「うおーー!!」
「やったぜ!解放だァ〜〜!!」
ルフィの意識も回復し、ネプチューンは安堵した。
そしてホーディ達に奴隷として連れて来られていた海賊達を解放せよという命を兵達に出し、兵達は戸惑いながらも王の命に従い海賊達を解放する。
「"麦わらの一味"!!おめェらに借り一つだァ〜〜!!」
声を上げながら、涙を流しながら、海賊達はそう声を揃え魚人島から一刻も早く脱出したいと駆け足に出て行こうとする。
王の許可が出たということでシュラハテンは出て行こうとする海賊達など目もくれず主のもとへと戻っていった。
「ホーディへの恨みが…"魚人島"に向くのでは…?」
「それはそれで別の話し…この島は元々海賊達の観光・休憩の地……留める理由がない。」
奴隷として扱われた恨みは相当だと右大臣と左大臣は懸念しネプチューンを窺うような目で見上げる。
右大臣達の不安も十分に分かっているが人間達を引き止める理由もなく、もし向けられたとしてもホーディほどの強さを持っている者ではない限り自分達でどうにか出来ると思っているのだろう。
ネプチューンは人間達を見逃した後、『さて…』、と静かに魚人海賊団の残党達へ目線を配らせる。
残党達はネプチューンの目線にビクッと肩を揺らした。
「"新魚人海賊団"その残党達!」
「ひーっ!!打ち首だけは!!」
「大体おれ達王妃殺したのホーディだって知らなかったし!!あいつらイカレてんだ!マジで!!」
海賊達は勝てると思っていた戦いの元、自分達が上へ伸し上がると信じていたから何の罪のない魚人や人魚を殺していた。
しかしその戦いもルフィ達麦わらの一味により破れ、あれだけ罪のない命を奪っていったのに関わらず、自分達が死ぬとなると命だけは助けてくれと勝手で都合のいい事を願う。
そんな残党達にネプチューンは表情ひとつ変えずにいた。
そして…
「お前達はこの"魚人島"本島に住んでもらう!」
残党達全てに聞こえるよう声を張り上げそう言った。
「何を!?法の下で暮らせってのかァ!?」
「おれはそれがいい!!ホーディの支配より…!!」
残党達はその言葉に耳を疑った。
ある残党は法の下で暮らすことに嫌悪し、ある残党はあの恐ろしげに姿を変え自分達さえ平気で斬り付けた幹部やホーディの支配で怯えながら生きていくよりはいいと胸を撫で下ろしていた。
反応は様々だが、多くの残党達は打ち首にならずに済んだと安堵の息をつく。
しかし、残党達がこの本島に住み着く事に国民達は抵抗を覚える。
「それは困ります!王様!!こんな奴らに町をウロつかれたら…!!」
「怖くて子供達を外に出せないわ!!」
残党達もこの島に住むというのならホーディのやろうとしていた事と同じ。
魚人海賊団の残党達は不良どころの騒ぎではないほど危険なのは先程の戦いで国民達は思い知らされていた。
兵やルフィ達のように戦う力がある者ならばそれなりに平気だろうが、国民達は戦う力すらなく、子供達は自分達以上に力がない。
子供を思うと残党達を魚人街へと戻してほしいと願う国民達にネプチューンは首を振る。
「無論!我が軍の管理下で働き…服役するという意味じゃもん!!そのあり余る腕力を生かせる仕事を与えよう!!目の届かぬ『魚人街』は今日をもって―――完全封鎖するんじゃもん!!!」
ネプチューンもずっと魚人街に戻そうかと考えていた。
しかし、それでは第二・第三のホーディが現れるのは目に見えている。
そうなっては何の為に人間であるルフィ達が血を流し、我が軍の兵士達や国民達が血を流してこの戦いを収めたか分からなくなってしまう。
だからネプチューンはそれを防ぐために魚人海賊団の残党達のあり余っている力を生かせるように兵士へと受け入れようと決意した。
それと同時に悲しき戦いの切っ掛けを作ったであろう魚人街という場所を完全に封鎖することを決めたのだ。
ネプチューンの決めたことにさすがに反論も出来ず、あれほどの荒くれ者達が兵になったのなら逆に頼もしいと国民達は未だ困惑と恐怖を残しながらも王の決めた決断に従った。
残党達も多少の反抗を残すもののホーディ達のようなイカレた者達の下に付くよりはいいと渋々王の決断を受け入れる。
「おい、"麦わらのルフィ"はどこじゃもん」
「ええ…それが……逃げました…」
「逃げた!?」
ざわめきながらも国民達と残党達がお互い複雑そうにしているのを見渡しながらもネプチューンはルフィ達麦わらの一味とジンベエ、そして娘がいないのに気付く。
近くにいた息子であるフカボシに聞くもフカボシからの言葉に目を見張った。
◇◇◇◇◇◇◇
その頃、ルフィ達はサニー号に乗り込み、メガロに引っ張られながら空を進んでいた。
「皆様なぜ逃げるように広場をお出になられたのですか?」
大きなシャボンで浮いているサニー号をメガロが引っ張り、魚人島を出ようとするルフィ達の横をしらほしがつく。
逃げるように立ち去るルフィ達にしらほしは不思議そうに声をかけるが、何も分かっていないしらほしにゾロが溜息をつく。
「バカ言ってんじゃねェよ。あんな見世物みてェな場所で戦わされて…あのまま広場にいたらヒーローにでも担ぎ上げられちまう…考えただけで寒気がする。」
「おヒーロー様ではダメなのでいらっしゃいますか?」
「あのな!ヒーローってのはてめェの酒を人に分け与えてやる奴の事だ!
おれァ酒を飲みてェ!!」
「
だから何なのよ!あんた達のその理論!!」
ルフィも酒ではないが同じ事を言ってヒーローになるのを断っていたのを知っているナミはゾロとしらほしの会話を聞きつい突っ込みを入れてしまう。
しらほしはそれの何が悪いのでしょうか…と口にせず不思議そうに小首をかしげゾロを見つめていた。
「何で断るんだよ!ジンベエ〜〜!!一緒に冒険しよう!!」
どういう理論でそう言い切れるんだお前らは!、とナミは重い溜息をついていると後ろからルフィの怒鳴り声のようなモノを聞き振り返る。
そこには仲間になるのは今は無理だと断ったジンベエにルフィが問い詰めている姿があった。
「そうだ!仲間になれ!親分!!」
「元七武海がいたら心強ェ〜!!あとルフィ!絶対安静な!!」
「そうだよ!!仲間になれよ!!アスカも仲間になってほしいって言ってるぞ!!」
「………」
「ゔ…っ」
元とは言え七武海の仲間が味方になればこの先戦闘も幾分か楽になり、尚且つ魚人となれば能力者回収も楽になるだろう。
なんせ自分達の船長をはじめとする一部の能力者達は自分達がカナヅチなのを忘れてたまに海の中へと平気でダイブするのだから。
力を抜ききっている人間ほど重いモノはなく、それを一々回収するのは正直骨が折れる作業である。
頑なに頷こうとしないジンベエにルフィはついには幼馴染を盾に出してきた。
アスカはルフィに腕を引っ張られグイッとジンベエの前へ詰め寄らされる形でジンベエと向き合う。
アスカもジンベエには仲間になってほしいと思っているのだが…ルフィよりは冷静なアスカは『今は』というジンベエの言葉に気付いており、無理強いはできないしいずれは仲間に入ることを察している為ルフィほど必死ではなかった。
まあ、ちょっと期待を込めてジンベエの瞳を凝視していたのだが……傍から見たら無表情で凝視しているだけにしか見えない。
――が、ジンベエ視点では泣きそうな子犬の瞳にしか見えず、つい言葉を詰まらせてしまう。
この技(?)は多分ジンベエだけではなく、ナミ、サンジも有効だろう。
「じゃ、から…!"今は"ムリだと言うとるだけじゃ!!」
しかしジンベエの決意も固かった。
子犬の瞳になんとか打ち勝ち必死にアスカから目を逸らしながら首を振る。
自らの邪心を跳ね返したジンベエの姿を見ながら同じくアスカに甘い過保護組みの先輩であるナミとサンジは自分達では長くもって1秒だというのに耐え切ったジンベエに敬服したという。
「誘ってくれた事は本当に嬉しく思う!!お前さんらと海に行くのはさぞ楽しかろう!……しかしわしにはまだやらにゃあならん事がある!!」
ジンベエも何もないのならすぐこの場で仲間になることを承諾したいと思う。
だが今それが出来ないのは自分の背負っているモノがあまりにも他の者達と違うからだった。
「現在の立場というものがあるんじゃ…今はそこを離れて来ただけ……人の道に仁義を通しスッキリと身軽になった時――…今一度わしはお前さんらに会いに来ると約束しよう!その時にまだ、今の気持ちのままでおってくれたなら!もう一度誘ってくれんか…"麦わらの一味"に!!」
「!――絶対だぞ!お前!!」
ジンベエが背負うモノから解放されたその時、自分からルフィ達のもとへと会いに来ると約束し、ルフィはそれを信じながらも釘を刺し逃げられないようにする。
それは絶対ジンベエを仲間にしたいという気持ちでさせるのだが…追い込むようなルフィにサンジは肩をすくめ、随分と好かれているジンベエにロビンが笑みを深める。
他にもジンベエの思いを聞きナミ達はまた新たな仲間が増える喜びに笑みを浮かべていた。
「じゃあ…どうする?このまま"新世界"か?」
「え…ええ!?もう島をお出になられるのですか!?もっと…!ちゃんとお礼だってお話だってさせて頂きたいですしっ!!」
「
よし!マーメイドカフェに一週間くらい泊まっていくか!!」
「
ただ行きてェだけだろお前!!…賛成だけど!」
口を挟める話ではないと今まで黙っていたしらほしはゾロのルフィに確認するような言葉に驚きの声を上げた。
何故かルフィに懐いているしらほしはもっとルフィやその仲間達と一緒にいて冒険の話しや外の話しを聞きたいと瞳を濡らす。
寂しがるしらほしに即行サンジが反応し、戦いになる前は気を失い行けなかった場所に行きたがっているサンジにウソップが突っ込みを入れた。
が、自分もまた行きたいと思っているのかボソリと賛成の声を零す。
「お待ちを!"麦わら"の方々!!」
このまま魚人島を抜けて新世界へ出るか、はたまた魚人島を堪能してから新世界へ行くか…決定権はルフィにあるため、ゾロ達はルフィに決めてもらおうとしたその時、ルフィ達を慌てて追いかけてきた兵が追い付き引き止めた。
兵の声にルフィ達は船端へと移動し覗き込むように後ろを見る。
そこにはヒゲをはやした電伝虫を持つ兵が駆け寄ってきているのが見える。
≪ルフィ君!宴の仕切り直しをしようじゃもん!!≫
「宴!?よし!ハチとケイミーも呼びに行こう!!」
逃亡に近いルフィ達を追いかけ、王は電伝虫から宴の仕切り直しを告げる。
宴が好きなルフィは当然、その王の言葉に大賛成し待たせてあるケイミーとハチを向かえに行った。
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