(26 / 274) ラビットガール2 (26)

「お、おい!ゾロ!?」


何がなんだか分からないウソップは水中に消えたゾロを呼ぶがゾロが上がってくる気配もなく、能力者を抱えどうしようかと頭を悩ませる。
そんなウソップをよそにネプチューンは側に駆け寄ってきた兵士達へ目をやりながら鎖を外す。


「全兵聞け!!」

「はっ!すぐにホーディとその一味を…」

「ダメじゃもん!!」

「!?」


ネプチューンがホーディと麦わらの一味を捕まえろと命令をするかと思っていた兵士達だったが、声を上げて首を振る王に目を丸くさせる。
そんな兵達をよそにネプチューンは続けた。


「わしがまともに戦えぬ今!お前達に無駄な犠牲者を出してしまう…!一旦城をやつらに明け渡しフカボシらと合流し再戦の時を計る!!」

「城を明け渡す!!?ネプチューン様…!本気でありますか!?」


まさか王の口から城を明け渡すという言葉が出てくるとは思ってもみなかった兵達は先程より更に目を丸くさせ驚愕させた。
ウソップは兵士とネプチューン達のやり取りを見ていたが、中々浮かんでこないのと水中でぎょじない手に何が出来るのかとゾロが心配となりアスカとブルックには暫くの間我慢してもらい水中へ潜る。
しかし…



「ホーディのお頭〜〜ッ!!」



ウソップの心配も杞憂に終わる。
水中なのにも関わらずゾロは魚人にも負けず、ホーディを一瞬にして斬り付けたのだ。
血を流しているのはゾロではなくホーディの方だったその光景を目にしウソップは一気に口に含んでいた空気を吐き出した。


「なぜ人間が水中で魚人より速く動けるんだ!!?何なんだあの男!!」

「野郎共!あの剣士を逃すな!!E・Sを補給だ!!」

「ウオオオ…!!」


水中では自分達がどんな生き物よりも優れていると思っていた魚人達は人間が一瞬で斬り付ける速さを見せた事に驚きが隠せなかった。
そして、懐からあるものを取り出しそれを全員口に含む。
それは一粒飲むごとに力を倍にさせる代わりに使用するたびに命を削られる等の副作用を要する凶薬だった。


「――何じゃこのただならぬ狂気の気配…!」


魚人達がE・Sを口に含み力を倍にさせるその気配を水に潜らなくても感じ取ったネプチューンは危機を察し城から一刻も早く出る必要があると持っていた三叉槍を背中に固定させる。


「やはり全兵を城の外へ逃がさなければ…!片目の剣士!城内はやがて水で一杯になる!!おぬしもわしの身体に掴まれ!!」

「こっちだ!!ゾロ!」

「…!!」


背中に三叉槍を固定したのと同時に上がってきたゾロにネプチューンは自分の体に掴まるように声を上げる。
ゾロはウソップの声掛けに泳いでウソップ達に駆け寄り、アスカをウソップから渡され抱える。
すでにアスカはぐったりとしており、気を失っているのか、そうでないのかが見て取れないほど衰弱していた。
ブルックもアスカほどではないがウソップに抱えられぐったりと力なく動きも取れない様子である。
ゾロは揺すっても声をかけても返事や身動きのないアスカに焦り舌打ちを打つ。


「道を作るぞ!!さァ!兵達よ!!戦わず城を抜け出せ!!!」


水位も更に上がってきており、ネプチューンはウソップとブルックとアスカがシャボンをつけたのと、ゾロが息を思いっきり吸ったのを見て水中へ潜る。
ヒゲに掴まっている4人に気を使いながらもネプチューンは"魚人柔術・ウルトラマリン"を放ち兵達の脱出の道を作る。
腰に激痛を伴いながらも全兵に逃げ出すように命じ、その命令に従い兵士達は全て城の外へと向かった。


「あいつら…!!おれ達と戦わず逃げ出していく…!」


自分達に目も向けず城の外へ逃げ出す兵士達に魚人達は追いかけようとするもネプチューンの"ウルトラマリン"のせいで身動きができなくなっていた。


「ホーディのお頭!早くこいつを…!」


その間にも気を失っているホーディに1人の魚人が駆け寄り、そして口の中にE・Sを放り込んだ。
兵士達は王の命令に従い城の外へ出る事が出来た。
しかし…


「お、おい!おっさん!!しっかりしてくれ!頼むよ!!」

「おおお!よる年波!恨めしや!身体が…う、動かんのじゃもん!!」

「何ィーーっ!!?」


王が、ネプチューンが追ってこないのをに気付き、そしてウソップの声に気付き、兵達は振り返る。
そこにはギックリ腰により動けずうつ伏せになり沈む王の姿があった。


「国王様…!」

「ネプチューン王!!」


動くことも出来ないという王に兵士達は立ち止まる。
身動きできない王を助け出そうとしたその次の瞬間…


「ホエ〜〜ル!!」

「!―ホエ!」


ネプチューンの愛鯨であるホエが主の危機に駆け寄り、ギックリ腰のため動けなかったネプチューンはホエにつけていた紐を握り兵士達と共に城を逃げ出そうとした。
人間であり、ウソップとブルック、アスカとは違いシャボンをつけていないゾロの息も限界に近くなったその時、ガクン、とネプチューンは何かに掴まれ引っ張られ、ホエの紐を放してしまう。


「――!!?」

「国王様…!」

「ホーディ!?相当な深手のハズでは!?」


ネプチューンが振り返るとそこには気を失い深手を負っていたはずのホーディがたった1本の腕で自分よりも巨体のネプチューンの尾を掴んで止めていた。
復活し、力も倍となったホーディに兵士達も目を丸くさせ王が危ないと駆け寄ろうするもその王であるネプチューンに止められてしまう。


「戻ってはならんのじゃもん!!」

「!?」

「フカボシ達を連れて来いっ!!」

「…っ!!!」


王の言葉に誰もが言葉と息を呑む。


「グズグズするな!!王に従え!!」

「は…はい!!」


誰もが命令と王の命の危機に揺らいでいると右大臣が声をあげ指示をだした。
右大臣は王の命令を第一とし、戻りたい衝動を抑え部下たちを一喝し王に背を向けてその場から立ち去っていく。
右大臣をはじめとする兵達の誰もがネプチューンを置いていくことに身が引き裂かれる思いだった。


「すまぬ…!お前達…!!絶対に見殺しにはせん!!」


兵士達全員がその場から立ち去ったのを見送ったネプチューンは自分の体にくっ付いている人間達へ目線を落とし謝る。
シャボンをつけているウソップは槍を向けられ手を上げる。
その際ついブルックを離してしまい、能力者のブルックは水中に沈んでいった。
ゾロは既に限界に達したのか空気を吐き出し苦しげに顔を歪ませ、気を失いかけているゾロに放されたアスカはブルック同様沈んでいく。
やはり気を失っているのか目を瞑ったままびくともしない。

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