アスカ達は魚人島を離れ、"クウイゴスの木片"で船体を浮かせ海の上へと帰ろうとしていた。
海の中も心地よかったがやはり人間の性か、海の上がとても懐かしく感じ今か今かと海の中から出るのを待ち望んでいた。
「アスカ、あんた汗かいたでしょ?一緒にお風呂に入りましょ!」
上昇海流に乗る前に汗を流しスッキリしたいとナミはそう思いお風呂を用意していた。
お風呂が沸き着替えを持ってくる途中にアスカと会い、ナミはアスカも誘う。
アスカはお風呂は毎日入るタイプだが、1日何度も入りたがるほどでもなく戦闘に慣れているアスカは汗だくでも気にしない。
だから『別にいいよ』と答えようとしたのだが、ナミに引っ張られ風呂に入るはめとなってしまった。
確かに戦闘に慣れているとはいえ汗くさいのが気になったため、アスカは抵抗せず一緒に入る事にした。
「頭洗ってあげる」
ナミは自分が洗い終えたあと、能力者ゆえにグテーッとさせるアスカを湯船から引っ張りだし自分の前に座らせる。
妹として可愛がっているアスカと一緒に入るのが楽しいのか、ナミは嬉しそうに自分が出した"シャワー=テンポ"でアスカの長い髪を濡らしていく。
アスカもナミに甘えて抵抗を見せずされるままにされていた。
「どう?強くない?」
「うん、丁度いいよ」
能力者ゆえにあまり水は好まないアスカに配慮してかナミの作った"シャワー=テンポ"から出される水は弱い。
「チョッパー、あんたも入る?私の"シャワー=テンポ"、あんたにも丁度いいかもしれないわよ」
「おれいい!一昨日体拭いたから!それよりその雲甘くて美味そうだな!」
エロ男が約2人いるこの船では毎日ではないが見張りを用意している。
それが主にエロなど無縁なチョッパーであり、チョッパーはアスカの頭にある泡を流していく雲を見上げながら舌なめずる。
チョッパーは雲に夢中だからか、自分の後ろからソロ〜っと怪しい二人組みが覗き込むのに気付いていなかった。
(え?甘くてウマそうなものがお風呂場に…?)
(本当だ、甘くてうまそうなのが2つ…)
怪しい二人組み…そう、お馴染みのサンジとブルックである。
チョッパーの甘くて美味そうな物は雲のことであるが、この2人の場合、甘くて美味しそうな物とはナミとアスカの事を指す。
当然怪しい二人からかもし出されるエロ気配に気付かないナミではなく、ナミは雲を綿飴と同じように見ている純粋なチョッパーに雲から離れるように伝え、チョッパーは移動しゴロゴロといわせながらの雲を目で追いながら傍を離れる。
その瞬間、小さくとも強烈な雷が落ち、サンジとブルックに天罰を与えた。
それを見てチョッパーはさきほどまで欲しそうにしていた顔を歪ませ『おれやっぱ食いたくねェ、その雲…』と呟いたという。
「は〜〜!ほっとするわね!2年ぶりのサニー号のお風呂!」
ナミが邪魔者も排除し、泡を全て流し終えたアスカはミニタオルで髪の水気を吸い取り1つにまとめ上げてから湯船に浸かり直す。
ナミもそれに続き丁度いい暖かさの湯船に入りアスカの隣に腰を降ろす。
熱くもなくぬるくもないそのお湯に浸かると先ほどの戦闘での疲労が全て癒えていくような気もし、気持ち良さそうにナミは息を吐く。
アスカも目を細めガープとミコトの教育の成果か、はたまたダダンの教育の成果か…肩まで湯に浸かっていた。
「あ、ナミ、見て…なんか夜空みたい。」
「あら、本当ね…」
ふと、アスカは背後にある窓を見れば深海魚達が行き来しているのが見え、暗闇の中光る深海魚達の瞳…普通なら恐ろしいにも程があるが、麦わら海賊団にいればこれ以上の恐ろしい存在と相まみえる事もあるため逆に2人の目には綺麗に写る。
アスカは良く見えないからと立ち上がり窓から深海魚達を見渡す。
当然髪を括っているため背中にはくっきりと過去の傷が見えており、以前はあれほど背中の焼印を隠すために一緒にお風呂すら入らなかったアスカが自分達に隠す事をしなくなった事が嬉しくて、ナミは思わず機嫌を良くし笑みを浮かべた。
「ナミいなくて甲板大丈夫かな?」
「上昇海流に乗る前に出るから平気よ。海獣が出たらあいつらが倒してくれるでしょ。」
自分とウソップ、チョッパー以外は化け物級の戦闘能力を持っていると2年前から知っているためそこは心配していない。
それはチョッパーもアスカも同じようで、ナミの言葉を聞きチョッパーはホッと胸を撫で下ろし、アスカは『今頃海獣を食べたくて釣りしてるんじゃない?』と呟いた。
2人は『まさかー』と笑っていたのだが…―――船が突然甲板の方が騒がしくなり、船が揺れ始め、笑い声が途切れる。
そして、風呂場の窓に白い物が映り、それはアスカが最初に発見した。
ナミはそれを見た瞬間慌てて湯船から出てアスカとチョッパーは不思議に思いつつもナミの慌てように自分達も続く。
「大変!あれは"
白い竜"!!?」
ナミを追いかけていけば船の目の前には白く巨大な渦巻きが発生し、サニー号はその白い竜に吸い込まれていく。
白い竜はまるで生きた竜のように突然海底に現れる白い渦巻きであり、その渦に飲み込まれた船は後日遠い海で"船だけ"発見されるという。
それは即ち船員全員が死亡、という事である。
「みんな!急いであの渦から離れるわよ!!―――ってキャーー!何あの魚っ!!」
「あっ!釣ったんだ!!」
「何やってるんのよ!!あんなの船に繋いでたら身動き取れないでしょ!?」
「ナミ、魚が渦に巻き込まれてる」
「ほら見なさい!――ってキャーーー!!アスカあんたなんて格好してんのーー!!!」
「やべ!!取り返すぞ!」
「違う!切り離すのよ!!そしてアスカは着替えてきなさいっ!!」
冷静なロビンの解説にウソップは顔を青ざめ、航海士のナミの言葉を誰よりも聞き、誰よりも行動に移した。
慌しい中同じく冷静なアスカはゆっくりと渦に引きこまれていく魚を指差し、ナミに教えるもナミはアスカの姿に二度目の悲鳴を上げた。
アスカはダウンを着たナミとは違い真っ裸だった。
露出に抵抗のないアスカらしさだが、ナミは背中を自分達に隠す事がなくなった事は嬉しく思うがこういう場面では嬉しさなどイチミリも感じられなかった。
むしろ保護者として、頭を悩ます問題である。
ただ幸いなのは騒ぎのお陰でアスカの裸を見たものはいないという事だろうか…
アスカはナミの命令に渋々着替えに船内へ消え、ナミは魚を切り離すという当たり前な決断にショックを隠せないルフィ・サンジ・ゾロ・ウソップを睨みつけて黙らせた。
「フランキー!"クー・ド・バースト"!!」
「いや!スーパー手遅れだ!!」
「あ…」
「な?」
男性陣を黙らせたナミは魚を切り離しフランキーの"クー・ド・バースト"で一気に脱出しようとした。
しかし魚を引き離す前にすでに魚ば白い竜゙に入ってしまい、切り離す事も出来ずサニー号も巻き添えを食らってしまった。
「船内にしがみ付け〜〜〜〜!!!」
ルフィの言葉にナミ達は同時に船内に力一杯しがみ付いた。
中に引きこまれれば目も開けられないほどの衝撃でみんな必死に船から投げ出されないように船内にしがみ付くだけで背一杯だった。
しかしドン、と何かにぶつかり、ぶつかった衝撃で何とか渦からは脱出が出来た。
激しい衝撃に瞑っていた目を恐る恐る開けるをそこには信じられない光景が広がっていた。
衝撃に着替え終えて駆けつけたアスカが見た光景、それは――…
「ラブーーン!!!」
クジラの群れだった。
ルフィが聞き鳴れない名前を叫び、アスカは唖然としながらも以前グランドライン前半で熱で気を失っていた時に会った1匹のクジラの事を思い出す。
ラブーンを知っているメンバー達はアスカ以上に驚きが隠せないのか目をまん丸にさせていた。
「ラブーン!!お前…!こんなに大きく…!!」
「バカいえ!ラブーンがいるのは"グランドライン前半"だろ!あの巨体じゃ"レッドライン"の"穴"も通れねえ!」
ラブーンに1番の想い入れがあるブルックはでない涙を流し再会に胸を熱くさせる。
しかしウソップの言う通り、ラブーンがいるのはグランドラインの前半。
こことは遥かに遠い場所にいるはずである。
しかしルフィ達がクジラの群れをラブーンと間違えるのは仕方のないことである。
クジラの群れの中にはラブーンのように頭に怪我をしている者もおり、特にブルックは涙を流し半狂乱にラブーンと思っているクジラたちに向かって叫んでいた。
今にも海に飛び込もうとするブルックを何とかウソップが押さえ、その場は予想外な再会に騒然としていた。
「落ち着いて観賞してる場合か!!渦を抜けてもここも充分危険だ!まずさっきの渦で誰も飛ばされてねェか!?人数確認!!――ナミさん!」
「はい!」
「ロビンちゃん!」
「いるわよ」
「アスカちゃん!」
「なに」
「――OK!すぐここを離れるぞ!こんなデケェクジラに衝突されたら船は大破だ!」
「サンジ!おれ達も数えてくれー!」
「サンジ君!その他6名も恥ずかしながら!生きております!!」
「ナミさん指示を!」
「そのままでいいわ!」
「そう!このままでいいんだバカヤロー!すぐにクジラ観賞だ!!」
「何なんだ!お前!!」
騒然している中、サンジが声を上げ渦に巻き込まれ誰も飛ばされてないかと人数確認をする。
しかし、流石サンジと言うべきか…人数確認は女性限定だった。
ナミ、ロビン、アスカが返事をしたのを確かめ、自己完結する。
その他6名のうちのウソップとチョッパーは自ら報告するも無視されてしまった挙句にナミのいう事には忠実なサンジは自分の意見を覆し、隙なくウソップはサンジに突っ込みを入れた。
「これだけ大きなクジラの群れはすでに"海流"を生んでる!流れに逆らっては危険が増すわ!しっかり帆を張って船底をクジラ達と同じ方向へ!!」
「「「おおーー!!」」」
航海士の指示に皆従い、それぞれ持ち場に向かう。
其の中でブルックはラブーンがいないのは分かったが、ここがラブーンの故郷という事を思い出し、人間の言葉が理解できるかは分からないもののいても立っていられず必死にいるであろうラブーンの親にラブーンが無事な事を伝えた。
帆を張り終えるとブルックはラブーンが好きだった『ビンクスの酒』をバイオリンで弾き、歌い始めた。
すると不思議な事に1匹の傷のあるクジラが頭にサニー号を乗せて移動し始める。
どうやらブルックの歌のお礼に海上まで連れて行っていってくれるようである。
暫くし、火の海からクジラと共にアスカ達を乗せたサニー号が現れた。
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