(51 / 274) ラビットガール2 (51)

出航の時が迫りしらほしはまた泣き出したもののルフィや兄達の説得によって渋々手の中に仕舞いこんでいたルフィをサニー号へと戻す。


「ニュ〜〜…おれ、工場の修理手伝うんだ。案内なしで大丈夫か?」

「いいよ!来る時の冒険も面白かった!」

「そーだ!そーだァ!!いらねェや!!案内なんざ!!男の旅はいつでも地獄行きだ!!」

「そーだァ!!戦争だァ!こちとらァ!!!」

「ヤケね。」


英雄の出航に国民達は手を振って見送る。
国民達の声で包まれる中、ケイミーとハチ達もルフィ達に手を振って見送っていた。
ルフィ達に救われたと言ってもまだ街の被害は大きく、特に2週間後に10トンものお菓子の製造が控えているお菓子工場の修理に人手が足りなくて困っていた。
ハチも手伝いに呼ばれ、国の為にと快く頷いた。
そのため案内が出来ないと申し訳なさそうにするハチにルフィは船端の上に立ち平気だと笑った。
その傍らではもう恐怖の為逆キレ状態なウソップとチョッパーが叫んでおり、その2人を見てポツリとロビンが呟く。


「みんな〜〜!また来てね〜!」

「必ず来るぜェ!!おれの心のオールブルー!!」

「安い夢だな」

「ああ!?」


マーメイドカフェの人魚達もルフィ達を見送りたいと言い出し、一時店を閉めて見送りに来ていた。
夢にまで見た人魚達に『また来て』と言われサンジは両手を広げハートを量産する。
しかしそんなサンジの様子にゾロは鼻を鳴らし、鼻を鳴らしたゾロの呟きがちゃんと耳に届いていたサンジは人魚や女性達に見せる表情を一変させる。
コロコロと表情や態度が変るサンジに人魚達は『ウフフ、サンジちゃん面白い!』と愉快そうに笑っていた。
フカボシは人魚達の楽しげな笑い声を耳にしながらゆっくりとルフィのいる船端へと歩み寄る。


「感謝の言葉しかない…!ありがとう!旅の無事を祈っている。」


フカボシとルフィはガッと熱く拳を交わし、その後ろにはマンボシとリュウボシが続く。


「次会う時おいら達海底最強の軍隊を率いているからな〜!〜〜ウウ!マンボッ!」

「そうそう♪俺達必ずかつてのネプチューン"大騎士伝説"を塗り替えてやるミ〜ファ〜ソラシ〜ド〜〜!!」

「へへ!楽しみだ!!」


マンボシとリュウボシの言葉にルフィは楽しげに笑みを深める。
アスカは4人のやり取りを何気なく見ていると、ふとフカボシがアスカへ目線を配らせ、アスカはフカボシと目と目が合い小首を傾げながらも珍しく小さく笑った。
アスカの小さな笑みは本当に小さくよく見ないと分からない程度だったが、アスカの笑みに気付いたフカボシは頬を染め今度はアスカへと歩み寄る。
フカボシが歩み寄った事によってアスカも自分に何か用なのかと思い自分もルフィの隣の船端へと向かった。


「…アスカさん」

「なに?」


表情はいつもと変らないもののどこか緊張しているように見える。
自分を見上げるアスカにフカボシは怖ず怖ずと口を開く。


「私は…まだ貴女を忘れることは出来ません……いつか貴女の想いを乗り越えれるその日まで…貴女の事を好きなままでいていいでしょうか…」


フカボシのその言葉にアスカは微かに目を見張った。
小さく目を丸くするアスカにフカボシは更に緊張を高める。
しかしそれでも真っ直ぐにアスカを見つめ、目を逸らす事はなかった。
自分が今、何を言っているのかは理解しているつもりである。
未練がましいというのも理解しているつもりである。
しかし、振られて次の日に忘れろなんてどんな人間でも出来るわけがないのだ。
自分を意識してほしいとは思っていない。
ただ、アスカを想い続ける許可がほしいだけなのだ。
ここで何も言わず想い続けるのは簡単だ。
決して受け入れてくれないこの想いをずっと、ずっと心に秘めておくのは本当に簡単なことである。
だがフカボシはそれをあえてしなかった。
その理由はフカボシだけが知るもの。
アスカはフカボシの言葉に唖然としており、その後ろには文句を言おうと口を開きかけたナミと、そんなナミの口を手で塞ぐロビンがいた。
サンジは空気を呼んだのかナミと同じく暴れたいが我慢しており、仲間達が見守る中アスカはゆっくりと口を開いた。


「いいよ…」

「!…本当ですか…」


アスカはフカボシの願いを受け入れ、静かに頷く。
フカボシはアスカの返答に緊張していた糸が解れ表情を和らげ、アスカは安堵の息をつき小さく嬉しそうに笑うフカボシを見上げ目を細める。
安堵の息と共に問うフカボシの言葉に『うん、いいよ…だって……』と呟き、そして――…



「あなたのこと、嫌いじゃないから」



アスカは船端に乗り上げフカボシの頬に軽く唇を寄せる。



「―――な…ッ」



ちゅ、という愛らしい音がフカボシの耳に届いていたが、その音がなんの行為で出た音なのか理解するまでが長かった。
頭がアスカから頬にキスを送られた事を理解したその瞬間、フカボシの顔は真っ赤に染め上がり、弟達は目を丸くし、父であるネプチューンは弟達よりも驚きが隠せない様子を見せ、右大臣と左大臣は唖然とし、ハチ達は開いた口が塞がらなかった。
更には国民達も王子の頬にアスカがキスをしたのを目撃したため騒がしかった声がピタリと止み、ルフィとしらほしは揃って首をかしげ、ナミとサンジはまるで某画家が描いた『ム○クの叫び』のようになり、サンジに至っては気を失って倒れてしまった。
ウソップ達も右大臣と左大臣のように唖然としていたが、ゾロは肩をすくめ、チョッパーもルフィ達のように首をかしげ、ロビンは微笑を深めていた。


「ふふっ」


ただ、騒然となる周りをよそにキスを送ったアスカは目を丸くさせ驚愕した顔を見せるフカボシを見てクスクスと笑みを零し…


「ローには内緒ね?」


そう小声でフカボシの耳元で呟いた。

フカボシはただ顔を赤くさせたまま頷くしかできなかったという。

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