(67 / 274) ラビットガール2 (67)

一方、海軍G−5は…何とか避難場所となる場所を見つけ、気を失っているスモーカーとたしぎを運んでいた。
どうやらここもルフィ達のようにどこかの施設だったようである。


「ミコト様!!!大佐ちゃんはここでいいですか!?」

「ええ…火は絶やしてはなりませんよ……わたくしの能力で火が保たれるとは言え絶対とは言えませんから…とりあえずスモーカーとたしぎを暖めなければ…」

「「「了解っ!!!」」」


G−5はミコトが焚いた火の傍にそっとスモーカーとたしぎを寝かせる。
火はミコトが焚いたが所詮火は火なため風が強く入ってくれば消えることだってある。
気を失っている2人の傍のほかにも海兵達のためにとミコトはいくつか周りに火を焚いた。
お陰でその中はとても暖かい。
ミコトの指示の元、動いている間に海兵達からの呼び名が『黒蝶さん』から『ミコト様』へと変化していたが、ミコトは気にとめることもなく許していた。


「…………」

「ミコト様!大丈夫ですよ!心臓がなくても不思議と脈はありますし!!スモーカー中将も大佐ちゃんも生きてます!!!」

「そう…」


ミコトはパチパチと燃える焚き火の音を聞きながらゆっくりと横になっている夫の傍へと歩み寄る。
軍艦はすでに木端微塵になってしまったため毛布などなく、夫やたしぎの下には薄い布が敷かれているだけだった。
しかしそれでもないよりはましだろう。
スモーカーの傍に歩み寄り座って夫を見下ろすミコトに軍医である海兵がミコトを安心させようと声をかけた。
ミコトはその言葉に安心したのか耳に入っていないのかは分からないが曖昧な返事を返しただけで、そっと手を伸ばし目を瞑って眠るスモーカーの髪を指の背で撫でる。


「…………」


ミコトが今、何を思い、何を考えているかなど、海兵には分からない。


「ん…、」


優しくスモーカーの髪を撫でているとスモーカーの目蓋が震えたのをミコトは見た。
目を覚ます前兆にミコトはパッと手を離し、笑みを浮かべながらスモーカーの顔を覗きこむ。


「こ、ここは…」

「おはようございます、あなた」

「え…あっ…ミコトさん…?」

「…?」


薄っすらと開けられたその目にはミコトが映っていたが、ミコトはこちらを不思議そうに見つめる夫に違和感を感じた。
首を傾げるスモーカーにミコトも表には出さないが同じく首をかしげており、むくりと起き上がったスモーカーはきょとんとした顔をしていた。
短い間だがこんな夫の顔は見たことがなく、スモーカーはいつもムッとさせている顔が緩んでいた。


「あの、ここは……あっ!!スモーカーさんは無事ですか!?」

「え…?」

「ス、スモーカー中将!?どうしたんで!?」


起き上がったスモーカーはハッとさせミコトに迫る。
スモーカーは自分なのに自分で自分を心配する夫にミコトは珍しくも目を丸くさせた。
慌てたように自分を心配するスモーカーに、上司が起きた事に大喜びだった周りの海兵達も流石に驚いてしまい、慌てたように声をかけた。
しかしそんな海兵達を余所にスモーカーは『だから!!!スモーカーさんの怪我は!?心臓だってなくなってて…!!』と訳の分からない事を口にする。


「…あなた…もしかして…」

「――うっせェぞ!てめェら…!!」

「――!」


自分で自分を心配するスモーカーに海兵達は『スモーカー中将が壊れたァァ!!』と騒ぎたて、ざわめきが強くなった海兵達など気にも留めないミコトは、"あること"に気付き表情を険しくさせる。
ミコトの声は当然騒ぐ彼らの声によってかき消されてしまったが、ふと背後から怒鳴り声が響き、騒いでいた声はピタリと止まった。
ミコトが振り返ればそこにはスモーカーと同じく横に寝かされていたたしぎが起き上がっていた。
たしぎは頭を抑え辛そうにゆっくりと起き上がる。


「た、大佐ちゃん…?」

あァ?

「「「ひーーっ!!ごめんなさァァい!!!すんませんっしたァアァ!!!!」」」


片膝を立て肘を突くたしぎの姿に、たしぎに夢を描いている海兵達は睨みつけ不機嫌な低い声を零すその変貌に一斉に悲鳴を上げ、全員手を上げ降参ポーズを見せる。
ミコトはあのたしぎがヤ○ザのように部下達を睨みつける悪態を見ても何の反応もなく、一々騒ぐ夫の部下達に小さく溜息を零す。


「少し静かになさい…貴方達それでも海兵なんですの?」

「で、でもよォ〜!!ミコト様ァ〜!!」

「あ、あんな怖い顔で睨む大佐ちゃん見たことねェぜ!!?」

「おれら大佐ちゃんに何かしたかなァ〜!?」

「いいから黙りなさい。」

「「「り、了解ィ〜〜!!!」」」


『海兵ならいつも冷静でいなさい』、と小さく咎めれば泣き顔を浮かべて必死に弁解する。
悲しいやら怖いやらで海兵達の声は震えており、『大佐がヤク○になった〜!』『スモーカー中将がオカマになった〜!!』、と嘆く声も聞こえ、ミコトは更に咎める。
もう一度咎めれば今度は『ミコト様が怒ったァァァ!!!』と叫ぶ。
そんな海兵達にミコトはキッと睨んであげれば叫びや泣き声がピタリと止み、ミコトはお口にチャック状態の海兵達に睨んでいた表情を和らげ『いい子ね』と微笑を与えてやる。
ミコトの飴と鞭に海兵達は一人残らず骨抜きにされる。


「あなた、たしぎね?」


泣きそうな顔から目をハートにし鼻の下を伸ばす海兵達をよそにミコトは本題に入ろうとミコトは『まず』、と目の前に困惑の表情を浮かべている夫へと視線をやる。
スモーカーは微笑を浮べているミコトに見つめられほんのりと頬を赤く染めた。
その反応にミコトは確信を持った。
ミコトは何故かスモーカーをたしぎと呼び、部下達はその言葉に『えェェェェ!!!?』と叫んだ。


「い、いやいやいや!!!ミコト様!そりゃねェぜ!!それは流石にないと思いますけどォー!?」

「あ、はい…そうですけど…」

「えええええ!!!?なんでェ〜〜〜!!?」


確かに自分で自分の名前を呼ぶスモーカーはどこか女々しいが、流石にそれはないだろ!!、と海兵達は一人残らず心の中でそう断言した。
しかしスモーカーが頷いた為断言した言葉は粉々に砕け散ってしまう。
ミコトは大した驚きもなく不機嫌丸出しで太い氷っているパイプのようなモノに足を広げまるで男のように座るたしぎへと振り返り、『ではあなたが、スモーカーでよろしくて?』と問えばやはりたしぎからは『ああ』と答えた。
ミコトと2人の言葉を聞きながらも何が何だか分からず混乱している海兵達をよそにミコトは『これは大変な事になりましたわね…』と困った風に頬に手をあて溜め息をつく。


「あの…ミコト様…これは一体…」

「これはハートの船長さんの仕業でしょうね」

「トラファルガーの!?」

「ええ…オペオペの実にある"シャンブルズ"はターゲットの精神を入れ替える事ができるようです」


ミコトの体には悪魔の実シリーズが入っている。
しかし、だからと言ってその実の人間が作り出した技なども一緒というわけではない。
使用方法が同じなため被ることはあるが、悪魔の実は使い手次第なため全ての技を知っているわけではない。
元々ミコトが良く使う能力と言えば自然系が多いためオペオペの実はあまり使わない。
だから予想しか出せないのだ。
淡々と説明するミコトをよそに海兵達は先ほどから驚きっぱなしだった。
ただ本人であるスモーカーとたしぎはそれほど驚きはなく冷静で、たしぎの体を借りているスモーカーは驚きもなく、スモーカーの体を借りているたしぎは目を丸くさせる程度である。


「お前の能力で元通りにはできねェのか」

「無理ですね…確かにわたくしもオペオペの実は使えますが…これは本人でないと…」

「案外不便だな、お前の能力っつーもんは…」

「"最強な能力"などこの世にはありませんわ」

「…………」


先ほども言ったが、能力など使い手によって分かれるものである。
同じ能力が使えるからと言って、ミコトが強いというわけでもない。
弱いも強いもやはり使い手次第なため最強と謳われているミコトが使用しているからと言って同じ使い手が負けるというわけではないのだ。
ミコトにも相性というものがあり、その相性でミコトが負ける可能性もあるのだ。
だから同じ能力といえど、同じ技を持っていたとしても…その能力や技によっては使い手でしか解除できないものも多くある。
それを1番知っているミコトが首を振ればたしぎ(スモーカー)は諦めたように『そうか』と溜息をつきながら呟く。
たしぎ(スモーカー)がぼやけば返ってきた言葉にたしぎ(スモーカー)はピクリと片眉を上げ、ミコトへ視線を向ける。
ミコトは相変わらずないつもの笑みを浮かべていたが、たしぎ(スモーカー)からは少し辛そうに見えた。
だが、なんともないと言わんばかりに装っていた為何も言わず口を閉ざす。


「とりあえず…皆様落ち着きなさいませ。話はそれからにいたしましょう。」


たしぎ(スモーカー)は落ち着いているものの、若干スモーカー(たしぎ)も突然の事で混乱しており、そして言わずもがな海兵達は大混乱だった。
だからミコトはまだ目を覚ましたばかりの2人の体を休ませるのも兼ね、そう提案した。

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