ…」

「ええ!? ナミが!?」


ブルックも能力者のため、アスカと同じく海水に足が浸かっているため言葉に覇気がない。
ウソップはブルックの言葉にナミを探すように辺りを見渡すもブルックの言う通りナミの姿はない。
アスカも辛そうにしながらも辺りをナミを探すように辺りを見渡していたが、アスカの目にもナミの姿は捉えることはなかった。


「この国との交渉は決裂だ!!人質を全員゙無事に゙返すって約束を俺達は守れなかった!」

「なんと律儀な…!!」


ゾロはホーディが攻撃したとはいえ、守れなかった事にフカボシとの交渉したと兵士の縄を切るようにウソップ達に指示を出す。
そのゾロの律儀な言葉に左大臣は驚きが隠せず目を丸くさせ海賊であるゾロの背を見つめる。


「お早くお逃げください!隣の方の縄頼みますよ…私は…もう…力が……」


ゾロの指示に従いウソップとブルックが次々と兵士の縄を切り、兵士達を解放する。
ブルックは抜けていく力で何とか数人の兵士の縄を切っていったが、もう限界なのか次の兵士の縄を切ることは出来なかった。
解放された兵士達は次々と武器を取り、仲間達の縄を解いて行く。
ただ、アスカだけは人一倍海水に弱いせいで動くこともままならず、座り込んでいたため水位が上がりすでに肩まで浸かってしまっていた。
やっと顔を上げるのに精一杯なアスカにゾロは急いで駆け寄り動けないアスカを片腕で抱きかかえる。
アスカは水面から離れ少しはホッとし、安堵の息を小さくつく。


「ゾロ〜!もう水嵩が…!!」

「もーダメだー」


ブルックはウソップが回収し、もう1人の能力者が無事なのを確認したゾロはアスカを抱きかかえながら鎖で縛られているネプチューンへ歩み寄る。


「頼みがある…この3人を城から逃がしてくれ!」

「!――おぬしは…」

「あいつが追って来たら誰も逃げられねェだろ。」


ネプチューンの鎖を刀で切り、ゾロは腕にいるアスカとこちらに泳いで向かってきているウソップとそのウソップに助けられたブルックを城から逃がしてくれるよう頼んだ。
ゾロはネプチューンに3人を預け、ここから脱出するその間にホーディを足止めするためこちらに到着したウソップにアスカを渡す。
両腕に能力者を抱えながらウソップはアスカも渡され『え?』と困惑した声を零す。
説明している時間もないと仲間をネプチューンに任せ、ゾロは思いっきり息を吸い込み完全に城の半分以上を埋め尽くす海水へと潜っていく。


「邪魔するなよ…国奪りのよ……」


ホーディは対峙するゾロを見つめ不敵に笑みを浮かべた。

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