鳥女の姿はなく、ウソップだけが見ていたのもあり、アスカ達は一向に信じようとはしなかった。
すると船からウソップが持っていた子電伝虫に連絡が入り、ウソップは納得していないながらに船からの連絡を取った。
「ええ!?仲間が誰もいない〜〜!?目を覚ましたら周りは雪と氷!?お前1人か!?」
連絡を入れてきたのはブルックだった。
相変わらずのテンションの高さと『ヨホホ』という特徴のある笑い方でブルックは一言目に『ちょっと大変なんですよ!』と続けた。
大変と言いつつも聞いてる方はあまり大変ではなさそうなテンションに何気なく聞いていたが、ブルックのナミ達が消えたという言葉と周りは雪と氷に覆われているという言葉にウソップは目を丸くせずいられない。
ブルックの連絡に子電伝虫を持っているウソップのもとにロビンが歩み寄り、少し離れた場所ではゾロが崩れている下を見下ろしており、ゾロの隣にはアスカがダルそうにしゃがみゾロと同じく下を見下ろしている。
2人の視線の先にはルフィと、豹のような下半身を持つ男がいた。
ルフィはその男と楽しそうな声を零しながら談話している。
≪ヨホホホ!そうなんです!も〜〜驚いて骨が鳩鉄砲食らったみたいですよ私!ヨホホ!!…アレ?いえいえ、『豆が鳩鉄砲』…いえ、『鳩が骨鉄砲』…………ま、いいや!!ヨホホホ!!≫
ブルックはあまり深く考えない性格なためか、大変なはずの状況でも相変わらずのテンションである。
それは2年前からあまり変わっていないためそこはもう突っ込みも何もないウソップ達だが、次に告げられた『敵襲』に首をかしげた。
「サニー号で積荷を盗もうとした奴らって、何者だ?」
≪いやー、さっぱり…やっつけちゃいました。あ、でも、ガスマスクの様なものはつけてますね…≫
「――じゃあ意識を失う様なガスを打ち込まれたのでは?その人達の手で船は島の反対側へ…書き置きもないなら4人共どこかに連れ出された可能性が…」
「そうか!きっとそうだ!魚人島でもこういう事あったよな……お前ガイコツだから死体だと思われたんだよ!!」
≪あー、なるほど…それで私1人…ラッキーでした!!≫
ガイコツ扱いは既に慣れているウソップはナミ達と同じく眠らされたブルックを死体だと思って攫わなかった光景が目に浮かぶ。
ガイコツの姿はもう見慣れていて今更気にも留めないが、流石に他の人間は驚くしかないようである。
ロビンは1人納得しているブルックに『敵は全員攫った気でいる…辺りに建物や人気はない?』と聞けばブルックからは色よい返事が返ってきた。
「いやー、ロビンさん全部見えている様な推理力…」
ギュ、ギュ、と雪を踏む音と共にブルックは船の縁へと向かう。
その傍にはブルックが倒した敵が転がっていた。
「それが…建物……スゴイのあるんです!!レストランには見えませんね。」
風が強く横に吹く吹雪の中、ブルックの目の前に広がっている光景…それは――何かの研究室のような建物だった。
ブルックは≪私達そこへ急ぐから待ってて!≫、というロビンの言葉に『はい、お待ちしております』と頷き電伝虫を切った。
そして自分で入れた紅茶を飲み干し、ゲップを1つ出した。
◇◇◇◇◇◇◇
がちゃ、と連絡を切った子電伝虫をウソップはカバンに仕舞い、『急いでブルックの所にいくぞ!』とゾロとアスカのもとへと歩み寄った。
「なに、敵襲?ナミ達が攫われたって?」
「敵は政府側の人間か?」
「さァ…"人間"ならまだマシだ!何しろ、ここで見たのは『火を噴くドラゴン』、『半分人間』、『鳥女』…――さらにさっきルフィが友達になった『ケンタウロス』!!」
「あの生き物なら、今ルフィと喧嘩中。」
「ええ!?何故に!?」
ブルックからの連絡に、アスカはルフィを見下ろしていた顔を上げ、ウソップに振り返る。
ゾロもアスカと同じく人間だと願いたいがその願いがあまり叶えてもらえないと諦め半分のウソップに振り返る。
ルフィと半分豹の男…ケンタウロスを見ていたアスカは何故か喧嘩しはじめた2人を指差した。
先ほど友達になったというケンタウロスもどきとついさっきまで和気藹々としていたルフィだったが、アスカが指差す先にはケンタウロスもどきを蹴り飛ばしている光景があった。
「ゆ、油断、した…!!……味方かと…!!」
「味方でいいじゃねェか!!せっかく友達になったのに襲ってくんな!!」
どういういきさつで話が拗れたかは不明だが、どうやら相手のケンタウロスもどきは下半身だけの人間を腰につけているルフィを仲間かと思ったらしい。
しかし味方ではないのが分かった瞬間襲ってきたようである。
ムッとさせるルフィの後ろから倒れているケンタウロスもどきの仲間がゆっくりルフィを襲おうとした。
しかし…
「"ラビット爆弾"!!」
ボン、と爆発音が大きく辺りに響く。
「さんきゅ!アスカ!!」
「もう!油断しない!ルフィ!!」
後ろからルフィを斬ろうとしたキリンの下半身を持つケンタウロスもどきだったが、体にウサギが何羽ものくっ付いた。
それでもウサギだからと無害だと思いそのまま気付かれていない隙にルフィを斬ろうとした。
だが、突然その体にくっ付いていたウサギ達が一斉に爆発し、キリンのケンタウロスもどきは黒コゲになり倒れる。
ラブリーで愛らしく誰もが愛でるウサギを下僕のように扱いモノのように扱う人間などルフィの知っている限りアスカしかおらず、"ラビット爆弾"というワザも知っているルフィは上の段にいるアスカに振り返る。
お礼を口にするルフィにアスカは腰に手を当てため息を送り、ゾロ達と共に下へと降りていく。
「ヒョウに…キリンか?」
「ケンタウロスにも色々いて楽しいな!」
「ケンタウロスって色々な種類いたっけ?」
「いやいや!!空想上は馬だし!!存在するのはおかしい!!」
下に降り、倒れているヒョウと黒コゲになっているキリンのケンタウロスもどきをマジマジと見つめる。
首を傾げるアスカの言葉にウソップが否定したが、確かにケンタウロスという生き物は現実にいないはずである。
だが声を大にしていないと言えない事をウソップはドラゴンやハーピーを見てしまったため知っている。
「見ろ!この子電伝虫"CC"って文字が!!こいつら野生のケンタウロスじゃねェ…多分、何かの組織だ…」
黒こげのキリンのケンタウロスもどきの懐から、ウソップは子電伝虫を見つけた。
その子電伝虫には"CC"と書かれた文字があり野生ではない事が証明される。
「とにかく、もう火の海に引き返してもサニーはねェ!本当に氷の土地に行かなきゃならなくなった!仲間は4人が行方不明だ!!」
「十中八九攫われたと考えた方がいいわね……
ライフルでハチの巣にされてなきゃいいけど…」
「
やめろ!!」
「ナミ達人間はまだいいと思うよ…問題は人間じゃないチョッパーとフランキーだよ…
絶対チョッパーは皮を剥がれてマフラーとか帽子にされてフランキーは分解されてるに決まってる。」
「
お前もやめろォ!!!」
アスカの中では人間じゃない=フランキーになっていた。
むしろ2年前からフランキーは『人間』という種族ではなく、『変態』という種族としか思われていない。
それを聞けば本人は『やめろ…照れるじゃねェか』と言うだろう。
まあ本人がよければいいのだが…
結局何だかんだ言って向こう側へと向かうことになり、ゾロは肩をすくめた。
「初めから反対の岸へ上陸すりゃ早かったな。」
「そしたらお前、ドラゴンも食えなかったし『足まろ』とも出会えなかっただろ!!」
「何だ、"アシマロ"って…」
「俺の後ろ足の名前!」
「よーし!行くぞ!!目的変更!仲間救出に氷の土地へ!!」
「途中、冬服売ってないかしら」
「私見に行くだけだと思ってお金持ってない…」
「あら、私もよ…困ったわね…」
「こんな状況の島で店があるわけねェだろ!!っていうか冗談抜きでこの格好じゃ死ぬぞ!!」
ルフィはついに後ろにくっ付いている下半身に名前を付けてしまった。
『足まろ』と名前を付けられた下半身をゾロは横目で見た後、肩をすくめただけで何のツッコミも入れずそのまま放置を決め付ける。
やはり突っ込み役はウソップのようである。
しかしそのウソップは呑気な女性陣達に突っ込むのと行きたくないが攫われた仲間の為に気合を入れるのに精一杯だった。
◇◇◇◇◇◇◇
一方、G−5達は――…
「うわ!!噴火!!」
ドォン、と大きな音を立て噴火する火山にビクリと体を揺らしていた。
しかしまた別の方を見れば熱さなど微塵も感じられない雪景色が広がっており、G−5達はゴクリと喉を鳴らす。
「…この島にいると…『赤犬』と『青雉』に睨まれてるみてェだ…」
「ウゥ…ッ!!あ〜〜!おっかねェ!!」
火山が広がる風景は当然赤犬に、冬山が広がる景色は青雉に…G−5達は直接会ってはいないが2人の最高戦力に睨まれているような感覚に襲われ身震いをした。
しかしスモーカーから『撃て!』という命令に慌てて大砲を指示された方へと撃つ。
すると自分達を拒むように聳え立っていた氷の塊が崩れ、目の前に1本の道が広がった。
「おお!!氷塊割ったら本当に河が現れた!!なんで氷の奥に河があるって分かったんだ!?
スモやん!!」
スモーカーはこの先に河の道があると知っていたようで、G−5達は半信半疑だったが目の前に現れた道に驚いて見せた。
が、『スモやん』と言った瞬間…そう呼んだG−5の海兵は船にめり込むほどの力で殴られてしまう。
「海流をよく見ろ。注意力のねェ奴らだ………問題は河があった事より…今河港を塞いでいた流氷が自然のモノか…人工的なモノか、という事だ。」
「こんなガスだらけの島にィ!?人が住むっての!?バカな…!マスクして暮らさなにゃならねェ!!」
「…本来なら、な………お前は何も聞いていないのか、黒蝶。」
部下の言葉は正論だった。
しかし、このパンクハザードだけはそうとは言い切れないとスモーカーは考えている。
だからスモーカーは自分の隣にいるミコトへと声を掛けたのだ。
ミコトはガスマスクをつけておらず、つけずにいるミコトにたしぎが心配して『ガスマスクつけてください!』と言ったのだがミコトはニッコリ笑い差し出されたガスマスクを押し返しながら『わたくしの美意識に反しますのでいりませんわ』とキッパリとはっきりと言い放った。
それでもガスマスクなしのミコトを心配するたしぎにミコトは『傾世元禳がありますので』と傾世元禳の説明をし、何とかたしぎを納得させる事に成功した。
そんなミコトは愛しい夫に問われ氷塊を見上げていた顔をスモーカーに向け、綺麗な微笑を浮かべ小首を傾げる。
「さあ…ここは政府が捨てた島ですもの…わたくしはさっぱり…」
「…お前、あのベガパンクと仲がいいみてェだが……」
「あら、嫉妬?」
「
絶対ありえねェ」
ミコトの返答はスモーカーの予想していた言葉であり、予想していなかった言葉でもあった。
ミコトは本当に何を考えているか分からない人間で、こうして笑っている笑みは誰もが見惚れるが、スモーカーには胡散臭く見える。
だからミコトの言葉全てを信用する事はできなかった。
ミコトは即答で切り捨てたスモーカーに笑みを深め氷塊を見つめた。
「…ベガパンクや、政府の全てをわたくしが知っているとは思わないでくださいな…特に元帥がワンちゃんになってからは…ワンちゃんはわたくしを警戒しておいでですし………わたくしは知りませんし、聞いておりませんわ」
「…そうかよ」
氷塊を見上げた後、またスモーカーへにっこりと笑いかけるミコトの言葉にスモーカーはもう突っかかる事はなかった。
前を向き氷塊が崩れるのを見つめるスモーカーにミコトは笑みを深め、自分も氷塊へと見上げ―――
「そもそも…政府が気付くわけがないですわ」
そう呟いた。
その呟きは大砲と氷塊が崩れる音によってかき消されてしまう。
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