(33 / 274) ラビットガール2 (33)

アスカが中にいる間、外は死闘を繰り広げていた。
大きな身体では的にしかならないしらほしをホーディは撃水を放つ。
それを阻止したのはルフィではなく、しらほしに向けられた撃水を同じ撃水で弾き返したジンベエだった。
薬で力を増倍させたホーディの撃水をジンベエは薬もなしに弾き返し、実力の差が見て取れる。
ホーディが撃水で攻撃を仕向けたのを切っ掛けに新魚人海賊団が動き出す。
次々にしらほしの命を狙ってくる魚人達をブルック達が止め、自分達に向かって来る魚人をゾロ達は倒していく。
サニー号からはフランキーが乗る"チャンネル4・クロサイFR−U4号"と、アスカ達が乗っている"チャンネル5・ブラキオタンク5号"が発進する。
レバーを引くと広くなった空間にアスカは狭い空間から解放されホッと溜息に似た息を吐き出した。


「すごいぞ…!!あいつら本当にすごい!!」

「たった11人で11万人をものともしねェなんて…!!」


国民達は圧倒的な数の敵を目の前にしても怯むこともなく向かっていき倒していく人間達を見て目を丸くさせていた。
少しずつ、そして一瞬で数を減らしていくのを目の当たりにし、国民達の声援がその場に響き渡る。


「……調子に乗りやがって…」


国民達の声援を耳障りだと思いながらホーディは不機嫌そうに低い声でぽつりと呟いた。
そしてゆっくり立ち上がりあるモノを呼び出すように声を上げる。


「クラーケン!!広場へ出ろ!!」

「!」

「たった11人だ!!クラーケン!!踏み潰して来い!!それで終わりだ!!」


ホーディはクラーケンを呼び出し、クラーケンはホーディの声にビクッと身体を揺らしながらのそのそとゆっくり広場へと姿を現す。
クラーケンはホーディの言葉にビクビクと骨のない体を震わせながら怯え、命令に従い広場へ恐る恐る降りていく。


「なにアレ!!可愛い!!大きい!プリティ!!すっごく可愛い!!ねえ!ナミ!!あれペットにしていい!!?」

「アレ…?……ってキャー!!あれってあの時のクラーケンじゃない!!?」

「なに!?おいおいおいおい!!嘘だろ…!!伝説のバケモンが敵にまわってるとか死亡フラグじゃねェか!!」

「ねえ…ペット……」


クラーケンの出現に国民達はどよめき、いくら強い人間だとしてもクラーケンには勝てないのではと焦り始める。
下僕ウサギを野に放ちウサ耳と尻尾が出ていたアスカの長く愛らしい耳に『クラーケン』という名前が届き、アスカは何だ何だ、とチョッパーの後ろで顔を覗かせ実物のクラーケンを見て大いに喜んだ。
可愛いを3回言うほどクラーケンを気に入ったアスカはナミにペットにしていいかと聞くもアスカに言われ覗き穴からクラーケンを見たナミが悲鳴を上げ、ナミの言葉に同じく覗き穴で見たウソップもナミ以上に顔から血の気を引かせ悲鳴を上げる。
怖がる事に夢中な二人にアスカは小さな声でポツリと呟いた…が、聞いてはくれなかった。


「アスカ!あいつは船をここまで運んでくれたんだ!」

「え?そうなの?じゃあ仲間なの?ペットに出来るの?」

「ペットは…無理だなァ……絶対ナミが許さないと思うんだ…」

「だよね〜…」


車内を俯いて見ていたアスカにチョッパーが振り返りクラーケンの事を教えてくれた。
クラーケンはアスカが姉であるミコトの結婚のショックに気を失った後に出会った怪物で、ルフィが手懐けここまで運んでもらったという。
アスカはチョッパーの困ったような表情を見た後、ナミが怖いのは誰もが同じなわけで…ナミの怯え様を見れば一目瞭然なわけで……アスカは名残惜しそうにクラーケンへと目線を戻す。
目線の先にはホーディに睨まれビクビクと怯えるクラーケンがいた。


「あ!おい!スルメ〜!!おれだよ!!」

「!」

「乗せてくれー!お前一度ウチのペットになった友達だろ!!」



ちぇ、と唇を尖らせ残念そうにしているとクラーケンに気付いたルフィは両手を振って嬉しそうにクラーケンに声をかけた。
クラーケンもルフィに気付き、ホーディの恐怖に涙を浮べていたのだが――…


「うわーーッ!!」

「止まれェ!!クラーケン!!バカタコめーーー!!」


クラーケンはホーディよりもルフィを選び、長く巨大な足で次々と魚人海賊団を倒していく。
それを見たアスカは目を輝かしたのと同時にクラーケンの上に乗るルフィに怨めしそうな嫉妬の視線を送った。
そのままクラーケンはしらほしの護衛の任を負かされ、クラーケンがしらほしを守っているため容易に狙えなくなってしまう。


「あれ!?なんだ?」

「どうしたの?チョッパー。」

「なんかみんなおれ達を避けていくでありますぞ!?」


ウソップにもう少しクラーケンの側に行ってもらうよう頼もうとしたその時、チョッパーが何かに気付く。
チョッパーの戸惑いの声に下へと向けていた顔を上げ、アスカはチョッパーを覗き込むように横から声をかけた。
司令官という肩書きに成りきっているチョッパーは辺りを見渡し自分達を倒そうと躍起になっている魚人達がいないのだと司令官口調で答えた。
チョッパーの言葉にアスカは司令官口調なのをスルーしながら辺りを見渡せば、確かに魚人達は自分達の周りにはいない。


「さては我が軍に恐れをなしたな!?このスキに敵の幹部をやっつけるぞー!おーー!前線〜〜!!」


チョッパーは敵が避けてくれたその隙を狙い前進させようとしたのだが、下からの車体がガクガクするというウソップの言葉にチョッパーとアスカは同時に車内を見ようと顔を下へと向ける。
その瞬間車体が斜めになり、大きな音を立て落とし穴に嵌ってしまった。


「キャッキャッ!ザマァみろ!!必殺"ダルマ落とし"!!たった今この地下はおれのキバで空洞だらけにしてやったのだ!!」

「へぇ。」

「―――!!」

「あんたのキバ、強いんだ。」


落とし穴に嵌った車体とチョッパー達をダルマは嘲笑う。
だが嘲笑っていたダルマの背後から聞き慣れない声がしハッとさせ振り返ろうとした。
しかし背後にいるであろう誰かを認識する前にダルマは顔面横を蹴られ吹き飛んでしまった。


「ダルマさん…!!?」

「何なんだよ!あれ!!人間が出せる力じゃねェだろ…!!」


ダルマの後ろに立っていたのは、咄嗟に飛び上がり落ちる前に脱出したアスカだった。
その際足をウサギにするために空中で素早くレギンスを抜き捨てていた。
足をそのままにダルマを蹴り飛ばし、周りにいる魚人達はあっと言う間に飛ばされたダルマに目を丸くさせながら自分達の真ん中にいる人間の女を睨みつける。
だが魚人の睨みなど地上にいる海軍大将の殺気よりは怖くないと平然と涼しい顔で立っていた。


「てめェ!!よくもおれを蹴り飛ばしてくれたな…!!」

「敵なんだから当たり前でしょ?バカじゃないの?」

「どうやらバイクバカは後回しになり…」


「おい!何事だ!ウソップ!チョッパー!!――ってしまった!落とし穴だァ〜〜!!」


「え〜〜〜!?アホかコイツ〜〜!!」


自分よりも体格がよく、強面の海賊達に囲まれ睨まれジリジリと距離を縮められても恐れる事なく表情1つ崩すことのないアスカに復活したダルマはキッと睨みつける。
アスカに邪魔をされなければ同じく落とし穴でバイクに乗っているフランキーを落とそうとしていた。
しかし邪魔が入り、ダルマはその邪魔者のアスカを消してからフランキーの相手をしようとチラリと目をやったのだが、その瞬間穴に落ちたチョッパー達に駆け寄ったフランキーはアスカが倒されるのを待つよりも早く自ら穴に落ちに行く。
それには流石のダルマも驚きが隠せないでおり、アスカはフランキーも落ちたのを目の当たりに大きく重い溜息をついた。


「おのれ!!スーパー許さん!!お前ら外に出ろーー!!」

「「「えええ!?」」」


仲間を怪我をさせ、そして(自分で落ちたのに)穴に落とされた怒りに身体を震わせるフランキーは何故か車内にいたウソップ達全員を外へ放り投げた。


「ちょっと何するんの!フランキー!!」

「なぜ戦車長を追い出すんだ!!」

「そりゃ"コイツ"が1人乗りだからよ!!」

「え!?」

「変態するぞ!!」

「もう変態だろ!!」


穴から出れたのはいいが敵のど真ん中に放り出されビビリトリオであるウソップ達は慌ててフランキーがいる穴へ駆け寄った。
しかし、フランキーはウソップ達を戻すことはなく何かの操作をし始める。
すると穴の中に落ちていた2台の機体が変型しはじめ合体していく。
そして――…


「鉄の海賊!!『フランキ〜〜ィ将軍』っ!!」

「「出た〜〜〜〜!!!」」

「スゲーーーー!!!」

「夢の合体ロボ〜〜!!!」

「…………」

「…………」

「…………」


落とし穴から出てきたのは人に近い形のロボットだった。
名前に自分の名前を入れているだけあってリーゼントもありフランキーに似ている。
腹部の部分にはちゃんと自分達の海賊マークも入っていた。
男性陣(ルフィ・ウソップ・チョッパーのみ)は目を輝かせ涙を流し感激していたのだが…女性陣全員はしーん、と感激のかの字も見当たらず冷めていた。
因みにゾロとサンジ、ジンベエは全くもって興味なさ気に目の前の敵を伸していっていた。
そんな女性陣やゾロ達などよそにフランキーは攻撃へと移る。


「略奪者の剣!!『フラン剣』!!"将軍足元危険"!!!」

「ひゃあ!!下段攻めーー!!?」

「セコいが危険だァ〜〜!!」


かっこつけた名前をつけたがただ足元を狙っているだけである。
巨大な剣を持ってくるくる回転しているだけのフランキーにアスカは呆れたように半目で見つめた。


「飛び上がったお前達を肩から飛び出す大砲が襲う!!」

「「「え…!?」」」

「え〜〜!?肩からキャノン〜〜!?」

「食らえ!!"フランキー大砲"!!」

「お前が撃つんかいっ!!」


かっこつけた名(ry だが、肩から飛び出す大砲とは自分の肩で撃っただけの攻撃だった。
マークの部分がパカリと開き、その中から操縦していたフランキーが肩から大砲を撃ち敵を倒していく。
それにウソップがすかさず突っ込みを入れるもチョッパーやルフィと共に『でもお前もカッコイイ〜〜!!』と褒め称える。
そして、そんな男性陣を尻目に女性陣はやはり冷めすぎる反応を示していた。


「ん…?」


とうとうアスカは構ってられないとダルマへ目線を戻したのだが、目の前にいるはずのダルマはおらず雑魚しかいない。
辺りを見渡しても小さい身体はなく、アスカは怪訝そうに首をかしげた。


「さっきはよくもダルマさんを蹴り倒してくれたな…!!」

「人間の女の癖に生意気な!!」

「殺してやる!!」


首をかしげているアスカに隙を見つけた魚人達は鋭い刃物を振り上げアスカに向けた。
しかし、


「―――な…!!」

「なんじゃこりゃァ〜〜!!!」

≪やれやれ…我が主に刀を向けるとは……ここは無礼者ばかりじゃな。≫

「「「ヘビが喋ったァァ〜〜!!?」」」


大勢で1人の少女を囲み切り殺そうとしていた魚人達の刃は確かにアスカに振り下ろされた。
しかしダイヤモンドのように硬い何かがアスカを庇っているかのように魚人達の刃をギチギチと擦らせながら受け止めており、その何かとはシュラハテンだった。
シュラハテンはブレスレットから本来の姿へ戻し、大蛇となりどくろを巻きアスカを守る。
普通の大蛇とは違いシュラハテンの身体は刃物が貫かれず、まるで硬い何かのように魚人達の刃を受け止めていた。
突然現れた大蛇に魚人達は数歩下がり距離を置くが刀へ目を向けると刃こぼれを起こしているのに気付き目を丸くさせ驚愕させる。
自分に恐れ戦く魚人達を見つめながらシュラハテンは目を細め長く赤い舌をチロチロと出し、どくろを巻いていた体を素早い動きで解き目の前の魚人へ襲い掛かった。
その素早さにはいくら海の中で動ける魚人達でも陸では敵わず次々と魚人達はシュラハテンに倒されていく。
シュラハテンを見送った後ナミの方へ目線を移しナミがこちらに気付いていないのを確認したアスカは目の前の残っている魚人へ目線を戻し目を細め笑う。


「さて…ナミに気付かれる前にさっさと終わらそうかな。」


目の前の魚人共はどう見ても雑魚ばかり。
本気にならなくても捻り潰せるだろうという呟きを言葉の中に含ませ、そのアスカの呟きが通じたのかアスカの言葉に逆上した魚人達は更に険しい表情を深めアスカを殺すばかりに睨みつけた。
魚人の睨みなどで怯んだら麦わら一味の二番手にはならなかった。
むしろこんな雑魚な魚人の睨みで怯んでいたらシャンクスの娘にはなれない。
アスカは挑発に容易く掛かる魚人達に愉快そうに笑みを深め、地面を思いっきり蹴る。

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