フカボシは振られた。
決して顔には出していないが、事情を知っているネプチューンやナミ達にはバレバレだった。
ナミとサンジ、ジンベエは申し訳ないが大いに喜び、ネプチューンは初孫があああ!と大いに落ち込み悲しんだ。
自棄酒だと度数の強い酒を一気飲みをしては右大臣に叱られていた。
そして、ナミは大事なアスカに告白という名のセクハラした罪としてフカボシと酒の飲み比べの勝負を始め、アスカは興味本位でジンベエ達過保護組みからの監視の目を盗み酒を一口飲んでしまう。
結果としてフカボシが酔いつぶれ、アスカは一口飲んだだけで酔っ払ってしまった。
「ルフィ、お前さんそんな情報力では不安じゃのう…」
「そうか?」
「――少し脇で話すか…」
王達だけではなく、下で飲んで騒いで宴を楽しんでいる兵達もいい具合に酔いが回り更に宴を楽しんでいる中、ルフィと話していたジンベエが酔っ払って自分の膝の上で眠っているアスカを包み込むように抱えながら酒を嗜んでいるとそのルフィ達の情報力の無さに少し不安に思う。
情報がなくても今まで切り抜けてきたルフィにとってジンベエの不安など気にもしないだろう。
しかしこれだけは知っておいた方がいいと言うジンベエにルフィは自分の食べる分の料理だけを持ちジンベエに続き、アスカは起こすのも可哀想だからとジンベエの腕の中で未だすやすやと夢の国にいる。
「なんだお前らもここか!」
「飲みすぎちゃった…酔い覚ましよ」
「おれ食い覚まし…うっぷ…」
「サンジは人魚覚まし!」
「サイコーだぜ!!魚人島!!」
宴の席を外れ、少し離れた場所へと3人は移動する。
するとそこには既にフカボシと飲み勝負し勝ったナミ、アスカと同じく眠りについているゾロ、食べ過ぎてお腹を膨らませているウソップ、人魚達に酔ったサンジとその付き添いのチョッパーがいた。
ルフィは仲間達の側に駆け寄り1人では食べきれないであろう量の料理を置き、ジンベエの話を聞きながらそれらを口に運ぶ。
もうルフィの食欲に突っ込む者は誰もいない。
◇◇◇◇◇◇◇
「ええ!!?『赤犬』と『青雉』の大喧嘩!?」
「やっぱりか…レイリーも酷じゃのう……お前さんあんな大事件すらも耳に入っとらんのか…」
ジンベエが伝えたい情報とは海軍四大将の内2人の『赤犬』と『青雉』の戦いだった。
ルフィはその情報をジンベエから聞き初耳だと声を大にして目を丸くさせ驚きの表情を浮かべるが、既に新聞で知っていたチョッパー達は驚くことはない。
レイリーに何も知らされていない様子のルフィにジンベエはレイリーに対し溜息をついてしまう。
目を伏せた時、丁度自分の腕の中で眠るアスカが目に映り『アスカ君は知っているのだろうか…』とふと疑問に思う。
しかしレイリーの過保護さをナミ達から聞いていたジンベエはすぐに『いや、多分知んだろうな…』と否定する。
「あの2年前の戦争の直後、センゴク元帥が職を下りてな…センゴクは最初次期元帥の座には黒蝶を推していた…」
「!――姉ちゃんが!?姉ちゃんは無事なのか!?」
黒蝶とは姉の海軍での地位だとルフィは2年前に知る。
その地位の高さはルフィには分からないが姉の強さは誰よりも知っているつもりだった。
それが2年前にレイリーから聞いた行方不明だというのを聞きずっと心配していた。
姉とアスカの事になると心配性になるルフィに詰め寄られジンベエは慌てて身を引く。
「こ、黒蝶は無事じゃ!!」
「無事…なんだな!姉ちゃん…ちゃんと…」
「ああ…まあ、黒蝶の事はまた追々話そう…今は赤犬と青雉のことじゃ…」
「追々じゃ駄目だ!今話せ!!」
「また無茶を…」
姉の事を第一に考えているルフィの無茶振りジンベエはほとほと困っていた。
ルフィは姉の情報を知っているであろうジンベエに聞きたいことが沢山ある。
姉は今まで何処にいたのか、なぜ1年もの空白があったのか、なぜスモーカーと結婚という事になっているのか…自分が知らない事をジンベエが知っている気がしてルフィは青雉や赤犬の事を後回しにさせようとする。
困り果てていたジンベエに助け舟を出したのはナミ達だった。
今はジンベエの話を黙って聞け!というナミの拳が落ちる乱暴な黙らせ方だが、口や睨みで唯一黙らせれる幼馴染は只今ほのかに頬を桃色にさせジンベエの膝の上で幸せそうに眠っており、暴走し始めているルフィにはこれしか方法はない。
タンコブを作りながらナミの言う通り渋々ジンベエの話を聞くルフィにジンベエは安堵の息をつき続ける。
「最初は実力も支持もある黒蝶が次期元帥にと推されていた…しかし当時黒蝶は消息不明とされており何処におるのかも、生きておるか死んでおるのかさえ掴めていなかったようじゃ……その上あの戦争で黒蝶がお前さん達の姉だと知られてしまい上層部からその理由で元帥の座から外されたんじゃ…そこで次にセンゴクが推したのは部下からの信頼も厚い青雉だった……しかし、政府上層部には赤犬を推す者が多く有力になった…普段は特にやる気など見せん青雉じゃが赤犬が元帥になる事にだけは強く反発した…」
ジンベエは知っている限りの情報をルフィ達に教える。
ルフィ達も以前会ったことのあるため青雉がどんなにやる気のない男かも知っている。
ナミ達も新聞で大将2人の死闘を知っていたが、まさか赤犬と青雉の戦いの裏にそのような事情があったとは分からなかった。
ジンベエから青雉が赤犬が元帥になるのを本気で反対したと聞いた時には驚きが隠せなかったという。
ルフィもいい加減だと姉も言っていたのを思い出しながらも口に食べ物を運ぶのを止めようとはせずそのままジンベエの話しを聞く。
「2人は対立し―――…前代未聞大将同士の抗争はついにある島で"決闘"にまで発展した…死人に口なし…敗者には一切の口出しは出来ぬ……海軍の指揮は勝者の手に委ねられる。」
「…!」
「十日にも及ぶ死闘はもはや世界の語り種…実力はほぼ拮抗したが決着は…ついに――勝者は『赤犬』!海軍の"新元帥"はサカズキじゃ…!!」
「赤犬…!!」
赤犬の名を聞くとルフィは2年前に負わされた腹の傷が痛むような気がして苦しげな表情を浮かべ手を腹の傷に当てる。
しかしそれでも食欲は失せる事を知らず、ムッとさせるような表情を浮かべながらも食欲に忠実なルフィはすぐに腹に当てていた手を肉へと伸ばす。
「青雉は死んだのか?」
「両者壮絶な深手を負い…目の前で立ち上がれぬかつての同志に…流石の赤犬も情けをかけた……赤犬の下になど就けぬ青雉は海軍を出たわい…」
「じゃあ青雉はもう海兵じゃねェのか…」
「ああ…今何を思ってどこにおるのか…政府にしてもでかい戦力を失ったと言える…――じゃがその穴を埋める為に政府のとった"策"は『海軍』に思わぬ力を与えた…!」
赤犬に対し、青雉にはそれなりに好感が持てていた。
ルフィはどうかは知らないが凍りついたルフィを殺さずおいてくれた記憶はまだ新しい。
ジンベエはルフィだけではなく、その場にいるナミ達を見渡しながら続ける。
「ええかお前達…この2年の"新世界"でも最もデカイ変化を2つ覚えておけ。」
ジンベエのその言葉に寝転がっていたウソップは起き上がりジンベエへと振り返り、ナミも改まったジンベエの口調に表情を引き締め、サンジは説明している最中人魚達への愛もとりあえずは奥に引っ込んだのかルフィの隣へと座り、チョッパーもジンベエに振り返る。
…ゾロは………やっぱり眠っていた。
そしてアスカもジンベエの腕の中で気持ち良さそうに夢の中にいた。
眠っている2人を見て多少の不安や心配もあるが、まあしっかりしているであろうナミ達に言っておけばいずれは伝わるだろうと踏み2人を起こさず続ける。
特にアスカは起こしたくても自分の腕の中で幸せそうに眠っていては流石に起こすに起こせないだろう。
…が、それはジンベエだからかもしれない。
あと過保護組みの某2名。
とことんこの3人はアスカに甘い。
「サカズキ元帥率いる『海軍本部』はより強力な正義の軍隊になっておるという事…――もう1つは"黒ひげ海賊団"の進撃じゃ」
「黒ひげ…モックタウンで会った奴らね…」
「おれの故郷一度潰した奴!!」
モックタウンとは空島に行く前の島の事であり、黒ひげの印象は強くナミは今でも姿を思い出せた。
チョッパーもまだルフィと会う前に自分の故郷で暴れて去っていった黒ひげを思い出しムッとさせる。
「元々奴は"白ひげ海賊団"の古株…オヤジさんの縄張りについても熟知しておりオヤジさん亡き後瞬く間にその海域を制覇した…くしくも彼から奪ったグラグラの実の力を使ってな…!」
自分も白ひげと交流があり古くからの付き合いだったジンベエは白ひげを殺しその能力を奪いそれを利用し世界に名を轟かせる黒ひげに怒りを覚える。
グッと怒りで握られた拳は震えていたが、向ける場所のないこの怒りを落ち着かせ息を吐きながら気を取り直した。
「――世間ではすでに『赤髪』『カイドウ』『ビッグ・マム』に並び"四皇"の1人と位置づけされておる…!憎たらしい男よ…!!」
しかしいくら怒りを落ち着かせようとしても白ひげを殺したという恨みは消えることはない。
心から尊敬していた分その恨みは計り知れないだろう。
「噂によると奴ら今"能力者狩り"に奮起しとる…――どういう訳か"能力者"を殺し、その"能力"を奪い取る術を奴らは持っておるんじゃ!黒ひげ達の狙いはより強い『悪魔の実の能力者』…!!気をつけろ!」
「やべェ!おれ!!」
「いや…『ヒトヒトの実』はいらねェだろ…」
「何だと〜!?」
能力者を殺してその能力を奪うというジンベエからの情報にチョッパーは身の危険を感じ腕を抱えて怯える。
…が、ウソップの呟きにカチンと来たのかムッとさせながらウソップを睨みつける。
しかし人間がヒトヒトの実を食べてもただのカナヅチになるだけなのは変わりない事実と愛らしい姿のチョッパーに睨まれても全く怖くない。
「ルフィ君に至っては"黒ひげ"ティーチとの因縁も深い…十分に…―――ってルフィ〜〜!!聞いとらんのかワレァ!!」
ティーチとはそれなりに因縁もあるルフィが能力云々関係なく必然的に対峙するのは目に見えている。
死闘にならないのならそれでよし、だが…肝心のルフィは食事に夢中で全く話しを聞いていなかった。
せっかく心配して警告してやっというのに…!!とエースとは違い話しを全く聞かないルフィにジンベエは頭を抱えた。
「貴様船長じゃろうがィ!!情報を身に付けろ!!」
「あー、いいよジンベエ。おれ達が聞いてたから。」
「え?船長って話聞かねェ奴の事じゃねェのか?」
「船長たる者クルーの命を預かっとるのと違うんかい!!ルフィ!!」
「おい!コレ食ったか!?魚人島の『お菓子』!!うんめ〜〜!!肉も顔負け!!まー、ジンベエ!楽に行こう!!おれ出たトコ勝負好きだし!!」
「〜〜!!」
声を上げて怒鳴るジンベエをサンジが宥めるが全く効いていない。
その上チョッパーはどうしてか船長=話を聞かず好き勝手するという方程式が出来上がっていた。
もし、ここにアスカが起きていたらルフィはタコ殴りにされ食事どころではないだろう。
しかし幸いアスカはよっぽど眠りが深いのかジンベエの怒鳴り声を上げても身じろぐ気配すらない。
ジンベエは気楽な笑顔を見せるルフィに怒りも何処へやらで肩を落とし重い溜息をついた。
「お前ら…大変じゃのう…」
「「「そうなんだよ。」」」
麦わら一味の船長であるルフィの自由さにジンベエは船員達の気苦労が絶えない事を知る。
分かってくれるジンベエに本人であるルフィと眠りの世界へと誘われているゾロとアスカ以外が同時に頷いた。
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