(29 / 274) ラビットガール2 (29)

ギョンコルド広場外周。
その広場には多くの国民たちが集まっていた。
そんなギャラリー達を見上げながらゼオは目を細める。


「ずいぶんギャラリーが増えたな…」

「人が死ぬとこなんてそう見る機会ねェからな!!」


国民達のどよめきは離れたこの場所からでも十分に聞こえる。
戸惑いの声が広場に響き、国民達の目線はホーディ達の背後へと向けられている。


「ジャハハハ!!いい眺めじゃねェか!!」

「マンボシ王子!フカボシ王子!リュウボシ王子!!」


ホーディ達新魚人海賊団の背後にはアスカ達と共に捕まえ磔にした国王と、国を救出するために駆け込んできた王子達3人が同じく磔にされていた。
身体にも4人とも大怪我を負っており、血が滴り落ち地面を汚していく。
そんな王族を目の当たりにし国民達は困惑の色を強くする。
ホーディは困惑が目に見える国民達を見て愉快そうに目を細め笑った。


「死刑にしましょうホーディ船長!」

「火あぶりだ!」

「いや串刺しだ!!」

「プライドのねぇ王族にムゴイ死を!!」

「ギャラリーに見せつけてやれ!!」

黙れ

「「「こわっ!!」」」


調子に乗り王族を今すぐに処刑しようと声をあげ下品に笑う部下たちにホーディは一言で黙らせる。
クスリにより髪の毛が白くなり、外見も変ったホーディの睨みは迫力があり騒ぎはピタリと止まった。


「デッケンの部下からまだしらほしの死亡報告が入ってねェ…アレをおびきださなきゃ意味がねぇ!」

「妹には手をだすなホーディ!!あいつは戦士じゃない!お前の何を脅かす!!」


戦士である自分達ならまだしも妹であるしらほしはずっと硬殻塔で暮らし訓練など受けてはいない。
それどころかしらほしの性格は戦士としては優しすぎ、向いていない。
優しいところが長所な末の妹にまで手を出すホーディにマンボシは溜まらず声を上げた。
そんなマンボシにホーディは静かにマンボシへ目線を移す。


「マンボシ王子…おれが何も知らねぇとでも思ってるのか。」

「!!」

「むしろ最も消したいのがあの"伝説の人魚"だ!」


意味ありげのホーディの言葉にマンボシは目を見張り、表情を険しくさせる。
予想通りの反応にホーディは笑う事なく鼻を鳴らすだけでマンボシから目線を外した。
すると部下がホーディの元へと駆け寄り、ある物を見せる。


「ホーディ船長!!!しらほし姫と!ジンベエが罠にかかりました!!」

「…!」


ドサ、と部下はホーディの前に鎖で繋がれているしらほしと、そのペットであるメガロ、そしてジンベエを放り投げる。
しらほしは放り投げられる衝撃に目を瞑っていたが父や兄達へ顔をあげ、4人はジンベエとしらほしが目の前に現れた事に驚愕の表情を浮かべていた。


「これは幸運だ!!!ジャハハハハハ!!危惧していた二人が一気に捕まるとは!!こんなムシのいい話があっていいのか!?」


ホーディは目の前に現れたしらほしとジンベエを見て一瞬目を見張っていたが、笑い声を上げて喜んだ。
ゲッテンがしらほしを始末していないことは想定外であったが、驚くべきことではなかった。
想定外であるものの予想をしていたからかもしれないが、それ以上にジンベエまでもがついて来た事にホーディは上機嫌に笑う。


「やはり来ていたかジンベエ…アンタも尖ってた時代は好きだったがな…」


アーロンもそうだが、タイヨウの海賊団にいた時のジンベエにも憧れを持っていたホーディは薄ら笑いを浮べながらも残念そうに呟く。
そんなホーディをよそにジンベエはモニターで見たときとは違うホーディの様子に怪訝そうに眉を顰め顔を上げる。


「ジンベエ親分だ!七武海をやめた後この島をでたハズなのに!」

「しらほし姫は麦わらのルフィに誘拐されたと聞いてたが…ジンベエ親分が助けてくれたのか!?」


ホーディとジンベエの呟きなど遠くにいる国民達は気付かず、島から出たはずのジンベエがこの場にいることに驚きが隠せなかった。
しらほしもルフィに誘拐されたと思っているため、ジンベエが助けたのかとざわめきも大きくなる。
そんな国民達をよそにホーディは機嫌が良さそうに目を細める。


「ジャハハハ…さぁこれで必要な顔は出揃った!!思ったよりたやすい作業だったな…あとはどう動くかわからねェのが"麦わらの一味"…今頃竜宮城の入り口でも探して途方に暮れてる頃だろう……仲間の"死"に怒り…ここに現れても迎撃の準備は万端だ!」


残るは捕まっているゾロ達を除く残りの一味たちだけ。
新世界に入る前に暴れたと言ってもホーディ達は水中でも戦える自分達に人間如きが勝てるわけがないと思っているのかもう既に勝っているような気分で呟く。
そんなホーディの呟きに広場に続く入り口から続々と人間や魚人が大勢表れた。


「武器を使える魚人族7万人!!――ここ1ヶ月で海中で捕えた人間の奴隷3万人!!!閉ざされた『魚人街』から移住してきた!!締めて11万人の無法者共だ!!!!!!」


11万。
その数の多さを目の当たりにし、そして声を上げるホーディに続くように雄たけびを上げるその様子に国民達はゾッとさせる。
しかし、そんな国民達とは裏腹にジンベエは広場に入って来た魚人達はニヤニヤとさせるのに対し、人間達には首輪をつけられているのに目を見張っていた。
雄たけびを上げる部下達をホーディはご機嫌そうに見渡した後広場の周りに集まっている国民達を見上げる。


「戦えねェ女子供もわずかに広場の外にいるが…それは落ちついてからでいいだろう……人間の奴隷共はどんどん増えてく!!――だがまずは11万人!!お前ら"種族の恥さらし共"の家を空け渡してもらう!!死ぬか逃げ出すか!今から腹を決めておけ!!!」

「…っ!!」


自分に逆らい、人間との友好を望む者には容赦のないホーディのその言葉に国民達は手も足も出すことが出来ず、無謀な選択を迫られ言いたい言葉も飲み込んでしまう。
あの屈指の戦士である王子達も敵わなかった相手に誰も逆らえなかった。
そう、誰も声を上げる事も出来ないはずだった。
しかし…


「公共の広場でバカ騒ぎして…品のないコ達ね!!」

「!」

「お調子にお乗りでないよ!!ホーディジョーンズ!!!」

「…懐かしい顔だ……てめェ何の用だ!マダム・シャーリー!!」

「粋がってるお前に一言いわせてもらいたくってね!」


たった1人、騒然とするこの場でホーディに声を上げる者がいた。
それはマダム・シャーリーだった。
シャーリーとは言わば幼馴染とも言える関係であり、ホーディはそれでも割って入ってくるシャーリーにギロリと睨みつける。
今のホーディーの姿で睨みつけられればどんな強面な者でも身体を震わせるだろうが、シャーリーは違った。
シャーリーは強面の顔など兄で見慣れているため怖がる事なく続ける。


「『ある男が魚人島を滅ぼす』と出たんだよ私の占いでね…」

「実質滅ぼすことになるかもな…――そこにおれが映ってたのか?」


シャーリーの占いは当たる。
それは魚人街にも届いていた。
ホーディは『ある男が魚人島を滅ぼす』というシャーリーの言葉に口端を上げて見上げた。
しかしシャーリーからは頷きではなく、逆に首を振られてしまう。


「いいえ…この島を滅ぼすとでた男は…"麦わらのルフィ"だよ…!!」

「…何がいいてェんだ!!」

「わかることはこれだけ…!!"あんた達じゃあなかった"!」


ホーディはシャーリーの言葉に更に睨みを鋭くさせシャーリーを見上げる。
それでもシャーリーは怯む事なく占いに出た男はお前ではないとハッキリと言い切った。
そして、その男こそが今魚人島のどこかで動いているであろう麦わらの一味の船長だと、告げる。
そんなシャーリーの言葉に国民達はハッと我に返る。


「そ、そうか!!マダムの占いは外れない!」

「あの話を裏返せば…最終的にホーディがこの島に君臨する未来はないってことだ!!」


ャーリーの言葉に国民達は絶望から一気に這い上がった気分だった。
結果が本当に海賊がこの国を潰すのかもしれないが、それはホーディがこの国の王になることはないと言うこと。
この危機をもしかしたら海賊が救ってくれるのかもしれないと淡い期待が国民達の脳裏に過ぎる。
しかし、


「―――う…ッ!!」

「マダム・シャーリーッ!!?」



騒然としていたその場がどよめきだしたその時、シャーリーの言葉に口を閉じていたホーディが何も言わず黙ってシャーリーに向けて"撃水"を放った。
戦士でもないシャーリーは難なくその撃水を受けてしまい、傷口から血を吐き出しながらシャボンから落ちて地面に倒れてしまう。
その衝撃と初めて人が撃たれ倒れる姿を目の当たりにしたしらほしはビクッと肩を揺らし目を瞑る。


「バカバカしい…!!何への当てつけだ!シャーリー!!!腹いせか!!?おれはお前の兄とは違う!!そりゃあガキの頃は…お前の兄アーロンは『魚人街』中の憧れだった!!――だがおれ達が"力"を手に入れ!実際今じゃあ"アーロン一味"の名は結束の為の空っぽのシンボルでしかねェんだよ!!見ろ!この規模を!!!見てみろ!この実力を!!!おれの作戦は10年前からすでに始動してる!!!教えてやろうか!!!!このリュウグウ王国の…お前らが愛してやまねェ王妃!!!―――…」


ホーディは苛つきをシャーリーや国民に向けるように声を上げる。
そして…


「―――オトヒメ王妃を殺したのはおれだ!!!!!」


ホーディの言葉はその場にいる全ての者の耳に届き、その言葉に誰もが目を丸くさせ絶句させた。

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