(28 / 274) ラビットガール2 (28)

「ちきしょー!水嵩がどんどん増えてく!何とかしなさいよ!ゾロ君〜!!」

「わかった…じゃこの錠をはずせ。」

「錠よ外れろ!!…ダメだオレ念力なかった…」


ドボドボと水が遠慮なく部屋に入ってくるのを見てウソップは焦っていた。
頼りのゾロに助けを求めるが、ゾロに錠を外せと言われ外れるよう声を大にして叫ぶが能力者でもない普通の人間であるウソップが言っただけで外れるはずもなく、ビクともしない。
はあ、と溜息をつくウソップとムスッとしているゾロにブルックは呑気な声で話し掛ける。


「ねーねー!見ました!?私が動いた時の魚人達の顔!!」


ゾロ達を捕まえている時、白骨したいかと思った魚人が動いたブルックを見て思いっきり驚いていた。
その光景を思い出し、ブルックは噴く。


「「お前があのまま死体のフリしてりゃおれ達を逃がせたんじゃねぇのかよ…!!」」

「助けてコロサレル〜!!…あっ!私もう死んでました!ヨホホ!!」


呑気すぎるブルックにウソップとゾロはその時を思い出し怒りが湧いて出てくる。
あの時白骨したいのままなら逃げ出せるチャンスも出来たはずなのに、それをブルック本人がぶち壊してしまった。
凄む2人にブルックは恐怖に身体を震わせ出ないはずの涙を流す。
…が、すぐに死んでいたことを思い出し涙も恐怖も引っ込め陽気に笑いだす。


「まぁ、でもナミさんとケイミーさんが逃げ出しているわけですし…きっとルフィさん達を呼んできてくれますよ!」

「来なかったらどうすんだよ!!」


笑い終わったブルックの言葉にウソップは噛み付き、ゾロは『アスカがこのまま気ィ失ってんならあんま来て欲しくねェ…』とゲンナリと呟く。
その呟きを聞いたウソップにやっぱり噛み付かれたゾロだったが、未だ目を覚まさずブルックの上で気を失い胸に顔を埋めているアスカを見つめ『てめェは"あいつら"の恐ろしさを知らねェから呑気にそう言えんだ』と苦虫を噛み潰したような表情で呟いた。
そのゾロの呟きにウソップは何か言い返そうとしたが、ゾロのいう"あいつら"を思い浮かんだのか『ご、ごめん…』とゾロから顔を逸らし謝る。
『わかってくれりゃァいいんだ』とゾロも遠くを見つめる。
"あいつら"とは過保護組みの2人である。



◇◇◇◇◇◇◇



「どけよ!おれはあいつらをぶっ飛ばしにいくんだ!!」


映像も途切れ、仲間も捕まっているとルフィは急いで広場へ行こうとしていた。
しかしそれを何故かジンベエが止め、ルフィは止められた事に声を上げる。


「待てというとろうが!!話を最後まで聞け!!!」


ジンベエもアスカが心配なのだが、無暗にルフィ達を戦わせるわけには行かないと何か作戦があるらしくルフィを止めるべく同じく声を上げる。


「わしとお前の関係は何じゃ!?」

「友達!」

「そうともこの造作もない関係も築けず魚人族と人間は長年往生しとる!『ホーディと戦うな』と伝言したのは闇雲に戦うなという意味じゃ!やるのならホーディをブチのめす凶暴な人間にならず!この島のヒーローになってくれ!!」


伝言をルフィは聞くことはなかったが、ホーディと戦うなという伝言の本当の意味をジンベエは伝える。
ホーディを相手にルフィが苦戦するなどジンベエは思ってはいない。
あれからレイリーとの修行でそれなりの力を得ていることくらいジンベエは知っていた。
だからその心配はないのだが、長い間の溝を埋めるにはただホーディを倒すだけでは埋められないとジンベエは思う。
しかしルフィをヒーローに祭り上げようとしたジンベエだが、それを聞いたルフィ本人からは拒否されてしまい、目を見張る。


「ヒーロー!?いやだ!!」

「何を!!?」

「おれたちは海賊だぞ!ヒーローは大好きだけどなるのはイヤだ!お前ヒーローってなんだかわかってんのか!?」


ヒーローという存在は誰もが憧れる存在であるのだが、ルフィはそのヒーローを嫌がってしまう。
ヒーローとは何かと聞くルフィにジンベエは小首を傾げ、怪訝そうにルフィを見つめた。


「例えば肉があるだろ!海賊は肉で宴をやるけどヒーローは肉を人に分け与える奴の事だ!おれは肉を食いてェ!」

「何その基準…」

「じゃあ肉は食わせてやるから言うとおりにせい!!」

「わかった!!」

「解決!?」


ルフィの言うヒーローとは、無償に肉を与える存在である。
それが自分が貰う側ならば否定も拒否もしないルフィだが、例え大事な幼馴染がピンチでも与える側になれというのは断固拒否を示す。
その基準が意味が分からなくてナミは呆れながらに突っ込み、ジンベエがならば、と肉を食わせてやるからヒーローになれと無茶な提案をし、それにルフィが考える間もなく頷き承諾した事にチョッパーが突っ込んだ。
ルフィが渋々ヒーローになることを承諾し、ジンベエは改めて作戦をナミ達に伝える。


「簡潔に言えば…わしがお前さんに助けを求める、それを助けてくれたらええ。――まずわしとメガロがあいつらにわざと捕まりひろばへ侵入する!!その間メガロの腹の中からこっそり抜け出し敵のもつ『天竜人の書状』『国王の錠の鍵』これらを盗み出すんじゃ!」


『できるものはおるか!?』とナミ達を見渡したジンベエの問いにナミが手を挙げ、先ほどルフィが王宮へ乗り込もうとしたのを止めるための殴り合いに乱入し止めに入ったロビンと自分を指す。
ロビンもナミの言葉に微笑を浮かべ頷いてみせる。


「よし…王を開放できたらわしがルフィ君に助けを乞う……メガロの"腹の中から"ルフィ君が堂々と現れればわしら全員共謀者であることが皆にわかる…姫様は広場の外に八方安全な場所に待機しており『書状』を受け取り開放した王達と共に逃げてくれ。一方それ以外の者たちは今すぐ竜宮城へ急ぎ仲間救出…全員揃ったら広場へ急行してくれ。―――竜宮城の仲間救出の方法についてじゃが…何とかしてくれ。」

「雑か!!!こっちの作戦!!」


女性陣2人の返答を聞きジンベエは納得したように頷く。
それから計画を短い間だが立てそれに従うようにみんなに伝えるのだが…竜宮城に捕まっているアスカ達を解放する方法までは思いつかなかった。
とりあえずアスカがいるからとサンジが立候補に名乗りだし、ナミからは『アスカに怪我ひとつでも負わしたら承知しないわよ』と本気で睨まれ、そんなナミの睨みなど女性に滅法弱くなった自分から復活したサンジは怖がることなく『お任せを!!このサンジ!必ずやアスカちゃんを救い出して見せます!!』と綺麗な敬礼を見せる。
敬礼を見せるサンジの言葉にナミは『よし!』と頷いて見せ、2人のやり取りを船の上から話を聞いていたフランキーは『もう駄目だあいつら…』と可哀想な子を見るような目でナミとサンジを見下ろしていた。
ジンベエもアスカが無事ならばそれでいいという思考回路を持っているのか、サンジとナミのやり取りに納得しているように何度も頷きハチとケイミーたちに振り返り声をかける。


「こんなことが起きれば国民はどう思うお前達」

「ニュ〜…ジンベエさんは魚人島民も魚人街の連中も皆一目置く存在…」

「うん!親分が国王様を助けるためにルフィちん達に命を預けたとわかったらみんなルフィちん達を応援するよ!!」

「………」


一般市民代表のケイミー達の言葉にジンベエは満足気に頷くが、反対にルフィは困惑したような困った表情を浮かべ唸り声を零す。


「…お前の頼みだからやるんだぞ!ジンベエ!応援なんかされたらこっちは調子狂うんだ!」

「そんなことそうそうないもんね。」


非難や怖がられることは多々あっても応援はあまりない。
それは海賊だからだが、そんな性分でもないからである。
逆に応援されたらやる気が出ないと言わんばかりに声をあげてジンベエを指差すルフィにナミは苦笑いを浮かべ、サンジは女の人魚限定なら悪魔の王でも倒してみせると両腕を上げてやる気を上げていた。


「すまんな!……むう…」

「……まだ何か悩みが?」

「作戦名を…」

「いらねえよ!!急ぐぞ!!」

「作戦名ならアスカ救出大作戦でいいんじゃない?」

「アスカ救出大作戦!?アスカだけ!?王族とかゾロ達は!?」

「うむ、それが一番ええの。」

「ええ!!?決まりーー!?」


恩に着るとジンベエはお礼を告げるがまだ何か悩みがあるのか唸り声を零す。
そんなジンベエに作戦について何か不安や悩みがあるのかと小首をかしげながら聞くと悩んでいることとは作戦名のことだった。
何呑気な事を言ってるんだ、とチョッパーが突っ込みを入れるもそんなチョッパーのツッコミなどよそにナミが続き、何故か魚人島救出大作戦とかではなくアスカ限定にされた。
確かにアスカも大事な仲間で、大好きである。
しかし捕まっているのはアスカだけではなく、この国の王や王子達も捕まっている。
国民の命だって掛かっている。
どこまでもアスカ溺愛のナミ達にもう付き合ってられないとフランキーはチョッパーの叫びのような突っ込みを聞きながら奇襲の準備へと向かった。

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