ザザーン…という波の音がするなか、ルフィとアスカは崖の上に居た。
「…………」
「…………」
ルフィはうつ伏せになり、アスカはルフィの隣に座って何をするでもなくただ海を見ていた。
そんな2人のもとにエースが歩み寄り、うつ伏せのルフィの頭を殴る。
「いつまでそうやってるつもりだよ」
「…………!!」
「…………」
ルフィは身体を震わせ麦わら帽子のつばを握り締め、アスカはエースを見上げ、ルフィに目を移す。
「"中間の森"に隠してた財宝は全部失くなってた。結局サボは使わなかったんだ…だからおれももう…別にいい。守れもしねェ財宝集めても仕方ねェ…」
「エース、おれは…!もっと!!強くなりたい!!!」
森に入り、サボの手紙で泣いたエースは決して人前で弱みを見せない。
特に守ろうと決めた弟と妹の前では頑なに泣くことをしようとはしない。
サボの死に泣き崩れたエースはその後、森の中に隠していた財宝を見に行った。
だが、財宝を隠したところには宝石の欠片すらなく、エースはそれに怒るでもなく受け止めていた。
声を搾り出して言うルフィにエースは海からルフィへと目を落とす。
「…もっと!!もっと!!もっともっともっともっともっと!!もっと!!もっともっともっともっと!!!もっともっと!!もっと強くなって!!…そしたら……何でも守れる!誰もいなくならなくて済む…!!お願いだからよ…!!エースは死なねェでくれよ…!!」
「ルフィ…」
ルフィの必死の言葉に今まで泣くのを我慢していたアスカは耐え切れず涙が溢れた。
するとエースはルフィの頭をゴン!、ともう一発殴る。
「バカ言ってんじゃねェよ!!おれの前にてめェの心配しやがれ!!おれより遥かに弱ェくせによ!!!いいか!覚えとけルフィ!アスカ!おれは死なねェ!!」
「…!!……うん…!」
「うん!」
エースの言葉にルフィは座り込み麦わらのつばを下に引っ張り泣き顔を隠す。
「サボからもおれは頼まれてんだ…約束だ!!おれは絶対に死なねェ!!お前みたいな弱虫の弟や妹を残して死ねるか!」
「エース…」
「…!…うん…うん…!!」
ルフィは何度も頷き、アスカは止まらない涙を必死に拭おうとする。
しかし涙は溢れ、止まらない。
それでもエースは泣き止まない2人に続けた。
「おれは頭が悪ィからサボが一体何に殺されたのかわからねェ。…でもきっと"自由"とは反対の何かだ…!!自由を掴めずにサボは死んだけどサボを盃を交わしたおれ達が生きてる!!だからいいかルフィ、アスカ、おれ達は絶対に"くい"のない様に生きるんだ!!」
「…うん!!」
「うん!」
ルフィもアスカも涙を溜めながらエースの言葉に頷き、広く果てしない海へ目を移す。
まだこの海に出ることはできないが、いずれ出るであろう海をエースは睨んだ。
「いつか必ず海へ出て!誰よりも!自由に!!それはきっと色んな奴らを敵に回す事だ!ジジイも姉貴も敵になる!!命懸けだ!出航は17歳!おれ達は海賊になるんだ!!!」
海に出て海賊となる。
それは本当に色々な敵を作る事になるだろう。
海賊と言うだけでみんな怯え恨むだろうし、同じ海賊の人間でさえ信用できない。
何よりも、身内であるガープとミコトも敵となるのだ。
ガープもミコトも三人は好きな方だ。
特にミコトは憧れているし、エースは初恋である。
そんな二人を敵に回してでもエースもルフィも海に出て自由になりたかった。
エースの言葉はルフィとアスカの心にしっかりと刻まれる。
必ず海に出ると誓ってから3人は力をつけるためと、特訓に特訓を重ねる。
火事で秘密基地は燃えてしまったため、ダダンの家に再び世話になる事になったルフィ達はそれでも敷地内にエースとルフィの国を作ってそこで寝泊りをしていた。
アスカはというとガープの希望から家事を教えてもらっていた。
だが、知っての通りアスカは家事が一切駄目な系女子である。
そう言ってもガープは教えるよう言って聞かず、仕方なく一通り教えていたのだが…まあ〜、掃除すれば一秒もない速さで物を壊し、洗い物をすれば全ての皿を割るという奇跡的な技を見せ、料理など問題外というお約束をやり遂げた。
そんなある日、マキノが酒を持ってダダンの家に来ていた。
「マキノちゃんが遥々酒を持ってきてくれたぞ〜〜!!」
久々の上等な酒に山賊達は大喜びし、マキノはエースの言葉にキョトンとなる。
「挨拶の仕方?」
エースは珍しく自らマキノに声をかけ、マキノにお願いをする。
エースに頼まれたのは、ちゃんとした挨拶の仕方だった。
マキノの問いにエースは頷いて返す。
「おれはルフィとアスカの兄貴だからよ、いつかその弟が世話になったっていう赤髪の船長にあいさつに行くってのがスジってモンだろ?それに赤髪はアスカの父親だしな!」
エースの言葉にマキノはふと笑みをこぼす。
「な、何だよ!てめェ!!」
「ふふふっ、ごめんなさい、じゃあまず…」
マキノは別に馬鹿にはしておらず、弟と妹のために言葉を覚えようとするエースが微笑ましかった。
エースはマキノが人を馬鹿にするような人ではないと付き合いの中知っているが、やはりまだ照れが残っているのか照れ隠しにマキノに声を荒げた。
微笑ましく思い、そしてシャンクス達海賊を相手にしていた事もあってまだ子供のエースの睨みがマキノに効くわけもなく、マキノは笑みを浮かべながら挨拶の仕方をエースに教える。
それから色々あった。
天敵の野獣を2人係で仕留め、雪が降る中チンピラ相手に喧嘩して、エースがミコトにドキドキさせ、ガープに鍛えてもらい…
サボが居ないのは悲しいけれど、それでも3人は何も変わらずすくすくと育っていく。
そう、アスカの家庭能力の無さも変わらずそのまま成長してしまった。
―――そして7年後…
「頑張れよー!!エース〜〜〜!!」
「待ってろ!すぐに名を上げてやる!!」
「捕まるならお姉様に捕まってね!」
「あぁ!―――っておれは絶対捕まらないからな!!」
この日、エースは17歳にて育った場所を離れ、果てしなく広い海へと静かに出航した。
「はは!!まだ手ェ振ってる!」
「まったく…ガープとミコトが何と言うか…」
一緒に見送りに来ていた村長が溜息混じりにエースを見送る。
その横でマキノが笑顔で手を振っており、マキノとアスカはまだ手を振っているエースにお互い顔を見合わせ笑みを浮かべていた。
だが、その場にダダンの姿はなかった。
―――その頃、ダダンは…
――お前が育てろ、ダダン!
――そんな!誰の子!?
家の隅っこで一人座っていた。
思い出すのはエースがこの家に来た頃…エースがまだ赤ん坊だった頃だった。
「…………」
「お頭ァ〜〜!!エースの奴、行っちまいましたよー!」
「あァそうかい…結局ガープに怒られんのはあたしだよ…ミコトにだってなんて言われるか…しょうのねェクソガキだった!」
昔を思い出していたがダダンは部下達の言葉にため息をついて憎まれ口を叩いて寂しさを隠す。
「あ、そういやエースからお頭に伝言が…」
「何を〜!?最後の最後まであたしに文句があんのかい!!?」
「"世話んなった、ありがとう"って。」
「ふざけんじゃねェよ!!バカがっ!!!」
伝言に部下の前では、と我慢していた涙をドバッ!と流した。
―――エースを見送り、ルフィとアスカは共に修行し、成長していく。
「おれ達はあと3年!!"ゴムゴムの〜〜"銃"!!」
「がんばれー!」
17歳で出航という決まりをし、アスカは結局ルフィと海に出ることにした。
1人でも別にいいとも言ったが、ルフィとエースに反対されてしまい渋々ルフィの船に乗る事にしたのだ。
残されたルフィとアスカは特訓を重ね、エースに負けないように力を付けていった。
しかし、アスカの家庭能力だけは上がらず、ゼロのままである。
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