「アスカちゅわ〜〜〜ん〜〜っ!!!」
ルフィが広場に姿を現す少し前…捕まっているゾロ達を救出にサンジは走っていた。
危険だが海の中では人魚が一番早く、誰にも気付かれぬようケイミーと共に王宮に乗り込んだサンジはケイミーが安全な場所に隠れたのを確認し、仲間を助けるため王宮へ乗り込んだ。
否、仲間…ではなく主にアスカを、である。
アスカを(サンジからしたら)誘拐し、尚且つ(サンジから見て)自分の助けを求め今にも苦しんでいると思うと怒りの炎が燃え上がり、何故か勝手に怒り出し堂々と正面から入っていった。
それを影にいたケイミーは『サ…サンジちんが燃えてる…!!』と炎を纏うサンジを見てちょっとズレた事に驚いていた。
新魚人海賊団達は全て広場に集められているのか、王宮には人っ子1人おらずサンジは怒りの炎を纏いながらも戦う事なくスムーズに仲間を…アスカを探す。
何度も言うようだが、サンジはその他3名など探してはいない。
アスカだけを、探していた。
「いた〜〜!!アスカちゅわ〜ん!!」
王宮など詳しくないサンジはとりあえず部屋の1つ1つをしらみつぶしに探していると数人の足音が耳に届いた。
その音にふと廊下へ顔を覗きこむように出すと見知った人物が数人こちらに向かってきているのが見えた。
…が、サンジの視界にはその数人など消去され、その内の1人に背負わされているアスカだけが映し出されていた。
サンジは求めて止まなかったアスカをロックオンし、目をハートにさせながら、ついでにタバコの煙もハートにさせながら大喜びでアスカの元へと駆け寄った。
しかしアスカはサンジの声に反応せず、アスカを背負っている男の隣にる強面の男が不機嫌そうに声を零した。
「サンジ!!」
「んだよ…お前か…」
「アスカちゃーーーん!!!無事だったんだね〜っ!!」
その強面こそ、ゾロであり、アスカを背負っている男とはウソップだった。
しかしそんな男など用も無いと断言するサンジにはアスカしか見えておらずウソップやパッパグの嬉しそうな声など耳に入っていない。
「アスカちゅわ〜〜ん!!!あなたの愛する騎士が助けに来ましたよ〜〜!!」
「ちょ、おま…!こっちにくんなーー!!おれ達に気づけええええ!!」
あまりにもアスカと離れた時間が長かったせいなのか、サンジは普段なら気付くウソップ達の声すら耳に入らずウソップに突撃する勢いで両腕を広げて走ってきていた。
それに自称非戦闘員のウソップは『ちゅ〜!』と目を瞑ってアスカにキスをしようと口を尖らせながら駆け寄ってくるサンジにアワアワと慌てだすが、それでもやっぱりサンジの視界はアスカしか映っていない。
「イーーヤーーー!!!」
「ったく…」
避けるという選択肢などウソップの頭にはなかった。
ブルックたちは避けようと廊下の端へと移動するもウソップはただ女のように悲鳴を上げるばかり。
それでもアスカは起きないが、隣に居たゾロが溜息をつき、そして…
「正気に戻りやがれ!!エロガッパ!!!」
「ぐは…ッ!!」
サンジはゾロの刀によって撃沈した。
刀と言っても鞘をつけたままサンジの顔面に叩きつけただけなのだが、普段なら避けて反撃できるはずのサンジは本当にアスカしか見ていなかったのか難なく受け止めてしまい、そのまま仰向けに倒れてしまう。
「っぶねーー!サンキュ!ゾロ!!」
「エ、エロガッパ!!それ!ツボです!!ヨホホ!やめてくださいよ!ゾロさん!!それツボなんですから!!ヨホホホ!!」
ウソップは自分にではないにしろ気持ち悪い顔をしながらこちらに向かって来るサンジが倒れたことにホッと胸を撫で下ろしゾロに礼を口にする。
ゾロは鼻を鳴らしながらサンジを見下ろし、ゾロの言うエロガッパにまたツボに嵌っているブルックは腹を抱えて笑う。
派手な音を立てながら倒れたサンジなど心配する様子もないウソップ達にブルックの足元にいたヒトデであるパッパグは『おいおい!おめェら仲間だよな!?』とゾロの行動に目が飛び出るんじゃないかと思うほど驚いて見せ、そんなパッパグの言葉に3人一同が『一応。』と声を揃えて答えた。
一応でも仲間は仲間なのに酷い仕打ちをするゾロ達にパッパグはただ何も言えず黙るしかなかった。
「ぅ…」
「!…アスカ!起きたか!?」
今の今までの騒ぎにも起きなかった図太いアスカはようやく自分の意思で目を覚ます。
声を零しながらゆっくりと目を開けるアスカに気付いたウソップは嬉しそうに声を上げる。
…しかし、それがいけなかった。
「アスカちゃんが目を覚ましただとおお!?」
地面に沈んでいたサンジがたった『アスカ』という名前を気絶しながらも耳にいれた事によって暗闇の底にあった意識が浮上した。
気絶してるのに関わらずたったウソップのアスカという名前を耳にしたサンジは飛び起き、素早い動きで再びアスカとアスカを背負っているウソップに駆け寄る。
相変わらず両腕を広げながら駆け寄ってくるサンジにウソップは悪夢再来と悲鳴をあげ、ゾロは『またかよ!!』と眉間にシワを寄らせ再び刀で黙らせようと刀を降り上げたその瞬間…
「ぐほおあァ!!」
サンジは再び撃沈した。
しかし、それはゾロがやったわけではない。
サンジの顔に大きくふっさふさの白い毛で覆われた拳をめり込ましたのはゾロではなく、ブルックでもなく、パッパグでもなく…
「
うっさい。」
アスカだった。
サンジがアスカとウソップに襲い掛かろうとしたその瞬間、2人の背後の空間が歪み大きく白い長身のウサギが現れた。
二足歩行の長身ウサギは主の危機を感知したのか、またはアスカが無意識ながらに身の危険を感じて呼び出したのかは不明だが、とりあえず二度のサンジの撃沈はアスカがやったわけで…
アスカの表情は寝起きに襲い掛かられとても不機嫌だった。
「ゴフッ!」
「ご、ごふって言った…ウサギがゴフッて言った…」
主人の危機を救ったと機嫌よくウサギはひと鳴きし、自慢げに胸を張る。
その鳴き声はアスカが下僕として使っているウサギ達の愛らしい『きゅー』とは程遠かった。
『ゴフっていうウサギ初めて見た…』、とアスカを背負いながらウソップは背後にいる長身ウサギを恐る恐る見上げる。
そんなウソップに『っていうか、二足歩行で立つでけェウサギ自体初めてだろ…』と相変わらず容赦のないアスカから目を逸らしながらゾロが珍しくも突っ込みを入れた。
因みにブルックはまだ『エロガッパ』がツボなのか笑いこけ、パッパグはゾロ同様『゙容赦゙または"手加減"という言葉を知っていますか?』と聞きたくなるほどのアスカに目を逸らし恐怖に身体を震わせている。
「で、ここ何処?」
ウソップに降ろされながらアスカは辺りを見渡す。
水に浸かり次第に意識がなくなっていった間、どうなっていたかも確認したいとウソップに目をやり、ウソップは自分に向けられる金色の瞳にビクッと肩を揺らしながらも答えてやる。
あれから魂だけでも移動できる特技が生まれたブルックの働きにより、取り残されたパッパグに伝えゾロの刀1本を取りに行った。
それからはゾロの刀により自分達を拘束する鎖と檻を切り、脱出したのだ。
下は海水な為少しの間だけだが能力者であるブルックとアスカには我慢してもらい、部屋から出てサンジと鉢合わせした…と、いうことである。
アスカはウソップの説明に『どうりで身体がだるいと思った…』と溜息をつく。
そしてアスカは何を思ったのか気を失っているサンジへ近づきツンツン、と突っつき始める。
「お、おい…アスカ…」
「サンジー。」
「――ッハ!!アスカちゃんの気配…!!!」
ツンツンとサンジの頬を遠慮なく突っつくアスカに『サンジが起きたら面倒だからやめろ…!』とウソップが止めに入る。
しかし時既に遅く、アスカの指の感覚と声でサンジは深い深い暗黒の世界から意識を浮上させガバッと上半身だけを起こす。
「おはよう」
「〜〜ッアスカちゅわああああんん!!!無事だったんだねえええ!!!よがっだーーー!!!」
「
うざい。」
「あぶしッ!!」
「「「鬼だーーっ!!」」」
目を覚まし自分をジッと見つめるサンジに朝のあいさつを口にするアスカにゾロとウソップは『気絶させといておはようっておま…』と心をひとつにしてそう心の中で突っ込みを入れた。
口にする勇気はありますか?、と質問すれば『口にする勇気?麦わらの一味でアスカとナミに逆らうなどという馬鹿はいないさ…』ゾロとウソップは多分そう答えるだろう。
麦わら一味の船長はルフィである。
しかし、その一味のピラミッドの頂点にはその船長ではなくアスカとナミが立っているのだろう。
サンジはアスカが無事だというのを脳の中でじっくりと認識したその瞬間再びアスカを思いっきり抱きしめた。
突然抱きしめられたアスカは一瞬目を見張ったが、すぐさま冷静になり腕をウサギにしサンジを殴った。
三度目どころか何度も見ているサンジの様子にゾロは心の中で『こいつ本当に学習能力ねェな…』と呟いたという。
しかし、今度はアスカも手加減をしているのかサンジは気を失う事はなかった。
「正気に戻った?」
「あい…」
気絶することは、ない。
しかしその顔は整っていた容姿とは真逆に頬が腫れており、見るに耐えない。
それでも怒鳴らないのは相手が女性であり、アスカだからだろう。
アスカはサンジが正気に戻ったのを見てゆっくりと立ち上がる。
「じゃあ、行こうか」
サンジから何も聞かされなくても現状を理解したアスカはゾロ達へと振り返る。
ゾロもウソップもブルックも、今ルフィ達が戦おうとしているのを察し、ゾロは表情を引き締めアスカの言葉に『ああ』と低く呟き、ブルックは陽気に笑いながらも頷き、小心者のウソップは魚人の強面の恐怖に身体を振るわせながら『聞いてくれ!おれ魚人とは戦ってはいけない病なんだ…!』と法螺を吹くもやっぱり誰にも相手にされずスルーされる。
サンジは何も聞かずも理解し、男性陣を纏めるアスカに惚れ直し、パッパグはやっぱり分かっておらず首をかしげていた。
「思いっきり暴れて、ストレス発散しに!!」
「「いや!目的ちげェから!!!」」
「ヨホホ!!アスカさんはこわいですね!私恐怖で鳥肌が立ちそうです!あ、鳥肌が立つ肌がないんですけど!ヨホホホホ!!」
「ん〜〜!!そんなアスカちゃんも素敵だ〜〜!!」
長身のウサギを帰し、腰に手を当てドヤ顔を浮べるアスカにゾロ、ウソップが突っ込み、そんなアスカにブルックは本気なのか冗談なのか恐怖に腕を擦り、サンジは…まあ、説明せずともみんな分かっていると思うので何も言うまい。
そして、アスカ達はルフィ達と合流するため急いで広場へと向かい、そして…
「もう出てしもうたか…!!―――じゃが今のは致し方なし!!急げお前達ーーッ!!!」
広場はルフィの登場に雄叫びに似た声が響く。
ジンベエは計画とは早く登場しまったルフィに顔を歪め、この場にいない誰かへと声をかける。
誰もいないその場に女性の声が響き、そして突然ナミが姿を現れた。
その手には『天竜人の書状』、そしてロビンが能力でネプチューン達の錠を外す。
その瞬間、空からネプチューンの愛鯨と麦わらの一味の船であるサニー号が現れた。
ガオン砲で崖に穴を開け、愛鯨のホエがネプチューンやフカボシ達を背負い救い出す。
開いた穴からホエが逃げ出し、ネプチューンは広場を見下ろし何があったのかと呟く。
起き上がれない父の代わりにフカボシが状況を説明し、『ジンベエが麦わら達と一計を案じたようです』と答える。
その息子の言葉にネプチューンは瞳を固く閉じる。
「おい!麦わらのルフィ〜!!お前らは本当にこの島を滅ぼす気なのか!?」
「なぜ竜宮城を占拠した!?」
「人魚達を誘拐したのはお前達なのか!!?」
「答えてくれ!お前達は魚人島の敵なのか!?味方なのか!?」
まるで王族を助けたように見えるルフィ達に確認するように聞く国民達。
「敵か…味方か?」
ざわめきが大きくなる中で聞こえる国民達の声にルフィはズレた麦わら帽子を直しながら呟く。
「そんな事お前らが勝手に決めろ!!!」
バラバラになっていた麦わら一味はようやく集結し、この戦いを終わらせる為にホーディ達と対峙する。
その中には、アスカやゾロ、ウソップ、ブルックなど捕まっていたはずのメンバーも揃っていた。
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