雪山にバズーカの音が響く。
バズーカはルフィ達に向けられ、その弾はほぼ全てゾロやルフィ達が跳ね返し、ボートの周りには幾つモノ水柱が上がっていた。
「またバズーカ撃ってきた!!」
「わっかんねェやつらめ〜〜!!!」
「船沈める気だ!!!」
ヒュルル、と弾が飛んでくる音の後、弾は跳ね返し、時たまそのまま湖に落ち水柱を上げる。
その繰り返しでアスカは危機感もなく『いい加減諦めればいいのに』と思う。
しかしその瞬間向こう側にいるバズーカの一発が偶然にもボートに当たってしまい、アスカ達はボートと共に高く吹き飛ばされてしまう。
アスカは重力に従って落ちていき一直線に湖に向かっていくのにスローモーションに見えた。
目をギュッと瞑った瞬間アスカが最も恐れていた水の中へと音を立てて落ちてしまう。
(えっ!?ちょ、や、やだ!!体に力が…っ!!)
水に弱い能力者と言っても、海と水では力の抜け具合が違う。
まだ水の場合力の余裕があるが、海は力そのものが入れれず自分の意思に反して抜かれていってしまう。
湖に飛び込む形に落ちたアスカは多少の水に入る事に覚悟していたが、まるで海のように力が抜けていくのに沈みながら驚いていた。
そんな手も足も動かす事ができないアスカの腰に力強く逞しい腕が回され、アスカは一気に水面へと上げられた。
『ぷはっ』と止めていた酸素を思いっきり吸い込めば冷たい空気が喉を通っていく。
しかし氷点下の湖の水温でその空気の感覚すらなくなり、当然手足の感覚すらなかった。
薄っすらと開けた目で横を見ればそこにはゾロがおり、自分の正反対の腕にはルフィが同じくぐったりとしていた。
「よォし!!やったぞォ!ボート転覆だ!!!」
「バカ野郎ども…始めから水面狙えばいいんだよ!ウォッホッホ!」
「いやァ…まさか銃弾砲弾をはね返す能力者だとは思わねェから…!!」
「能力者は沈めりゃ終わりだ…!!」
あまりの冷たさからガチガチと歯を鳴らしながら息を吸うアスカの耳にボスの声と他のケンタウロスの声が届く。
チラリと横目で見ればそこにはワニの下半身を持ったボスがいた。
周りのケンタウロスたちはアスカ達を湖に放りだしたことに大喜びしていた。
「ギャ〜〜!冷てェ〜〜!!こんなところに!数分いたら凍っちまうよ〜〜!!!」
「まさか湖の真ん中で砲撃さされるとはな……」
「反撃するヒマはあったどドゥフィ(ルフィ)!!おべーが友らちになろうなんていってるから!!ウゥ…!らめら…口がまあられら…」
「ごべんもういい……友らちにならなくて…」
ロビンはウソップが担いでおり、凍るような冷たさからウソップの口は回らず歯を鳴らしながら喋る。
手の感覚も足の感覚も全員既になく、このままではいつまで浮かんでいられるかが分からない。
先ほどの砲弾もこのメンバーなら余裕過ぎるはずなのだが、どうしてもケンタウロスを仲間にしたいルフィが仲間に誘っていた為こういう結果となってしまった。
その点に関してはルフィも謝るしかなかった。
「おいウソップ!お前ちょっと3人抱えてろ!!ぶった斬ってやるあいつら!!」
「い…急いで…お、おれもう…」
本来なら『3人も抱えれるかァ!!』と突っ込むところだが、今反撃しあの憎らしいケンタウロス達を沈める事が出来るのはゾロしかいない為、素直にウソップはルフィとアスカを受け取ったが、既にアスカは気を失っていた。
今すぐにでも3人を掴む力もなく沈んでいきそうだったが、今は本気でゾロに任せるしかなかった。
アスカとルフィをウソップに任せたゾロは剣を構え向こう岸にいるケンタウロスに殺気を向けようとした。
しかしその瞬間、ゾロは誰かに引っ張られるように水中に一瞬消える。
「え!?おい!ろーひたろろ!!?」
「水の中に…ッ!!!」
一瞬沈み、また上がってきたゾロに目を丸くさせるウソップは短いゾロの言葉に水面に顔をつけ水中を見る。
そこには湖にいるはずのない生き物が何匹もウソップの視界に映りウソップは寒さとは別にゾッと背筋を凍らせた。
「ギャーーー!!!サメ゙〜〜〜!!湖にィ!!?」
ウソップが水中の中を見ればそこには海に生息しているはずのサメがおり、サメはゾロを食べようと噛み付いていた。
サメの姿にウソップは思わず声を上げて悲鳴を上げる。
その姿にボスは大声を上げて笑う。
「ウォッホッホ!!バカめ!ここは正確には海!!"赤犬"と"青雉"が戦った爆心地のような穴に…島に入った巨大な裂け目から海水が流れ込みできた湖だ!!海の生物もいて当然!ウォッホッホォ〜〜!!!」
この湖は…否、湖と思っていた小さな海は"赤犬"と"青雉"が作り出したものだった。
丁度火山と雪山の境界線のようなここで、2人は戦った。
だからここからはっきりと吹雪が吹き荒れる気候と、灼熱の気候と分かれていた。
それはウソップ達は知らないが、サメの姿にウソップは混乱する。
「よく狙えェ!!もうあいつらに何もできねェ!!吹きとばせェ!!!」
「あっちもこっちももうダメだ〜〜!!!なんだよこんな人生の終わり想像してながっだよ゙ォ!!」
「撃てぇ〜〜〜!!!」
海にはサメ、向こう岸にはバズーカを持ったケンタウロス。
今更灼熱地獄の島に戻ろうとしても距離がありすぎてその間に自分達がサメのエサになってしまう。
ウソップはもうどうする事もできなかった。
だからこそ止めを刺そうとボスは吹き荒れる風に負けじと声を張り上げた。
しかし…
「―――!!?」
ボスの指示にバズーカを持っているケンタウロス達は一斉に構え、そして引き金を引こうとした。
その瞬間バズーカ全てが爆発し、バズーカを持っていたケンタウロス達は気を失い倒れてしまう。
ボス達は突然の事に目を丸くさせ言葉をなくす。
「な、何だ!?何が起こった!!?」
部下達が倒れる音にハッと我に返ったボスは倒れる部下達を見渡した。
誰一人意識がなく、顔を黒コゲにして倒れていた。
ウソップも同じく何が起こったのか分からず、目を丸くさせていたが爆発で上がる煙の中に見覚えのある影が映り別の意味で再び目を丸くさせる。
「!!―――ああ…!!ブルック〜〜〜!!!」
煙が晴れ、現れたその影…それは船で待機していたはずのブルックだった。
「極寒の吹雪より更に凍てつく"黄泉の風"!!―――ああ、忠告が遅れました…銃身を凍らせましたので…撃てば爆発いたしますよ!!!」
ブルックは仕込み刀を納めながらボスを背後にそう忠告する。
ボスは突然現れた敵らしき人物に目を鋭くさせ睨みつけた。
「おのれ…!何者だこのガイコツマスク!!」
「…名乗るほどの者じゃないブルックです!黄泉の国より蘇り麦わらの船長に…第二の命預けた白骨!!人呼んでソウル・キング!!!」
「いつの間にどんなトリックを…!!てめェ許さねェ!!」
「――許さないとは…!!!コッチのセリフです!!!もう仲間を失うのはコリゴリですよ!!」
キンと全ての刀を納めた音に部下は我に返る。
ただ剣を抜いただけで銃身を凍らせたブルックに部下達は襲い掛かるもブルックは部下の言葉を遮り再び剣を抜いた。
一度、仲間を亡くしたブルックはもう目の前で仲間を失うのが嫌だった。
何故か雪だるまを作ってルフィ達を待っていようと船から降りた途端に顔も下半身もない上半身だけの生き物に襲われ、(ホラー系が苦手なため)あまりの恐ろしさから無我夢中で逃げてきたブルックは偶然にもアスカ達が襲われている場面に遭遇する。
その瞬間ブルックは頭に血が上り剣を抜いて一瞬にして気付かれずケンタウロス達のバズーカを凍らせた。
だから今、ブルックは怒りに任せケンタウロスを倒していく。
ただのガイコツマスクだと思っていたケンタウロス達はブルックの強さに圧倒されていたが、ふと海へと視線を移す。
そこにはウソップ達の血で赤く染まっているはずの海が見えるはずが、何故かサメ達が浮かんでいる光景が広がっていた。
「サメがやられてる!!!おい!さっきの奴らはどこだ!!?」
本来なら人間はサメに勝てるわけがないのだ。
それも能力者3人に、能力者を抱えている人間なら尚の事。
それなのにサメの方が何故か倒されており気を失ってプカ〜と浮かんでいるではないか…ボスはあまりにも予想外の光景に驚愕を見せた。
そして海に浮かんでいるはずのウソップ達の姿が見えず、辺りを見渡す。
「―――いい所に来てくれた!!ブルック!!!」
「…!!」
「ヨホホ!!丁度こちらに走る用がありまして!ご無事でよかった!」
辺りを見渡せば側に浮かんでいる氷の塊に4人の影が映る。
目を凝らせばその影とは沈んだはずのウソップ達だった。
「やってくれたな半人半獣共!!!こちとらサメごときに食い千切られる程やわな鍛え方してねぇんだ!!」
「―――!?」
ブルックに気を取られている間に、ゾロが全てのサメを倒し、4人は近くに浮かんでいる氷の上へと避難したらしい。
しかし凍てつく風に、今の今まで海の中にいて濡れている体……風はボートに乗っている時より鋭くゾロ達を刺す。
「鍛えても寒さにゃ強くはなれねぇがな…!!」
「凍る゙っ!!凍り゙ぞうだ!!!!」
「らからおめーらおんあおーいえおっあんおいあ(だからおめーらこんな装備で極寒の地は)!」
「だけど見て……私達…運がいい…彼らとの出会いに感謝しなくちゃ…」
一般常識とは掛け離れている身体能力を持ち、体の鍛え方も違うゾロ達はサメ如きでやられるほど弱くはない。(1人除き)
しかし流石に自然には勝てないのか濡れているのもあり今すぐにでも凍え死ぬ寒さに体を震わせ歯を鳴らす。
海から上がれば能力者であるロビンとルフィは意識を回復させるも、誰よりも能力者の弱点に弱いアスカは今だに気を失い、ウソップに抱きかかえられていた。
ロビンはしゃがみ自分の体を抱き、同じく体を震わせるルフィ達に視線で指す。
その視線に釣られ気を失っているアスカ以外がロビンが指した方へ伝っていくとなんとも幸せそうな光景が見えた。
「ボス…!奴らそこまで!!」
「……ああ、だが待て…!コイツら見覚えがある!!」
キラリ、と3人の目が怪しく光ったのに気付かず、ケンタウロス達はすぐソコまで来ているルフィ達に慌てふためいていた。
ボスも同じくいつの間にか復活している能力者達に焦りを見せつつもどこか見覚えのある顔ぶれに目を凝らせジッとルフィ達を見つめる。
「おれは右から4番目のやつ…」
「おれはそのとなりのがいいな…」
「ん?何言って…」
「「「暖かそうな服!!」」」
ジッと目を凝らせているとルフィ達が自分達を見つめなにやら呟いているのが聞こえた。
ここからでも聞こえる距離なため、何を言っているのかと怪訝そうにしていたが、3人の息の合った言葉と獲物を狙うような目にボス達はゾッとさせる。
ついでに言うとウソップはアスカを抱きかかえながら自分とアスカの分も頼む、と言葉になっていない言葉を零していた。
「うおー!あいつらコート狙ってねェか!?」
「タチ悪ィ追い剥ぎか…!!」
「―――!、思い出したぞ!!あの帽子…!!2年前の"最悪の世代"のルーキーだ!!そうだ…あの帽子にあの髪の長い女…!!間違いねェ!!火拳の弟に妹…!!―――っ4億の海賊"麦わらのルフィ"と
アスキングの"冷酷ウサギのアスカ"だ!!!」
自分達の暖かそうなコートを見てルフィ達はそのコートを奪おうとしていた。
しかもルフィ達の獲物を狙う目線に寒さではない寒気が襲い、全員が身震いを起こす。
しかしそれ以上にルフィとアスカが起こした2年前の出来事を思い出したボスの言葉に更に寒気を強める。
ただの追い剥ぎから一転し、ルフィ達の表情はまるで悪魔のように見えた。
その数秒後、約2名を除いた悪魔3体が一瞬にして残ったケンタウロスもどきに襲い掛かり…
―――吹雪きが吹き荒れる空にケンタウロス達の野太い悲鳴が響く。
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