(54 / 274) ラビットガール2 (54)

ルフィが言ったら聞かないタイプなのは全員分かっており、行く気しかない船長のストッパーを4人、くじで選ぶことになった。
くじを引いたのはロビン、アスカ、ゾロ、ウソップで、ウソップだけは行きたくないと泣き叫びアスカ達はこれから何が起こるのか分からない島へ上陸する事を少し楽しみにしている様子だった。
何だかんだ言ってアスカもまた幼馴染に感化されているようである。


「ホラ!深海魚弁当だ!!」

「うほ〜〜!楽しみ〜〜!!」

「ルフィ!クソ剣士!ウソップ!お前らいいか!ちゃんとおれの分までロビンちゃんとアスカちゃんをお守りするんだぞ!!」


サンジは作りたての深海魚で作った弁当をルフィに差し出し、ロビンとアスカを守るよう釘を打つ。
釘を打ってもどちらかといえば2人は戦闘員に入るほど戦闘能力があるためそれほど心配はないだろうが、どんなに冷静沈着で時折恐ろしい事を言っても、ウサギをウサギとも思わず冷酷と呼ばれ見た目に反した性格を持っていても、サンジから見た2人はとてもか弱く守るべき対象にしか見えなかった。
まあくじが引けずロビンとアスカと共に島へ行けなかった八つ当たりも兼ねているのだろう。
5人はナミが作った"ミルキーロード"でミニメリーに乗り込み炎を跨いで島へと向かう。


「あの雲島まで届いているんですか?」

「さァ、わかんない。」


バババ、と音をさせ進むミニメリーを見送りながらブルックはポツリと呟く。
その呟きにナミはけろっとしたように笑って答えた。



◇◇◇◇◇◇◇



「ほら見ろ!!やっぱり入り口だアレ!」


ミニメリーに乗りナミの作った道を進んでいくとすぐに入り口のような物が見えた。
それを指差しルフィは目を輝かせるも行きたくて着いて来たわけではないウソップはあまり直視してくはなかった。


「だから!昔は誰かいたかも知れねェが今こんなところ住めるわけねェ!!さっきの電伝虫もどっか遠い島から受信しちまったんだ!!」


出来れば入り口周辺で何もないことが分かりルフィの興味もなくなってほしい、とウソップは切に願う。
上陸する前でも無駄だと分かりつつも説得を試みるもやはりルフィは聞く耳持っておらず見えてきた入り口に興奮していた。
ロビンに賛同を得ようと振り返るも何故かロビンはもう弁当を広げ食しており、その隣にいるゾロも同じくバリバリと弁当では出ないはずの音を立てながら食べていた。


「形は悪かったけど意外と美味しいわね」

「〜〜っお前らなんで今弁当食ってんだよ!!」

「お前食わねェのか?」

「今ノド通らねェよ!!!」


バリバリと何か硬い物を噛み砕く音を立てながら食べるゾロと美味しそうに深海魚の弁当を頬張っているロビン、そして自分の横でもアスカが弁当を食べ、その隣に居る幼馴染もまたあっと言う間に弁当を平らげていくのを見てウソップは危機感のないメンバーに呆れてしまう。
ゾロの問いに一般人の当たり前な回答を出しながら前へ向きなおし胸を押さえる。


「ああ…2年前の持病がまさかの再発だ……おい、お前達、実はおれは『島に入ってはいけない病』なんだ…!!」

「「「「知ってる。」」」」


『うう…』とわざとらしく胸を押さえ苦しそうな演技をするも、既に2年前から知っているウソップの持病に4人は同時に頷いた。
そうこうしている間に4人は弁当を平らげ、ついには入り口へと到着してしまった。


「間違いないわね…名前が一致した。」


入り口に到着すればデカデカと金属製のフェンスと共に看板のようなものがあり、そこには『PUNKHAZARD』と書かれていた。
それを見上げれば見たくもない現実を見る事になりウソップは薄く小さい希望が粉々に砕け散っていった音を聞く。
ミニメリーはゾロとルフィが陸へ上げ、炎から遠ざけていた。


「さっきの緊急信号はやっぱりこの中からなのか」

「さあ…でも電伝虫がこの島の名前言ったんだからそうじゃないの?同じ名前の島が近くにあった、っていう偶然なんてないだろうし。」


フェンスの置くにはもう1枚厚いであろう壁が厳重に何かを守るように建っていた。
当然覗き込もうとするも壁は高さもあり奥は見えない。
ゾロの呟きにアスカは肩をすくめた。


「この島立ち入り禁止だぞ!――あ!ルフィ!コレ見ろ!!」


ウソップは目の前に現実が迫っても行きたくない一心で諦めてくれるかもしれない要素を捜す。
すると意外にもその要素は目の前にあり、ウソップは今にも乗り込もうとするルフィにある物を見せた。


「ほら!『世界政府』と海軍のマークが!!」


ウソップに釣られてルフィだけではなくアスカやゾロ、ロビンもその指差す方へ視線を向ける。
するとそこには世界政府と海軍のマークが施された看板が張られてあり、この場所が敵の敷地内だというのがはっきりと分かる。


「つまり誰かいたとしても政府側の人間だ!!無駄足だったな…帰ろう!!」


ウソップは今、精一杯に4人を説得しようとしている。
もしここにナミやチョッパーがいたら強力な助っ人だったわけだが…
ウソップの説得も虚しくガシャンと大きな音を立て、ゾロが刀で扉を切り捨ててしまい、4人はウソップをよそに中に入ってしまう。


「ってぎゃー!!きみ達犯罪なんですけどーー!!って…あ!海賊も犯罪者か…!」


刀を抜きまるで紙を切るかのように扉を斬ったゾロにウソップは悲鳴をあげ、遠慮なく入っていく4人にまた悲鳴を上げ、忙しいウソップは慌てて4人を追いかける。


「ことごとく燃えてんな…」

「元々燃える島という訳ではなさそう…災害?事故?」

「熱ィな…とにかく…」

「砂漠以上に暑いんじゃない?流石にこの暑さは参る…」


ウサギの能力があるアスカでも燃えている島の暑さには敵わないようで、汗だくになりながら辺りを見渡していた。
『せっかくお風呂入ったのに…』と雨で濡れるわ暑さで大量の汗が流れるわでアスカの機嫌は降下していく。
汗が乾く前に新たに汗が滲み出るためべたついた感はないが、気持ち悪さは変わらない。


「恐らくこれは民家じゃない…ここは以前、政府の施設があった様ね…」


ロビン、ゾロ、ルフィは暑さから着ていた上着を脱いでいく。
アスカは相変わらずキャミソールだけなので脱ぐものはキャミソールしかなく、アスカ本人は脱いでも構わないが後々ナミに知られたら面倒な事になると知っているので脱がずにいた。
ロビンが崩れて小さな崖のようになっているその場から下を見渡しながら呟き、アスカも下を見る。
そこには燃え盛る炎の中溶けていたり元々破壊され崩れている建物の風景が広がっており、そこはまさに地獄絵図だった。


「大掛かりに封鎖してあるのってここが燃えて危なくなったから?」

「それとも…元々ヤベェ施設なのか…」

「この島を"記録指針"が示さないというのも…引っかかるわね…」


立っていた場所から降りて燃え盛る辺りを見渡してもやはり確かな手掛かりはない。
封鎖している意味が分からずアスカは首をかしげ、ゾロもそれに続き、ロビンが指針が指さない事を疑問視する。
指針が指さないという事をこの目の前の炎の街らしき光景を見ていて忘れかけていたアスカはロビンの言葉に『確かに…』と呟きながら思い出す。


「おーい!!さっきの奴いねェか〜〜!!助けに来たぞ〜〜〜!!!」


とりあえずルフィは見晴らしのいいこの場所で声を張り上げ助けを求めた人物を呼ぶ。
斬られたのだからもしかしたら声を出せないほどの怪我を負っているか…死んでいるか…奥にいるかのどちらかであろうとルフィ達は先に進む事にした。
引き返す気のないルフィ達にウソップは反論しつつも付いていくしか選択肢はないと泣く泣く着いて行くしかなかった。


「出て来〜〜い!!サムライ!!」

「呼ぶなよ!殺人鬼を!!!」


服を持ち上げるのも億劫なほどの暑さの中、ルフィはずっと大声を上げていた。
助けを求めた人物のほかにルフィはサムライも呼ぼうとしており、ウソップは弁当を食べながら止めに入った。
弁当を4人よりも遅くに食べ始めたウソップにゾロが『お、食欲出たのか。』とニヤリと笑って見せ、そのからかいの笑みに『うっせー!ヤケ食いだ!!』とウソップは睨む。
もう引き返すのも出来ないウソップは開き直ったようである。


「そういや気になってんのがよ…電伝虫の声……『寒い』って言ってたろ」

「そうだな、こんなに熱ィのに寒いって…………バカなのかな?」

「どういう推理だ!!」

「この燃える島に寒い場所があるのかな?」

「凍える程怖い経験という意味なのかしら…」


相変わらずのウソップとルフィのボケとツッコミをスルーしながらアスカも同じ疑問を感じていたのか首をかしげていた。
ロビンも同じように思っていたのか2人は考えながら歩く。
しかし暫くし、当然ながら人1人会うことのなかった5人の目の前に巨大な人骨のような物が現れ、アスカは目を丸くさせる。


「うわ!巨人!?」

「いや、巨人よりでけェぞ…」

「じゃあなに?巨人族以外に大きな人オーズしか見たことない…」


大きな骨はまるで巨人族のようだったが、何人かの巨人族を見たことがあるルフィ達はその大きさの違いにすぐに気付く。
骨は巨人族よりも大きい。
巨人族以外に大きな種族と言えば、スリラーバークでルフィの影を入れられ復活したオーズと、2年前の戦争でオーズの子孫の2人しか思い当たる節がない。
しかしオーズの子孫がそう簡単にホイホイいるわけがないとアスカはその考えを捨てる。
その瞬間、獣の鳴き声が辺りに響き渡りアスカ達は周りを見渡す。


「…!!、えッ!!?ええ〜〜!!?」

「あれ?…!!いるんだっけ!?これ…!!」

「いや…!空想上の生物だ!!存在するわけねェ!!」

「だけどこの姿…!!そうとしか思えない…!!」

「たしかに…姿形そのまま…!!」


辺りを見渡しても何もない。
ただ炎が燃えているだけだった。
しかし不意に建物ではない何が動いたのが全員の視線の端に映り、5人は同時に動いた何かを伝い上を見上げる。
その見上げた先にある何かに5人は驚愕し唖然とした。
そこにいたのは…


「「「―――ドラゴン!!?」」」


本でしか見たことのない、空想の生物…ドラゴンだった。

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