ルフィ率いる麦わらの一味の強さに国民達は唖然としていた。
しかし国民はやはり船長同士の戦いに目が離せないようで、ルフィがホーディを押している現状に希望がわきあがる。
ルフィはホーディの攻撃を容易く避け、何度も壁に叩きつけたりと力の差を見せていた。
「すげェ!"麦わらのルフィ"!!」
「これが世界に名を売る海賊の実力か!!」
片や地上やこの海底にも名が知れ渡っている海賊、片や海底のみに名が知れ渡っている海賊。
実力の差は戦いに縁のない国民でも目に見えて分かるほどだった。
しかし広場が突然暗闇に包まれる。
「何だ!?広場が暗く…―――えええ!!?」
「あ、あれは…!!魚人街の"ノア"!?」
暗闇に包まれその場にいる殆どの者が頭上を見上げる。
その頭上を見上げた者の目に巨大なふるい船が映し出されていた。
その大きさはミコトの軍艦を遥に越えており、船はゆっくりとこちらに向かってきていた。
「魚人島上空になぜノアが!?」
「明らかにこの広場に向かってる…!!島のシャボンを突き破ろうとしてるぞ!!」
「シャボンが破られたら…!"ノア"が衝突する前に水圧で居住区なんて吹き飛んじまう…!!」
『ノア』と呼ばれた船を魚人達は知っているようで、その船の出現よりもシャボンが壊れることを皆恐れていた。
それと同時に動力がないというノアを動かしているのは誰かと騒ぎ始め、チョッパー・ウソップ・ナミ・ブルックは巨大すぎる船に周りの魚人達と同じく慌てふためき、ゾロとサンジ、アスカはただ表情を変えず向かって来る敵を適当にあしらいながら船を見上げ、やっぱりロビンは不吉な事を呟いた。
騒然とし、混乱しているウソップ達や魚人達をよそに突然再び頭上から大きな何かが振って落ちて来た。
「ホゲーー!!」
「「「ギャア〜〜!!」」」
ドカァン、と一際大きな音を立てて落ちて来たのは巨体を持つ魚人だった。
「お前は…!デッケンの部下ワダツミ!!」
「痛った〜!!足滑ったら〜〜!!」
ゼオがその落ちて来た魚人に気付き目を丸くさせる。
ワダツミと呼ばれた魚人はゼオなど気にも止めず落ちたときに頭を打ったのか頭を抱え痛そうに声を上げる。
「バンらーれっケン船長〜!!おれが落っこっちまったらー!!船を止めてくれ〜〜!!おれ死にたくないろォ〜〜!!」
「デッケンだと…!?どういう事だ!?」
「ホーディ船長〜〜!!無事ですかァ!?コリャなんかの作戦ですかァ!?どうやらデッケンが船を動かしてる模様で!!」
頭を抱えていたワダツミは我に返り慌てて船へ声をかける。
ゼオはワダツミから出た言葉にデッケンという名を聞き、ワダツミから船へ目線を移し、周りにいた魚人達はホーディへ振り返りこの現状は何かの作戦なのかと声を張り上げた。
そんな部下達の声に苛立ちを抑えられず『役立たず共』と声を上げながらもホーディは瓦礫を自力で退かし立ち上がる。
傷だらけだが"武装色"で攻撃していたのに関わらず起き上がったホーディにルフィは目を丸くさせ、ホーディは上空を見上げ眉間にシワを寄らす。
作戦になかったノアとゲッテンの動きにホーディは更に不機嫌そうに顔を歪めた。
するとノアからデッケンの笑い声が響き渡る。
≪バホホ!!…バホホホホホ!!!ワダツミィ〜〜!!お前を助ける事はもう不ギャ能!!この能力で飛ばしたものは何かに激突するしか標的を仕留めるまで止まらねェ!!この人魚島と共に!!しらほしのしに供えられる生け贄となれェ!!≫
「そんなーー!!」
デッケンの声は島中に響き渡り、ワダツミはデッケンの言葉にショックを受ける。
そんなワダツミなどよそにジンベエはデッケンの言葉から斧や手紙のようにノアを投げたのだと気付く。
気付いたその時、しらほしがいないという魚人の言葉にハッと我に返りクラーケンに守られているはずのしらほしへと振り返った。
しかしそこには魚人達が言う通りしらほしなど姿にはなく、慌てて周りを見渡してもやはり王女の姿はなかった。
「何を!?しらほしが消えた!?」
下の様子に気付いたデッケンもしらほしを探すように広場に目を配らせる。
あれほどの大きさなら人目で見つけられるはずなのだが…上からでもしらほしを見つけることは出来なかった。
「わたくしなら!こちらです!!」
「!?」
焦るデッケンの耳に愛らしい声が届く。
声の方へ目をやるとそこには両腕を広げたしらほしが広場から大分離れた場所に浮いていた。
「人魚姫〜〜!!」
「しらほし!!なんであんな所に…!」
「要するにあの船は姫に向かって飛んどるんじゃ!いかん!姫を1人で行動させてもうた…!!」
両腕を広げ船が自分に向かってくるのを待っているしらほしに国民達は目を丸くさせ、ナミやジンベエ達は焦りを覚える。
「あなた様の"マト"はわたくしの命ではございませんか!!わたくし1人の命を奪う為だけに!リュウグウ王国の皆様まで巻き添えになさるのはおや…っおやめ下さいませ!!わたくしならここに…!!」
デッケンが自分の命を狙っているという事は、あのままそこにいればいずれシャボンが割れ自分だけではなく国民やルフィの命が失われるという事。
しらほしはそれに気付き慌ててその場から離れる。
そうすれば"的"である自分を追って船も島から離れると思った。
その考えは当たり、船はゆっくりと広場から逸れていきしらほしに向かっていた。
しかし、ルフィと戦っていたホーディもしらほしを殺そうと船の船底へ登って行く。
それに気付いたルフィがすかさず助けに行こうとしていたサンジに自分が行くと言い出し、サンジの足で船底へと辿り着いた。
鎖にしがみ付くルフィの現在地はシャボンとシャボンの間で、ホーディはルフィとは少し離れた場所にいた。
ホーディの居場所を確認するため顔を下へと向けていたその時、自分とホーディとは別の鎖に国民達がしがみ付いているのが見える。
「みんなで引けェ!!止まらなくても!!姫様に追いつく速度を少しでも…!ほんの少しだけでも速度を落とすんだ!!」
国民はただ見ているだけなど出来ず何か行動に移せないのかと自分達が出来る限りの事を探した。
戦闘は無理でも何かしらほしを助けることが出来るものを、必死に探していた。
それが鎖にしがみ付き、なんとか速度を落とそうという考えに至ったらしい。
「正気かよオイ…1ミリも動くわけねェだろ…」
本気かどうかは不明だが、自分達の重みで速度を落とそうとする国民達にホーディは呆れたように呟いた。
手が水で濡れているのに気付いたルフィは止めようと声を上げるがホーディはルフィの声など聞く耳持たず容赦なく"矢武鮫"を放つ。
矢武鮫は戦うことの出来ない国民の身体を貫き、次々と国民達はしがみ付いていた鎖から落ちていった。
「ゴミクズ共…!お前らみてェなフヌケがいるから魚人続がナメられる!!」
国民達の悲鳴を聞きながらしらほしは立ち止まりそうになる。
しかし、今は何より国民とこの島から離れなければ自分も、国民も、ルフィ達も死んでしまう。
それだけは避けなければならずしらほしは泣き出したい気持ちを必死に抑え、恐怖に足を止めそうなのを必死に押さえ、開けっ放しの竜宮城への出入り口に急いだ。
その連絡廊に入ったしらほしはそのまま竜宮城ではなく海へ出て、それをノアがしらほしを追いかけるためゆっくりと動き出す。
◇◇◇◇◇◇◇
一方、ルフィを見送ったギョンコルド広場では――…
「うお〜〜ん!!!キャプテンバンらー・れっケン様に見捨てられたら〜〜っ!!」
ワダツミの泣きが響き渡っていた。
先ほど同じ大きさほどのクラーケンと泣きっ放しのワダツミが戦ったのだが、船長に見捨てられたワダツミからは戦意がなくワダツミの頭には大きなタンコブが1つ出来ていた。
「おい!大入道!!何を聞き間違いをしてる!!デッケンは貴様にこう言ったんだ!!『この広場を任せた』と!」
「えっ?」
「やつは元々島を破壊する気はなかったのだ!!」
勿論、これは嘘である。
ゼオの嘘八百を聞きワダツミは泣いていた涙を引っ込め鼻をすすりながらゼオを見下ろした。
「そ…そうらったのか!?」
「そうだったのだ!さァ"コレ"を飲み我らの味方として"麦わらの一味"を叩き潰せ!!」
首を傾げるワダツミにゼオは自信満々に頷き嘘を本当だと貫いた。
そして持っていたE・Sをワダツミへと渡す。
それを見た部下達はワダツミの身体の大きさに薬は効かないのではと思ったのだが…
「ウオオオオ〜〜!!!れっケン船長!疑って悪かったら〜〜!!」
「「「薬効きやすいタイプだった〜!!」」」
差し出されたままにE・Sを飲んだワダツミは顔だけではなく身体を真っ赤にさせながら即行効果で力を倍増させ先ほどまで殴られていたクラーケンを吹き飛ばした。
薬により力が増したワダツミの腕力は数倍に上がり、容易に化け物だと恐れられているクラーケンを伸していく。
「てきはろこら〜〜!!」
「こ…!こいつだ!ワダツミ〜〜!!」
クラーケンが地に伏したのを見たワダツミはもうクラーケンには興味なさ気に次の獲物を探し辺りを見渡す。
するとホーディの部下が近くの岩場に立っていたジンベエを指差し、ワダツミはジンベエに向かって巨大な拳を思いっきり振り上げた。
しかしジンベエは拳を振り上げるワダツミに気付きながらも焦る事なく横目でワダツミを見つめている。
「ジンベエちゃん!危ない…!!」
ワダツミの次のターゲットがジンベエだと気付いたナミは慌ててジンベエに声をかけ、ナミの側にいたアスカもナミの声に気付くも焦ることなくジンベエとワダツミへ目線を向ける。
「"七千枚瓦…回し蹴り"!!!」
ナミが焦り心配するもジンベエは慌てることなく"七千枚瓦・回し蹴り"で自分よりも巨大な拳を軽々と止めた。
それにはナミは驚き、自分よりも強いと2年前の戦争で知っているアスカはさほど驚きはない。
驚きもなくアスカはまだ生き残っている敵を伸していこうと前を向いたその瞬間…
「きゃ!」
「わ…っ!!」
「!?――アスカちゃーーん!!ナミさーーん!!ふ、2人が風圧を受けちまったァ〜〜ッ!!」
拳を跳ね返されバランスを崩したワダツミは倒れてしまい、その風圧に魚人達は次々と倒れてしまう。
ゾロやサンジなど人以上の強さを持つ人間達は強い風圧でも平気なのだが、修行し強くなっても体力面でも体の作りもそう一般人と変らないナミは強い風圧を受け前に倒れてしまう。
そして、アスカもナミの前にいたため巻き添えを食らってナミの下敷きなってしまった。
アスカならワダツミの風圧にも耐え切れるが流石に殺気のない味方のナミが突然予告なしに圧し掛かってくれば避けることもできず顔面を地面に強打してしまう。
それを目敏く気付いたサンジは振り返りながら魚人を蹴り飛ばし、重ねて倒れる2人を見て慌てた声を上げた。
そして…
「立てコラァ!!!」
「ギャーー!」
愛しい女性達が倒れた原因であるワダツミの頭を怒りに任せ蹴りつけた。
倒れていたワダツミは頭からの衝撃に慌てて起き上がりジンジン来る痛みに頭を抱える。
「今度は誰らーー!イデ〜〜!!」
「ウチの美人航海士と可憐な副船長に掠り傷でもつけたらお前どう落とし前つけるつもりだァ!!!」
次々と襲い掛かる痛みに頭を抱えるワダツミにサンジは怒りで我を忘れているようにワダツミを睨みつける。
そんなサンジをよそにジンベエも岩場に乗っても見上げるほどの大きさを持つワダツミを見上げる。
ジンベエもアスカがこけた事に頭にキタのかゴキ、と指を鳴らしながらの睨みは更に鋭かった。
「相手になろう!大入道!」
「ナミさんとアスカちゃんに命をもって詫びろ!!ジャンボ饅頭!!」
しかし、ジンベエとサンジなどよそにナミは『あ!ご、ごめん!大丈夫!?』と慌ててアスカの上から退き、アスカは背中が軽くなったのを感じながら『うん…まあ……』と鼻を押さえ、そんなアスカにナミは罪悪感が湧き上がるが『ちょ…な……何よその格好!!!いつレギンス脱いだの!?誰が許したの!!』とアスカがレギンスを穿かず生足を曝け出しているのに気付き、ナミは罪悪感などポーイとゴミ箱に捨て去りアスカの肩に掴みかかる。
アスカもナミも全くもってサンジとジンベエなど見ていなかった。
34 / 274
← | top | back | →
しおりを挟む