ビュウ、と激しい風が吹き荒れ、アスカは容赦なく舞う髪に苛つきながら髪を手で押さえる。
「すげェ風!!」
「向こう岸を見ろ!!吹雪だ!!」
「当然ね、島の中でこれだけ極端な温度差があれば風は吹き荒れるものよ。」
向こう側に見える吹雪はどう見ても寒そうで…むしろ雪山や雪が積もっているのを見れば寒いのは当たり前である。
アスカはナミやロビンのように頭はあまり良くはなく、ロビンの言葉に『そういうモノなのか』と納得し熱く時々寒い風に溜息をついた。
「だがどうやって泳ぐんだこの湖!一部燃えてるし氷は浮いてるし!!」
「意外と適温かもな…汗も掻いたし………
泳ぐか。」
「んなっ…!?バカいえ!!」
ウソップの言う通り、湖には燃えている部分があり、氷も浮いていた。
まるで線が引かれているように綺麗に分かれている湖の水の温度は簡単に想像できるだろう。
極端に熱くて寒いのなら、湖の中も極端に暑くて冷たいのだろう。
そんな誰にも分かるのに関わらずゾロが呑気にも汗を掻いたからと泳ぐという選択肢を出し、思わずウソップは本気で突っ込んだ。
『お前らは平気だろうが俺は一般人の体を持ってんだぞ!!少しは自分が人外だっていうのに気づけ!!』と本気で泳がんとするゾロにウソップは怒鳴る。
アスカは言いすぎだろ、と思いつつも正論なため否定はせず口を挟まない。
「おれとロビンとアスカは泳げねェからなァ…」
「おぶって泳げってわけじゃねェだろうな!!!っていうか人数としてムリだろ!!3対2だぞ!!3対2!!!」
「んなもん気合でなんとかなんだろ」
「気合で何とかなるなら海軍はいりませんっ!!!」
船などこんな場所であるわけがなく、能力者のルフィ・ロビン・アスカは当然泳ぐ事は不可能。
お風呂などに浸かっても力が抜けていくというのに泳ぐなど能力者の3人にしたら難度が高い。
ゾロは準備運動をしながら愚図るウソップに『じゃあお前、1番軽いアスカを背負えばいいだろ…おれがあとの2人を背負う。』と人数が不満だとばかりに提案するもウソップに『人数の問題じゃねえしアスカは2人より力抜くから重いんだっつーの!!』と突っ込んだ。
海楼石、海、などの能力者の弱点に人一倍弱いアスカは体重が軽くても力が入れる事が出来ない分重い。
気を失っている人ほど重いのと同じである。
ウソップの睨みなど鼻で笑って終わったゾロだが、背後からの殺気にハッとさせ振り返る。
「…………」
「…………」
「……なんだよ」
「…いいえ、何でも。」
「…………」
「…………」
振り返ればそこには自分を殺さんばかりに鋭く睨むロビンがいた。
しかしゾロはロビンに睨まれる理由が分からず怪訝そうにさせるもロビンは珍しくムッとさせフイ、と顔を逸らす。
機嫌が悪いロビンにゾロは不思議そうに首を傾げていたが、その様子を見ていたアスカはゾロに『無神経』とボソリと呟き、その呟きを聞いたゾロは『あ?』と本気で分からないと顔にデカデカと書き更に怪訝さを強くした。
アスカはゾロの乙女心の分かっていない反応に心の中で『鈍感無神経男…』と呟いた。
「なんとしても向こう岸に行く気なら仕方ねェ!!どいてろ!!」
もう行くしか選択肢がないウソップはもう引き返すなどムリだと渋々カバンから種を取り出す。
"必殺緑星"で"ボーティーバナナ"を出現させ"団扇草"を生やす。
「うわー!ボートがでてきた!!」
「へェー!すげェなウソップ!!」
湖にはボートが現れ、陸に生やした団扇草をオールにし漕ぐらしい。
「いろんな種を持ってるのね、素敵」
「おれのいたボーイン列島は変な植物の宝庫だったからな!!危険な森の奥へ行くほど便利な植物を手に入れられた!あの島で2年生き延びたおれにはもはやクリアできない難関などないと言っても…」
「行くぞ!乗れウソップ!!!」
「聞けよ!最後まで!!!」
2年前にはなかった数々の種にロビンは興味を示す。
そのロビンの言葉に嬉しそうに語るウソップだったが、ウソップの言葉を遮るようにルフィが声をあげ、いつの間にかロビンもボートに乗り込んでいたのを見て突っ込みを入れる。
まあ仲間が捕まっているのでのんびりしていられないとウソップも分かっていたが、ちょっぴり寂しかったりする。
「よーし出航だーーー!!!」
「お前こげよ!!!」
ボートの先端にはルフィが器用にも座り、その後ろにはゾロとウソップ、後方にはアスカとロビンが漕いでおり、先端に座っているルフィはただオールを持っているだけで漕ぐ素振りもない。
自分だけ楽をするルフィにウソップが怒鳴るも次なる冒険で頭が一杯なルフィには聞こえていなかった。
相変わらずな幼馴染とウソップにロビンは楽しげに笑っていたもののアスカは呆れたように肩をすくめる。
「風が強ェ!向かい風だ!!」
「―――待てェ〜〜〜!!!コノヤロォ〜〜!!!」
「…!」
変えは強く向かい風だった。
そのためボートは中々進まない上に風が強く目も乾いてしまう。
しかし4人で漕げば少しずつだが前へと進めていた。
が、後ろからの言葉に全員が後ろを向く。
その瞬間水柱が真後ろに上がった。
「わ…!」
「危ねェ!!岩!?」
「さっきのケンタウロスだ!」
バシャン、と後ろから岩が投げられ水柱があがり、ギリギリに攻撃を避けることができた。
投げた人物を目を凝らしてみればルフィが吹き飛ばしたヒョウのケンタウロスが立っていた。
「おーい!やっぱりおれの仲間になりたくなったのか〜!?」
「また勧誘してたのかてめェ!!!」
「珍獣をことごとく仲間にしたがるクセやめろ!!!!」
ヒョウのケンタウロスが攻撃してきたのに何故かルフィには仲間になりたくて来たと思ったらしく、先端から後方へと移動した。
2年経っても変な生き物を仲間にしたがるクセが治っていないのに思わずゾロとウソップは突っ込みを入れる。
しかしそんなルフィやゾロ、ウソップをよそにヒョウのケタウロスはどこからか角笛を取り出し鳴らし始めた。
「ボス〜〜!!侵入者が"そっち"へ!!始末してください〜〜ィ!!!」
「ボス!?」
角笛を鳴らし終えたヒョウのケンタウロスは声を精一杯あげ、向こう側へとルフィ達が侵入したと伝えた。
その言葉の中に『ボス』という言葉に反応したウソップは一瞬脳裏に電伝虫から出た『ボス』という言葉が過ぎる。
「何か現れたわよ、向こう岸に…」
吹雪が吹き荒れる方へと叫ぶヒョウのケンタウロスにロビンは振り返り雪景色へと視線を向ける。
そして吹雪きの中何人もの影が浮き上がったのに気付いた。
ロビンの言葉に3人も雪山の方へ向ければまず目に留まったのは一際大きな影だった。
「あれがボス!?」
「じゃあ緊急信号は…あの"ボス"に向けて発信してたのか…!?だったらあいつがおれ達に何かしようってのは筋違いだ!!」
一際大きな影の周りにちらほらと小さな…否、自分達と同じ大きさの影が見え、ウソップは大きな影をボスだと慌てふためく。
「刀を持ってる奴がいるぞ…あれが仲間達を斬った侍か……」
ボスらしき影はゾロを見つめポツリと呟いた。
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