(55 / 274) ラビットガール2 (55)

アスカ達は目の前のドラゴンの存在に目を丸くさせ驚愕していた。


『何奴だ…』

「は!?」


いつも冷静沈着なロビンやどこか冷めているアスカでさえ目の前のドラゴンに驚きが隠せなかった中、ルフィはドラゴンが喋って聞こえ、更に驚きを隠せないでいた。


「おい!!コイツ今喋った!!」

「バカ言え!!空耳だろ!!」


しかしその声はルフィしか拾わなかったようで、ウソップ達は信じてくれなかった。
というよりは空想上の生き物を目の前にし、それを受け止めるだけでウソップは精一杯だったのだろう。
ロビンやゾロ、アスカもドラゴンをマジマジと見ている。
自分以外誰も聞いていなかったというのもあり、ウソップの言う通り空耳なのかもしれないとルフィは腕を組み首をかしげながらに思う。
しかしその次の瞬間、ドラゴンが微かに開いていた口を閉じ空を見上げるように顔を上げた。


「―――まさか…!!」


ボボ、口から炎のようなものが零れるのを見たアスカ達は嫌な予感が過ぎった。
その予感は的中し、ドラゴンの口から大量の炎が吐き出され、アスカ達は咄嗟に避ける。
一般人の身体能力を持つウソップはゾロに蹴られ避ける事が出来た。


「火を噴いた〜〜!!?」


火を噴いた事により目の前のドラゴンが本物なのだと実感させられアスカは滑るように着地しながら改めてドラゴンを見上げる。


「アチャチャチャ!!こんな生物いるわけねェ!!夢かこれは!!」

「面白ェ!!」

「うはははっ!!」


ゾロに乱暴ながらも助けられたウソップは地面を転がる。
しかし炎に囲まれている地面は熱しられジッと倒れている事も出来なかったのか熱さに慌てて起き上がった。
まだドラゴンの存在を受け入れられないウソップをよそにルフィとゾロが立ちはだかるドラゴンに向かい楽しげに笑った。


「"ゴムゴムの"ォ…!!―――"JET銃弾"!!!!」


まず最初に攻撃したのはルフィだった。
ルフィの"JET銃弾"は大きな的であるドラゴンに当たり、ドラゴンは痛みと衝撃に動きを止めた。
しかし…


「――!!」

「ルフィ!!!」


ドラゴンは痛みと衝撃に耐え、尻尾でルフィを叩き落とす。
建物に叩き落されたルフィにウソップは声を上げた。
アスカもドラゴンは2人に任せ傍観を決め付けているのか助けに向かう事もなく2人の戦いを見つめていた。


「来てみろ!!」

『気配なら感じていブ!!』

「…!!!」


尻尾でルフィをなぎ払ったドラゴンは近づいてくるゾロの気配を感じたのかくるりと振り返った。
気付かれた事に悔しがることなく不敵な笑みを浮かべていたゾロだったが、攻撃する前にドラゴンが喋って事に目を丸くさせ、一瞬の隙を作ってしまう。
その隙を狙いドラゴンはゾロを食べようと口を大きく開けたものの、食べたものはゾロではなく建物であり、ゾロは咄嗟に避ける事が出来た。


「本当だな…!何か喋ったぞこのドラゴン!!」


ルフィの言っていることが本当だった事も驚きだが、人の言葉を喋るドラゴンには更に驚かされる。
再びこちらに向かって来るドラゴンにゾロは刀を構え"極・虎狩り"で斬り付けるもその硬さからドラゴンは無傷だった。
パクリと開けられた口にゾロは避ける暇なく閉じられる寸前に刀で止める。


「くそ…!!なんだこの力と硬さ…!!!」


グググ、と力を更に入れるドラゴンにゾロも抵抗する。
刀で切られても無傷な歯や皮膚にゾロも思わずそう零してしまう。


「んにゃろォ〜〜〜!!!」


建物に叩きつけられたルフィは瓦礫から起き上がり怒りに任せてドラゴンを蹴りつけた。
ドラゴンはその衝撃に吹き飛ばされ、ゾロは後ろへと下がる。


「ルフィ!喋った!!」

「ほらみろ!!」


ドラゴンが喋る事を最初に気付いたルフィだったが、今度は全員がドラゴンの言葉を耳にした。
自分だけではなくアスカも、ロビンも聞こえたというのだからウソップは空耳でも自分の耳が可笑しくなったわけではないと分かり益々状況がついて行けず頭を抱える。
そうしている間にもドラゴンは羽を使い上空へと羽ばたき、思いっきり炎を噴出す。


『ブ!お前たちも"七武海"の仲間か!!!』


炎を吐き出しながらの言葉にアスカ達は壁になる建物の残骸の影に避難し炎を凌ぐ。


「ぎゃあ〜〜!!熱ィ!!熱ィしまた喋った!!!」

「ねぇ…今…!」

「ええ…"七武海"と言ったわね…何か恨みでもあるのかしら…」

「ドラゴンが七武海に恨み…?」


ロビンとウソップと同じ壁に隠れたアスカは先ほど聞いた言葉に目を丸くし、ロビンも同じく頷いた。
しかし恨みと言ってもここは立ち入り禁止のようだし、ドラゴンが七武海に何を恨む理由が見当たらない…アスカは炎が止みドラゴンに向かって飛んでいく幼馴染を見送りながら様子を窺う。
どうやらゾロが相手することに決まったようで、ルフィはドラゴンを叩き落すために向かった。


「おーい!!大変だー!!ドラゴンの頭に人間が刺さってる〜!!」

「ええ!!?どんな状況だ!!?」

「人間が刺さってる?ドラゴンの頭に?」

「じゃあ喋ってたのは…」


炎を避け、ルフィはドラゴンの背に乗った。
ルフィがドラゴンの背に乗ったのはアスカも見ていたため確認できたが、次に出たルフィの言葉にアスカは思わず耳を疑ってしまう。
ドラゴン自体現実味がないというのに…其の上ドラゴンの頭に人間が刺さっているなど誰が想像しただろうか…
まあルフィが嘘をつける人間ではないのを知っている4人は疑う事はしなかったが…やはり目に見ていない限り心から信じることが出来ない。
その間にも背に乗り込んだルフィに気付いたドラゴンが長い首を曲げ、背に乗り込んでいるルフィに向かって口を大きく開けて食べようとした。
すばしっこいルフィに何度も何度も口を向けるドラゴンにルフィはドラゴンの羽を引っ張りドラゴンの口に銜えさせる。
鋭い牙が自分の羽に刺さりドラゴンは痛みに声を上げ、傷だらけの羽では飛べずドラゴンは急降下していった。


「ゾロ!落ちるぞー!!!」

「ああ!!――ウソップ!!」

「!――分かったよ!!"必殺・緑星『トランポリア』"!!!」


落ちて来たドラゴンにゾロは動き出す。
ゾロに声を掛けられたウソップはゾロが何がしたいのかを理解し、ビビリすぎて震える手を押さえ『トランポリア』を出す。
トランポリンのような植物の上をゾロは飛び上がって踏みつけ、勢い良くドラゴンに向かって飛び上がる。


「一刀流……―――"居合い"!!"死・獅子歌歌"!!!」


飛び上がったゾロは落ちてくるドラゴンの首を一瞬にして切り離す。
絶命したドラゴンにアスカとロビンはとりあえずホッとさせる。



◇◇◇◇◇◇◇



落ちて来たドラゴンの遺体に避難していたアスカとロビンとウソップは近づき、マジマジとドラゴンを見つめる。


「本当にドラゴンだな、こりゃ…」

「ドラゴンって、本当にいた生き物なんだ…」


ウソップは恐る恐るドラゴンに近づき、アスカもそれに続け、ツンツンとアスカは平気な顔でドラゴンだったものを突っつく。
感触はまさに生き物そのもので、ドラゴンのモデルとなったと言われる爬虫類の感触で、死んで数分しか経っていないので死後硬直はまだ始まっておらず柔らかい。


「抜くぞーー!」

『おい!何奴だ!!手を放せブ!!』

「抜いてやるんだ!じっとしてろ!!せ〜〜のっ!!!」


ツンツンと突っついているとルフィとドラゴンの声が聞こえアスカは思わずドラゴンが生きているのかと手を引っ込めた。
ウソップも同じ事を思ったのかお互い数歩ドラゴンの体から離れ、騒いでいるルフィの方へ視線を送る。
そこにはドラゴンの頭に刺さっている人間を抜こうと躍起になっているルフィが見え、アスカは『あっちか…驚いた…』と胸を撫で下ろし、ウソップはあからさまにホッとさせ、2人はルフィ達のもとへと向かう。
アスカとウソップがルフィ達のもとについたのと同時に刺さっていた人間はスポン、と気持ちのいいほどの音を立てて抜かれたのだが、ルフィは抜いた人間を見てビクリと肩を揺らす。


「ぎゃあ〜〜〜!!!千切れたごめ〜〜〜〜ん!!!」

「バカ!ゴメンで済むか!!殺しちまったァ〜〜〜!!!」


スポン、と抜けたのだから本来なら上半身があるはずである。
しかし抜かれた人間は下半身しかなく、上半身と離れ離れになってしまった。
そんなに力を入れたわけでも斬ったわけでもないのに下半身しか抜けなかった事にルフィとウソップは声を上げて驚く。
アスカはドラゴンには驚いたが、下半身しかないグロテクスな人間を見ても平然と見下ろすばかりでルフィとウソップのように驚く事はなかった。
彼女の驚きの境界線が全くもって分からない。


『おお!!離れたでござブ!!』

「ええええ〜〜〜!!!?喋った!?何だこれ!!ゾンビ!?」

「バケモノォォ〜〜〜!!!!」


しかし倒れていた下半身が突然起き上がり、口もないのに喋った事にルフィとウソップは続けざまに驚きの声を上げる。
アスカをはじめとするロビンとゾロはもう慣れたのか反応するのも億劫になってきていた。


「どういう事?こっちにも体が千切れた跡なんてないわ」

「じゃあ元から下半身だけなのか!?しかし…結構でけェな…」

「個性的だなー、お前…」

「個性的で片付けられるものなの?これ…」


この中で1番冷静なロビンはふとドラゴンを見上げる。
見上げた視線の先には先ほど立ち上がった下半身が刺さっていた場所であり、ロビンはその場所を指差しながら首をかしげた。
釣られてアスカも顔を上げれば確かに下半身と上半身が千切れ血だらけで骨と肉と皮膚が丸見えのグロテクスな光景などなく、元々体が下半身だけとしか考えられなかった。
個性的、という言葉で終わらせるルフィにアスカは思わず呆れてしまう。


『(誰がいて何をしておるのだ?気配は感じるが…!何分目も耳もない…!)――ブ誰か知らブが道を通せブ!!拙者こんな場所で死ぬわけにはいかぬのだブ!!』

「うわっ!!」

『逃がしはせぬブぞ!!あの戯けた"七武海"めが!!』

「おい待て!!お前おれの仲間になれェ!!!」

「やめろォ〜〜〜!!!」


立っている下半身はとても大きく身長が高いと推測された。
恐らくブルックと同じような身長だろうか。
その下半身は突然声をあげ、突然ルフィ達に襲い掛かった。
襲い掛かったというよりも追い払う事を目的に暴れており、下半身はそのまま逃走を始めた。

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