「見ろよ〜〜!ホラ!!くっついたぞ〜〜!!」
あれからルフィは逃げていった下半身を追いかけ捕まえて戻ってきた。
何故か下半身を背中に貼り付けて戻ってきたルフィにアスカはもう何も言うまいと誓ったという。
「こういうのなんていうんだっけ!ウソップ!」
「あー…ケンタウロス、か…?」
「ケンタウロス〜〜!!アスカ!見ろよ!ケンタウロスだ!!」
「はいはい、ケンタウロスね。」
ルフィは暑さでだらけるウソップに教えてもらった言葉にまるで子供のように喜び、幼馴染であるアスカに見せ付ける。
男の夢などに興味の一欠けらもないアスカは素っ気無い返事を返すもただ見せびらかしたいルフィは気にもせず頷いたアスカに満足気に笑った。
「参ったかお前!おれはドラゴン食ってドラゴンパワーがついたんだ!!」
「確かにドラゴン美味しかったけど…あんたさ、自分の肉は自分で運びなよ…」
アスカはチラリと長身ウサギが運んでいる肉を横目で見る。
あの後、ドラゴンは美味しくアスカ達の胃の中に納まり、まだ食べたりないとルフィは肉を持ち運ぶ事を選んだ。
しかし持ち運んでいるのはアスカの能力であるブルックとほぼ同じ身長を持つ長身ウサギがルフィの肉を運んでいた。
それを咎めるも今のルフィはケンタウロスになりハシャイでいる為聞く耳を持たない。
この中で1番の力持ちと言えばアスカしかいないため仕方ないと言えば仕方ないのだが…アスカは溜息1つ零す。
「趣味が悪いわよ!ルフィ!」
「そうか?…ん?――ッブヘェ!!」
下半身だけで生きていける謎は置いておいて、あまりいい趣味とは言いがたいルフィに流石のロビンも叱ったが少しばかりズレているルフィは気にも留めなかったが、下半身はルフィを持ち上げ、そのままバックドロップを食らわす。
当然バックドロップを食らったルフィの頭には大きなタンコブが出来、アスカは『自業自得』とポツリと呟いた。
「見ろ!従うハズがねぇ!!そういう生物はいねぇんだ!どっかで上半身が困ってるに決まってる!持ち主に返せ!」
「お前は夢のないやつだな!ウソップ!!こいつはこういう奴なんだ!なァ?お前名前は…――ブヘエ!」
ウソップも少しずつドラゴンや下半身だけの生き物に慣れてきたらしく、もう下半身だけで動くなど暑さでかは不明だが驚く気力もない。
どう見ても人間の下半身で、どう見ても上半身があるはずなのにルフィは頑なにこういう生き物なのだと思い込んでいる。
名前を聞きだそうとするも二度目のバックドロップを食らってしまった。
「おい!お前らこっち来てみろ!」
「いたか!?"サムライ"と"斬られた奴"!!」
「…見ろ。」
ドラゴンを倒した後は何も出ず、5人はのんびりと歩いていた。
暑さと先ほどのドラゴン、そして下半身だけしかないのに動いている謎の生物に流石に遠足気分ではいられなかったが、今の今まで何も敵らしいものが出てこなかった事にウソップは内心ホッとさせていた。
すると先を歩いていたゾロが声を張り上げ後ろにいるアスカ達に声をかける。
ルフィは何か見つけたらしいゾロに期待しながら走り、その後をアスカ達も続ける。
しかしゾロが指したその先にある光景に4人は唖然としてしまう。
「ゆ…雪山ァ〜〜!!?」
アスカ達の目の前には極寒が広がっていた。
「デカ湖を挟んで島の反対は雪山…いや氷の山だ!!」
「こっちは活火山があってこの熱気なのに…極寒と灼熱と綺麗に別れてる島ってあるの?一体どういうわけ?」
「でも、1つ謎が解けたわね」
「!、そうか…電伝虫の……『寒い』って声…じゃあ…"殺人侍"と"その犠牲者"はあっち側にいるんだ…!」
今いる場所は灼熱地獄ばりに熱いというのに向こう側はどう見ても吹雪いて見えるし山は雪山である。
アスカは一瞬幻覚でも見ているのかと思った。
しかし現に5人全員が同じ風景を見ており、ロビンの言葉にウソップはハッとさせ寒いといって息絶えたであろう人物の言葉を理解し、それと同時に犠牲者と侍がアチラ側に入る事が判明した。
「おもしれェ島だな〜〜!"雪"降ってるよなあの山!!今暑いしかき氷食いてェ!!」
「向こう行ったら寒いだろ!!それに遠すぎる!一旦船に戻ろう!!」
ウソップは吹雪いている向こう側に殺人者がいると分かると雪で覆われている山々や真っ白なあちらの風景がどこか恐ろしく感じ、ごくりと喉を鳴らす。
しかしそんなウソップの恐れなど吹き飛ぶようにルフィは呑気な声でまたしてもズレた事を言い出し、ウソップは性分なのかルフィに突っ込みを入れる。
「困ったわね…今度は寒そうよ、アスカ」
「そうだね、風邪引いちゃうね」
「獣でもいりゃ毛皮が取れるんだが…まァ、何とかなるか」
「ならねェよ!!お前らまで何だ!!」
「毛皮ならウサギがあるけど?」
「……アスカ、それだけは止めましょう。ウサギさんが可哀想よ」
ルフィに突っ込みを入れ引き止めるのに大忙しなウソップをよそにルフィに続きアスカ達まで行く気でおり、ウソップは慌てて4人を引きとめようとする。
しかしウソップやナミやチョッパーなどの一般人(自称)で止められるわけもなく、鉄の心臓を持つアスカ達戦闘員はウソップの制止も聞かず先に進もうとした。
毛皮、という言葉にアスカはウサギを出し耳を掴んでゾロに渡すもロビンにソッと手を添えられ止められてしまった。
ロビンの言葉に『そ?』とキョトンとさせつつもアスカはウサギを仕舞い、ロビンは可愛いラブリーウサギの解体ショーを見ずホッと胸を撫で下ろす。
「おいおいおいおい!!!マジかよ!!一旦船に戻った方が安全だろ!?――ん?」
言わずと知れたルフィは『かき氷〜!』と声を上げながらかき氷を求め、アスカもロビンもゾロも当然極寒地獄へと身を投じるつもりでいる。
止めて聞くような奴らではないと分かっていても止めたくなるのが一般人であり、小心者である。
ここに同じ小市民(ナミとチョッパー)がいてくれば!!!、と涙を呑むウソップだったが、ふと視線の端に何かが映ったのに気付きその何かの方へ視線を向ける。
そこには―――女性の体に羽を持つ伝説の生き物…ハーピーがいた。
ウソップはこちらをジッと見つめ不敵な笑みを浮かべる鳥女なにゾッと背筋を凍らせた。
「ギャ〜〜〜!!見たか!?今の…!!」
「何が?」
「鳥だよ!!鳥!いや、鳥で…人だよ!!」
「あ?」
「何言ってんの、ウソップ…ついに暑さで頭やられた?」
「だから鳥が…!!!」
どうやらウソップしか鳥女を見ていないようで、ウソップは伝説上でしか見たことのないドラゴンに続きこれまた伝説でしか見たことのないハーピーを見て混乱しているのか説明が説明に鳴っていなかった。
見ていないしウソップが指差す方向を見ても既にハーピーはいなかった為、ウソップの訴えは信じてもらなかった。
◇◇◇◇◇◇◇
一方、パンクハザードの北西の海岸には別ルートで来ていたスモーカー達がいた。
「スモーカー中将!ムリだ!!まだガスが漏れ出てる!!」
「4年前のベガバンクのクソオヤジの化学兵器実験失敗でもうこの島は全部腐っちまってんだ!!」
G−5はスモーカーの指示通りパンクハザードに来たが、パクハザードは4年前の事故でガスが充満していると知っているため入るのを躊躇していた。
弱音を吐く部下達をスモーカーは横目で見るだけで何の反応も見せない。
「第一"麦わらのルフィ"の海賊船も見あたらねェし…これだけ毒ガスが抜けてねェ島になんて誰も入れるわけねェ!!」
「…いや、こんなにガスが発生してる方が不自然だ」
「…?」
毒ガスが充満していると知らないであろう麦わら達でも何らかの方法で気付くだろうし、元々毒ガスが充満している島で人が暮らせるわけがないのだかから誤報と考える方が正しいのかもしれない。
しかしスモーカーは毒ガスが不自然だと呟き、その言葉にたしぎは首をかしげ、ミコトはゆっくりと島を見上げる。
スモーカーは首をかしげる部下達を横目で見た後、ミコトへと視線を送った。
「2年前…ここはまだ火も氷もないただの腐った島だった…驚いた事にその時すでにほとんどの有毒物質がなくなっていたそうだ…」
「だから、当時、ワンちゃんとクザンさんはこの『パンクハザード』を決闘の場に選んだ…という事ですのね……2人の決闘は天候を変えてしまうほど激しかった……だから、パンクハザードは氷と炎に包まれた姿に変わった…」
「……ああ、そうだ…」
2年前、ミコトは行方不明だったため、当時の青雉と赤犬の戦いは知らなかった。
しかしいくら行方不明だったとはいえ新聞くらいは読むであろう。
だからミコトが2人の決闘を知っていることには驚く事はなかった。
しかしミコトが冷静でいることにスモーカーは内心驚いていた。
スモーカーが見て来たミコトは何を考えているのか分からない不気味な女――そのままだったからだ。
…ただ、その印象は深く関わる以前のもの。
まさに押しかけ女房なミコトと嫌でも関わっているとその内面を見るようになった。
いや、見えるようになった、と言った方が正しいだろうか。
少しずつ見えてきたミコトという女性は…実は弱いのだと分かったのだ。
力や能力は確かに最高戦力だとスモーカーもそこだけは認めている。
しかし内面はからっきしらしい。
今もいなくなったクザンを想い、その横顔はとても儚く、今にも泣き出しそうに見える。
表情こそ変わらないがスモーカーにはそう見えていた。
「…進むぞ」
スモーカーはそれが分かってしまう自分が嫌で溜息を小さくつきながらまだ二の足を踏む部下達にそう指示を出す。
そして、嫌だと思う反面…スモーカーはクザンやセンゴク、ガープがミコトに対して心配性になる理由が分かったような気がし、これからは自分がその役目を担うと思うとドッと疲れが襲った。
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