メガロの口の中から現れホーディを吹き飛ばしたルフィに国民達から喚声が湧き上がる。
ナミが姿を現したのと同時に残りの仲間達も姿を現し、その中には捕まっているはずのアスカやゾロ達もいた。
「"麦わらのルフィ"は人間で海賊だけど味方だよね!!」
「しらほし姫が"麦わら"に助けを求めたぞ…!!」
「ジンベエ親分と一緒にこの国を助けにきてくれたんだ!!」
「"麦わら"〜〜!!」
国民の喚声は次第に広がり大きくなっていく。
あれほど悲鳴で埋め尽くされていた広場に真逆の喚声が響いていた。
そんな喚声を耳にしながらゼオは小さく笑いを零す。
「フフフ…ずいぶんな人気じゃあないか……王を一旦奪い返せたくらいで図にのるな!人間の海賊風情が!!」
ゼオは小さく笑い、そして声を張り上げる。
その声は喚声が沸きあがっているこの場にもまけず劣らない声の大きさだった。
……だった、のだが…
「人魚姫さん!なんと麗シ〜〜!!すいません、パンツ見せてもらってもよろ…ぐはッ!」
「ナミさーんおれがアスカちゃんとあとのバカ共助けてやったんだよ!!ホレた??」
「ハイハイ。」
「バーカ!おれ達は自力で出口まで来てたろ!」
「それはおれが助けてやったからだ!!」
「アスカ君、怪我はないか?」
「うん、ないよ。…でもちょっとまだ身体がだるいかな…」
「本当にすまん…すぐにアスカ君達を助けてやれればよかったんじゃが…」
「いいよ、だってジンベエもジンベエで大変だったんでしょ?」
「さっきのクジラさんはなあに?」
「途中で見つけて船引いてもらったんだ!」
「新兵器2台あるんだ!乗りたい人〜!!」
「え〜!!?新兵器〜〜!!?」
「無視された!!」
「わざと小さな声で言ったからな。」
両腕を広げ襲撃を歓迎し挑発したはずなのだが、そんなもん知るかと言わんばかりにゼオの言葉は無視されていた。
ゼオの言葉など一欠けらも入らず、初めて見る人魚姫にブルックはお約束の挨拶をし無言でナミに殴られ、サンジがアスカとゾロ達を助けたと一々報告し、とりあえずアスカが無事なのならいいとナミが適当に返事を返し、ゾロがサンジの報告に頭に来たのかサンジを睨みつけ、パッパグがゾロ達を助けたのは自分だとサニー号に乗りながらまるで自分がこの一味の救世主と言わんばかりに声をあげ、ジンベエがアスカに歩み寄り怪我が無いかと心配しながらも2年ぶりの再会にアスカの頭を撫でてやり、アスカはジンベエの手を受け入れながら頷くものの海水を全身に浴びた上に浸かっていた為まだ辛いと苦笑いを浮かべ、ロビンが先ほどの大きなクジラの事をチョッパーに聞き、チョッパーはロビンにここに来る途中に会ったのだと教え、フランキーがパッパグと同じく船の上から新兵器2台あるから乗りたい人を募り、それにいち早く反応したのはウソップだった。
説明が長いが、要するに一味全員がゼオを無視した、と言うことである。
「"よわほし"のやつ危ねぇぞ」
「捕まった事辞退計画外じゃ……1人逃がすのもな…」
ゼオがわざとだと言い切っても尚麦わらの一味達は無視を続け、ルフィは自分より更に大きくナミに書状を渡されているしらほしを見上げる。
ルフィの言葉にジンベエもしらほしを見上げ、ジンベエに頭を撫でられていたアスカも必然的に顔を上げることになり初めて見る人魚姫に『でか…』と素直な感想を述べていた。
「はい、書状!」
「ありがとうございます皆様…!これはお母様が残してくださった魚人島の希望…!…――え?…ルフィ様…今…わたくしの事……今までわたくしのこと"よわむし"と…」
ナミに書状を渡されお礼を言いつつしらほしはルフィからの呼び名が『よわ"むし"』から『よわ"ほし"』へと変っていることに気付き目を丸くさせた。
「ああ、詳しくはしらねぇけどお前思ったほど弱虫じゃなかった!」
「え…」
「その通りじゃしらほし姫…辛かったのう…何年も…!!」
何がどうなって『よわむし』と名前を付けられたかはアスカには分からないが、ルフィの言葉を聞きながらもアスカは『でも"よわ"は付くんだ』と心の中で呟く。
しかしアスカの思っていることなど気付くはずもないしらほしはジンベエの言葉に申し訳なさそうに顔を俯かせる。
「申し訳ございません…わたくしが勝手に真実を胸の内に隠していたばかりに…」
「ええんじゃ…お前さんはそのままでええ」
申し訳なさそうに目を伏せるしらほしにジンベエは首を振りそのままでいいのだと呟く。
そのジンベエの言葉にしらほしは下げていた目線をジンベエへと移す。
「憎しみを受け継がん…これこそ偉人達の願い!!お前さんに息づいたその小さな"芽"がいつしか島中に広がり皆が同じように考えられる日が来ればその時はもう争いも消え、魚人と人間のしがらみなどなくなるじゃろう…耐え忍んだお前さんの数年間を否定するためじゃない……たった一人でくる日もくる日も懸命に守り続けたその小さな"芽"を今度はわしらに守らせてくれ!!!」
「――っはい!!」
ジンベエの言葉にしらほしはじわりと涙が溜まり、ぽつりと一粒頬を伝って流れた。
しらほしの今まで生きてきた数年を辛い日々と軽く括ることは決して出来ないだろう。
母親を目の前で亡くしその犯人を幼い頃に知っても尚母の最期の約束を守り続けた。
それは言葉では言い表せないほどの辛さだったのだろう。
ただ、気持ちを察することは出来る。
しらほしはジンベエの言葉に溢れた涙を必死で拭おうとするも溜め込んでいたモノが溢れるように涙は止まることは無かった。
お礼を言いながらも泣き出すしらほしにルフィは歯を見せながら『よわむしじゃねェけど泣き虫だな!』と愉快そうに笑う。
「使えない男だったぜ!!バンダー・デッケン!」
「!!」
ほのぼのとしていたその時、瓦礫の下に埋もれていたホーディが腕一本で瓦礫の山から這い上がる。
「しらほしだけは一刻も早く始末する必要がある!まんまと引っかかったようだジンベエ…!!あんたが大人しく捕まってる時点で気づくべきだった!」
血を流しながらも力が衰えず、ホーディは人間の海賊団の中に入っているジンベエに睨みつける。
ジンベエはホーディの睨みなどに怯む事なくただ黙ったままホーディを睨み返しているだけで、そんなジンベエなどよそにホーディは更に睨みと嫌悪する瞳を強め、続けた。
「人間たちと仲がいいんだな!!お前みてェな奴がおれは一番嫌いなんだよ!!共に魚人街で育ったハズのフィッシャー・タイガーも!弟分アーロンも"人間"にやられちまったってのに!!!その仇を討つどころか張本人と肩を組むとはネプチューンにも劣らねぇとんだフヌケ野郎だ!!!おれがこの島の王になればすべてを変えてやる!今年開かれる"世界会議"は絶好の好機だ!!世界中の人間の王達をマリージョアで血祭り上げ恐怖の『海底王国』の伝説は膜を開ける!!世界中の人間共を海底に引きずり下ろし奴隷にしてやる!!やがて魚人族に逆らう者はいなくなる!!海賊の世界も同じだ!!見ろ!このうでに覚えのある海賊たちの姿!!これがお前達の未来だ麦わら!!!おれこそが真の海賊王にふさわしい!!!」
「海賊王…?」
ホーディの言葉を黙ったまま聞いているのは何もジンベエだけではなかった。
ルフィも、アスカも、ゾロもナミも…誰もがただ何も言わずホーディの言葉を聞いていた。
ホーディは知らないのだろう…地上には、まだまだ強敵がいるのを。
いくら海の中では無敵でもまだ地上では海軍がいる、他にも海賊がいる。
そして何よりもミコトもいるのだ。
ルフィはホーディの『海賊王』という単語にピクリと反応させ、しかしルフィが反応したことなど気付かないホーディは笑い声を上げる。
「ジャハハハ!!吹けば飛ぶようなたった11人の海賊に何ができる!!こっちは11万人だぞ!やっちまえ!!新魚人海賊団!!!」
ホーディの言葉を合図に魚人達が怒声を上げる。
魚人達の威圧感がビリビリとその場にいる者達の身体に響く。
国民達はそのビリビリとした感覚が身体に響き、慣れていない事や広場に広がる敵の数の多さに血の気を引かせる。
「ギャー!怒声が聞こえるぞ!」
「ちょっとアンタ達外でなさいよ狭い!!」
「お前全然新兵器に興味ねぇだろ!お前が降りろ!」
「私はコワイから乗ってんの!」
「っていうか身動き取れないんだけど…これ何人乗りなわけ?」
「アスカ!お前外平気だろ!?降りろよ!」
「ちょっと!ウソップ!!あんた何言ってるの!?アスカが外に出て私がここにいたらこの子即行服脱ぐでしょ!!」
「じゃーお前も降りろよ!!」
「だから私も外はコワイの!!」
「……はぁ…」
ホーディの掛け声により一斉に麦わら一味達に襲い掛かろうとした魚人海賊団達にナミ、ウソップ、チョッパー、パッパグはフランキーの言う新兵器に即行乗り込んだ。
いくら鍛えたって小心者の心は鍛えられなかったようである。
その上心臓に毛が生えっぱなしのアスカの腕をナミが引っ張って乗り込んだため、魚人など天竜人に比べたら可愛いチワワのようなものだと断言できるアスカはどうしてか自分も新兵器に乗り込む羽目になってしまった。
抵抗しても無駄だとこの短い間に学んだアスカは溜息をつきナミの胸を背もたれに身体を預ける。
「こっちが11人…1人頭1万人か…」
「数いりゃいいってもんじゃねェだろ。海軍の精鋭でもあるまいし…」
11万の魚人海賊などバスターコールの時を思えば可愛いものだとゾロは呟く。
いくら海に強い魚人だろうが地上には目の前の強面以上の力の持ち主がわんさかいる。
それを一部に過ぎないもののゾロ達は冒険の度に見て来た。
2年という歳月によって力も得たゾロ達にとってこの海賊達をあしらうことなど容易いのだろう。
余裕綽々と言ったように向かって来る海賊達を迎え入れようとしたゾロとサンジの前にルフィが無言で前に歩き出し、2人は小首を傾げる。
「ん?」
「おい!ルフィ!」
サンジが名を呼ぶもルフィは何も答えないまま2人の前へと出た。
その次の瞬間――
「ぎゃあああ!!なんだコリャーー!!??」
――ルフィがひと睨みしたその瞬間、大勢の魚人が気を失いその場に倒れる。
中には泡を噴いている者も多く、仲間は何もされていないのに突然泡を噴き気を失う仲間に目を丸くさせ驚愕させる。
「これは…覇気!!」
「たった2年でここまで…!!」
突然気を失って倒れていく魚人達を見て、そしてビリビリと来る感覚にロビンはハッとさせる。
ジンベエは以前会ったルフィと今のルフィとの成長の速さに驚愕させる。
サンジやゾロも2年の間で覇気というのも知り、そのルフィの覇気が覇王色なのに納得してしまう。
アスカは秘密兵器の中にいても分かるルフィの覇王色の覇気に『あの馬鹿!私のストレス発散相手を減らして…!』と怒り心頭だった。
チッと舌打ちを打ちまさに悪党と言わんばかりのアスカにウソップはそっと目を逸らし見なかったこと、そして聞かなかったことにする。
「ホーディっつったな…」
気を失う仲間、そして魚人達に国民も魚人海賊団の一味達も唖然とさせ静まり返るその場にルフィの声が響く。
ホーディは呆気に取られていたがルフィの声にハッと我に返りルフィを睨んで見つめ、ルフィもホーディの睨みなどよそに気に入らないと睨む。
「お前はおれがぶっ飛ばさなきゃなァ…お前がどんなとこでどういう"王"になろうと勝手だけどな……"海賊"の王者は一人で十分だ!!!」
「…!!」
ルフィの言葉にホーディは目を見張る。
そして、ジンベエはルフィの言葉に小さく笑って見せた。
ルフィはそのままホーディの言葉など聞く気もなく地面を蹴り飛び上がった。
「何万人でもかかってこい!!!」
腕を膨らませ人間の腕が巨人のように大きく膨らんだことに目を丸くする魚人達に向けて放たれ、魚人達は避ける余裕すらなく吹き飛ばされてしまう。
「よし行こうか」
「降参が先か…全滅が先か…」
「壊させやしねェ…マーメイド天国!!」
「この国には重要な世界の歴史が眠ってる…」
「熱いですね〜!ライブ日和!!」
「さぁサニー号!『ソルジャードッグ』新兵器!!」
「わくわくしてきた!」
「おれが!!操縦…!」
「さて…何羽放とうかな。」
「お披露目だァ〜〜!!!」
ルフィが仕掛けたのを切っ掛けにジンベエ達も動き出す。
アスカは戦闘に参加するにもナミが許してくれないためとりあえず下僕ウサギでも放とうと何羽…いや、何十羽放とうかと悩みに悩んでいた。
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