竜宮城からナミはケイミーと共に脱出した。
置いていってしまう事に抵抗を見せるケイミーにナミは心配して当たった事がないから心配するだけ無駄だと言う。
ただ、やはり妹のように可愛がっているアスカ
だけは心配でならないようだが、能力者のアスカを連れて脱出するほどの腕力も、ケイミーの体力もないため泣く泣く置いていくしかなかった。
まあ、アスカは気にしないだろうし、何かあったら能力者ではないゾロやウソップがいるから守ってくれるだろう…と淡い期待を胸に城を出る。
だがやはり心配は抜けきれない。
ジンベエに会いたいと"海の森"へと急ぐと底にはすでにルフィやサンジ、チョッパー、フランキーがいた。
仲間達のほかにも海賊王の船を作ったというフランキーの師であるトムの弟、デンと、ナミが会おうとしていたジンベエ、そしてルフィが連れてきたという人魚姫のしらほしもいる。
しらほしは長い間一度も行けなかった母の墓の側にずっと座り込んでおり、ジンベエはナミが仲間だったアーロンから受けた仕打ちを知り深く詫びる。
そしてジンベエからアーロンの過去、タイヨウの海賊団の過去が明らかとされ、ジンベエの言葉を聞いてもナミはやはりアーロンに同情することも許すこともできなかった。
ただ、仲間と出会えたから今の自分があり、楽しく生きていけている自分に謝らないでほしいとジンベエに伝える。
ナミの言葉にジンベエは涙が我慢できず溢れだしながらナミに深々と頭を下げる。
そんなジンベエにナミはジンベエもずっと苦しんでいたことを知った。
「――では…すまん……時間を取った…竜宮におる者を確認するが…ホーディとその一味が攻めて来て国王と兵士が捕らわれ…アスカ君を含む5人動向不明…今ある情報ではここまで…」
気を取り直し、ジンベエはナミの持つ情報を元に整理する。
戦争の時に共に戦ったアスカがホーディ達のもとにいることにジンベエも心配だが、ルフィ達のゾロとウソップがいるから大丈夫だろ、という言葉を信じすぐさま助け出しに行きたい衝動をなんとか抑えていた。
しかしフランキーは側で過保護組みのナミ、サンジを加えジンベエまでアスカを心配しているのを見て思う…
(こいつらの目からはアスカはか弱いウサギと映っているのか…?)
…と。
どう見ても3人の様子からアスカは何も出来ない可愛い子ウサギと思っているようにしか見えない。
海水によって弱まっているとは言えアスカはこの一味の二番手。
船長ですらアスカに頭が上がらず、男性陣全員も同じく逆らえない。
あのゾロですら(戦闘での実力差は不明だが)一度も勝てたことないというのにそうそうやられるわけがない。
むしろ逆にホーディ一味が心配になるほどである。
それを言ったらナミ、サンジ、ジンベエに鬼のような形相で睨みつけられるためフランキーはその言葉を呑み込むしかなかった。
「ニュ〜…ジンベエさん……ホーディの計画通りなら今頃国中もっとひどい事になってるハズだぞ…」
「そうかハチ!お前魚人街におったのならホーディの計画を知っとるのか…!?あの男…軍を出た後魚人街で何か企んでおるとはふんどったがわしの前では決してしっぽを出さなんだ…」
ルフィ達にボロボロになっていた所を助けだされたハチは今まで魚人街にいたという。
ジンベエも魚人街の動きには目を光らせていたが、流石に七武海だった事もあり中までは探れずにいた。
ハチはアーロン一味だった事もあり、そして人柄もあり魚人街での出入りは割かし自由だったという。
ハチはジンベエの問いにゆっくりと頷き『知っていると』呟いた。
「…ホーディはアーロンさんを越える程の"人間嫌い"…魚人族の恨みと怒りだけを食って育ったような男なんだ…だけどあいつには明らかにアーロンさんと違うところがある…!!アーロンさんは人間を蔑むけど同族の魚人には手を上げない"種族主義者"――でもホーディは人間と仲良くしようとする魚人にまでも容赦なく手をかける…!!」
アーロンの側にずっといたハチだからこそアーロンとホーディの違いを誰よりも分かってしまう。
人間には手を出しても同じ魚人には手を出さないアーロンとは違い、ホーディは同族ですら容赦はない。
ハチも一度見たことがあるのか、同じ魚人を殺す場面を思い出し苦しげに顔を歪める。
「今年は4年に一度の『世界会議』が開かれる年だろ…署名もたくさん集まって…!今回いよいよネプチューン王が世界に対して『魚人島移住』の意志を伝えに行く予定だ…」
「それを阻止するのが狙いか…!!」
魚人島移住。
それは人間を嫌うホーディ達がもっとも忌み嫌う行為でもあった。
人間を嫌い、憎む彼らにとって、同じ場所で生きていくことは死んだ方がましだと思えるものである。
それを阻止するのが狙いかとジンベエはハッとさせるが、ハチから出たのは『阻止だけでは終わねェ』と否定の言葉だった。
自分の知っている限りの事をジンベエ達に知らせようとハチは続けようとした。
しかし…
「わー!!森からでっけー電伝虫!!」
「映像電伝虫だ!モニターが作動するぞ!」
ハチが口を開きかけたその時、サンゴの森からのろのろと大きな電伝虫が姿を現す。
それを見たデンが映像電伝虫だとルフィ達に教え、その瞬間、電伝虫から1人の男の姿が映し出される。
「あ!!あいつだわっ!!」
映像の男はホーディだった。
ナミはホーディの姿を見て指を差す。
≪あ〜………全魚人島民――…聞こえるか?…おれは魚人街の『新魚人海賊団』船長…ホーディ・ジョーンズだ。≫
ノイズ交じりの声から始まり、ホーディの音声は次第にはっきりとしていく。
ホーディの姿をルフィはただ無言で見上げていた。
≪魚人島リュウグウ王国国民に伝えたいことがある……この国は一度…崩壊する!そして生まれ変わる!新しい王はおれだ!!≫
町で見てるであろう国民に向けてホーディははっきりと言った。
その言葉にケイミーやしらほしは目を丸くさせ、ジンベエは眉間にシワをよせ画面の向こうのホーディを睨みつける。
町もざわめきが広がり、そんな戸惑いの表情を見せる国民達をよそにホーディは続けた。
≪人間との"友好"を望む者はこの国から消えろ!……直に『魚人街』から"新しい住民達"がここへ移住してくる…!!共に人間達を嫌い…共にこの島の変改を望んでいる≫
「えェ!?"移住"って…!」
「あ…あの無法者達が全員この島で暮らすってのか…!?」
魚人街の者達の多くが無法者というのはここに住む魚人達は知っていた。
だからこそその無法者達がここへ移住してくるというホーディの言葉に住民達はざわめき始めてしまう。
≪お前達は見たハズだ!大好きなオトヒメ王妃の"死"を!!人間を信じ笑顔で歩み寄っても人間はまたお前達を裏切るだろう!!!なぜそれがわからねぇ!!――お前達はネプチューンの一族に唆され死へ続く道を歩かされているだけだ!目を覚ませ!!≫
「そんな…」
「………」
海の森で演説を聞いていたしらほしは涙を溜めホーディの言葉を聞いていおり、ただジンベエは何も言わず、ホーディを睨むように画像を見つめていた。
≪これを見ろ!≫
「――!!」
するとカメラが引かれ、現れたその光景にしらほしもジンベエも、町の住人達は目を疑った。
≪かつての大騎士ネプチューンも歳をとった…!!≫
「お父様…!!」
ホーディの後ろには傷だらけで鎖に拘束されている国王、ネプチューンが写っていた。
しらほしや3人の息子は父の姿に目を丸くさせ、しらほしは涙を溜める。
ナミは捕まっている国王を見て気まずそうに目を逸らしぽつりと呟く。
「あの王様が捕まってる原因は…私達にあるっていうか…ゾロにあるっていうか…」
「何をして来たんじゃお前達!!」
「で!でも親分さん!!勘違いでナミちん達を襲ったのはネプチューン軍の人達で…!!」
ナミのポツリと呟いた言葉をしっかりと耳で聞いたジンベエは目をこれでもかと丸くさせ声を上げる。
突っ込むジンベエに慌ててフォローを出したのはケイミーだった。
≪旧リュウグウ王国との決別の時だ…―――三時間後ギョンコルド広場にて!この無能な王の首を切り落とす!!≫
「!!」
申し訳なさそうに目を逸らすナミをよそにホーディは続け、王の処刑を宣言する。
そして、自分の側にあった箱に手を置き、その箱に敷き詰められている数枚の紙を手に取った。
≪ここは竜宮城…いいものが見つかった……10年前、オトヒメ王妃が命がけで手に入れた"天竜人の書状"!!破棄すればもう二度と手に入る事はない…――そしてこのでけェ箱にはこの国の過半数を超える署名…!ジャハハ!こんなにも"人間"達と手を取り合おうってバカがいるとは!≫
その箱に入っていた紙はオトヒメやフカボシ達が集めた国民達の署名が入っていた。
そのリストを手に取り数枚目を通していくホーディは愉快そうに笑う。
≪ここに名を書いた者達はおれの新しい王国に反発する者達…つまりこれは…"裏切り者"のリストだ!!≫
人間との共存を望む者の名が書かれているその紙をホーディはただ見下ろしていた。
自分に歯向かうのも当然のリストを国民達に見せ付けるようにし、また数枚リストを手に取る。
≪踏み絵はもういい!そんなもの嘘をついてオトヒメを踏みつけるだけで簡単にクリアできる!…この署名こそお前達がこのおれの敵か味方かを自ら示した動かぬ証拠!!一人一人処分していくとしよう!!≫
≪身勝手な!!≫
≪…王とは身勝手なもんだろ……おれ達からすりゃあ、お前こそ身勝手な王だった。≫
一枚一枚リストに目を通すホーディの言葉に国民達は言葉を失い、ホーディの後ろに捕まっていたネプチューンはその身勝手さに非難の声を零す。
その非難の声など気にも留めないホーディは次にどこかでこの画像を見ているであろうルフィ達へと声をかけた。
≪そして、最後に…海賊"麦わらの一味"!これを見ろ!!≫
「…!!」
「あ…っ!!」
ルフィは名を呼ばれふと顔を上げて画面へと見上げる。
映像が切り替えられ、さきほどまでホーディやネプチューンが映し出されていた画面には小さな檻のようなものに入れられているゾロ、アスカ、ウソップ、ブルックがいた。
「ゾロ〜〜!!アスカ〜!!ウソップ!!ブルック!!」
「アスカちゃん…!!」
「アスカ!」
ハチの側にいたチョッパーは味方が捕まっていることに驚きが隠せず、サンジとナミはアスカの姿を見て目を丸くさせる。
アスカは他の3人同様鎖で拘束されていた。
しかしどうしてかぐったりとブルックの上に座りピクリとも動かずブルックの胸に顔を埋めていた。
カメラに背を向けてはいるが表情が見えなくても気を失っているのは分かる。
ジンベエも画面越しのアスカの様子を心配そうに見つめている。
「なんでアスカ動かないの!?まさか…怪我でもしてるんじゃ…!」
「なにィ〜〜!!?けーがーだーとォォォ!!?あんのクソマリモどもめ!!アスカちゃんに何かあったら3枚に下ろしてやる…!!!」
「アスカ君…今すぐ助けだしてやりたいところだが……」
同じ能力者のブルックすら動いているのにアスカは動く気配もない。
まるで停止ボタンを押しているかのように本当に動いていなかった。
海水に浸かったからと言ってもここまで弱っているとは考えられず、ナミは怪我でもしたのかと心配になる。
そのナミの言葉を間に受けたサンジはアスカをちゃんと守っていない男性陣(特にゾロ)に怒りの矛先を向ける。
ジンベエもすぐに助けに行ってやりたいが無暗に行っても最悪こちらがやられる場合もあるため迂闊には手を出せず、今は見るしか出来ない事を悔しく思う。
≪この部屋も国王の処刑が終わる頃には水で一杯になる…!下等な生物"人間"はこれだけで死ぬんだよなァ…!≫
アスカ達がいる部屋には水がどんどんと入れられ、水位が見る見る上がっていく。
アスカ達が入れられている小さな檻は天井から吊るされているので今は水に浸かっている状態ではないが、それも時間の問題だろう。
頼りのゾロも刀を奪われてしまえば抵抗も出来ずにいる。
ホーディはカメラワークを戻しリストを箱に戻したその手で一枚の紙をカメラの前へと取り出した。
≪懸賞金4億ベリー!"麦わらのルフィ"!!お前達の首は地上の人間達への見せしめに丁度いい!!≫
「………」
≪さあ!旧リュウグウ王国の大掃除を始めるぞ!!3時間後この国はプライドある魚人島に生まれ変わる!!!≫
ホーディはそう言って画面を切った。
ホーディから切られた画像は電伝虫が目を瞑り眠りについたためすでに見ることはできなくなる。
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