(49 / 274) ラビットガール2 (49)

「「「財宝…全部ビッグ・マムにあげた!?」」」


ルフィ以外が帰りたくないと思っていても船長は財宝の後ろにいるナミを忘れているため、財宝をタマゴ達に渡し意気揚々と竜宮城へ帰ってきた。
財宝を背負ってくるはずのルフィを待っていたナミ達だったが、その財宝などどこにも見当たらず事情を聞くとナミとネプチューンと右大臣は声を揃えて驚きの声を上げる。


「お菓子がねェなら『魚人島』潰すとか言うんだよ!!あいつ頭おかしいだろ!?肉なら分かるぞ!?なァ!?だから安心しろ!!おれは思いっきりあいつにケンカ売ってやったよ!!」

「「「『四皇』にィ!!?」」」


ルフィの言葉にその場にいなかったウソップ達はこれでもかと驚く。
むしろウソップやチョッパーは泣いていた。
よりにもよって『四皇』にケンカを売った自分達の親分にウソップ達は頭を抱えてしまう。
…が、やっぱりロビンは微笑み楽しんでいた。


「"ビッグ・マム"にケンカを!?そりゃ困る…!!」


ビッグ・マムの傘下にいるタイヨウの海賊団の船長であるジンベエはルフィの報告に誰よりも慌てふためく。
ただ、その中で何も分かっていないしらほしは『まあ!力強いのですね!ルフィ様!』と微笑みのほほんとしていた。
そのためウソップの鋭い突っ込みが入り、怯え泣き出す。
事の重大さにしらほしが泣き出しても気にする余裕がない周りは唖然としており、必死でウソップがしらほしを宥めている姿も見えていない。


「参ったのう…これでは話がこじれる前にビッグ・マムの下を去らねば…お前達とにかくビッグ・マムをこれ以上逆撫でする様な事は絶対にやめろ!」

「するかよ!!『四皇』なんて出くわしたら即全滅だ!!」


頭を抱えるジンベエの言葉にしらほしを宥めていたウソップが声を上げる。
いくら前より強くなったとは言え『四皇』の誰かと出くわしては本当に即全滅になりかねない。
それが死ぬ前の白ひげやアスカの父親であるシャンクスなら話しも幾分か分かるであろうが…ビッグ・マム、カイドウ、そして最近四皇になったばかりの黒ひげでは話しどころか冗談も通じないのは目に見えている。
本気で泣きたい…!!ウソップはビビリもあり今すぐ船を降りたい気分だった……が、本気で降りる事はないだろう。


(おい!マズイじゃないか!?右大臣!)

(まさかこんな事に…!!このまま『玉手箱』がビッグ・マムの手に渡り万が一本人がそれを開けたら…!!大爆発はルフィ君からの挑戦状に…!!)


ウッウッ、とちょっぴり本当に泣いているウソップ達に右大臣から"ある事"を聞いていたネプチューンは冷や汗をだらだらと流し右大臣に小声で声をかける。
右大臣もネプチューンほどではないが冷や汗をかいていた。
"ある事"とは右大臣が再び玉手箱を開ける者が現れ、その者に罰を与えようと空の玉手箱に爆弾を詰め込んだ事だった。
開ければ大爆発が起こる仕組みになっており、ルフィ達が財宝泥棒から財宝を取り返した際にそれだけでも返してもらおうとしていたのだが……ルフィがビッグ・マムに喧嘩を売り、財宝を全て上げてしまったため回収できなくなってしまった。


「売り言葉に買い言葉…男だもん、ケンカするのは仕方ないけどね…」

「そうなんだ!!相手が誰だろうと――…」


にっこりとナミはルフィに愛らしい笑みを向ける。
ルフィもナミの笑みに釣られるようにニカッと笑って見せていたのだが…
ルフィの言葉を最後まで聞かず、ナミはルフィの頭に重い鉄拳を落とした。


何で全部渡したのよォーーー!!!

「「「そこ〜〜!!?」」」


否…ルフィだけではなかった……アスカ以外のルフィ、サンジ、ゾロはナミの怒りに触れ頭だけではなく顔中ボッコボコにされ原型が留めていない。
ただ、サンジだけはナミに殴られ目をハートにさせ喜んでおり、アスカはそれを見て軽く引いていたと言う。


「よひ…ひくぞ…"ひんへはい"へっ…」

「「「前途真っ暗だよっ!!!」」」


ボロッボロになっているルフィはゆっくりと起き上がり、どんな強敵よりも重いナミの攻撃にフルフルと痛みで身体を震わせながら腕を上げる。
気合を入れて意気込むルフィだったが、声は震え言葉になっておらず、その顔では説得力すらない。
アスカは『だから言ったのに…』と止める声など聞く耳持たなかったルフィに呆れたようにそう呟いた。



◇◇◇◇◇◇◇



一方、"新世界"『赤い土の大陸』付近海上では――…


「2時の方角!!また1隻!!海賊船が次々に海底より浮上してきます!!」

「どうなってるんだ!?」


突然現れた海賊達を相手に海兵達は慌しく動く。


「でけェの来たぞ〜〜!!」

「たしぎ大佐が危な〜〜い!!」

「抱きしめてお守りするぜ〜〜!!」

「もう!!また…!!」


新たに現れた海賊船の砲弾が軍艦に向けられ放たれる。
その砲弾は他の海賊船のより大きく、破壊力も倍だった。
そんな海賊船からの砲弾に慌てる事なく海兵達はある人物へと腕を広げ向かっていく。
その人物はチューッ、と唇を尖らせ目を瞑る海兵達に呆れたように溜息をついた後その向かって来る海兵達を踏み台に飛び上がった。
すると刀を抜き、その向かって来る砲弾の軌道をずらし空中へと吹き飛ばす。


「ん〜〜!いよっ!!さすが大佐ちゃん!!」


ピューピューと指笛を鳴らすその姿は到底海兵とは思えず、どちらかと言えば海賊に近かった。
しかし着ている制服は海兵の物であり、乗っている船も軍艦である。
その帆にはG−5と書かれており他の軍艦とは違った空気を纏っている。


「あなた達!!真面目にやりなさいっ!!砲撃を防ぐ訓練をしている筈でしょう!?」

「大佐、それマストです!」

「可愛いな〜!汚ェ『G−5』の二輪の華!」


G−5とは、新世界にある支部の内の1つである。
グランドラインでは多くの支部があるが、新世界ではG−1〜5までの支部があり数が増えれば増えるほど問題の海兵が入れられ、G−5は新世界の支部の中で最も環境の悪い支部でもあった。
そんな支部に大佐となったたしぎが入れられ、華のないこの支部の中で二輪の華と愛でられていた。


「戦闘中にそうやってふざけて!!今に命を落としますよ!!『G−5』はこれだから…!!とても海兵とは思えない!」

「えへへ!」

「女だと思ってバカにすると許しませんからね!!」

「黙れたしぎ!尋問中だ!」

「!――スモーカーさんっ!」


たしぎは茶々を入れられ、まるでナンパのような言葉に真面目なたしぎに慣れておらず顔を赤くしていた。
しかしそんな照れているたしぎもまた可愛い!とG−5の海兵達はにやにやとだらしなく鼻を伸ばしている。
ムッとさせるたしぎに背後から自分の直属の上司であるスモーカーが声を上げて咎める。
スモーカーに怒鳴られキッと海兵達を睨みつけていたたしぎは振り返る。
振り返った先のスモーカーは捕まえた海賊達を尋問しており、その隣には女帝ハンコックに並ぶほど美しい女性が寄り添っていた。


「成る程…海底の海賊ホーディ・ジョーンズに全員捕まっていたのか…」


尋問していた海賊から海底であった事件を聞き、怪訝そうにスモーカーは眉を顰める。
その隣には黒の服で全身を統一し、正義の上着を羽織っている絶世の美女がスモーカーの腕に絡み、目を見張って頬に手を当て驚いたような反応を見せた。
美女の声にスモーカーはピクリと片眉を上げるが…それに美女が気付いているのかは不明である。


「まあ…捕まっていたなんて……だからここ1ヵ月、ルーキー達が誰も魚人島を通過できなかったのですね…それが今、海賊が何隻も海上へ戻ってきた、と…」

「捕まっていた!?違う!!奴隷だったんだ!!だが内乱を起こしたホーディの一味を"ある海賊団"が倒しおれ達を解放してくれたんだ!!」

「その海賊のお名前は?」

「………」

「な、名前は言えねェ!!恩義がある!!」


美女の問いに海賊は首を振る。
そんな海賊に美女は笑みを深めスモーカーの隣からその海賊の前へと歩み寄り、ゆっくりと優雅な仕草でしゃがむ。
美人が目の前に現れた上に自分に美しく可憐な微笑を向けられ、海賊はポッと頬を染める。
そんな海賊に美女は目を細め美しく微笑んみそっと壊れ物を触るかのように海賊の血や泥で汚れた頬に白い手が添えられる。
その瞬間海賊達を囲んでいたG−5の海兵達から悲鳴に似た声が上がるが…美女はまったく怯える気配もなく気にも止めていない様子だった。
ただ、スモーカーはそんな美女に眉間のシワを更に深め、たしぎは乱暴者な海賊達を前にする美女を心配そうに見つめる。


「教えてくださいな…恩義といえどたかが海賊一味ではありませんか…」

「だっ…駄目だ!!ぜってー教えねェ!!」

「……おい…」

「何故?それほどの力がある海賊達ならば名前はもうとうに知れ渡っているはず…言っても構わないと思うのですが…」

「おい…」

「海賊であるあなたが同じ海賊に恩義など似合わない言葉を使うよりも……言わずしてあなたが命を落とすのと…牢獄へ放り込まれるのと…どちらがお好みかしら?」

おい!!黒蝶!!!


美女の声は甘く、男を誘うようだった。
だが言葉には棘があり、海賊は見惚れるのと同時に冷たいその言葉にゾッと背筋を凍らす。
海兵達も美女の微笑みとその言葉のギャップに惚れ直し、そして更に恐ろしく感じる。
しかし、そんな美女に後ろに座っていたスモーカーが苛立ちの声を上げ、その場にいた海兵も海賊もたしぎも、スモーカーの張り上げた声にビクッと肩を揺らす。
ただ、苛立ちの声を向けられた美女を除いて…


「あら、なにかしら…あ・な・た?」

「…その呼び方は止めろ………お前の出る幕じゃねェ…余計な手出しすな。とっとと本部に帰れ!」


スモーカーに苛立ちの声を向けられた美女は微笑を崩さないまま立ち上がり、スモーカーへ振り返る。
美しい笑みを向けられてもスモーカーは表情1つ変えず、逆に苛立ちを積もらせるだけだった。
そんな周りの反応とは真逆な彼に美女…G−5の二輪の華の1人であるミコトは笑みを深め海賊の前からスモーカーの隣へと戻り甘えるようにスモーカーの肩へ手をやる。


「そう怒らないでくださいな…わたくしはあなたの妻ですもの……妻が夫の側にいるのは当たり前でしょう?」

「おれはお前を認めたわけじゃねェ…いいからさっさと離婚届を元帥に叩きつけろ。鬱陶しいんだよてめェは。」

「まあ、ひどい…」


甘えるミコトを本当に鬱陶しいと思っているのか、眉間のシワを更に深め地を這うような低い声で呟かれてしまう。
ひどいと言いながらもミコトの表情は笑みのまま崩れず、クスクスと鈴を転がすような声で笑い、それがスモーカーの機嫌を更に降下させていく。


「お、おい!言っちまえよ!コイツらただの海兵じゃねェ!!『G−5』だぞ!!」


スモーカーはミコトの笑い声を耳にしながら舌打ちをあからさまにし、ミコトから顔を背ける。
自分達に意識が逸れたのを見てミコトに頬を染めていた海賊に隣にいた海賊が小声で『言え』と零す。


「だがよ…!!」

「こいつらのこと知らねェわけじゃねェだろ!!海軍の体に針を突き刺してサメ釣りするとか!!海賊燃やしてキャンプファイアとか!!本部の命令も聞かねェイカレた無法集団だ!!このまま捕まったら惨殺されるぞ!!」


小声だが恐ろしさが上回っているのかバッチリ海兵やミコト達に聞こえていた。
怯える海賊達を見てもっと怯えさせたくなったのか海兵達はたしぎの時は正反対なにやけ顔を浮かべ怯える海賊達を掴みかかる。


「中将!コイツら貰っていいか?ゲヘヘ…」

「ギャー!ちょっと…やめろ!!言うよ!!名前!!助けてェェェ!!!」

「むっ!麦わらの一味だよおおお!!!」

「……わかってるよ…」


海賊の叫び声を聞きながらスモーカーは低い声で呟き、そして…


「…………」


スモーカーに絡んでいるミコトは海賊から出た一味の名に美しい笑みを深め、目を細めた。

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